ザンビア便り第31回 「ナカラ回廊に架かる橋(ルアングア橋)」 ザンビアの首都ルサカから東にグレート・イースト・ロードを3時間走るとルアングア 橋に到着する。途中ルサカ国際空港を通り過ぎるあたりまでは日本が無償援助で整備した 舗装道路だ。そこから周りは田園風景に変わり、そのうちに丘陵地帯を縫うように道は走 り、周りの風景も日本の山間地帯を抜けるような感じで美しい。私はある日、車でこの道 を走り、ルアングア橋を見に出かけた。 この橋がザンビアにとって重要なのは、ナ カラ回廊上にあるからだ。ナカラとはモザ ンビークの港町で、現在日本の協力で港の 整備が進められている。モザンビークの沖 合は石油や天然ガス採掘のプロジェクトも 進められ、日本企業も参画している。この ナカラ回廊 回廊は内陸国であるザンビアやマラウイに とって、物資を海まで運ぶ重要なルートとな る。日本は南部アフリカ開発を地域で進め ルサカ ルアングア橋 ていく方針でこのナカラ回廊周辺の産業開 発、輸送手段の改善に関心を示している。 ルサカから走っていると、それほど交通量はない。見かけるのは大型トラックがほとんど で、ルサカからは銅のプレート、橋の反対側の東部州からはメイズや綿をルサカ方面に運 んでいる。この街道はザンビアの東部州を横断してマラウイ、さらにモザンビークへと続 いている。問題はこの橋の老朽化であるといわれており、私は自分の目で実情を見てきた かったのだ。 橋に到着すると、橋の手前に検問所があり、 係官が常駐している。現在では大型トラッ クは一台ずつしか通していない。重量制限 がしかれているのだ。橋を歩いて渡ると、 路面のひび割れ、ゆがみが肉眼でもわかる。 さらに河原におりて下から見上げてみると 橋の中央部分が少し落ち込んで見える。こ れは安全上問題があり、早急に対策が必要 だと専門家も指摘していた。 専門家の説明によると、この橋は1968年 にデンマークがかけたものだが、橋脚が川 岸に偏っていて、ワイヤーでつっているが 橋の中央部分を適切につり上げられていな いようだ。現在の交通量であれば何とかな るが、将来周辺の開発を進めて、物資の輸 送が増えれば交通のネックとなることは明 らかだ。日本の専門家が言うには、建設当 時としては、画期的な技術だったようだが、 設計に問題があったようだ。しかし、当時 の経緯を示す資料も設計図も残っていない という。仮にこの橋を日本が手がけることが できれば、日本の先進技術で完璧な橋を架け られるとのことだった。 橋の下を流れるルアングア川の水量は例年 に比べてかなり少なく、河原が広く広がっ ている。しかし、周辺はのどかな、美しい 田園風景が広がっている。視察を終え、ル サカに戻る車の中で、このナカラ回廊にか かるシンボリックな橋、是非とも日本の技 術で掛け替えたいものだと感じた。 平成27年8月21日 駐ザンビア特命全権大使 小井沼紀芳
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