「エネルギー問題」を考えさせる授業の構築 竹谷尚人 「エネルギー問題」は環境教育において重大なテーマである.人類の営みを持続させる ために,エネルギー源を確保することは地球規模の課題である.ただ,「エネルギー問 題」には効果的な解決策はなく,世界全体で解決に向けて試行錯誤しながらさまざまな取 り組みを続けているというのが現状であろう.子どもたちに「エネルギー問題」を教え, 「エネルギー問題」の解決について考えさせることは,エネルギー源の確保が難しくなる 将来に向けて必要なことなのである. 「エネルギー問題」は,学校教育において広く行われているが,私が問題だと考えるの は, 「エネルギー問題」を教える授業の一部に,科学的に「エネルギー問題」を扱わず, 子どもたちの道徳的な行動を期待することを目的としているものが見られることである. 「エネルギー問題」を子どもたちに考えさせるときに必要な事項,すなわち「エネルギ ー問題」の授業プランに含まれなければならない事項は大きく分けると,A「将来利用可 能なエネルギー源はなぜ不足してしまうのか」という“原因”を示す部分と,B「エネル ギー利用量を減らすためにはどうしたらよいか,もしくは利用可能なエネルギー源を確保 するにはどうしたらよいか」という“解決策”を考えさせる部分の 2 つである. 「エネルギー問題」を科学的に扱っていない授業は, 「世界のエネルギー利用量は増加 の一途をたどっている」 , 「石油,天然ガスといった主要なエネルギー資源の可採埋蔵量は 約数十年分である」といった状況を定性的に示し, 「利用できるエネルギー資源が限られ ているのでエネルギーの利用量を減らさなければならない」という結論へ導くという構成 になっている.このような授業では「エネルギー問題」の解決を考えることはできないの である. 「エネルギー問題」の解決を考えさせるためには, 「エネルギー問題」の科学的な 理解が不可欠であり, 「エネルギー問題」の授業は,科学的な視点で構築されなければな らないと私は考える. 「エネルギー問題」を科学的にとらえるために, 「平成 25 年度エネルギーに関する年次 報告」 (エネルギー白書 2014)について少し触れておく.この資料によると,日本におけ る一次エネルギーの国内供給量は 20819×1015J であり,そのおよそ 92.8%が化石燃料によ ってまかなわれている.しかし,エネルギー変換によって 6472×1015J が失われており, 有効なエネルギーの利用は 14347×1015J にとどまっている. 日本国内のエネルギーバランスを概観すると,①「一次エネルギー供給の 92.8%を化石 燃料に頼っていること」と,②「有効なエネルギーに変換している割合は 68.9%でありエ ネルギー変換効率は,向上の余地があること」の 2 つが見えてくる. 「エネルギー問題」 の授業プラン構築は,上記①,②を基本として進めるべきであると考える. 現在,上記①,②を科学的に考えさせるために必要な基本法則の抽出に取り組んでいる が,現在までのところ“エネルギー保存の法則”と“エントロピー”が基本法則として抽 出されている. 「水車,風車といった地球の物質循環によって得られるエネルギーと,化 石燃料の燃焼で得られるエネルギーとの違い」や, 「化石燃料に偏重していることの問題 点」 , 「エネルギー変換効率の向上」といった「エネルギー問題」の解決を考える際に必要 な事項は“エネルギー保存の法則”と“エントロピー”の概念が形成された後に示す必要 があると考えのもと,授業プランを構築している.全体研究会では, 「エネルギー問題」 を考えさせる授業プランの構築理論について発表したい. 4
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