「様々な側面からみた脂質・糖代謝」の 企画と編集にあたって

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オレオサイエンス 第 15 巻第 2 号(2015)
特集序言
「様々な側面からみた脂質・糖代謝」の
企画と編集にあたって
仲 川 清 隆
(東北大学大学院農学研究科)
脂質・糖代謝の研究が精力的に進められ,多くの新しい知見が明らかになりつつあります。そこで,本研究
領域の最近のトピックスを,特集としてはどうかとの話がもちあがり,このたびの号の発行となりました。本
特集では,
「プラスマローゲン型リン脂質」
,
「時間栄養学」,「耐糖能が異なる新規モデルマウス」をキーワー
ドとした,
“様々な側面”からみた脂質・糖代謝研究を,それぞれ最前線の研究者の皆様にわかりやすく解説
いただきました。
西向めぐみ先生(岩手大学),原博先生(北海道大学),前場良太先生(帝京大学)には,リン脂質のサブク
ラスの一種であるプラスマローゲンについて,はじめにその構造と天然分布などの基礎的知見,次いでプラス
マローゲンの分析法を詳しく解説していただきました。プラスマローゲンは,食品としてある程度日常的に摂
取されていることから,その吸収や生理作用に興味が持たれており,このことに関する著者らの最近の研究成
果をわかりやすく説明いただきました。加えて,血中プラスマローゲンの動脈硬化症のバイオマーカーとして
の可能性についても言及されています。このように本総説は,機能性食品や臨床等の分野の読者の方々から,
大きな関心が寄せられる内容になっているものと思います。
小田裕昭先生(名古屋大学)は,
『誰が(Who),何を(What),いつ(When),どこで(Where),どのように(How)
食べるのか』を総合的に考え,規則正しい食生活をしたら健康になるのか,不規則な食生活をしたら不健康に
なるのかなどについて,時間栄養学的観点から研究を精力的に進められています。本総説では,こうした時間
栄養学について基礎から詳しく解説していただきました。加えて,著者の動物実験の研究成果(不規則な食事
をすると肝臓の概日時計に異常が生じ,血中コレステロールが上昇する)をわかりやすく説明していただきま
した。これからの研究の展開が大いに期待できる学問領域であることを,読者の皆様にご理解頂けるものと思
います。
長尾元嗣先生,浅井明先生,杉原仁先生,及川眞一先生(日本医科大学)には,脂肪摂取が 2 型糖尿病の発
症に及ぼす影響について,総説の前半部分では,過去の疫学研究の結果をわかりやすく解説していただきまし
た。後半部分では,最近の基礎研究(動物実験)から得られた知見として,著者らが選抜交配により作出した
高脂肪食投与時の耐糖能が異なる新規モデルマウスの解析結果を中心に説明していただきました。これらを通
じて,脂肪摂取量の増加という現代の食環境下での 2 型糖尿病発症を決定する要因について深く考察されてお
り,読者の皆様に満足頂ける読み応えのある有意義な総説であると思います。
本特集号で取り上げました企画が,油脂研究の一層の推進の一助となれば幸いです。最後になりましたが,
本執筆にご理解をいただき,お忙しい中ご執筆をいただきました先生方に,この場を借りて厚く御礼申し上げ
ます。
(執筆者)
・プラスマローゲンの吸収特性と血中プラスマローゲンのバイオマーカーとしての有用性
Absorptive Characteristics of Plasmalogen and Availability of Serum/Plasma Plasmalogen as the Biomarker
西向めぐみ(岩手大学),原博(北海道大学),前場良太(帝京大学)
・‌不規則な摂食タイミングが肝臓概日時計異常とコレステロール代謝異常を導く分子メカニズムの解析
Molecular Mechanism of Abnormal Cholesterol Metabolism and Liver Clock by Irregular Eating Timing
小田裕昭(名古屋大学)
・脂肪摂取と 2 型糖尿病
Fat Intake and Type 2 Diabetes
長尾元嗣,浅井明,杉原仁,及川眞一(日本医科大学)
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