認知症の人の摂食嚥下障害 北中城若松病院 言語聴覚士 久志紫乃 認知症カフェ 2015年2月14日 摂食嚥下障害とは 摂食とは、外部から水分や食物を口に取り 込む(食べる)こと。 嚥下とは、取り込んだ水分や食べ物を咽頭 (のど)と食道を経て胃へ送り込む(飲 み込む)こと この過程のどれかひとつでもうまくいかな いことを摂食嚥下障害といいます 摂食嚥下のメカニズム 食べ物を噛んで お粥状にまとめる 粥状の塊(食塊)を口から 喉に送り込む 食塊をのどから食道へ送り込む 食道から胃へ 摂食嚥下障害の原因 • 器質的原因 舌炎、アフタ、歯周病、食道炎、潰瘍 • 機能的原因 脳血管障害、神経疾患(パーキンソン病) • 心理的原因 神経性食思不振症、認知症、拒食、心身 症 誤嚥とは? • 食物や唾液など空気以外のものが下咽頭 を通過するときに、声門を越えて気管よ り深いところに入ること • 誤嚥しかけるとムセが生じる • ムセない誤嚥もある。不顕性誤嚥。 • 不顕性誤嚥とは食物等が声門を越えて気 管内に入っても咳反射が生じない状態。 誤嚥性肺炎の原因となる 老化に伴う摂食嚥下機能低下 • • • • • • • 虫歯、歯が抜けることで咀嚼力が低下。 口腔、咽頭、食道の嚥下筋の筋力低下 粘膜の知覚、味覚の低下 唾液の分泌減少、性状の変化 咽頭下垂による飲込み範囲の拡大 無症候性脳梗塞 注意・集中力低下 認知症による摂食嚥下障害 • 認知症の人は、食べることが徐々に困難 になってきます。 ・たとえば・・・ 食べない、拒食、口を開けない 食べたことを忘れる 食べ物を認知できない 食事行動が中断、停止する 認知症による摂食嚥下障害 ほかにも・・・ • テーブルやエプロンの柄に気を取られる • 落下物に固執する • ほかの人の食事に手を出す • 食物以外のものを口にする • 口に詰め込む、食べる速度が速い • 手づかみ、うまく箸やスプーンが使えな い アルツハイマー型認知症の嚥下の特徴 《初期》実行機能障害により、一人で料理 を作ることが難しくなる 《中~後期》空間認知障害や失認・失行によ り目前の食物を認知できない、食べ始め ることができない。注意障害により、食 事以外の刺激が多いと食事を中断。 《後期・末期》口腔顔面失行により咀嚼し 続ける。口腔内に食物を溜める。口が開 かない。嚥下障害、口腔乾燥の出現。 血管性認知症の嚥下の特徴 • 実行機能障害により一人で料理を作るこ とが難しくなる。 • 失語や構音障害により、食物の咽頭(の ど)への送り込みに障害。 • 麻痺の影響で食事動作がうまくいかず、 こぼす。麻痺側に食物残渣、誤嚥あり。 • 半側空間失認(無視)により、注意向か ない部分を食べ残す。嚥下障害、ムセな い誤嚥。 レビー小体型認知症の嚥下の特徴① • 注意力障害と認知機能の変動により食べ ることが出来る時と出来ないと時といっ た日内変動がある。 • 視空間障害により食物までの距離が正確 につかめず手が届かない、食物の位置関 係がわからず食べ残す。 • パーキンソン症候群による振戦・無動で 摂食動作に支障をきたす。 レビー小体型認知症の嚥下の特徴② • 幻視により、食物中に虫や鳥の羽が入っ ているといい、摂食を中断または拒否す る。 • ドパミンによる嚥下反射の低下による嚥 下障害 • 抗精神薬への過敏性による誤嚥性肺炎の リスクがある。 前頭側頭型認知症の嚥下の特徴① • 常同行動により、いつも同じ時刻に同じ 料理を作り同じ場所で食べるといった行 動。決まった食品や料理への固執がある。 • 脱抑制や被影響性の亢進により食事の途 中で立ち去る。どんどん食物を口に詰め 込む。 • 早食い。むせや窒息に注意が必要。 前頭側頭型認知症の嚥下の特徴② • 口唇傾向・食嗜好の変化:甘い物が嫌い だった人が好むようになる、濃い味付け を好むようになる。過食、喫煙や因習の 過多など。 →肥満、糖尿病などの発症、合併症のリス ク。 • 構音障害や嚥下障害を伴う場合もある。 認知症と食事の障害 • 認知症が軽度:口に入れるまで→食行動の障害 • 認知症が重度:口に入れてから→嚥下障害 認知症のステージに合わせた食事支 援が必要 認知症のステージの嚥下機能の 特徴 《初期》各認知症のタイプの特徴が大きく出る アルツハイマー:食べたことを忘れる 食器の使い方がわからない レビー小体型 :認知機能の日内変動からくる 食べムラ。食べるときと、食べ ないときの差が大きい 前頭側頭型 :嗜好の変化、食事中の立ち去り どんどん口に食物を入れる 認知症のステージの嚥下機能の 特徴 《中期》脳の萎縮がすすみ、すべての認知症の型 において失行・失認が出てくる ・食事が食べ始められない ・食事が途中で中断する ・食べるペースが乱れる ・手を使って食べる ・介助量が増える ・誤嚥も見られるようになる 認知症のステージの嚥下機能の 特徴 《末期》脳の萎縮が重度になり、嚥下機能 自体が障害される ・口の中の食べ物をうまく粥状にまとめら れない ・口の中に食べ物を溜め、喉に送れない ・誤嚥、窒息のリスクが高くなる ・傾眠や意識レベル低下の影響が出てくる ・食べる量が少なくなってくる 食事を取り続けてもらうために • 認知症の重症度とステージの特徴を考慮 する • 認知症の影響だけではなく、その方の個 人的な性格、習慣も影響する • その方の食事の様子を注意深く観察する ことが大事 • その方に合った環境調整をする さて、みなさんは食事で困って いることがありますか? 《よくある状況》 食べ始めない 取りこぼしが多い 食べこぼしが多い 口から食べ物を吐き出す もぐもぐがストップする なかなか飲み込まない こんなことありますか? • • • • • • • 食事に時間がかかる ペースが速く、丸のみしている 義歯がない、義歯が合わない 食事摂取量が少ない 食事に集中しない 食物で遊んでしまう 口を開けてくれない こんなことも? • • • • • • • 食事に集中できない 甘いものしか食べない(偏食) うとうとしていて食事が進まない 食事でむせる 水分でむせる 箸やスプーンをうまく操作できない 食事が始まると胸がゴロゴロしてくる さあ、ここからは みなさんの困っていることにつ いて一緒に考えていきましょ う!
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