食肉処理施設の計画 - ジビエが地域を元気にする 日本ジビエ振興協議会

食肉処理施設の計画、設計にあたって
捕獲したシカやイノシシを解体処理する施設(食肉処理施設)の計画や設計、機器の導入に
あたって、これまでに特定非営利活動法人日本ジビエ振興協議会に相談があった内容をもとに、
注意していただきたい点をまとめました。
施設の計画や設計の参考にしてください。
1.地域住民の合意形成
シカやイノシシの内臓摘出、はく皮を行うことにより、居住地近くでの建設に反対されるこ
とがあります。
食施設のレイアウト、排水や汚物の衛生管理方法などの基本計画を作成した後、関係する住
民、自治会を対象に説明をおこない、住民の理解を得てください。
なお、近くに人家がなく住民合意の必要が無い場合は問題ないと思います。
2.施設の規模を決める前に
まず、管内の月ごと獣種ごとの捕獲頭数、捕獲方法(銃猟、くくりわな、箱わななど)
、を調
べてください。
次に、捕獲者の協力体制(猟友会として協力、個人的に協力)を確認します。
その上で、施設に搬入される見込み数を算出します。平均的には、捕獲数の10%ぐらいで
すが、捕獲方法や協力体制などにより大きく増減します。
3.施設の経営試算の検討にあたって
① 行政が主体となって設計、建設を行う場合
施設の運営は赤字でも良いのか黒字を目指すのかによって、施設の規模や運営方法が違って
きます。
-人件費と処理頭数食肉処理業者の人件費は自治体が負担する場合は、年間 100 頭~200 頭の処理頭数で設計
されても、それ以外の費用は捻出できると思われます。食肉処理業者の人件費の補助は行わな
い場合は、年間 300 頭以上の処理が望ましいと考えます。
-買い入れ価格捕獲個体の買い入れ価格は、無料か安いに越したことはありません。捕獲報奨金が支払われ
ているので無料としている施設もありますが、狩猟者との力関係で1頭1万円以上の施設もあ
ります。固定費として運営に影響しますので、しっかりとした買い入れ価格の設定が必要です。
-産廃料内臓や骨、皮といった産業廃棄物の廃棄料も固定費として重くのしかかってきます。事前に
試算しておきましょう。
-減価償却費建物や機器の減価償却費を計上している施設は多くありませんが、施設を指定管理者に委託
する場合は減価償却費を計上するよう指導された方が良いと思います。
② 個人や事業者が主体となって設計、建設を行う場合
個人や事業者が副業として行う場合は、施設の規模や処理頭数にこだわる必要はないと思い
ます。
4.施設の視察
検討段階で、必ず他の施設を視察してください。視察先は、同等の頭数を処理している施設
で、出来るだけ最近整備された施設が良いでしょう。それと、必ず2箇所以上視察してくださ
い。
大半の設計業者は初めての設計となるため、施設特有の構造が理解出来ないと思われます。
そこで、視察には、設計を予定している業者の同行が望まれます。
5.施設の設計
保健所の許可が得られれば由とせず、必ず、自治体が定める衛生ガイドラインか国が定めた
ガイドラインをクリア出来る設計にしてください。
6.機器の整備
-必ず入れていただきたい機器・ 高圧洗浄機(個体の洗浄)
・ レール(懸吊設備)
・ 83℃以上のお湯が出る温湯器
・ 包丁の消毒器
・ 冷凍庫(ストッカータイプはメインの冷凍庫としては入れないでください)
・ 真空包装機(出荷形状に対応したタイプを入れる)
・ ラベラー(個体識別番号などが印字できるタイプを入れる)
・ 金属検出機(ハンディータイプの検査機は不可)
・ スライサー(出荷するスライスの厚さに対応できるタイプを入れる)
・ 空調設備(夏場でも作業室を冷却できる性能を持った機種を入れる)
・ 内臓、皮などを保管する設備(ストッカータイプでも可)
-入れた方が望ましい機器・ 冷蔵庫(プレハブで第一次処理施設からレールが繋がる構造)
・ 電解水生成装置(器具等の洗浄、消毒と個体の消毒)
・ X 線検査機(金属検出機と併用して使う)
7.食肉処理業者の研修
多くの狩猟者(食肉処理業者)は、オレのさばき方は一番と言われますが、実際はその反対
の場合が多いようです。
さばき方の善し悪しが、鮮度や品質に大きく影響します。
プロ級の食肉処理業者のもとで研修を行うことが重要です。
同時に、人獣共通感染症となる病気や寄生虫などの見分け方の研修を行うことが望まれます。
8.販売先
施設の設計段階から、販売先の営業活動を始めましょう。
作ったら売れるだろうといった考えは禁物です。