腹腔鏡下胃切除術の進歩 山陰労災病院外科 山根 成之(やまね なりゆき) ������ 2015. 1. 29. 胃がんに対する腹腔鏡下手術の症例数 最初の手術 保険適応 2013年:胃がん手術の34%が腹腔鏡下手術 腹腔鏡下手術の長所 1. 美容上、傷跡が目立たない (傷の長さが5~7cm)(開腹は16~20cm) さらに小さくなり3cmでも可能となった 2. 術後の疼痛が少ない 3. 手術侵襲が少ない 4. 早く歩くことが出来、早く退院できる 腹腔鏡下手術の短所 1. 手術時間(麻酔時間)が長くなる 開腹手術に比べ1.5~2倍 2. 手術操作が難しい 開腹手術は3次元だが腹腔鏡下は2次元での操作 直接、術者が臓器に触れない 3. 気腹下での長時間手術のため心臓、肺への 負担がかかることもある (心、肺の併存疾患ある高齢の方は要注意) 胃がん治療ガイドラインでの 腹腔鏡下胃切除術の位置付け 1. 日常診療としての推奨ではない 2. 早期胃がんに対する臨床研究的治療 多症例での安全性(術後合併症、死亡率)、 長期予後(5年生存率)に関して標準治療の開腹術と 比較して同等か、それ以上良いとゆうエビデンス(証拠 となる有用なデータ)は 、現時点ではない 3.日常診療の選択肢となりうる治療法 日常診療で推奨される進行度別治療法 胃がんに対する術式(主なもの) (切除範囲による分類) 1.胃全摘術 2.幽門側胃切除術 3.幽門保存胃切除術 4.噴門側胃切除術 1)定型手術:(T2以深, N(+)) ��2/3以上の切除かつD2リンパ節郭清 胃全摘術, 幽門側胃切除術 2)縮小手術:(T1, N0に限る)� 2/3未満の切除あるいはD1, D1+リンパ節郭清 胃全摘術, 幽門側胃切除術, 幽門保存胃切除術, 噴門側胃切除術 3)拡大手術:(多臓器浸潤あるが治癒切除望める) 膵体尾部合併切除など 腹腔鏡下手術の実際 モニター 炭酸ガスで気腹 (おなかを膨らます) 手術室での配置 数年前の腹腔鏡下手術 小開腹創 (約5~7cm) 5カ所の小穴 (0.5~2.0cm) 最近の腹腔鏡下手術 小開腹創 (約3cm) 5カ所の小穴 (0.5~2.0cm) 胃周囲の血管処理の順番 ⑤ ④ ① ② ③ 手術創の違い 数年前の腹腔鏡下手術 上腹部5cm 最近の腹腔鏡下手術 臍部3cm 胃がん以外での腹腔鏡下胃切除対象 胃粘膜下腫瘍(SMT)の分類 消化管間葉系腫瘍 悪性リンパ腫 異所性膵 消化管嚢腫 血管性腫瘍 脂肪腫、線維腫、 カルチノイド GIST(消化管間質腫瘍): 80-90% 平滑筋腫瘍:10-20% 神経鞘腫:-5% 腫瘍径2-5cm:腹腔鏡下胃切除対象 5cm超:開腹手術 GISTと癌の違い 腹腔鏡下胃部分切除術の創 臍部2cmの創から標本摘出 胃がんの病因 1. ヘリコバクター・ピロリ菌感染 感染してない人の約5倍の発癌率 2. たばこ すわない人の約2倍の発癌率 3. 食生活 4. 遺伝 ヘリコバクター・ピロリ菌感染 2014.9月WHOの専門組織の国際がん研究機関(IARC) 胃がんの8割がピロリ菌感染が原因である。 ピロリ菌除菌で胃がんの発症を3-4割減らせる。 との報告。 今後、がん検診でのピロリ菌抗体検査を採用するか、検 討が進むであろう(現時点では胃カメラで胃潰瘍などの 診断ついてから)。ペプシノゲン検査も検討中。 からだに優しい胃がんの治療 「腹腔鏡下胃切除術」 を受けるために必要なこと。 症状がなくても胃がん検診をうけること 1. 早期胃がんで見つかることが必要 2. 胃粘膜下腫瘍も5cm以内で見つかる ことが必要 胃がん検診のおすすめ 1. 早期胃がんの約半数は無症状 2. 胃がん検診で発見された早期がん率は約80% 発見率0.34%(胃カメラ:0.39%> 胃透視:0.22%) 3. 切除例のうち内視鏡切除が約40%を占める 4. 鳥取県H21年度受診率:22.7%(全国平均10.2%) H24年度受診率: 24.6%と増加しているが 国の目標は50%
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