一流指導者の異なる指導対象におけるコーチング行動の違い

一流指導者の異なる指導対象におけるコーチング行動の違い
高次
智貴(競技スポーツ学科 コーチングコース)
指導教員 北村 哲
キーワード:コーチング行動 ラベリング 指導方法の違い
応事例が特に多く 26.17%であった.ヴィッ
諸言
セル時はチームの伝統やフロント意向と西野
国際コーチ連盟(2008)は,コーチングに
意向が一致せず,自身の考える行動をとれな
ついて,思考を刺激し続ける創造的なプロセ
かったことが伺えた.選手との関係に関わる
スを通して,クライアントが自身の可能性を
「項目 C.
」は五輪時,ガンバ時が多く,チー
公私において最大化させるように,コーチと
ムの戦績が良い事と比例した.指導に際し効
クライアントのパートナー関係を築くことで
果的な指導である「項目 D.」はガンバ時が
あると定義している.上記の定義を基に本研
多く,様々なメニューや戦術指導を行えたこ
究ではコーチング行動を,戦術や技術指導な
とが伺えた.
ど多岐にわたるすべての行動と定義する.
表 1 コーチング行動(マートン 2013)
一流の指導者は,指導するチームや選手が
A
スポーツコーチングの原則
C
行動の原則
変わった際も良い結果を残す要因が一体何な
選手とのコミュニケーション
1
指導哲学の確立
9
選手のモチベーションの向上
2
指導目的の設定
10
選手の行動管理
のか疑問である.
3
コーチングスタイルの選択
11
4
人格の指導
5
多様な選手の指導
D
指導の原則
そこで本研究では,数多くのチームで結果
ゲーム形式のコーチング方法
12
戦術的スキルの指導
B
マネジメントの原則
13
を残している一流の指導者を対象に,異なる
チームのマネジメント
技術的スキルの指導
6
14
人間関係のマネジメント
指導のための計画
7
15
指導対象に対してどのようなコーチング行動
リスクのマネジメント
8
を行っているのか,コーチング行動の実際に
40.00%
ついて調査し,整理することを目的とした.
2. 方法
30.00%
1)調査対象および調査文献
20.00%
複数のチームに対して指導経験を持つ指導
10.00%
者として「西野朗」を対象とした.
0.00%
ガンバ大阪で 10 年と長く監督を務めガン
A
B
C
D
ガンバ
ヴィッセル
五輪
バ大阪の一時代を気づいた際の監督である.
図1 各チームにおけるコーチング行動の割合
ガンバ大阪を率いる前にはアトランタ五輪の
監督を務め,
「マイアミの奇跡」の際に指揮を
3. 考察
務めるなど監督としてのキャリアは日本の中
西野は指導対象に合わせながらコーチング
で有数と言える.
するというタイプではなく,自身の哲学を追
①攻め切る,②number,③勝利のルーティ
求しながらより良いサッカーを実現すること
ーン
に重きを置いていると考えられる.よって対
2)調査項目
象チームの事情と合致した際に高いパフォー
マートン(2013)を基にコーチング行動に
マンスを長く発揮できるチームを作ることが
関わる 15 個の調査項目を設けた(表 1)
.
できることが考えれる.
3)分析方法
4. 主な引用・参考文献
上述文献から上記の調査項目と合致したエ
国際コーチ連盟
ピソードを抽出し,得られた内容についてラ
http:/www.icfjapan.com/?page_id=36
ベリングし,整理した上で検討した.
西野朗(2014)勝利のルーティーン.幻冬舎
3.結果
出版,東京都.
「項目 A. 」は指導哲学に関するものであ
レイナー・マートン(2013)スポーツ・コー
り,五輪時に適応事例が多く 34.86%であっ
チング学,東京出版:東京都
た.また,自身の能力を有効に使うための要
戸塚啓(2012)攻め切る.アートヴィレッジ,
素なる「項目 B.」 についてはガンバ時に適
東京都.
1.