ビルオーナー通信 回復続くオフィス市況。新築には変調感漂うも、 既存

平成ビルディング
ビルオーナー通信
2015 年 冬
回復続くオフィス市況。新築には変調感漂うも、
既存ビルの収益改善はこれからが本番
【概要】
平均空室率の低下と平均募集賃料の上昇が続き回復軌道にある東京のオフィス市場ですが、 新築の大
規模ビルなどでは貸室が埋まりにくいなど一部に変調感がみられます。 一方、 既存ビルについては、 募集
賃料の上昇が継続賃料に波及していくことにより、 これから収益改善が進むものと期待されます。
1. 市況回復が続く東京のオフィス賃貸市場
2015 年 10 月の東京都心 5 区※ 1 の平均空室率 [ 図表 1] は 2008 年 10 月以来 7 年振りに 4.5%を下回り、
平均募集賃料 [ 図表 2] の上昇が続いています。 ※ 1 : 千代田区、 中央区、 港区、 新宿区、 渋谷区
2. 大規模ビルを中心とする新築物件には、空室率上昇など、やや息切れ感
既存ビルは空室率低下が続いていますが、 竣工後 1 年未満の新築ビル [ 図表 1] では空室率が上昇して
おり、 新規供給の集中で市況が軟化した 2012 年前半を上回りました。 新規テナント需要※ 2[ 図表 3] の増加
が少ないことが原因の一つで、 新築棟数 [ 図表 1] が減少しているのに空室率が上昇していることから、 新
築が埋まるのに時間が掛かっているとみられます。 ※ 2 : 当期稼働床面積-前期稼働床面積として算出
3. 平均募集賃料は年率 5%程度で上昇
東京都心 5 区の平均募集賃料 [ 図表 2] は上昇が継続していますが、 前年同月の平均募集賃料と比べた
上昇率 [ 図表 4] は 5%程度で、 2006 ~ 2007 年頃の上昇ペースと比較して緩やかです。
[ 図表 1] 平均空室率の低下続くが、新築は上昇
[ 図表 2] 東京の平均募集賃料は上昇
新築ビルの 東京都心5区の新築ビルと既存ビルの空室率 既存ビルと
総平均の
空室率(%)
空室率(%)
および新築ビル棟数
60
ビル数/新築ビル
空室率/新築ビル
空室率/既存ビル
空室率/平均(%)
50
(円/坪)
主要都市における賃貸オフィスビルの平均募集賃料
13,000
10
12,500
9
12,000
札幌
横浜
大阪
東京(右軸)
東京:
(円/坪)
19,000
仙台
名古屋
福岡
18,500
18,000
17,500
11,000
17,000
10,500
16,500
6
10,000
16,000
5
9,500
15,500
10
4
9,000
15,000
0
3
8,500
14,500
8,000
14,000
40
8
7
30
2009.8
2009.10
2009.12
2010.2
2010.4
2010.6
2010.8
2010.10
2010.12
2011.2
2011.4
2011.6
2011.8
2011.10
2011.12
2012.2
2012.4
2012.6
2012.8
2012.10
2012.12
2013.2
2013.4
2013.6
2013.8
2013.10
2013.12
2014.2
2014.4
2014.6
2014.8
2014.10
2014.12
2015.2
2015.4
2015.6
2015.8
2015.10
20
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
11,500
2010年
データ出所:三鬼商事「オフィスデータ」
[ 図表 3] 新規テナント需要は小幅な増加に
(千坪)
新規需要
30
20
10
2014年
2015年
東京
(%)
6
1
3
0
0
-1
-3
-2
-6
-3
-9
札幌
横浜
大阪
東京(右軸)
-4
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
-20
※新規需要面積は、当期の稼働床面積-前期の稼働床面積。稼働床面積は貸室面積-空室面積。
三鬼商事の空室面積の定義は解約予告分を含むため、 その分稼働床面積が小さく算出される。
データ出所:三鬼商事「オフィスデータ」
-5
-6
仙台
名古屋
福岡
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
1月
4月
7月
10月
-10
2013年
主要都市における賃貸オフィスビルの
平均募集賃料変動率(対前年同月比)
(%)
2
新規需要(6区間移動平均)
40
0
2012年
データ出所:三鬼商事「オフィスデータ」
[ 図表 4] 東京の募集賃料の上昇率は年 5%程度
東京都心5区のオフィスビルにおける新規需要面積
50
2011年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
-12
-15
-18
2015年
データ出所:三鬼商事「オフィスデータ」
4. ビル全体の賃料収入は、募集賃料の動きに遅れて変動
オフィスビルの実際の賃料収入 (本稿で実収賃料という。) は、 従前から入居し賃料改定がなかった継続
テナントが支払う①継続賃料と、 賃料改定があった継続テナントが支払う②改定後の継続賃料、 テナント退
去後に新規入居したテナントが支払う③新規賃料の合計です [ 図表 5 参照 ]。 このうち③新規賃料は一般に
募集賃料の水準に近く、 ②改定後の継続賃料も募集賃料の動向を参考にして決められますが、 ①継続賃
料は賃料収入の多くを占める一方で募集賃料の変動は反映されません。 このため、継続賃料が緩衝帯となっ
て、 実収賃料は募集賃料の変動に対して遅れて動き、 募集賃料が上昇しても実収賃料が上昇するまでには
しばらく期間を要します。 反対に、 募集賃料が下落しても、 実収賃料が減少するまでにはしばらく期間を要
します。 なお、 フリーレント期間が設定されていれば、 その残存状況によっても実収賃料の動きは異なります。
5. 東京都心 5 区に所在する中小型ビルの実収賃料は 2015 年上期に上昇、今後も上昇基調の見通し
J-REIT が東京都心 5 区に保有するオフィスビルのうち基準階面積が中小型※ 3 と大規模のビルで、 実収
賃料単価 [ 図表 6] が 2015 年上期に上昇に転じました。 大型は 2014 年下期に上昇に転じましたが、 2015
年上期は再びやや下落しました。 中小型ビルの実収賃料の上昇は、 東京都心 5 区の平均空室率が低下し
てからおよそ 2 年半、 平均募集賃料が上昇してからおよそ 1 年遅れて生じました。
先に述べた理由から、 今後、 当面の間※ 4 は基本的に実収賃料の上昇基調が続くと考えられます。 ただ
し、 世界金融危機ないしはリーマン ・ ショックのような出来事が生じた場合は別で、 多くのテナントが撤退や
一部床の解約を行い、 下落した募集賃料で空室埋戻しが急速に進むことによって実収賃料が急落する可能
性があります。 また、 今後起こりうる調整局面で、 景気減速やビルの大量供給など下押し要因が重なること
によって募集賃料が大幅に下落することになった場 ※ 3 :
合も、 募集賃料が継続賃料を大幅に下回ることで賃 中小型 : 投資法人が開示した当該ビルの基準階面積が 100 坪未満
料の減額改定率が上昇し実収賃料が下落する可能 大型 : 同、 100 坪以上 200 坪未満
大規模 : 同、 200 坪以上
性があります。
[ 図表 5] 募集賃料とビル全体の実収賃料の違い
※ 4 : 平均募集賃料が再び下落に転じた後、 1 年程度と想定されるタイ
ムラグを経て実収賃料が低下するまで。
募集賃料単価のイメージ
[ 図表 6] 規模別にみた実収賃料単価の推移
・空室が生じた一部の床が対象
・新規募集床に対する
希望賃料の値
・同一ビル比で募集賃料の
変動データが公表される
ことはなく、一定属性の
平均値として公表
・募集期間中、データが
露出されるため、
期間平均の特性も。
J-REITが運用するオフィスビルの契約坪あたり賃料収入実績
(東京:円/坪・月)
東京都心5区・大規模(49)
25.000
(全国:円/坪・月)
16.000
東京都心5区・大型(57)
東京都心5区・中小型(37)
24.000
全国・大規模(東京都心5区を除く)(101)
全国・大型(同)(52)
23.000
全国・中小型(同)(13)
15.000
( )は対象棟数
22.000
21.000
14.000
20.000
ビル全体の実収賃料単価のイメージ
19.000
稼働床全体の
平均
13.000
18.000
17.000
都心5区の
平均空室率が低下(2012年7月)▲
都心5区の平均募集賃料が上昇(2014年5月)▲
16.000
12.000
上期下期上期下期上期下期上期下期上期下期上期
10
11
12
13
14
15
(年)
2010 年上期 (1-6 月) から 2015 年上期 (1-6 月) の間に連続したデータ
が得られる物件を対象。 賃料保証型マスターリースの物件を除く。
出所:都市未来総合研究所
出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」、平均空室率と平均
募集賃料は三鬼商事「オフィスデータ」
(発行:2015 年 12 月)
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