ニオブ基超高温材料の固溶化と複合化による強靭性改善に関する研究

研究テーマ : ニ オブ 基 超 高 温 材 料 の 固 溶 化 と 複 合 化 に よ る 強靭 性 改 善 に 関 す る 研 究
( N ED O 研 究 基 盤 施 設 活用 型 先 導 的 基 礎 研 究 調 査 事 業 )
研究目的 : 1500℃の 高 温 で 使 用 で きる 火 力 発 電 な ら び に 航空 機 エ ン ジ ン 用 ガ ス タ ー ビ ン
部材 の開 発
今後の課題 : ク リー プ 特 性 の 向 上 な ら び に 耐 環 境 性 付 与 技 術の 確 立
波及効果 : Ni 基超 合 金 に 代 わ る 地 球 環 境 に や さ し い 高 温材 料 の 創 出
成果の概要
エネルギー、航空宇宙、鉄鋼業、化学工学等の分野では、超高温の厳しい環境下で長時間使用できる機器部材用構造材の開発
に対して大きな期待が寄せられている。特に、地球環境保全や化石燃料資源保護の観点から火力発電の熱効率の向上が求められ、
ガ ス タ ー ビ ン の 運 転 温 度 の 一 層 の 高 温 化 が 緊 急 の 課 題 と な っ て い る 。 し か し 、 ガ ス タ ー ビ ン 部 材 に 主 に 用 い ら れ て い る Ni 基 超
合 金 ( Ni-based superalloys) の 耐 熱 温 度 の 向 上 は ほ ぼ 限 界 に 達 し て お り 、 Ni 基 超 合 金 を 超 え る 耐 熱 性 を 有 し 、 長 期 に わ た る 信
頼性と耐久性を兼ね備えた新たな耐熱材料の開発が必要となってきている。
と こ ろ で 、 Nb は Ni よ り も 融 点 が 1000℃以 上 も 高 く 、 し か も 密 度 が 小 で 、 高 温 で の 強 度 と 靭 性 の バ ラ ン ス に 優 れ 、 さ ら に 他
の高融点金属を高濃度範囲にわたって固溶できる特徴を持つため、次世代高温材料として極めて有望な金属として注目されてい
る 。 そ こ で 、 本 研 究 で は 、 図 1 に 示 す よ う に Nb を ベ ー ス と し て 固 溶 な ら び に 化 合 物 相 の 複 合 化 に よ る 材 質 特 性 の 向 上 を は か り 、
靭 性 な ら び に 高 温 強 度 に 優 れ た Nb 基 合 金 の 開 発 を 目 的 と し て 調 査 研 究 を 行 い 、 以 下 の 成 果 を 得 た 。
・ Nb 基 固 溶 ならびに複 合 強 化 合 金
高 温 強 度 な ら び に 靭 性 に 優 れ た Nb 基 固 溶
強化合金を設計するため、固溶の期待できる
V,Ta,Mo,W 等 の 高 融 点 金 属 を 添 加 し た 合 金 を
ボタンアーク溶解、粉末冶金およびプラズマ
アーク溶解法を用いて作成し、組織観察、X
線構造解析、圧縮・引張試験等の材質評価を
行い、組成の絞り込みを実施した。
そ の 結 果 、 V,Ta で は 30at%程 度 添 加 し て
も 固 溶 効 果 は 小 さ く 、 特 に Ta で は ほ と ん ど
強 度 の 改 善 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ は Ta
の 原 子 半 径 が Nb の そ れ と 非 常 に 似 て い る た
めに歪み付与効果が小さく、十分な固溶効果
が現れなかったものと考えられる。
こ れ に 対 し て 、 Mo,W を 単 独 あ る い は と も
に添加した合金では、ほぼそれらの添加量に
比例して強度の著しい改善効果が認められた。
特 に 、 Nb に Mo を 20∼ 30at% , W を 5∼ 15
at% 程 度 固 溶 し た 合 金 で は 、 強 度 と 靭 性 の バ
ラ ン ス に 優 れ 、 し か も 密 度 の 値 が Ni 基 超 合
金 と そ れ ほ ど 異 な ら な い Nb 基 三 元 系 合 金 の
存在することが明らかとなった。
図 2 は 本 研 究 で 得 ら れ た Nb 基 固 溶 体 合 金
の比強度(材料の強さを密度で割った値で、
この値が大きければ大きい程高温材料として
優れていることを表わす指標である)の値を
他の高温材料のそれと比較して示したもので
あ る 。 同 図 か ら 明 ら か な よ う に 、 Nb に Mo や
W を 固 溶 し て 得 ら れ る Nb 基 合 金 の 比 強 度 は
他のどのような高温材料よりも高い値を示し、
し か も 、 1500℃と い う 高 温 に お い て 、 Ni 基 超
合 金 の 限 界 使 用 温 度 1000℃で の 値 と ほ ぼ 同 等
の値を有することがわかった。
こ れ は 、 現 在 、 Ni 基 超 合 金 で は 1000℃以
上の高温燃焼温度で使用するために、材料を
空気あるいは蒸気で冷却するための複雑な構
造 上 の 工 夫 、 加 工 を 必 要 と す る が 、 Nb 合 金 で
はそのような冷却がまったく必要ないことを
意味するものと言える。これによって、材料
加工コストの低減、構造の単純化による生産
性の向上などが期待でき、そのメリットは計
り知れないものがある。
し か し 、 こ の よ う な 優 れ た 特 徴 を も つ Nb
基合金の実用化はかるためには、強度だけで
なく、クリープ特性あるいは耐環境性などの
評価もあわせて行い、ガスタービンの一層の
高温化に対応できる高融点金属系部材の創製
技術の研究開発を継続して実施することが不
可欠となる。
そのような観点から、本研究はその成果を
ベースに平成 8 年度より重要地域技術研究開
発課題『高融点金属系部材の高度加工技術』
として、実用化に向けて現在継続して開発が
進められている。