自ら主体的に生き生きと表現する子どもを目指して

特集 「ここが変わった体育学習 新しくなった『わたしたちの体育』!」(活用実践例)島根県
自ら主体的に生き生きと表現する子どもを目指して
<4年>(表現運動 CD)
島根県雲南市立寺領小学校
講師
永江 俊之
1.はじめに
本単元「秘密の巻物をとりかえせ!寺領っ子忍者」は,豊かな空想の世界で「戦い・対決」
などの対立する動きを組み合わせたり,跳ぶ・転がる・動く・止まるなどの対極的な動きを繰
り返したりして,ひと流れの動きで即興的に踊ることを楽しむ単元である。
今回の『わたしたちの体育』の改訂の大きな特徴の一つに単元導入部の工夫が挙げられる。
つまり,単元の導入時において,子どもが「やってみたい」
「動いてみたい」という気持ちを持
ち,心も体も解放して運動に取り組もうとする意欲の喚起が大切である。そこで,本単元では,
以下の2つの仮説を設定して単元構想をした。
○ 単元全体にストーリー性を持たせ,題材との出会いの場面を工夫した単元構想をすれば,
学習に見通しを持ち,単元を通して自ら主体的に課題を追求する子どもが育つであろう。
○ 動きづくりの中で「忍者カルタ」を活用したり,
2人組の動きを見せ合ったり,共有したり
する時間を持てば,イメージ豊かに生き生きと表現する子どもが育つであろう。
2.実践内容
(1) 単元名 「秘密の巻物をとりかえせ!寺領っ子忍者」 4年 表現運動
(2) 単元計画 全7時間
次
時
1
2
3
つかむ
かかわる
広げる
1
2
3
4
5
6
ひみつの巻物を取り返そう!
学
習
課
題 いろいろな忍者 友達と一緒に,いろいろな忍者の修 寺領城に潜入するための修行をしよ
になってみよう。 行をしよう。
う。
学
習
内
容
○ほぐしの運動
【CD−V−4,
5】
○題材のプロロ
ーグを知る。
(観劇)
○忍者のイメー
ジを広げる。
○忍者の基本的
な動きをして
みる。
・素早い動き
・激しい動き
・静かな動き
○学習の振り返
り
○ほぐしの運動
【CD−V−4,
5】
○ほぐしの運動
【CD−V−4,
5】
7
寺領城に潜入し
よう。
○ほぐしの運動
【CD−V−4,
5】
○忍者カルタを使って動く。
○3人グループで動く。
○学習の成果を
・みんなで動く。
(ポイント把握) ・即興的に
発表する。
・2人組で動く。
(即興的に)
・ひと流れの動きで
・寺領城(校舎)
・見せ合う。
《敵に見つからないようにする動き》
全体を使って
《逃げたり隠れたりする動き》
《敵から逃げる動き》
《敵と戦う動き》
《敵と戦う動き》
○題材のエピロ
《忍術を使う動き》
ーグを知る。
○学習の振り返り
○学習の振り返り
○単元のまとめ
−20−
(3) 単元導入時の工夫
単元を通して意欲的に取り組めるように,第1時で失った巻物(学
級の宝)を第7時で取り返すというストーリーで単元を構想した。第
1時では巻物を担任が影忍者に奪われるという劇を見せることでストー
リーの世界に自然と入っていけるよう配慮した。
影忍者
登場!
(4) 忍者カルタの使い方
単元全体の中で忍者カルタは以下のような使い方をした。
○ 第1次∼カルタを使用せず,教師と子どもで広げた忍者のイメー
ジや特徴をカルタの内容に加えた。
○ 第2次∼カルタを使って即興的に踊り,その時間にねらう動きに
寺領城に潜入だ!
迫らせた。また,毎時間カルタの動きの種類を増やし,多様な動き
を引き出そうとした。2人組は,子どもの動きや個人差を見て,毎時間ペアを替えた。
○ 第3次∼できるだけカルタを使わず,自分たちで表したい動きで簡単に「はじめ」と「お
わり」をつけて踊れるようにした。
(5) 分かり合う場,見せ合う場の設定
毎時間,学習の成果を見せ合い,お互いのよい動きに気付かせる場
を設定した。子どもはよい動きを共有したり,学習課題の達成を確か
めたりすることができた。
忍者らしい動きって?
3.終わりに
(1) 仮説!について
本単元で扱う忍者などの題材は「空想の世界からの題材」であり,
「具体の生活からの題材」
と比べて,イメージがとらえにくく,子どもの表現に対する関心や意欲の持続が難しいと考え
る。単元を通して表現への意欲を持続させるために,単元全体にストーリー性を持たせ,巻物
が隠された寺領城に潜入するための修行(動きの練習)を積み重ねるという学習課題を設定し
たことが,子どもの意欲を喚起したと考える。単元を通して,学んだり,動きを身につけたり
する必然性を子どもが意識したことにより,自ら主体的に学習に取り組む姿が見られた。
(2) 仮説"について
豊かに即興的な表現ができるようにするために活用した「忍者カルタ」は有効であった。表
現の経験が少ない子どもにとって,カルタは多様なイメージをふくらませたり,期待感を持っ
て取り組んだりする手がかりとなった。カルタなしで動きを作る場面でも,カルタを使ったと
きの動きを生かして,新たな表現をつくり出そうとしていた。また,よい動きを共有するため
の見せ合いの場の設定は,友達の動きのよさに気づいたり,かかわったりする姿が見受けられ,
お互いの動きの質の高まりにもつながっていった。
今後,さらに豊かな表現を引き出していくためには,教師自身が「よりよい動き」のイメー
ジを明確にしておくことが大切である。そして,そのような動きを引き出すために,一人ひと
りの児童の実態をとらえ,適切な学習課題の設定や場づくり,評価,指導支援などを一層工夫
していくことが大切であると考える。
目次へ
−21−