水酸化リチウム製造を巡る動向

平成27年度第1回金属資源セミナー
水酸化リチウム製造を巡る動向
平成27年6月9日
金属資源技術部-金属資源技術研究所
1
• 水酸化リチウム製造の世界的動向
2
かん水から製品への流れ
リチウム製品の出発
原料は炭酸リチウム。
製品は多岐に渡る
水酸化リチウムは主に
グリース、ただし電池
正極材としても使用
電池用は高純度が要求される
リチウム開発プロジェクト一覧
プロジェクト
資源量/埋
品位
年産規模
名 ( オ ペ レ ー 鉱床タイプ
蔵鉱量
ター)
Whabouchi
28千t
(Nemaska
スポジュメン 27.3 百 万 t(
Li2O 1.53% (LiOH)
Lithium) (鉱石)
埋蔵)
カナダ
Rose
(Critical
Elements
Corp)
カナダ
マイン
CAPEX
ライフ
OPEX
26年
US$3,105/t (
LiOH換算)
Li2O 0.89%
Ta2O5
スポジュメン 24.3 百 万 t
132ppm
26.6千tLCE 17年
(資源)
(鉱石)
411百万US$
開 発 ス テ ー 生産開始年
ジ
(予定)
FS、
環境認可
269百万US$ US$2,900/tLCE プレFS
Kings Valley
(Western
ヘクトライト 27.1 百 万 t(
Li 0.395%
Lithium) (粘土)
埋蔵)
米国
26千tLCE
20年
409百万US$ US$968/tLCE
Mount Marion
(Reed
スポジュメン 14.8 百 万 t
Li2O 1.3%
Resources) (鉱石)
(資源)
豪州
10千t
(LiOH)
8.8千tLCE
20年
83百万US$
<参考>
Quebec
スポジュメン 17.1 百 万 t( Li2CO3
Lithium
(鉱石)
埋蔵)
0.94%
(RB Energy)
カナダ
20千tLCE
12年
207百万US$
US$3,878/t
(LiOH換算)
2017年
2016年Q4
プレFS
2018/19年
プレFS
未定
3,200生産停止
3,900US$/tLCE
2013年
豪州Mount Marionプロジェクト
プロセス
前処理工程
(精鉱を塩酸で溶かす→
不純物除去)
電解工程
• JOGMECが実施した水酸化リチウム
製造に関する試験の成果について
6
試験の背景・目的
 近年需要が高まっているリチウムイオン電池の正極材にはいくつか種類がある中
で、三元系(Co、Mn、Ni)からNiリッチ系正極材が主流となる可能性が高く、そ
の主要成分は水酸化リチウムである。
 現状の水酸化リチウムの製造法は、炭酸リチウムからの変換、もしくは濃縮かん
水に水酸化カルシウム添加するという方法があるが、コストと手間がかかり不純
物が混ざりやすいものである。
 本試験は、現状プロセスより安価かつ高純度の水酸化リチウム製造を目指し、イ
オン交換膜を用いた電解製法を用いて炭酸リチウムから高純度水酸化リチウムを
製造するためのプロセス構築に関する基礎試験を実施するもの。
7
イオン交換膜電解の原理
塩素ガス
(Cl2)
イオン交換膜(重要)
Cl2
+
-
H2
Li +
薄い
LiCl
水素ガス(H2)
水酸化リチウム
(LiOH)
H+
陽極
Cl-
Cl-
陰極
OH
-
陰極室
陽極室
塩リチ
LiCl
水
H 2O
2LiCl+2H2O⇒2LiOH+H2+Cl2
塩化リチウムの電気分解の原理(想像図)
8
DSE電極及びヒーター導入試験
電流: 0.0 A~ 3.0 A
電圧: 1.5 V ~ 4.5 V
投げ込みヒーター温度: 60℃
液温: 60℃
-
+
陽極側にフタをして塩素ガスの拡散を防ぐ
陰極液:LiOH
濃度:
gLi/L
液量:
L
ポンプ流量: 300 mL/h
陰極側
陽極側
ポンプ流量: 500 mL/h
極間距離は、現状の設備の中で
なるべく近づけるようにする。
陰極液:LiOH
濃度: 20 gLi/L
陽極液: LiCl
濃度: 20 g~40 gLi/L
9
DSE電極及びヒーター導入試験
電流(A)
3.5
3.05
3.03
3
3.06
試験結果
60℃(加温)
2.5
2.44
2.42
25℃(室温)
2.33
・DSE電極の導入により、低い電
圧で、たくさん電流を流せるよう
になった。
(予備試験では15 Vで0.5A程度)
2.17
2.09
2
1.91
1.67
1.58
1.5
1.56
1.49
・60℃に加温するとさらに電流値
が上がる事を確認した。
1.11
1
0.86
0.58
0.5
0.32
0.29
0.04
0
0
0.5
1
1.5
0.94
0.77
0.65
0.6
0.54
・陽極側から発生する塩素ガス
を効率的に排出することに成功
した。
0.31
0.15
0.03
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
電圧(V)
10
Li2CO3
水酸化リチウム製造フロー図(平面図)
(月産1,000tを想定)
-将来的な展望(案)-
溶解槽
20m3×4
バッファタンク
20m3×4
イオン交換樹脂
塔 1機
循環槽
50m3×2
HCl
純水槽
真空濃縮槽
20m3×4
バッファタンク
20m3×4
濾過機
LiOH液槽
20m3×4
電解槽
100槽
(1m3/槽)
NaOH
陽極液槽
20m3×4
中和槽
乾燥炉
製品工程
Cl2
脱Cl2槽
20m3×4
試験結果を踏まえた特許申請
 特許出願に向けた手続き

・現在、同種の特許を3種類確認
→ 重複しない内容で新規出願済み。
企業
特許名
内容
1
ケメタル・フッ
ト・コーポレー
ション
高純度水酸化リチウ 恐らくチリでのLiOHを製造する方法を特許申請したもの。
ムと塩酸とを製造す プロセスは複雑であり、設備も大がかりになると考えられる。
る方法
LiClを含むかん水を原料とする。
2
ケー・イー・
イー
水酸化リチウムの製
造方法
炭酸リチウムを原料としている。陽極と陰極の間にカチオ
ン交換膜、アニオン交換膜を交互に並べる。Na、Kイオンの
除去についても言及。
3
アストム
水酸化リチウムの製
造方法
炭酸リチウムを原料とする。バイポーラ膜を使用する。工程
は連続式も可能で、それほど複雑ではない。
我々の試験のウリ
①DSE電極を使用した事
②カチオン膜のみを使用したシンプルな構造である事
③常温下でも製造可能である事を明らかにした事
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