森林貴彦監督

神奈川県高校野球特集
生徒たちへの授業を午後2時頃に終える
尾にある慶應幼稚舎 ( 小 学 校 ) に 向 か う 。
都筑区の自宅を出て 、 日 吉 経 由 で 東 京 ・ 広
まだ夜の明けきら な い 薄 暗 い 中 、 横 浜 市
督の朝は早い。
慶應義塾高校硬式 野 球 部 、 森 林 貴 彦 新 監
∼挑戦者たちの熱球物語
と、今度は慶應高校 グ ラ ウ ン ド の あ る 横 浜
市港北区日吉へとん ぼ 返 り 。 3 時 か ら の 練
習を指揮する。小学 校 教 諭 を 勤 め な が ら 高
校野球の監督をして い る の は 、 全 国 的 に も
珍 し い。 慶 應 系 列 の 学 校 な の で、「 高 校 に
学内転勤させてあげ れ ば 」 と の 関 係 者 か ら
歳。 都 内 の 公 立 小 学 校 か ら 慶 應 普 通
森林監督は197 3 年 生 ま れ で 東 京 育 ち
の声も多いとか。
の
部(中学校)を経て 、 慶 應 高 校 野 球 部 で 遊
撃手として活躍。慶 應 大 学 に 進 学 す る も 大
学野球部には入らず 、 母 校 の 高 校 で 前 上 田
誠監督の下、4年間 学 生 コ ー チ を 務 め た 。
コーチ4年目に佐藤 友 亮 投 手 ( 元 西 武 ラ イ
オンズ)を擁して県 大 会 準 優 勝 し た が 、 こ
の時、いい思いと悔しい思いを同時に体験。
そのことが将来の人 生 の 転 機 に つ な が っ て
くる。大学卒業後、 一 般 企 業 に 3 年 間 勤 め
るも指導者への思い を 断 ち き れ ず 、 筑 波 大
学で3年間スポーツ 科 学 な ど を 学 び 教 職 免
許を取得。2002 年 4 月 か ら 慶 應 幼 稚 舎
教諭兼慶應高校コー チ と な り 、 今 年 8 月 か
ら は、「 エ ン ジ ョ イ・ ベ ー ス ボ ー ル 」 を 掲
げて1990年秋か ら 年 間 同 校 の 監 督 を
務め、夏1回、春3 回 の 甲 子 園 出 場 を 果 た
した上田前監督(現 野 球 部 副 部 長 ) の 後 を
引き継いで新監督に就任した。また同時に、
幼稚舎野球部の顧問 と し て 週 1 回 小 学 生 た
ちの指導もしている 。
勇退について上田 前 監 督 は 「 彼 に は 、
年もの間やってもら っ て い る し 、 い つ ま で
年という区切りの 年 に も な っ た の で 、 身
もコーチというわけ に は い か な い 。 自 分 も
体が動けるうちにつ な い だ 方 が い い と 思 い
ました」と語る。今 後 は 、 副 部 長 と し て 指
導しながら新監督を サ ポ ー ト し て い く 方 針
森林監督について は 「 ま ず 学 問 、 大 学 に
だ。
つなぐ、伝統を守る 、 こ の 慶 應 メ ソ ッ ド を
一番わかってくれる 人 。 野 球 に 関 し て は 、
エンジョイ・ベース ボ ー ル だ と か 根 性 野 球
だとか言っても実際 、 野 球 は メ ン タ ル 面 が
大きいから根本はガ ツ ガ ツ や ら な い と 勝 つ
事は無理でしょう。 引 き 継 ぎ は 、 そ う 簡 単
にはいかない。彼が 目 指 し て い る 野 球 は 、
敗してわかることも あ る し 。 監 督 は 孤 独 な
れようが自分の考え で や っ た 方 が い い 。 失
「木澤の力からして僅差のイメージはあ
響き結局1︱4で敗戦。
戦を展開。しかし、序盤の失点が最後まで
きるパターンを増やすことに努めた。
習試合を組み、出塁、進塁などから得点で
横浜隼人など県内外の強豪校と
近くの練
静岡、
日大三
(東京)
、
東海大相模、
桐蔭学園、
子園、大学では神宮、その先はプロといっ
出られるかどうかで終わる中、高校では甲
ていくつもりです。多くの高校が甲子園に
應の中にあるものをレベルアップしてやっ
まだ見えてきません が 、 周 り か ら ど う 言 わ
ものですよ。引き継 ぎ う ん ぬ ん よ り も 、 ま
りましたが、バントの構えで走者が飛び出
[慶應義塾高校]
したり、ライナーで併殺になったり、牽制
森林貴彦監督
ず選手がうまくなる こ と が 第 一 で す 。 神 奈
より高いレベルを意識して、
野球に取り組ませたい
川と言わず全国でて っ ぺ ん ま で 行 っ て 欲 し
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は、秋季県大会2回戦の対横浜隼人校戦だ。
さて森林監督の采 配 ぶ り が 注 目 さ れ た の
省点は多い。とにかく課題をクリアしてい
練習して臨んだのですが、その部分にも反
たので、スクイズなど細かい点の取り方を
てしまった。試合前から攻撃力も心配だっ
球に引っかかったりと、未熟なところが出
も増え、
チームをまとめやすくなりました」
励されています。選手だけのミーティング
ボールを放らせる事ができるため、今は奨
が、 オ ー バ ー ラ ン す る こ と で 相 手 に 多 く
とえば、以前はオーバーランがダメでした
は「練習内容がより細かくなりました。た
上田野球との違いについて大串亮太主将
はまさに、彼らの今後の人生に直結するも
プレーをするべきかを自分で考える。それ
たからプレーするのではなく、次にどんな
して、前へ進んで行く。つまりサインが出
人まかせではなく自分で責任を持って判断
たい。また、野球の中での状況判断も大事。
た高いレベルを意識させながら取り組ませ
い」と期待は大きい 。
立ち上がり、エース 木 澤 尚 文 投 手 の コ ン ト
かないと、その上はない。公式戦は厳しい
森林監督は勝利を目指す。
のだと思います」
。 そ う し た 信 念 を 掲 げ、
ロールが定まらず、 満 塁 の ピ ン チ で 隼 人 の
「 上 田 先 生 か ら 引 き 継 ぐ と い う よ り、 慶
吉川雄真選手に右越 え 三 塁 打 を 浴 び 3 点 を
月末までに、霞ヶ浦(茨城)
、
と話す。
そのため
ですね」
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献上。3回以降は、 立 ち 直 っ た も の の 、 相
手の林明良投手も好 調 で 見 応 え の あ る 投 手
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練習方法について話し合う森林監督
(左)
と上田副部長。森林監督は、上
田前監督の教え子第1期生にあたる
1.初采配となった秋季県大会で、
選手たちにアドバイスする森林貴彦監督 2.打撃陣の中核としてチームを引っ張る大串亮太主将
3.
秋季県大会で力投を見せたエースの木澤尚文投手
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覇権をめぐる
3つの思い
[新監督インタビュー]
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