メタボの診断基準/腹囲は「IDF」が最も適切 PSA検診

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No.104(平成 19 年 11 月号)
メタボの診断基準/腹囲は「IDF」が最も適切
I D F ( International Diabetes Federation )、 N C E P
(National Cholesterol Education Program)
、日本の 3 つの
メタボリックシンドロームの診断基準を「久山町研究」での調査
に当てはめ、虚血性心疾患や脳梗塞の発症率を見ると、診断基準
の項目のうち高血圧や脂質代謝の異常、耐糖能異常については日
本の診断基準が心疾患の予測因子として最も適している一方、腹
部の周囲径については、IDFのアジア人向けの基準が最も適し
ていることが明らかになった。九大大学院医学研究院環境医学分
野教授の清原裕氏が、第 28 回日本肥満学会で発表した。
清原氏らは 1988 年から 14 年間、久山町の 40 歳以上の住民
2452 人を対象に、心血管病をエンドポイントに前向きに調査。
この調査を基に今回 3 つの基準を比較した。
診断基準の項目のうち腹囲については、日本の基準(男性 85
cm以上、女性 90cm以上)では、該当者と非該当者で心血管
病の発生に有意に差が見られなかった。一方IDFのアジア人向
け基準(男性 90cm以上、女性 80cm以上)では該当者の相対
危険度は男性 1.9 で有意差も見られた。女性では有意差はなかっ
たものの、該当者の相対危険度は 1.5 だった。
又、3 つの診断基準に該当する人が心血管病を発症する相対危
険度をみると女性では有意に危険度が高かったものの、男性では
優位さは見られなかった。ところが、日本の基準に腹囲のみID
Fのアジア人向け基準を当てはめると、優位さが見られた上、他
の診断基準と比較しても相対危険度は高くなった。
実際の発症率を比較しても、日本基準の腹囲にIDFのアジア
人向け基準を当てはめたものでは、脳梗塞・虚血性心疾患ともに
有意に発症率が高かった。
清原氏はこれらの結果を受け、「メタボリックシンドロームへ
介入する意味はあるが、現在の日本の基準は将来の心血管病を予
測する上で必ずしも適切とは言えず、腹囲の数値を変更した形で
考えていくべきではないか」と結論づけた。
尚、日本肥満学会は 10 月 19 日に会見を行い、腹囲基準につ
いて、日本のみがCTによる内臓脂肪測定に基づいて設定してい
るとして、その数値の妥当性を主張している。
(T.Y)
PSA検診「推奨せず」の波紋
PSAを用いた前立腺癌検診の是非を巡り、厚労省研究班と日
本泌尿器科学会の主張が対立し、2 つのガイドラインが出ようと
している。
9 月 10 日、厚労省の「がん検診の適切な方法とその評価法の
確立に関する研究」斑は、前立腺特異抗原(PSA)検診につい
て「死亡率減少効果の有無を判断する証拠が、現状では不十分な
ので、対策型検診として実施することは推奨しない」とするガイ
ドライン案を発表した。10 月中に正式公表の予定だったが、日
本泌尿器科学会が猛反発して、10 月 31 日現在公表に至ってい
ない。(T.Y)
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…………担当:高田理恵