すっかり雪が無くなって、毎年順番に様々な花が咲いてきます。 『そろそろアノ花が咲く頃だな∼』と観察場所を確認するのですが、毎年同じようには いきません。7月ネイチャーセンター建物裏の他、玄海広場周辺の石碑周辺にも クリンソウが咲いているのが確認できました。また湿地の植層もだいぶ変わって きて、以前、元玄海に群生していたウメバチソウはだいぶ数が減ってきました。 その間に乾燥してきた湿地には背丈の高い植物が増えて、ミツガシワもだいぶ奥の方 で6月に群生しており、7月初旬に遊歩道脇で観察できる花数が減って、移動している ように思います。 横道では 7 月中旬にウメガサソウやイチヤクソウを観察しましたが、 ミツガシワ (三槲) イチヤクソウは一時、数が減って無くなったかな?と心配した年もありましたが、湿地に自生する多年草。 今年は散策路の両側で例年より多く観察できます。しかしながら7月後半は天候 別名ネムリグサ。漢名も睡菜 とあり、古い幾つかの書物に が悪い日が続いたせいか、蕾をつけてから花が咲くまで時間がかかりました。 イチヤクソウの仲間ではシャクジョウソウも近年は園内で観察できなくなりまし 睡眠作用があると書かれてお たが、同じ腐生植物では7月下旬までギンリョウソウが見頃、下旬にはショウキ り、また猫がマタタビと同じ ような嗜好性を示すともあり ランも観察できました。毎年逢える花があれば、久しぶに顔を見せる花もあり ます。 同じ季節が廻って来るのが、楽しみです。 イチヤクソウ(一薬草) やや湿地に自生する多年草。 ヤクソウと名が付くように、 民間療法で葉っぱを虫刺され に使ったり、全草を乾燥させて たものを煎じて、急性腎炎や膀 胱炎に服用したそうです。 ヤマグワ (山桑) 今月は子供達が喜んで 小さな甘い実を摘まみ ました。この実は漢方 処方にも使われ、桑椹 (そうたん)と呼んで 強壮剤に用いられ、根皮 は桑白皮(そうはくひ)と 呼び、消炎性利尿薬や 鎮咳などに用いられます。 マッハ(Mach,E.1838∼1916)は「色は光源との依属関係において見れば、物理学的対象である。網膜との依属 関係において見れば、それは心理学的対象である。つまり感覚である。二つの領域において異なるのは、素材 ではなくて、研究方向である。 」と書いています。 何気無い日常に見える色について考えてみたいと思います。 先ず、色に対する印象は国民性によって随分変わるようですが、時代によってかなり使い方が変化していま す。例えば道路の信号機の『青信号』ですが明らかに緑色だし、 『青々とした葉っぱ』も 緑です。また現在、月山では『アオノツガザクラ』が咲いていますが、この花の色は 白です。昔、色とは決まった色相を指すのではなく、観念的な意味 が込められていました。まだ若い、エネルギーを秘めた状態をアオ と呼んでいたようです。藍染の青は縹色(はなだいろ)と呼びました。 化学染料が無い時代は、染めが難しいほど、高貴な色とされ、冠位十二 階でも紫根染めの濃い紫が大徳(最高位)とされており、平安時代では、 より色に関する感性が磨かれており『かさね』と呼ばれる当時の装束、 特に女性の十二単には季節や行事毎にグラデーションに色相 を重ねる着こなしがもてはやされ、衣装だけでも 130 以上の 色を用いていたのです。暑い夏でも様々な色を重ねて身につけ、情緒豊かな 歌などを詠んでいたのでしょう。(暑さに弱い現代人には考えられません。) では、植物に見える色とはどんなものでしょうか?光は可視光線という 目に見える光の範囲で、おおよそ 400∼700nm の周波数のものですが、 植物に吸収されず、表面で反射する範囲の周派数が色として見えるので、 ムラサキ(紫) アカネ(茜) 植物自体が色を発光している訳では有りません。無彩色の白花などはほとんど どちらの植物も古くから薬草、染色に 広く用いられて、現在は自然にはほと 光を吸収していない事になります。また博物園でも7月下旬にはだいぶ んど稀な絶滅危惧種。 紫陽花が咲き出してきました。紫陽花も青から赤紫と場所によって色が (写真は薬草園で撮影) 変わっていますが、これは土壌の酸性度によってかなり花の色が変化します。 7月下旬にナイトハイクがあり、今年もホタルの乱舞が観察できたそうですが、暗闇に慣れると周囲の葉っ ぱも少し光って浮いて見えてきます。これはヒトの目にある 1 億 2 千個もある桿体が機能を発揮するからです。 長い歴史のほんの少し前まで、ヒトは闇夜でも充分に暮らしてこれたのです。 (細谷)
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