wood / water journal

wood / water journal
the music of daily life
日常の音楽と題した、「wood/water journal」はレコードレーベル wood/water records が不定期で発行するグッドレビュージャーナルです。
例えば、Henning Schmiedt のアルバム『Klavierraum』が、当時妊娠中だったヘニングの奥さんが心地よく暑い夏を過ごせるように作られた楽曲であるように、
音楽というのは常に日常とともにあって、日常のなかから生まれてくるものだと思っています。今回は、福岡近郊、若しくは福岡に縁の深い、親愛なるミュー
ジックラヴァーの皆さんに「日常の音楽」をテーマに様々な音楽を紹介して頂きました。レビューの内容に興味をもって聴いてみたり、アルバムジャケットが
気になって聴いてみたり、タイトルは横文字ばかりですが、構えずに、身近な友人から勧められた感覚で楽しんで頂ければと思います。
Reviews of The Good Fellows “music lover”
peter broderick /
http:///www.itstartshear.com
タイトル通り「音楽を聴くという事」
lambchop / is a women
空間の奥行きと浮遊感がある音楽にのめり込
る意欲作。ダウンロードに対し、アー
毎日。家に帰るとまずこのアルバムに針を落とし、
トワークにリスナーがほとんどアク
コーヒー飲みながらトロトロに溶ける。だんだん凛
セ ス し な い こ と を 危 惧 し、全 体 像 を
とした空気や切ない音の配置に背筋は伸び、耳は大
理 解 す る 為 に 私 の 心 は、音 楽 だ け で
きく心はいっぱいになり今日もありがとう。という
なくすべてのライナーとアートワー
心持ちになれるのだ。ちょうどよい塩梅のピアノフ
ク が 必 要。と 語 る 彼 の 想 い が 詰 ま っ
レ ー ズ に は、季 節 を 問 わ ず 琴 線 に 触 れ る 魔 法 が あ
て る。・・・こ と を 知 ら な か っ た と
る。・・・のかもしれない。
し て も、ピ ア ノ と ギ タ ー、唄 が 絶 妙
原茂樹 ( 日田シネマテーク・リベルテ )
に絡み合う美傑作の誕生。
原茂樹 ( 日田シネマテーク・リベルテ )
Vashti Bunyan / Lookaftering
laura arkana met peter broderick /
lentemuziek
1970 年 に ア ル バ ム「Just Another Diamond
ローラ(オランダ人なので読み方違うかも)
Day」を発表したっきり音楽シーンから遠ざかっ
とピーター。パリで出会って意気投合して
ていた Vashti Bunyan の実に 35 年ぶりとなるア
一緒にレコーディングしたそうです。意気
ルバム。その長い年月の間に母となり、子を育て、
投合したいっすねー。ライブもレコーディ
積み重ねてきた普遍的な日常と言う一つのとても
ングもあまりしたことないローラの弾き語
優しい物語が綴られているようで、聴いていて穏
りに、ピーターが任せとけと(言ったかは
やかな気持ちになります。音楽活動の再開が、ギ
知らんですけど)録音だけでなくいろんな
ターを息子からプレゼントされたからだとか、ア
楽器でシンプルながら素敵なアンサンブル
ルバムジャケットの絵は画家である娘によるもの
を奏でナイスなフォークアルバムに仕上
だというエピソードも微笑ましいです。
がってます。ローラ…見たことないけど美
石井 勇 (wood/water records)
人だとふんでます。
(そろそろ出るピーター
の新譜も楽しみ)
坂本裕紀 (tristessa)
Cecilia Zabara/Aguaribay
Carlos Aguirre / Orillania
に対しリスナーにインスパイアさせ
むきっかけとなった現代アルゼンチン音楽の
Ryan Francesconi / Parables
最 重 要 ア ー テ ィ ス ト、カ ル ロ ス・ア ギ ー レ 4
静かな叙情の中に叙景感があふれる作品。米国西海岸を中
年振りの新作となるアルバム。(2 月 19 日発売 )
心に活躍するハープ奏者 ジョアンナ・ニューサムのサポー
カルロスの音楽は静かな叙情の中に叙景感が
トメンバーとしても知られる ライアン・フランチェスコー
あふれ、彼が 暮らすパラ ナ河のほと りへ旅さ
ニ の 初 ソ ロ ア ル バ ム。ブ ル ガ リ ア 民 族 音 楽 を ベ ー ス に ア
せてくれる。「非日常」を「日常」にとけ込ま
コースティック・ギター 1 本で奏でられる音楽はとても詩
せることが欠かせない都市生活者必携となり
的で一音一音が雨粒のように響く。雨後のオレゴンの森を
そうな作品。2 年振りの来日公演が予定され
抜けるとパーフェクトな波が割れているという情景を夢見
ている 5 月が待ち遠しい。
てしまう。 河崎政芳 (publik:)
河崎政芳 (publik:)
Dale Berning / The Horse and Camel
Stories
南アフリカ出身の女性サウンドアーティスト、
デイ ル・バーニ ングによ るア ルバ ム。現代 美
術 作 家 さ わ ひ ら き の 映 像 作 品『Going Place
Sitting Down』の サ ウ ン ド ト ラ ッ ク で も あ る
この作品は、さわひらきが撮影に使った田舎
の家と、その庭で聴こえてくる音のみで構成
され ています。バスルー ムの 水の 音、石に 滴
る 雨 水 の し ず く、グ ラ ス に 注 が れ た 炭 酸 水、
風鈴、時計な どなど。。。日常に 溢れる 音の繊
細な響きやテクスチャーの豊かさを再提示し
たこ の作品は、デイル自 身の いう「静けさ に
身 を ゆ だ ね る こ と、そ し て 耳 を 傾 け る こ と」
の大切さに気づかせてくれます。
フクゾノ ヤスヒコ (flau)
アルゼンチン次世代 SSW を代表するセシリア・
サバラ。柔らかな母性を感じさせる声と、キケ・
シネシの門下生でもある卓越したギター。オリジ
ナル作品に加え、アタウアルパ・ユパンキの古典
も含むアルゼンチン・フォルクローレの伝統に根
差した楽曲には、甘さだけに流されることのない
郷愁が滲む。ジョニ・ミッチェルやジュディ・シル、
トレイシー・ソーンらと共通する気高さ、生きて
いくことの苦悩―そこへセシリアの声が響けば、
それは清冽な朝に差し込む一筋の陽光のように私
たちを包み、そっと寄り添う。
河野洋志 (bar buenos aires)
Mono Fontana/Cribas
「彼の作る音楽は未来だ」カルロス・アギーレを
はじめ名だたる南米のマエストロが賛辞を惜し
ま ぬ 現 代 の 秘 宝、ア ル ゼ ン チ ン 音 響 派 の 中 心 的
MIA DOI TODD / COSMIC OCEAN SHIP
存 在 と し て 様 々 な シ ー ン を 越 境 す る モ ノ・フ ォ
ジャケットがかなり危険なのでまず手に取ってもらえそう
ン タ ナ。シ ャ ッ タ ー 音 を は じ め と す る 多 様 な 生
にないのですが、PV をミシェルゴンドリーが撮っていた
活 の 具 現 音 が ピ ア ノ の ゆ ら ぎ の 中 に 交 差・拡 散
りホセゴンザレスと共演( 'Red Hot + Rio 2' に入ってい
し、遠 い 日 々 の 記 憶 に 手 繰 り 寄 せ ら れ る よ う に
てこれも素敵!)してたり実は随分ナウいです。これはも
様 々 な イ メ ー ジ が 溢 れ 出 し て い く。楽 曲 と い う
う9作目になるようなんですけど最近のはナウ人脈との共
概念そのものがゆるやかに溶解していくような
作具合があまりグッとこなかったんですが、今作は往年の
そ の 世 界 観 は、未 だ 見 ぬ 未 来 の 音 の よ う で も あ
名 S.S.W を彷彿させるようなシンプルな美しさがあって
り な が ら、胎 内 か ら 流 れ て い た こ の 世 界 の 音 そ
沁みます。ミアさん日系の方らしんですが、けっこう美人
の も の の よ う で も あ る。こ れ は も は や 音 楽 で す
です(このジャケやっぱり損してる…)。
ら な く、医 術 の よ う に 機 能 す る 音 術 と 呼 ぶ に ふ
坂本裕紀 (tristessa)
さわしいものなのかもしれない。
河野洋志 (bar buenos aires)
PLUSH / More You Becomes You
シカゴを拠点としてスローペースに活動する
リアム・ヘイズのソロユニット PLUSH による
1998 年 の デ ビ ュ ー 作。そ の 後 の ア ル バ ム で
はポップでソウルフルなバンドサウンドに変
化しますが、こちらはボーカルとピアノのみ
のシンプルな弾き語り作品。音数を絞ったセ
ンシティヴなピアノと、今にも消え入りそう
なほどに切なく、抑制された哀愁のうたごえ。
それはまさに、耳を研ぎ澄まさずとも聴こえ
てくる静寂の音楽。
河津継人(Afterglow)
Pisano & Ruff / Under the Blanket
ジ ョ ン・パ イ ザ ノ と ウ ィ リ ー・ラ フ の 二 人 の
ユ ニ ッ ト に よ る 唯 一 の 作 品 に し て 名 盤。ハ ー
ブ・ア ル バ ー ト の プ ロ デ ュ ー ス で す。と ろ け
る よ う な フ レ ン チ ホ ル ン や ス キ ャ ッ ト、ガ ッ
トギター、フルートなど全ての音がまろやか。
タ イ ト ル 通 り、陽 あ た り の よ い 部 屋 で 毛 布 に
包まれているような心地良さです。ロジャー・
ニ コ ル ズ 作 The Drifter な ど の カ バ ー 曲 も
最高。日曜の午後に。
河津かおり(Afterglow)
Judee Sill / Judee Sill
一曲に一年を費やすこともあるほど完璧に
生み出された優しい旋律には十字架の心が
宿 る。そ れ は 神 仏 に 合 掌 す る 時 の よ う に、
見 え な い 世 界 と つ な い で く れ る。楽 曲 か ら
は想像できないジュディーの人生を知ると、
さらに彼女が見ていたものは何だったのか、
と想像してみたくなる。
酒井咲帆 (albus)
Charlie Haden , Hank Jones / STEAL AWAY Keith Jarrett / The Melody At Night, With You
この二枚のアルバムを、まだ聴いたことのない人が、ちょっぴりうらやましい。なぜなら、僕にはもう二度と味
わえない、初めてこれらの調べに触れたときの、得も言われぬ感動を、ひょっとしたら体感することができるの
だから。優しく、やわらかく、そして温かい。愛する誰かへ届けたくなる音楽。
<ペトロールブルー>とともに、どうかあなたの日常となりますよう。
こいでしんじ (petro blue / 通称ペトブル )