こころについて言葉で考えることをめぐって

横浜精神分析研究会 第 3 回 特別セミナー
心理療法家の仕事―こころについて言葉で考えることをめぐって―
NPO 法人子どもの心理療法支援会・御池心理療法センター
平井正三
最初に:
・書き言葉と話ことばの相違
話し言葉は、聞き手との間のやりとりの行為
しかし、話された言葉は書き留められうる=心の刻まれるかもしれない。
1.精神分析的心理療法の考え
1)心理療法=「一緒に心理的問題について考えること」
・協働関係であり、その根幹はコミュニケーション
・治療効果=内省活動の促進 内省活動=自己治癒力
2)精神分析、発達研究その他
・内省活動<―――>コミュニケーション
・投影同一化:コンテイナー-コンテインド関係
♀♂=考えることの基盤(ビオンの理
論)
・相互性、互恵性:自分(セラピスト)の中で完結しない、
「理解」はいつも協働作業
・タスティン「安全性のリズム」共同主体性/間主観性
・非言語的コミュニケーション、表現の重要性とともに、考えることとコミュニケーショ
ンにおける言葉の重要性
2.原点に立ち戻ってみる
1)言葉はいらないのか?―――言葉の機能をめぐって
*言葉はいらない、言葉は「縛り」
、言葉は混乱させる、言葉=「理屈」であり、感情、気
持を押さえつけ、
「癒し」にならない?言葉は「嘘」
「人工的」
―――>「言葉」からの解放が重要
*人間的なものの本質
ホモ・サピエンス 言語本能(遺伝子)
・ネアンデルタール人と音楽性=協働性 文化の一様性
1
・言語 協働性の発展=明細化・分節化・流動性 特に外的事象に関して。
心的事象は二次的?
・言語の発展
発話から書かれた言語へ
発話は行為、言葉はまず行為である
2)言葉の二重性 メリット&デメリット
言葉の意義:
① 考える道具。言葉は考え・感情を明確に伝える。形にすること。様々な他の考えと
のつながり。文法構造により、
「考えること」が効率よくできる。
経験の意味を拘束し、定義を明確にするので、混乱や嘘に対抗できる。
例)誰が?何を?という問いが可能。物事と物事との論理構造を可視的にし、吟
味可能。集団で共有できる=討議可能
② コミュニケーションの道具。
「とき」や「空間」を超えて伝えることができる=「達
成の言語」(ビオン)
*人と人とのつながりに開かれている。自分自身の経験が共有可能な「人類」の経験に位
置づけられる---文学(詩、小説)
、芸術…
デメリットはすべて上記の裏:嘘、誤解、ディスコミュニケーション、断絶を作りだすこ
と
例) 映画『禁じられた遊び』
3.心理療法の道具としての言葉
1)コミュニケーションと行為
発話はコミュニケーションとは限らない
① 非言語的・象徴的伝達行為
音楽性の水準、(ダンスの水準)
トレヴァーサン 原会話、音楽性、母親語
② 非言語的・非象徴的水準
・排泄 考えられないものを投げ入れる β幕(ビオン) 受けて次第でそれは「考え」にな
りうる。
③ 伝達以外の行為としての言語行為
2
・優位に立つ
・自分が正しいと
・関係性を規定していく
・相手を混乱させる
2)言語行為とポジション論
*コミュニケーションとしての言語行為=抑うつポジション、象徴性
分離性(他者性)を認める
*妄想分裂ポジション:相手に何かをすること=「行為」として
・政治的(操作)
、道徳的(罪悪感の投影)etc
・具象的な排泄行為 ことば=もの
3) 通じ合うことと通じないこと、ずれること
・クライアントの言葉の意味は、セラピストの想定している意味と異なるかずれているか
もしれない可能性
・クライアントが語ろうとしていることは何なのか?その表面的な言葉だけでは捉えられ
ない。経験の共有
ビオンの変形理論 O---(T)-Tβ
4) ことばにならないものとことばになるもの
・共有不能な経験
・経験自体、物自体
5) 嘘、詭弁、政治の現象学
例)相手の言説を過度に一般化し、それは成り立たないという理由で言説そのものを否定す
る。 「自分の気持ちを考えるのは嫌だという気持ちになるんですね」「先生は私が心理療
法に向いていないとおっしゃるんですね」
4.セラピストと言葉
1)心理療法行為と言葉
・観察-->記録-->スーパーヴィジョン・事例検討会・論文=公表
・記録=情緒経験を言葉にすること 自分自身が感じたこと、物思い、夢の記述
2)心理療法家の言葉
*解釈、介入の言葉
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・飽和と未飽和
反証可能性と不能性 根拠
・コミュニケーション?政治?説教?
*事例についてのコメント
・政治?
・飽和?未飽和?
・根拠、反証可能性
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