NO.121 2015 年 号 糖尿病の患者さんは、風邪や膀胱炎をはじめとするさまざまな感染症にかかりやすく、 非糖尿病者の方ではあまり見られないような感染力の弱い病原体による感染症にかかる こともあります。また、一度かかってしまうと治りにくく、悪化しやすいと言われています。 ~どうして感染症にかかりやすいの?~ 感染症は、細菌やウイルスなどが原因で起こります。私たちの体には、 細菌やウイルスが侵入してくると、それを排除し、戦う機能が備わって います。しかし、血糖値が正常な人に比べて、高血糖の人は、体内に細菌や ウイルスが侵入したときに活躍する白血球の働き(細菌などを食べてしまう ことで、殺菌する機能)が低下しているため、抵抗力(免疫反応)が弱まります。 また、血糖値が高い状態が長く続くと、細い血管が傷み、血液の流れが悪く なります。末梢の血液循環が悪いと、細菌が感染した部分に血液が行き渡ら なくなり、細菌と戦う白血球が、細菌のいる場所に届かなくなります。 白血球 白血球の働きが低下するため、治りも遅くなるのです。 さらに、糖尿病の三大合併症のひとつである神経障害がある場合、感覚が鈍っているために、 傷や感染の発見が遅れることがしばしばあります。発見の遅れは、治療の開始時期の遅れに もつながり、感染症の重症化にも影響を及ぼします。加えて、感染症は血糖コントロールを 著しく悪化させるので、糖尿病自体の治療も強化する必要があります。 呼吸器 急性気管支炎・肺炎・結核 泌尿器 膀胱炎・前立腺炎 急性腎盂腎炎など 慢性閉塞性肺疾患、喘息の悪化 インフルエンザなど 皮 膚 外耳炎、蜂窩織炎、とびひ 腫瘍、真菌性皮膚疾患 白はくせん癬菌(水虫)など 糖尿病では全身のあらゆる場所で、感染症が起こりやすくなります。 ~感染症にかからないために~ 感染症予防の基本は、健康的な生活を維持し、普段から細菌類に 対する抵抗力をつけておくことです。正しい食事療法とストレス解消の 運動療法で感染症を吹き飛ばしましょう。 基本は血糖コントロール 血糖値が高いと感染症のリスクが高くなることがわかっています。また感染症にかかる とインスリン抵抗性が増大するため、血糖値が上昇し、さらに感染症が悪化するといった 悪循環が起きます。良好な血糖コントロールがまず基本です。 呼吸器は外気にさらされているので、感染症 尿意をがまんしないこと、陰部を清潔にする ことが大切です。糖尿病神経障害では膀胱内 に尿が残りやすいため、尿路感染症 になりやすく注意が必要です。 にかかりやすいです。こまめに手洗いうがい をしましょう。インフルエンザ・肺炎球菌 ワクチンの予防接種も効果的です。 呼吸器感染症は、流行するので他人にうつさ ない気配りも必要です。 皮膚の清潔と保湿は、皮膚を傷つきにくくするために非常に重要です。皮膚を乾燥から 守るためには、入浴後に保湿クリームを塗る習慣をつけるのもよいでしょう。 また、自分の体や身の回りに注意を払うようにしましょう。 ~歯周病ケアが非常に大事!~ 糖尿病では、歯周病を併発している人がたいへん多くみられます。また、歯周病によって、 血糖コントロールに支障がでて、糖尿病の悪化につながることもわかっています。糖尿病と 歯周病は、お互いが悪影響を及ぼし合っているのです。 この悪循環を断ち切るためにも、糖尿病では血糖コントロールと合わせ、口の中の手入れ も欠かせません。デンタルヘルスや、歯間ブラシなどの口腔ケアグッズなども利用しながら、 正しいブラッシングで歯周病を予防しましょう。また年に1回、できれば半年に1回、 プラーク、歯垢コントロールのために、歯科医で定期健診を受け、 口の中の状態をチェックしてもらいましょう。 引用・参考文献: 「No.28 糖尿病と感染症」 ,novo nordisk 糖尿病サイト. 発行機関:周防大島町公営企業局 作成担当:東和病院附属健康管理室
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