FOCUS 人事担当役員インタビュー ∼女性活躍の推進に向けて∼ 八嶋:大切な人材を確保し続けるために、出産・育児に関して法 女性部下を持つ上司は、女性の活躍に関する歴史的な背景や、 定を超える制度面の充実を図り、働き続けやすさへの十分な配 女性特有のライフイベントへの対処を視野に入れることから、部 慮に努めています。 また、入社後数年してキャリアを積み一番成 下の仕事の割振りなどで過去多少遠慮があったことは否めませ 長できる時期にライフイベントを迎え2∼3年休職する可能性を ん。ついては、 まず上司に対しては、女性部下に対する配慮は必 見越し、比較的早い段階で営業職を経験できるような配慮も 要ですが、育成の観点からは業務上の遠慮は不要であるという 行っており、復帰後担当する業務の選択肢が狭まらないように 考えを啓発していきます。 心がけています。 また私が昨年訪れた女性活躍先進国のスウェーデンやノル また、 2014年度には配偶者の海外赴任に帯同するために一旦 ウェー企業では、特に女性社員は一人ひとりの “Awareness” (気付き:私には十分できる力がある) が大切だと関係者が異口 設しました。そして女性管理職主導の 「Women’ s Initiatives (通 同音で語っており、そのために女性社員向けの気付きのセミ 称:WI) 」 も大切な活動です。WIでは、 これまでもさまざまなセミ ナーを定期的に実施するなどしている事例も多々あるとのこと ナー企画や、 グループ会社も含めた女性管理職のネットワーク創り でした。当社グループとしても女性社員に対する期待を上司を など、 女性の活躍推進につながる活動を進めてきましたが、 会社と 通じて、 また研修の場で積極的に伝えるなど、女性の活躍に向 してもより一層サポートしていきたいと思います。 けて、女性社員一人ひとりの “Awareness” を醸成し、個々の能 安全運航 退職しても、 4年以内であれば再雇用の機会を提供する制度も新 CSR と日々思いを巡らせながら業務に取り組んでほしいと思います。 特集 りますが、 どのようにお考えでしょうか。 力を十分発揮するための環境づくりやサポートに全力で取り組 郡山:最後に、 さらなる女性活躍に向けて、社員に期待すること んでいきます。 コンプライアンス をお聞かせください。 当社ではダイバーシティーという言葉が現在のように一般 的になる前から、国籍や性別、年代を問わず、世界中の優 秀な人材を積極的に起用・登用し、ダイバーシティーを推進 してきました。女性活躍についても、改めてその重要性を認 識し、 その推進力を加速させようとしています。 (中央) 執行役員 人事部担当 八嶋 浩一 [インタビュアー] (右) 総務部 部長代理( 「Women’ s Initiatives」 代表) 郡山 やよひ (左) 経営企画部 CSR・環境室 主任 井岡 綾子 八嶋:まず、当社グループでは人材育成の骨太方針として、 社員一人ひとりが自律自責マインドを持って行動して欲しいと 考えています。 “自律自責マインド” とは 「難題に直面しても、常に 当事者意識を持ち解決策を見出し、関係者と協調しつつその解 というように、女性活躍の場は確実に拡がっています。 そうしたなか、女性管理職と若手女性社員の2名が、異な 決策を実践するマインド」 のことで、その点では、女性社員も男 る立場で人事担当役員に女性活躍の必要性や今後の取り 井岡:当社グループにおける女性活躍の 男女問わず社員に対しては、与えられた仕事をこなすという姿 組みの方向性についてインタビューしました。 必要性、意義についてお聞かせください。 勢ではなく、改めて自律自責マインドを持って、常に自分の仕事 人材育成 性社員も区別はありません。 がどんな位置付けにあるのか、他に自分のできることはないか、 八嶋:当社グループ全体にとって、最も重 含めたダイバーシティーの現状認識につ 要な経営資源は人材です。そして多様な人材が性別や国籍に拘 いてお聞かせください。 らず、能力や個性を発揮し成果を産み出すことのできる組織を創 ることこそが、私たちの競争力の源泉です。特に日本においては 子どものころ船に魅せられ、神戸商船大学 (現・神戸大学) に入学しました。留学で英会話力を磨き、2004 八嶋:まず前提として、当社では採用基準や育成方針、 異動や配 中長期的に人手不足が懸念される状況下、社員一人ひとりが持 年当社初の女性航海士として入社しました。困ったり不利だと思ったりすることはありません。船内は階級 置など、性別による区別は一切ないということを、現在の基本的 てる力をフルに発揮していかねば、厳しい競争社会を勝ち抜くこ 社会で、航海士は管理する立場で、実際の作業は外国人船員が頼りです。ささいなことでも声をかけ、話し な考え方として強調しておきます。現に、グループ全体では、社 とはできません。そうした点から、女性の活躍は今まで以上に重 員・船員の国籍は50ヵ国以上、男女比率も50%前後であり、 ダイ 要な経営戦略です。 バーシティーが進んでいる企業ではないかと思います。一方、商 また、 もう一つ重要な点として挙げたいのは、 リスクマネジメント 船三井単体では、女性比率27%、女性管理職比率6%ということ のポートフォリオです。同質的な人的構成だけによる意思決定よ 香港に本社およびアジア地域管理機能を置くMOL Liner,Ltd.では、 戦略上の重要な決断の多くをマネージャー で、 グローバルレベルと比べますと発展途上の段階と認識してい りも、 さまざまなバックグラウンドや属性を持つ者による意思決 が行っています。26名の女性がマネージャー以上の職位に就いており、 女性管理職の割合は20%に上ります。 ます。当社は1997年度から陸上の女性総合職の新卒採用を開 定の方が多様な価値観を受容しやすく、市場変化への適応力や 始しましたが、 当時入社した女性が着実にキャリアを積み重ね、 ま リスク耐性の点で優れているとの考え方です。 こうした点からも さにいま女性管理職となり、後輩の良きロールモデルとして各現 女性の活躍は重要であると考えています。 商船三井グループ 安全・環境・社会報告書 2015 井岡:女性の場合は結婚や出産、育児などのライフイベントがあ 一等航海士 菅井 夏代 また、同じく香港で代理店業務を展開するMOL (HK) Agency Ltd.の女性統括者が昨年立ち上げたの が 「Women in MOL」 です。これは香港と中国南部の事業所で働く女性社員同士を結び付けるネットワー クで、女性が対人スキルを向上させつつ自分自身や周りへの理解を深められるような研修プログラムなど、 さまざまな活動を行っています。 MOL Liner, Ltd. Director / MOL(Asia)Ltd. General Manager Ms.Connie データ の女性船員が活躍しています。また、海外赴任中の女性も12名 やすい雰囲気づくりをすることが安全な航海につながります。コンテナ船で、定刻通りに入港・出港できたと きの達成感は何ともいえません。 社会貢献活動 場の最前線で活躍しはじめています。 また、本社では、現在11名 29 女性社員からのコメント 環境 郡山:当社グループにおける女性活躍を Or 商船三井グループ 安全・環境・社会報告書 2015 30
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