1 第13回 環境研究シンポジウム 「2050年年の地球とくらし ー環境技術と地球規模課題ー」 @⼀一橋⼤大学⼀一橋講堂 2015年年11⽉月10⽇日(⽕火) 都市気候とエネルギー需要の将来予測 国⽴立立研究開発法⼈人産業技術総合研究所 環境管理理研究部⾨門 ⼤大気環境動態評価研究グループ 研究員 髙根 雄也 共同研究者:⻲亀卦川幸浩(明星⼤大)、近藤裕昭(産総研)、井原智彦(東⼤大) 原政之(埼⽟玉県環境科学国際センター)、⽇日下博幸(筑波⼤大) 飯塚悟(名⼤大)、神⽥田学(東⼯工⼤大) 2 はじめに 都市の気温は顕著に上昇 ⼆二つの温暖化 ⇨ 社会問題化(エネルギー、⼈人間健康等) 地球温暖化(気候変動) 都市温暖化(ヒートアイランド) 気温上昇量量(℃) 3.0 エネルギー需給 2.5 熱中症・睡眠障害等 健康リスクの増⼤大 2.0 1.5 気候変動+都市化 1.0 0.5 0.0 気候変動 -0.5 1910 1930 気象庁の観測データ から作成 1950 1970 Year 1990 2010 ⽣生態系、⽔水循環、etc. さらに顕在化する諸問題を予測し 都市レベルでの対策を考える必要がある 国家戦略略としての「適応計画」 3 気候変動の影響への適応計画 第2部 分野別施策の基本的⽅方向 http://www.env.go.jp/earth/ondanka/tekiou/2siryo2.pdf 資料2 第1章 農業、森林林・林林業、⽔水産業 第2章 ⽔水環境・⽔水資源 第3章 ⾃自然⽣生態系 第4章 ⾃自然災害・沿岸域 第5章 健康 第6章 産業・経済活動 第1節 産業・経済活動に関する適応の基本的な施策 「製造業、エネルギー需給、商業、建設業、医療療の各分野においては、 現時点で気候変動が及ぼす影響についての研究事例例が少ないため、 科学的知⾒見見の集積を図る」 気候変動の影響への適応計画(案) 平成 27 年○月 第7章 国⺠民⽣生活・都市⽣生活 第3節 その他(暑熱による⽣生活への影響)に関する基本的な施策 「ヒートアイランド現象の緩和には⻑⾧長時間を要することを踏まえ、 ヒートアイランド現象の実態監視や、ヒートアイランド対策の技術 調査研究を⾏行行う」 知りたいこと ❶将来、都市部ではどの程度度の気温変化に適応する 必要があるか? ❷このまま温暖化が続いたら、将来の我々の暮らし (に関係する値)はどうなるのか? ❸対策したら、どの程度度の効果があるのか? 4 都市環境ダウンスケールシステム(AIST-‐‑‒UEDS) 全球気候モデル(粗い) 数百km 気象庁HPより 5 地域気候モデル(細かい)+都市・建物エネルギーモデル 相互作⽤用 Kikegawa et al. 数km インプット (2013) ダウンスケール (空間詳細化) 従来技術にはない/アドバンテージ アウトプット ⼀一般気象要素 エネルギー関係 (気温、湿度度、⾵風、降降⽔水他) (需要量量、空調負荷、空調排熱) 健康関係 (熱中症・睡眠・疲労) 35.2˚N 1 km メッシュ 136.8˚E 0 137˚E 10 20 30 40 50 60 70 (W/floor-m2) Kusaka et al. (2012) 都市気候とエネルギー需要の将来予測(⻑⾧長期予測) これまでの都市気候の将来予測研究 ⇨ 6 問題:将来の⼈人⼯工排熱 = 現在の⼈人⼯工排熱 (⾮非現実的な仮定) ⼈人⼯工排熱 2000年年代 136°E 138°E 140°E 2070年年代 136˚E 138˚E 140˚E Kusaka, Hara, and Takane (2012) JMSJ 排熱フィードバックプロセスに着⽬目 (IPCC AR5でも考慮されていない) より⾼高精度度な予測を⽬目指し、 排熱フィードバックを考慮した将来予測実験を実施 ⻲亀卦川(2015) 7 計算設定 (a) (a) (b) (b) (c) 名古屋市 (c) 濃尾平野 事務所系 22 5km× 5km× 120grid 120grid 1km× 1km× 120grid 120grid 1km×120grid 1km×120grid ⽊木造住宅宅系 !! 11 5km×120grid 5km×120grid 髙根ほか(2015) 現状再現実験 → 2030年年代 → 2030年年代緑化 → 2030年年代排熱0 → 2070年年代 → 2070年年代緑化 → 2070年年代排熱0 → ! ! ! ! !! !! !! !! !! 耐⽕火住宅宅系 !! 都市カテゴリ毎に 値を設定できる 8 ⼊入⼒力力パラメータ 複数の空調システム を考慮できる 建物の材質を 細かく設定できる 建物の材質や空調システム、ライフスタイルの設定を変えれば、 それに応じた電⼒力力需要が物理理的に計算できる 9 2010年年8⽉月の気候の再現 名古屋地⽅方気象台 8⽉月の晴天⽇日の平均 (a) OBS 05 JST (b) OBS 14 JST 35.5˚N 35.5˚N Nagoya Nagoya 35˚N 35˚N 3 (m/s) よく合っている 136.5˚E (c) 137˚E 3 (m/s) 137.5˚E CTRL 05 JST 136.5˚E 137˚E 137.5˚E (d) CTRL 14 JST 35.5˚N 35.5˚N 35˚N 35˚N 3 (m/s) 髙根ほか(2015) 136.5˚E 137˚E 3 (m/s) 137.5˚E 136.5˚E 30 31 137˚E 32 33 137.5˚E (˚C) 34 10 空調使⽤用に伴う電⼒力力需要の再現・予測精度度 m ⼤大阪市の例例 ⼭山川ほか(2015) 50 40 30 20 10 Date & Time (LST) 8/9 0h 8/8 0h 8/7 0h 8/6 0h 8/5 0h 8/2 0h 0 8/1 0h 東京23区でも 同程度度の再現精度度 事務所街区は よく合っている Obs. (C2:事務所街区) Obs. (R7:郊外住宅宅街区) WRF-CM-BEM C2:事務所街区) WRF-CM-BEM R7:郊外住宅宅街区) 7/31 0h Downto 60 7/30 0h Osaka Bay Areal & hourly electricity demand ( W/Floor-m2 ) Osaka City 将来予測の⼿手法 11 12 将来予測のシナリオと結果 最⼤大気温上昇シナリオ miroc3.2hires 花崎ほか(2012) 以下は現状維持シナリオ ・⼟土地利利⽤用分布 ・⼈人⼝口 ・空調システムの性能(COP) ・建物の性能(材質等) ・ライフスタイル +0.4℃ +2.9℃ 現在に⽐比べて、2030年年代では0.4℃の気温上量量 2070年年代では2.9℃の気温上量量 Air-conditioning load (W/floor-m2) (a) Diurnal change CTRL (C) CTRL (Rr) CTRL (Rw) 140 120 100 80 60 40 20 0 Diurnal change CTRL (C) CTRL (Rr) CTRL (Rw) PGW70 14 JST 20 (b) 40 136.8˚E 137˚E 60 80 100 120 140 CTRL 14 JST (W/floor-m2) 20 (c) 40 137˚E 60 80 100 120 140 (W/floor-m2) PGW70 14 JST PGW70 (C) PGW70 (Rr) PGW70 (Rw) 60 35.2˚N 35.2˚N 50 40 30 20 10 0 (a) Anthropogenic heat (W/ground-m2) (c) 35.2˚N 136.8˚E 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 Time (JST) 136.8˚E 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 Time (JST) Diurnal change CTRL (C) CTRL (Rr) CTRL (Rw) 70 0 (b) 136.8˚E 137˚E 10 20 30 40 50 60 70 CTRL 14 JST (W/floor-m2) (c) 0 137˚E 10 20 30 40 50 60 70 (W/floor-m2) PGW70 14 JST PGW70 (C) PGW70 (Rr) PGW70 (Rw) 35.2˚N 35.2˚N 60 50 40 30 20 10 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 Time (JST) PGW70 − CTRL Temperature difference (ºC) CTRL 14 JST 35.2˚N (a) Electricity demand (W/floor-m2) (b) PGW70 (C) PGW70 (Rr) PGW70 (Rw) 136.8˚E 0 20 137˚E 40 3 5 7 136.8˚E 80 100 120 (W/ground-m2) 0 20 137˚E 40 60 80 100 120 (W/ground-m2) PGW30 − CTRL 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1 60 9 11 13 15 17 19 21 23 Time (JST) 髙根ほか(2015) 13 14 温暖化したら空調電⼒力力需要はどうなるか? Electricity demand (W/floor-m2) 名古屋市の (a) 空調電⼒力力需要の時間変化 Diurnal change 現状(事務所) CTRL (C) 〃 (耐⽕火住宅宅) CTRL (Rr) 〃 (⽊木造住宅宅) CTRL (Rw) 将来(事務所) PGW70 (C) 〃 (耐⽕火住宅宅) PGW70 (Rr) 〃 (⽊木造住宅宅) PGW70 (Rw) 60 (b) 2010年年8⽉月 14時 CTRL 14 JST 35.2˚N 35.2˚N 50 (c) 2070年年代8⽉月 14時 PGW70 14 JST 40 30 20 10 0 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 Time (JST) 136.8˚E 0 137˚E 10 20 30 40 50 60 70 136.8˚E (W/floor-m2) 0 137˚E 10 20 30 40 50 60 70 (W/floor-m2) ・街区区分依存性がある ・事務所:+7.8 W/floor m2 ・⽊木造住宅宅:+3.9 W/floor m2 ・耐⽕火住宅宅:+2.0 W/floor m2 ・名古屋市全体で100万kW原発1.1基分に相当 ・気温上昇→空調電⼒力力需要増加 髙根ほか(2015) 排熱フィードバック ⻲亀卦川(2015) 15 温暖化したら温熱快適性はどうなるか? 名古屋市の (a) 温熱快適性の時間変化 Diurnal change 不不快 やや 不不快 快適 SET* (ºC) ⾮非常に 不不快 36 現状(事務所) CTRL (C) 〃 (耐⽕火住宅宅) CTRL (Rr) 〃 (⽊木造住宅宅) CTRL (Rw) 将来(事務所) PGW70 (C) 〃 (耐⽕火住宅宅) PGW70 (Rr) 〃 (⽊木造住宅宅) PGW70 (Rw) (b) 2010年年8⽉月 14時 CTRL 14 JST (c) 2070年年代8⽉月 14時 PGW70 14 JST 35.2˚N 35.2˚N 32 28 24 20 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 Time (JST) 136.8˚E 20 ・街区区分依存性がない ・事務所:+2.8℃ ・⽊木造住宅宅:+2.8℃ ・耐⽕火住宅宅:+2.8℃ ・快適な時間がなくなり、 ⾮非常に不不快な時間が出現する 髙根ほか(2015) 136.8˚E 137˚E 25 30 35 (˚C) 20 137˚E 25 温熱快適性(SET*) ・温熱4要素 ・気温 ・湿度度 ・放射 ・気流流 ・⼈人体側2要素 ・代謝量量 ・着⾐衣量量 30 35 (˚C) 16 気候変動適応策としてのヒートアイランド対策 (b) 2070s ↓ 無対策の場合 排熱削減の場合 緑化の場合 PGW70 − CTRL Air PGW70_noAH − CTRL PGW70_GRN − CTRL 気温(℃) 電⼒力力需要 /floor m2) ⼈人⼯工排熱 ound m2) 温熱快適性 (℃) -37 -35 -33 -31 -29 -27 -1 1 3 5 (ºC) or (W/floor-m2) or (W/ground-m2) 7 9 まとめ 17 ❶都市部ではどの程度度の気温変化に適応する必要があるか? ⇨最⼤大気温上昇シナリオの2070年年代夏季で約+3℃ ❷このまま温暖化が続いたら、将来の我々の暮らしに (関係する値)はどうなるのか? ⇨電⼒力力需要:名古屋市全体で100万kW原発1.1基分相当の増加 温熱快適性:快適な時間がなくなり、 ⾮非常に不不快な時間が出現する ❸対策したら、どの程度度の効果があるのか? 緑化の場合 ⇨気温:名古屋市平均で−0.5℃程度度 電⼒力力需要:名古屋市全体で100万kW原発0.4基分相当 温熱快適性:名古屋市平均で−0.3℃程度度 (⾮非常に不不快な時間はなくならない) 18 アジアのメガシティへの展開 ・急激な発展が予測(⼟土地利利⽤用改変、⼈人⼝口増) ・年年中暑い ・エアコン普及 ! • Google mapより 421 USD/m2 263 USD/m2 – – = • + 10 (BMKG) どのような適応策が最も有効なのか? を費⽤用便便益分析により明らかにする -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0 500 1000 [USD/m2] 謝辞 本研究は、⽂文部科学省省「気候変動適応研究推進プ ログラム」の1研究課題(研究代表者:飯塚悟) および、環境省省の環境研究総合推進費(S-‐‑‒14)の サポートを受けました。また、本研究で実施した 数値シミュレーションは、筑波⼤大学計算科学研究 センター学際共同利利⽤用プログラムの⼀一環で実施し ました。 ※この資料料は2015年年11⽉月10⽇日開催の 第13回環境シンポジウムで⾏行行った 講演資料料を修正したものです。 19
© Copyright 2024 ExpyDoc