★柱のケイは最低 292H(断ち落とし含)で文字の多いときはナリユキでのばす★ 社会学部英語科目における書く活動の試み 石川希美 Abstract The English language curriculum in the Faculty of Sociology,Sapporo Otani University puts emphasis on fostering productive skills such as speaking and writing. It is the first time to implement an essay writing task as part of the regular in-class activities throughout a course for sophomore students. The purpose ofthis paper is to summarize writing activities,and to discuss necessarytreatment and improvement in future courses in order to help students learn more effectively. The CEFR-J descriptors and Eiken CAN-DO list are referred in terms oftarget levels and types ofwriting. The questionnaire results show that the writing act itself as well as thinking was received as most beneficial for students. However,they find it difficult to turn their ideas into English. It implies that writing activities should be done repeatedly on a regular basis as a process of learning. Further research is needed to investigate how their writing style changes and how their experience writing in English serves their learning of the English language. キーワード:英語,ライティング,書く力 はじめに 大学での学びのなかで,学生にとって 書くこと が重要であることに疑問の余地はないだろう。レポートや論 文を始め,あらゆる場面で書くことが求められる。井下(2013)は ある目標やテーマに向かい,問いを立て, え ながら書くプロセスは,一種の問題解決のための行動であり, 造的で発見的なプロセスでもある。それは,学 問の原型であり,深いレベルで える力を鍛えることが期待できる (p.12-13)と述べている通り,大学において 書く ことは学びの支柱的役割がある。 大学生が大学で求められる文章を日本語で 書く 力を身につけているかと言えば,これまで体系的だったもの として教えられていなかったことが認識されるようになった。大学で指導にあたる教員側は, ①何を(What)書 くのか,どのように(How)書くのか,②それをどう指導するか(カリキュラム,指導技術,評価法,組織体制など) (p.4)を共通する課題として捉え,議論されるようになってきた。つまり, えて書くことを大学における目的と して掲げて,一般教育,専門教育といった枠組みをこえて様々な試みが行われ始めている。(関西地区 FD 連絡協 議会京都大学高等教育研究開発推進センター(編)(2013)) それでは,英語教育の枠組みでは, 書くこと の指導にどのように取り組んでいくことが可能なのだろうか。 まずは,大学入学前の高 での英語ライティングの状況,大学生を対象にした英語ライティングの研究結果,ラ イティングに関する指導・評価の枠組みなどを参照していく。本稿では,今年度の社会学部 英語 と 英語 において,英語で書く活動を1年間通じて実施したのは今年度が初めての試みであるため,英語で 書くこと を 指導するという観点で,その実践内容をまとめていき,上記の①,②の点から,今後の課題を 察していく。 1. 背景 1. 1.社会学部地域社会学科の英語カリキュラム 1年生から4年生まで4年間を通じて英語科目を履修できるカリキュラムになっている。特に,下位学年(1, 2年)英語のカリキュラムでは, 話す も,1年生8単位,2年生8単位 書く といった産出技能(productive skills)を重視している。開講単位数 を設けており,ほかの外国語科目を開講していないため,英語に特化した手 厚い配置となっている。 今回 書く 取り組みを行ったのは 英語 と 英語 で,2年生を対象とした科目である。学科ができてから, 平成 26(2014)年度で2回目の実施である。この科目では, 聞く 読む を扱ったテキストを中心に扱うことに なっている。その一方で,授業の活動は上記の英語カリキュラムの目標と齟齬のないよう,受容技能(receptive ★次頁にもノンブル枠あり★ skills)のみに偏らないように,産出技能を指導する取り組みも行うようバランスを工夫する必要がある。 1. 2.学習者の状況 入学者のうち推薦入学試験合格者を対象に,入学前課題として,国語では要約や論述を求める課題,英語では 英語で決められたテーマについて書く(主に説明する内容)課題を与えてきた。その課題の取り組みとその後の フォローとして複数回実施した授業の様子も踏まえ,教員の観察を通じてわかった点は主に3つの内容である。 ⑴日本語の論述などでは,未熟な点があり,書く学習経験が不足している可能性がある。⑵英語で書く課題には, 短い文を並べて書く傾向がある。つなぎ言葉として う語句が and,because,so,but など限定的である。⑶書 いた文章をパソコンに入力させた場合に,個人のスキルの差が著しい。非常に い慣れていて,英文タイピング の知識がある学生がいる一方で,キーボードを ったタイピングやソフトの い方に慣れておらず,英文のフォー マットを知らない学生もいる。例えば,一文ずつ Enter キーを って改行したり,文末のピリオドの前に一文字 あいていたりしたケースがある。(cf.柴田・横田(2013),White & Guest(2014)) また,英語プレイスメントテストでは,入学生の英語のレベルは,英検2級レベル2%,準2級が 10%,3級 レベルかそれに達していない学生もいる状況である(柴田,2014)ことがわかり,英語の基礎的な内容に十 習熟 していない可能性が 2. 英語で書くこと えられた。 2. 1.高 学習者の傾向と目標設定 レベルでの書くこと 現在の大学生が高 時代に われているのは,平成 11(1999)年改訂の高 学習指導要領である。これには ライ ティング の科目について,目標として 情報や えなどを,場面や目的に応じて英語で書く能力を に伸ばすと ともに, この能力を活用して積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる。ことが明記されている。 言語活動としては, 生徒が情報や えなどの送り手や受け手になるように具体的な言語の 用場面を設定して, 次のようなコミュニケーション活動を行う とあり,概要や要点を書くことの他に, 聞いたり読んだりした内容 について,自 の えなどを整理して書く と 自 が伝えようとする内容を整理して,場面や目的に応じて,読 み手に理解されるように書く とある。 指導上の配慮事項には, 文章の構成や展開に留意しながら書くこと ,また言語の 用場面と働きにについて 手紙や電子メールなどの言語の 用場面を取り上げ, 実際にコミュニケーションを体験する機会を設けるよう配 慮する こととある。内容の取扱いには 言語材料の学習だけにとどめず,情報や えを伝えるために書くなど, 書く目的を重視して指導するものとする。その際,より豊かな内容やより適切な形式で書けるように,書く過程 も重視するよう配慮するものとする とあり,学習者に 何のために書くのか という目的を意識させる工夫や,プ ロセスアプローチを用いた指導を行うことが書かれている。英語で書くことについて,いわゆる和文英訳のよう 1 平 成 21(2009)年 に 改 訂 さ れ た新学習指導要領では,ライ ティング という単独科目で な一文単位ではなく,自 はなくなり, コミュニケー ション英語 , 現 , る。例 え ば, コ ミュニ ケー ション英語 で 聞いたり読 んだりしたこと,学んだこと や経験したことに基づき,情 報や えなどについて,簡潔 に書く ,また コミュニケー ション英語 で 聞いたり読 んだりしたこと,学んだこと や経験したことに基づき,情 報や 高 , 英語表 の科目の中で扱われ えなどについて,まと まりのある文章を書く とあ るように,技能を他の技能と 統合させて育成する科目構成 になり,ライティングでは文 章を書く目的などを明確にし て,内容の一貫性を重視して 書くことが示されている。 の主張したい内容を整理してある程度の長さの文章を書くことを目指しているとわか る。 を 生の実態としては,ベネッセの行った東アジア高 英語教育 GTEC 調査 2006では,高 生が日常的に英語 う経験は限定的で,その中でも書く経験は少ない傾向であることがわかった。また,英文を書く問題では, 平易な語彙を うな説明が不十 って,短い文をつなげて えを表現しているため,得点は比較的良いが,読み手の理解を促すよ であることが指摘されている。一定時間に書ける 量が増えること,つなぎ言葉,内容を整理 して構成していくことが課題と挙げられている。 Kobayashi & Rinnert(2002)の研究では,日本語で書くことについて,国語の授業で文章構成などは習ってい て知識はあるが,書く経験をあまりしてきていない場合があり,一方では,大学入試対策として,授業以外で集 中的に小論文の個人指導を受けたことがある学生もいることが いる学生は, かっている。日本語で小論文の書き方を習って えや意見をはっきりと論理的に述べることを教わっており,英語で書く場合にも学んだことを活 用できるだろうと述べている。 最近の大学入試の傾向として,自由英作文の出題が増えている傾向がある。内容については, 与えられたテー マについて自 社会学部英語科目における書く活動の試み の意見を英語で表現するといったお決まりのものから,英文および日本文資料や表・グラフにつ いての紹介を要求するなど,そのヴァリエーションも年を追って豊かになっている (鈴木(2014),p.34)と指摘さ れている 。大学入試は高 生全体の平 で Kobayashi& Rinnert に倣って えられる。学習者が高 的な状況を示すものではないかもしれないが,学習者の経験を える上 えれば,入試対策として集中的に英文を書く練習を積むといったことも十 時代に英語で書くことについてどのような経験をしてきたかはひとくくりにしては言 2 自由英作文の入試問題が増え てきている状況の一端には, 文科省が設置した 外国語能 力の向上に関する検討会 の まとめた 国際共通語として の英語力向上のための5つの 提言と具体的施策 の提言5 えないだろう。 で,大学入試について 2. 2.日本人学習者を扱ったライティング研究 こと 大学生の場合 話す 書くこと といった発 表技能も含めた4技能をバラ 日本人学習者を対象にした研究,特に大学生を対象にした研究では,研究の観点は多岐にわたるが,ライティ ングのタスクには,論証文(argumentative essay)を書かせたものが多く見られる。(Oi et al.(2000),Hirose ンス良く問うよう,入試問題 を改善する必要がある との 影響もあると えられる。 (2003),Wakabayashi(2006))Oi(1999)は,日本人学生の論証文の特徴として,⑴ being hesitant in making a claim and being indecisive in reaching a claim,⑵ being inconsistent about the claim, and,⑶ lacking support(p.98)の3点を挙げており,これらは主張の弱さや論理の組み立て方が,読み手に十 納得いくものと伝 わらないと判断され,負の評価につながる要素である。大学生への書くことの指導には 論理的に説明すること , つまり①相手にわかりやすく伝える(納得してもらえるような説明をする)ために,②内容を整理してまとめる力 3 Shultz(1991)は,1)descriptive(描 写)2)narrative(語 をつけるトレーニングの必要性をうかがわせる結果である 。 り)3)expository(解 説)4) 2. 3.大学レベルでの英語ライティングの目標 argumentative(論証)という 4つの文章モードにおいて, CEFRJ と英検 CANDO リスト 大学入学時には,英語で書く場合にどのようなことができる力があると えればいいのか,また大学では英語 で書くことについて,どの程度のことができるようになることを目標にするのか。この2点を える上で,CEFR- J と英検 CAN-DO リストを参照していく。 描写文,語り文,解説文では 幼 少 期 か ら 用 い る 基 盤(infrastructure)と 変 わ ら な い 直線的な認知プロセスをたど るが,論証文では,他の3つ のモードとは異なり,認知力 の構成要素を複数の次元で合 2. 3. 1. CEFRJ わせていく力が必要で,複雑 CEFR-J は,欧州で開発された 外国語の学習,教授,評価のためのヨーロッパ言語参照共通枠(Common European Framework of Reference for Languages:Learning, Teaching,Assessment.) (以下 CEFR)に準拠しな な認知プロセスをとることを 取り上げ,その違いが論証文 の難しさであると論じてい る。 がら,日本の英語教育環境に特化して開発されたものである。CEFR は,共通参照枠として外国語教育に関わる 学習者,教師など立場の異なるものが共通の尺度を持つことを目的として作成されている。最初は CEFR の枠組 みは, 評価 のために用いられることが多かったが,現在ではカリキュラムやシラバス開発など 指導や学習 の ためにも利用することが推奨されている。なお,CEFR-J は,指導にも評価にもどちらにも活用できるものという 視点に立って作成されている。(投野(2013),p.93) CEFR では,参照レベルが大きく3レベル(A,B,C)あり,その中でそれぞれ2つに けて合計6レベルで 構成されている。しかし,日本人学習者に合わせた場合には,約8割がAレベルの初級者相当になり,また同じ Aレベルの中でもそれぞれの学習者ができることには幅があるとして,レベルをより細 化したものが作られた (表1)。 日本人学習者の平 的英語力について, CEFR の6段階評価では,中学 3年間はすべて A1,高 3年間が すべて A2 になると想定されている,理想的には,高 ,大学レベルで B1 さらに B2 まで達するよう学習,指導 することが望ましいであろう (p.255)とされている。 それでは,それぞれのレベルではどのような違いがあるだろうか。CEFR は,スキルを 読むこと 聞くこと 話すこと(やりとり) 話すこと(表現) 書くこと という5つに 類して,それぞれの熟達度が CAN-DO リス 表 1CEFR と CEFRJ のレベル Basic User (基礎段階の 用者) CEFR CEFR-J Pre-A1 Independent User (自立した 用者) Proficient User (熟達した 用者) A1 A2 B1 B2 C1 C2 A1.1 A1.2 A1.3 A2.1 A2.2 B1.1 B1.2 B2.1 B2.2 C1 C2 投野(編)(2013)p.25,p.94を参 にして作成 石川希美 トとしてまとめられている。また CEFR-J でも同じようにそれぞれのスキルについてレベルごとに熟達度が示さ れている。 ここでは, 書くこと について CEFR と CEFR-J の内容を,特に,高 生・大学生のレベルとして想定される A2 から B2 までを取り上げていく。CEFR-J の CAN-DO リストは表2の通りである。 CEFR の 書くこと に関する表記からは,A2 レベルでは, 社会的機能を遂行するために書き言葉を い始め る (p.257)こと,B1 レベルは, 身近で個人的な関心のある話題について,つながりのある結束性のあるテクスト で,私信で経験や印象を書く (p.258)こと,B2 は, 興味関心のある 野での話題について明瞭で詳細な説明文を 書け,エッセイやレポートでは情報をつたえるだけでなくしっかりと意見の根拠も書くことができ,手紙の中で 実体験について自身の意義を書く ことができるという特徴がある。レベルが高くなるにしたがって,文章構成に は結束性があり,論理的に説明することに関わる内容が含まれてくる。 CEFR-J では,A2 レベルは, 短文にとどまっていたのが,簡単な接続詞を ってまとまりのある文が書けるよ うになってくる (p.257),B1 レベルは, 結束性のあるパラグラフ・ライティングの基礎が身についてくる (p. 258),CEFR-J の B2 は B1 までとは異なる新たな高い言語意識が持てる段階に達したレベルであり,仕事や日常 生活が英語環境であっても,たいていのことにはほぼ対応できる自立した英語 用者がレベル特徴といえる (p. 260)とされている。 実際に指導するうえでは, B1 レベルに達するかどうかが,書くことの指導では1つのめやすになるであろう (p.261)と述べられており,大学生では,B1 か B2 レベルに達成するような学習・指導を期待されていて, 書く 4 小池(編)(2013)では,大学の 英語教育への提言として,大 こと の指導においては,非常にクリティカルな部 を担う 。 学卒業時の英語能力を CEFR で B2 レベルに達して ほしいとしている。 表 2 書くこと について CEFRJ の CANDO リスト(A2.1から B2.2) レベル 書くこと A2.1 日常的・個人的な内容であれば,招待状,私的な手紙, 文と文を and,but,because などの簡単な接続詞でつ メモ,メッセージなどを簡単な英語で書くことができ なげるような書き方であれば,基礎的・具体的な語彙, る。 簡単な句や文を った簡単な英語で,日記や写真,事 物の説明文などのまとまりのある文章を書くことがで きる。 A2.2 身の回りの出来事や趣味,場所,仕事などについて, 個人的経験や自 に直接必要のある領域での事柄であ れば,簡単な描写ができる。 B1.1 自 に直接かかわりのある環境(学 ,職場,地域など) 身近な状況で われる語彙・文法を用いれば,筋道を での出来事を,身近な状況で われる語彙・文法を用 立てて,作業の手順などを示す説明文を書くことがで いて,ある程度まとまりのあるかたちで,描写するこ きる。 とができる。 B1.2 新聞記事や映画などについて,専門的でない語彙や複 雑でない文法構造を用いて,自 の意見を含めて,あ らすじをまとめたり,基本的な内容を報告したりする ことができる。 物事の順序に従って, 旅行記や自 ,身近なエピソー ドなどの物語文を,いくつかのパラグラフで書くこと ができる。また,近況を詳しく伝える個人的な手紙を 書くことができる。 B2.1 自 の専門 野であれば,メールやファックス,ビジ ネス・レターなどのビジネス文書を,感情の度合いを ある程度含め,かつ用途に合った適切な文体で,書く ことができる。 そのトピックについて何か自 が知っていれば,多く の情報源から統合して情報や議論を整理しながら,そ れに対する自 の えの根拠をしめしつつ,ある程度 の結束性のあるエッセイやレポートなどを,幅広い語 彙や複雑な文構造をある程度 って,書くことができ る。 B2.2 自 の専門 野や関心のある事柄であれば,複雑な内 容を含む報告書や論文などを,原因や結果,仮定的な 状況も 慮しつつ,明瞭かつ詳細な文章で書くことが できる。 感情や体験の微妙なニュアンスを表現するのでなけれ ば,重要点や補足事項の詳細を適切に強調しながら, 筋道だった議論を展開しつつ,明瞭で結束性の高い エッセイやレポートなどを,幅広い語彙や複雑な文構 造を用いて,書くことができる。 聴いたり読んだりした内容(生活や文化の紹介などの 説明や物語)であれば,基礎的な日常生活語彙や表現を 用いて,感想や意見などを短く書くことができる。 出典:投野(2013) 社会学部英語科目における書く活動の試み 2. 3. 2. 英検の CANDO リスト もう一つ参照していくのが,日本英語検定協会では実用英語技能検定(英検)レベルごとに示されている CANDO リストである。この CAN-DO リストは,英検の各級の合格者が,英語を う上でどの程度のことができるか について調査し,その結果に基づき表記してあるものだ。準2級,2級,準1級の CAN-DO リストの中から, 書 くこと についてまとめると,以下の表3の通りである。 表 3英検 CANDO リスト 書くこと について(英検準2級,2級,準1級) 準2級 興味・関心のあることについて簡単な文章を書くことができる。 ・自 の将来の夢や希望について,書くことができる。(訪れたい国,やりたい仕事など) ・自 のお気に入りのも,身近なものを紹介する簡単な文章を書くことができる。(自 のペット,好きな本な ど) ・短い手紙(Eメール)を書くことができる。(友達やペンフレンドへの簡単な手紙など) ・簡単なお知らせを書くことができる。(パーティの日時や場所,文化祭の日程など) ・簡単な予定を手帳やカレンダーなどに書き込むことができる。(例:M eet Yoko at the station at ten /Go shopping with Jill) 2級 日常生活での話題についてある程度まとまりのある文章を書くことができる。 ・印象に残った出来事について,その内容を伝える文章を書くことができる。(学 ・自 の学 行事,旅行など) (会社)を紹介する簡単な文章を書くことができる。 ・住んでいる地域を紹介する簡単な文章を書くことができる。 ・自 が読んだ本や見た映画について,自 の感想を書くことができる。 ・ある程度の長さの手紙(Eメール)を書くことができる。(ホームステイ先や友達への近況報告など) 準1級 日常生活の話題や社会性のある話題についてまとまりのある文章を書くことができる。 ・興味・関心のあることについて,説明する文章を書くことができる。(簡単なレシピ,器具の い方など) ・興味・関心のある話題について,聞いたり読んだりした内容の要約を書くことができる。(講義の内容,雑誌 や新聞の記事など) ・日常生活の身近な話題について,自 の えや意見を書くことができる。( 食事と 康 など) ・日本の文化について紹介する簡単な文章を書くことができる。(食べ物,祝日,お祭りなど) ・自 がやりたいと思っていることの説明や理由を書くことができる。(留学や入社の志望動機など) ・自 の仕事や専門 野の内容であれば,注文や問い合わせに対して簡単な返事を書くことができる。 出典:実用英語技能検定 CAN-DO リスト 英検 CAN-DO リストからは,2級で示された内容について,学習者が できる という認識を持てるかが目安に なりそうだ。ここでは,自 に関連のあるトピックについて,自 の経験や知識などを書けるかどうかが取り上 げられる傾向がある。また,英検と CEFR レベルの関連では,英検準2級は A2,2級は B1 といわれている。ま た,英検 CAN-DO リストは学習者の持っている自信の度合いを表記しているものなので,指導していく内容とし ては,上級レベルの中身も参 になる。 3. 本学での英語で 書く 活動 英語で書く活動について,1年間を通じて実施したのは今年度が初めての試みである。毎回の授業の流れは, 週1回 90 授業のうち約 40 程度を書く活動に当てた。科目としては,週2回の授業であるが,担当者2名で それぞれ1回ずつ担当している。1.1で述べたとおり,カリキュラムとして,4技能にはバランスよく取り組むよ うに,指導内容や活動について教員間で 担したり,協力するなどで工夫している。 英語で書く活動を行うにあたっては,英検2級の CAN-DO リストの内容についてどの程度できるかどうかを 足掛かりにしながら,CEFR の CEFR-J の B1 レベルに書かれているようなパラグラフ・ライティングができる方 向性を目指すことが,学生の実情に照らしてもよいだろうと判断した。具体的には,自 のことや身近なことを テーマにして文章を書くことから始めて,英語で書くことに慣れていき,徐々にパラグラフ・ライティングがで きるような段階を追った指導の流れを組み立てることにした。最後に,初年次の英語教育で 話すこと を重点的 石川希美 に扱っていることを活かして,最終課題は口頭で発表することとした。 トピックとして,身近で自 と関連ある,または自 が知っていることに関連する内容を扱うことを念頭にお き,前期には,学部の特性を生かして,地域社会に関連する北海道の名所,名産品・名物,イベント(お祭りなど) を説明することに取り組むこととした。最終課題として,大学や学部や地域社会に関わる内容の紹介をする文章 を,3人グループでそれぞれの書いたものをまとめるか,個人として作成することとした。後期は,お気に入り の場所,思い出に残る経験,ボランティア活動,最終課題では外国語教育と学 教育というテーマを設けた。特 に,後期では,主張に対して必ず根拠となる理由・事例や,必要であれば外部データなどを参照・引用して書く ことに留意させた。また,それぞれテーマの中でも,非常に具体的にトピックを与える場合と,自由に えても らう場合をもうけた。例えば,ある週は よさこいソーラン祭り について紹介し,別な週では 北海道内の行事(祭 りやイベント) について(これまで書いた内容とは別なものを)1つ紹介するといったものである。これは,似た テーマについて書くことで,語彙や表現を繰り返し はあるが自 で選んだテーマで書くことで 自 用する機会になるだろうという意図と,決められた範囲で の言いたいことを表現する ことに取り組ませていく意図があっ た。 Nation(2013)は,ライティングのプロセスを7つの段階に けていて,書く目的を決める(Deciding on the writing goals),読み手はどのような人かを 慮する(Thinking of who the reader will be), えを集める (Gathering ideas), えを整理する(Organising ideas), えたことを書く(Turning the ideas into written text),書いたことを見直す(Looking back over what has just been written),書いたものを編集・修正する (Editing and correcting the writing)という構成を紹介している。このように段階を踏んで書くにあたり,この 授業では,教師側で読み手を設定して,基本的に 学生本人のことを知らない人(例:海外に住んでいる大学生) に読んでもらうものとした。熟練した書き手は,読み手がどのような人かについて注意を払って書いていること が指摘されている(Weigle, 2002)が,EFL 環境では,ある意味 身内 であるクラスメートや先生が読み手だと 思って書いてしまう。そのため,同じ文化やコンテクストを共有している部 の少ない 他者 に宛てて書くこと をあえて想定することとした。それは,日本語文は読者に判断をゆだねる(reader-responsible)傾向があること (Hinds,1987)にも配慮して,言わなくても伝わると思う可能性を低くして,書く側ができるだけ書いて伝える必 要があると意識してもらうためでもあった。また,書く内容を えるときにも, 何をどの程度書くのか 読み手 に必要な情報や説明は何か に集中して えることができるだろうと判断した。 また,ブレインストーミング,マッピングなどを実践したり,つなぎ言葉などの表現を示した。フィードバッ クは,教師からのフィードバック,ピア・フィードバックを行った。書く作業は授業の中で行い,学生がどのよ うに書いているかを観察し,それについてもフィードバックを行った。このようにして,書く活動の 循環的プロ セス (臼井,2012)を体験させることに取り組んだ。 4. 今後の課題 本稿では,英語ライティング研究で得られた知見や,大学生の英語で書くことを指導するうえで CEFR-J や英 検 CAN-DO リストを参照しながら,本学での実践をまとめてきた。学生へのアンケート結果を紹介し,英語で書 くことを指導するうえでの今後の課題について 察していく。 前期と後期の両方の授業を受講した 15名を対象に, 授業終了時期に英語で書く活動に関するアンケートを実施 して,10名から回答が得られた。 じて大きな数ではないものの,今後の取り組みを える上で参 にしていき たい。質問項目は 21項目からなるが,ここでは4点について取り上げる。一つ目は, 英語で書く活動を通じて, あなたにとってためになったと感じたこと の質問(選択,複数回答可)で, 自 で書く作業,書き直しをする作 業をしたこと (8名), 自 でテーマや内容を える作業をしたこと (7名), 自 で語句・表現を探す作業を したこと (6名)と,いずれも 書くこと そのものに関する内容が上位を占めた。これに 書き方や形式を習った こと (5名),先生からのフィードバックがあったこと (4名),必要な語句や表現を授業で習ったこと (3名), クラスメートからフィードバックがあったこと (1名)と続いた。次に, あるテーマについて英語で文章を書く ことについて,今のあなたはどの程度できますか と言う質問で,英語で文章を書くことについての自信度を尋ね た。4つの選択肢から1つを選ぶ形式だったが,回答は2つの選択肢( 短い簡単な内容なら,なんとか書ける (8 社会学部英語科目における書く活動の試み 名), ある程度の長さのものでも,話の流れや構成を押さえてまあまあうまく書ける (2名))に集中した。三点 目は, 英語で書くのが困難だと思うのはどのようなところですか の質問で, 言いたいことを,どう英語で表現 していいかわからない (7名),言いたいことが思い浮かばない (1名),参 にできるモデル文がない (1名), 話の流れや構成を えるのが難しい (1名)という結果になった。四点目は 英語で文章を書くうえで,参 にし たものは何ですか の質問(選択式,複数回答可)で,辞書や翻訳サイトなどどのようなものを利用したかを尋ねた ところ, 翻訳サイト (8名), 英和辞書サイト (5名), 和英辞書サイト (5名), 和英辞書(電子辞書) (5名), 英和辞書(電子辞書) (4名)となった。学生が授業時に持参するのは電子辞書であり,また授業はパソコンが える環境で実施していることから,このような結果になったのだろう。具体的にどのようなサイトを利用してい るかは, Google 翻訳 (7名), Weblio(翻訳,英和辞書,和英辞書) (5名), 英辞郎 (2名), エキサイト翻 5 サイトの 用については,議 訳 (1名)となった 。 論の余地があるかもしれな この結果からは,英語で書くことについて, 量や程度,適切さについて設問自体に明確ではない点があるが, い。この授業の中では,学生 全員が英語で (多少は)書ける という肯定的な態度を持っている結果が得られた。プロセスを踏みながら,継続 の様子を観察しながら指導を していくほうが適切だろうと 的に取り組むことが効果的に働いた可能性がある。しかし,実際に英語で文章を書くときには,日本語で言いた 判断した。最初は,単純に日 いことはあるが,英語にして書くには 英語で何というのか にまだまだ困難を感じている学生が多いこともわか けた,いわゆるコピペのケー る。電子辞書やサイトなどデジタル媒体の辞書を活用しながら,なんとか書いている。 える語彙や表現が十 本語を英語に翻訳して貼り付 スも見られたが,徐々に翻訳 サイトの い方にも変化が見 備わっていない可能性や,与えられたトピックに関する語彙や表現を ったことがない可能性もあるだろう。こ られた。特に,日本語文を英 の点では,語彙の指導を工夫すること,読むことによるインプットを増やす方策,読むものと書くものの関連性 その英文を日本語に翻訳しな を持たせること(Hirvela, 2004)などが検討課題だ。 おす(back-translate)作業 を して,自 の伝えたかったこ 最後に,最初に掲げた二つの問い(何をどのように書く,どのように教えていく)に関して ケート結果を参照すると, 察していく。アン えて書く に前向きな回答を得たものの, 英語でどう表現するか には一番苦労し ている様子であるため, 書く ことは継続的に実践していく必要性が高い。また,英語で書く活動を通して,学 生自身は書くプロセスを体験したことを有益だったと評価している。 語に翻訳させた後で,さらに とを伝えている文なのか,文 を見直すようになった。その ため,一律に翻訳サイトを 用不可にするよりは,どのよ うに っていくことができる かを学ぶ学習機会と捉えるこ とにした。 英語ライティングに関する研究や調査を通じては,英語で書く経験そのものが少ないことや,書き手の主張が 弱く読み手を十 説得できるように書けていないことがわかっている。授業でのタスクは,説明を目的としたタ スクに始まり,後期には主張と根拠を述べることにつなげていったが,今後は 自 の言いたいこと(意見・ え) を述べる ことから, 説得力のある文章の組み立て で 読み手に伝わるか という点で指導・評価するよう取り組 んでいけるかが課題になるだろう。今回の取り組みについては,学生の書いた文章を 析することが急務である。 また,授業開始時にはこれまでの書くことの経験を調査するなど,より細かに教員が学生の状況を把握するほか, タスクに見合った評価(学習者の自己評価,教師の評価)をするうえで,今後ルーブリックの開発も検討していき たい。 参 文献 ベネッセ教育 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