コンクリート中のアルギニンの存在形態と溶出特性に関する研究

コンクリート中のアルギニンの存在形態と溶出特性に関する研究
2014 年 9 月
佐 藤 和 博
1
目次
1.緒論
1.1 研究の背景と目的
1.2 既往の研究と本研究の特色
1.3 本論文の構成
2.コンクリート中でのアルギニンの存在形態
2.1 緒言
2.2 実験方法
(1) 水および酸・アルカリ溶液によるコンクリートからのアルギニン抽出方法
(2) コンクリート中のアルギニンの分布の把握
(3) ペーストと骨材へのアルギニンの吸着実験
(4) アルカリ性水溶液中でのアルギニンの分解
2.3 実験結果
(1) 水および酸・アルカリ溶液によるコンクリートからのアルギニン抽出
(2) コンクリート中のアルギニンの分布
(3) ペーストと骨材へのアルギニンの吸着特性
(4) アルカリ性水溶液中でのアルギニンの分解特性
2.4 コンクリート中でのアルギニンの存在形態に関する考察
2.5 結言
3.海水中でのアルギニンのコンクリートからの溶出特性
3.1 緒言
3.2 実験方法
(1) 海域に浸漬させたコンクリート中からのアルギニンの溶出速度の測定
(2) 海水水路に浸漬させたコンクリート中からのアルギニンの溶出速度の測定
(3) コンクリート内部のアルギニン濃度の変化の測定
3.3 実験結果
(1) 海域に浸漬させたコンクリート中からのアルギニンの溶出速度の経時変化
(2) 海水水路に浸漬させたコンクリート中からのアルギニンの溶出速度の経時変化
(3) コンクリート内部のアルギニン濃度の経時変化
3.4 コンクリート中からのアルギニンの溶出特性に関する考察
(1) アルギニンの存在形態と溶出特性
(2) 数年間の溶出特性
3.5 結言
4.結論
2
1. 緒 論
1.1 研 究 の背 景 と目 的
コンクリートは比 較 的 安 価 かつ施 工 性 高 く高 強 度 が得 られる材 料 として広 く使 用 され,国
土 保 全 のために人 工 護 岸 構 造 物 材 料 として重 要 な建 築 材 料 である.
近 年 ,護 岸 機 能 に加 えて自 然 環 境 と共 生 する機 能 を備 えたコンクリートの開 発 が進 んで
いる.多 くは多 孔 質 コンクリート 1 など生 物 の生 息 空 間 をもたせるよう形 状 に着 目 したものだが,
生 物 に栄 養 を供 給 するために各 種 スラグ材 を混 和 させたコンクリート 2 や焼 酎 粕 を混 和 させ
た性 状 に着 目 したコンクリート 3 などが開 発 されている.
本 研 究 で用 いたコンクリートもコンクリート中 にアミノ酸 のひとつである L-アルギニンを混 和
させており,環 境 活 性 コンクリート(Environmentally Active Concrete) の名 称 で徳 島 大 学 ,
日 建 工 学 (株 ),味 の素 (株 )により共 同 開 発 された.
L-アルギニンの分 子 式 は C6H14N4O2,分 子 量 は 174.20,示 性 式 は
H2NC(=NH)NHCH2CH2CH2CH(COOH)NH2 )である.水 生 動 物 の必 須 アミノ酸 に加 えら
れるものが多 く 8 , 9 ,生 体 内 で合 成 できないために外 部 から栄 養 として摂 取 する必 要 のある生
存 上 重 要 なアミノ酸 である.アルギニンの生 理 機 能 として,余 剰 アンモニアの除 去 や免 疫 力
の向 上 などが知 られている他 ,緑 藻 類 や藍 藻 類 に対 する効 果 についても検 討 されており
17
10~
,窒 素 源 として使 用 され,誘 導 期 を短 縮 する,他 のアミノ酸 の吸 収 を促 す,色 素 の生 成 を
促 進 するなどの効 果 が報 告 されている.
また,水 生 動 物 ではアミノ酸 が誘 引 物 質 として魚 類 に働 くことも知 られている
18
.魚 の種 類
によって,反 応 するアミノ酸 の種 類 は異 なるが,アルギニンに反 応 するものとして,ナマズ,う
なぎ,マダイなどが知 られている
18
.他 にも,鮭 の回 帰 行 動 には,生 まれた河 川 のアミノ酸 組
成 とそれを記 憶 する機 能 が働 いていることが知 られている
19,20
.
このアルギニン混 和 コンクリートを水 中 に沈 設 するとアルギニンが溶 出 して,コンクリート表
面 に付 着 する藻 類 の生 長 促 進
4,5
(図 1)や,生 物 を蝟 集 する効 果 が報 告 されている
6,7
.
このようにアルギニンは水 生 生 物 の生 育 に影 響 を及 ぼす有 用 な物 質 であるが, 生 物 に過
度 な影 響 を及 ぼさないためにも,アミノ酸 の溶 出 速 度 など適 切 な制 御 が必 要 である.
そこで,本 研 究 はコンクリート中 でのアルギニンの動 態 と海 水 中 への溶 出 特 性 を明 らかに
することを目 的 とした.
3
図 1 環 境 活 性 コンクリート上 の藻 類 繁 茂 状 況
5)
(左 :普 通 コンクリート,右 :環 境 活 性 コンクリート)
1.2 既 往 の研 究 と本 研 究 の特 色
アミノ酸 とコンクリートに関 する既 往 の研 究 については,コンクリートそのものにアミノ酸 を混
和 させた研 究 は見 あたらないが,セメント水 和 物 とアミノ酸 の関 係 はいくつかの検 討 がなされ
ている.
混 和 剤 の開 発 のために様 々な有 機 物 質 がセメント水 和 物 に与 える影 響 が確 認 されており,
アミノ酸 もアミノ基 (-NH2 基 )とカルボキシル(-COOH 基 )を持 つうえ側 鎖 によってさらに性 質
も変 わることから,セメント水 和 物 への影 響 が検 討 されている.
セメント水 和 物 のうちのケイ酸 カルシウム水 和 物 (CSH)と,各 種 アミノ酸 が結 合 したペプチ
ドとの結 合 状 態 を調 べたところ,アミノ酸 の種 類 によって複 数 の結 合 状 態 があることがわかっ
た
21
.通 常 の pH12 程 度 では以 下 のような状 態 を提 案 している.
① 側 鎖 のカルボキシル基 の酸 素 の負 電 荷 と,CSH 表 面 にある Ca の正 電 荷 で引 き合 ってい
る状 態
② アルギニン,リジン,アスパラギン( Asn)のように側 鎖 にアミノ基 と酸 素 の両 方 を持 つ者 は,
アミノ基 の水 素 が CSH の酸 素 と引 合 い,アミノ酸 の酸 素 は Ca を介 して CSH と引 き合 う.
③ 疎 水 性 の強 いロイシン(Leu)のようなアミノ酸 の側 鎖 は,疎 水 性 で弱 く引 き合 う.
4
Asn
Asp
COO
NH 2
H-C
H
CH 2
COOH
H-C NH 2
CH 2
O
C
O
Ca
2+
O-
Leu
-
O
Ca
C
CH 2
N
H
2+
H
O- O-
O-
COO
H-C NH 2
H
CH 2
CH 3 CH
3
O-
O-
CSH 表 面
図 アルカリ領 域 での CSH とアミノ酸 の結 合 の模 式 図
21
一 方 で,pH8.9 の pH が低 い状 態 では,Ca が尐 なく,アルギニンやリジンなどアミノ酸 も正
電 荷 を持 つものがあるので,そのときには側 鎖 の正 電 荷 と CSH の負 電 荷 が強 く引 き合 う.
Arg
Arg
COOH
COOH
HC
NH2
CH2
CH2
CH2
NH
C
HC
NH2
CH2
CH2
CH2
NH
C
NH3+ NH
NH3+ NH
O-
OCSH 表 面
図 弱 アルカリ性 でのアルギニンと CSH の結 合 の模 式 図
また,CSH 以 外 では,セメントの水 和 反 応 の初 期 に生 成 するエトリンガイトへのアミノ酸 の
5
影 響 が検 討 されている
22
.エトリンガイト結 晶 の形 状 は通 常 は六 角 柱 だが,エトリンガイト生
成 中 にアミノ酸 が表 面 に付 着 して成 長 を阻 害 することで,より細 長 い結 晶 になることが報 告 さ
れている.さらに,結 晶 の種 類 によっては成 長 だけでなく,結 晶 の生 成 を阻 害 するものもあっ
た.アルギニンもすこし阻 害 することが報 告 されている.
さらに,エトリンガイ トがセメント中 の石 膏 (CaSO 4 )と反 応 して生 成 するモ ノサルフェートと ,
アミノ酸 のひとつであるグリシンとの影 響 を検 討 した例 も報 告 されている
はエトリンガイト中 の Ca 2 + と Al(OH) 4 - の溶 出 を抑 制 して
23,24
23~26
.グリシン添 加
,モノサルフェート生 成 を抑 制 す
ることが報 告 されている.また,モノサルフェートを疑 似 海 水 中 に分 散 させると, Cl - と反 応 して
モノサルフェートはフリーデル氏 塩 を形 成 するが,グリシンはこの反 応 を抑 制 する
海 水 中 の Cl - 濃 度 はグリシン濃 度 が高 いほど低 下 する
25,26
25,26
.ただし,
.Cl - はモノサルフェートの層 間 の
OH-と交 換 して固 定 されることが知 られており,さらに,グリシンも同 様 にモノサルフェートの層
間 に固 定 されることが報 告 されていることから
25,26
,固 定 されていたグリシンが Cl - と交 換 して
Cl - の固 定 を促 進 した可 能 性 が考 えられる.
このように,CSH やエトリンガイト,モノサルフェートといったセメント水 和 物 へのアミノ酸 の
影 響 についてはいくつか検 討 されているが,その他 の骨 材 や空 隙 中 なども含 め,コンクリート
中 でのアミノ酸 の存 在 形 態 については検 討 がなされていない.
また,コンクリートからアミノ酸 が溶 出 する過 程 を検 討 した研 究 も見 あたらなかった.
さらに,コンクリート中 でのアミノ酸 について研 究 するためには,分 析 方 法 が必 須 であるが
その検 討 事 例 も見 あたらなかった.
したがって,はじ め にコンク リート中 のアルギニンの分 析 方 法 を 確 立 し てから,コンク リート
中 でのアルギニ ンの存 在 場 所 と その形 態 について,コンクリート中 のアルギニン 分 析 を 行 っ
て検 討 した.その後 ,海 水 水 路 にアルギニン混 和 コンクリートを設 置 して 1 年 間 の溶 出 挙 動
を追 跡 して,その溶 出 特 性 を検 討 した.
1.4 本 論 文 の構 成
本 論 文 の構 成 は以 下 の通 りである.
第 1 章 では,研 究 の背 景 として護 岸 のみならず環 境 保 護 機 能 を持 た せたコンクリートの役
割 を 述 べ,コンクリートに混 和 させたアルギニンの生 物 に対 する役 割 を述 べ て,海 域 での実
験 結 果 を示 してアルギニン混 和 コンクリートの有 用 性 を述 べた.そして,アルギニン混 和 コン
クリートからのアルギニンの溶 出 挙 動 を制 御 するために,既 往 の研 究 成 果 と研 究 課 題 を示 し,
6
本 研 究 の目 的 を示 した.
第 2 章 では,試 験 の容 易 なモルタルを作 成 して様 々 な条 件 で抽 出 してアルギニンの分 析
方 法 を検 討 した.その分 析 方 法 を用 いてアミノ酸 を混 和 したモルタルおよびコンクリート中 の
アルギニンの存 在 形 態 について検 討 するとともに,また,アルギニンの分 解 およびオルニチン,
シトルリンの生 成 反 応 も追 跡 し,コンクリート中 での挙 動 を検 討 した.
第 3 章 では,アルギニンを混 和 させたコンクリートを海 水 に沈 設 させて,その溶 出 挙 動 を把
握 し,数 年 間 の溶 出 特 性 について考 察 した.
第 4 章 では,本 研 究 で得 られた主 要 な結 果 をまとめて結 論 とした.
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9
2.コンクリート中 でのアルギニンの存 在 形 態
2.1 緒 言
アルギニンは水 溶 性 のアミノ酸 であり,コンクリート作 成 時 のフレッシュコンクリート中 では水
に全 量 溶 解 しているものと考 えられる.しかしながら,セメント水 和 反 応 が進 行 してコンクリート
が硬 化 すると,セメントと水 が結 合 するためにアルギニンが溶 解 できる水 分 は減 尐 すると考 え
られる.このときアルギニンのみならず有 機 物 がコンクリート中 でどのような挙 動 を示 すのか報
告 された論 文 はみあたらない.水 分 が減 尐 した分 だけ水 溶 液 中 の濃 度 が高 くなるのか,ある
いは飽 和 溶 解 度 を超 えて濃 度 が高 まって結 晶 化 することも考 えられる.そしてセメント水 和
反 応 で生 成 した水 和 物 は水 には溶 けにくく,アルギニンが水 和 物 中 に混 入 した場 合 には,
水 中 にコンクリートを沈 設 しても溶 出 しないことが考 えられる.したがって,アルギニンの存 在
形 態 をコンクリート中 の水 に可 溶 な成 分 と非 可 溶 性 の成 分 とに区 分 することを考 えた.
ここでは,試 験 の容 易 なモルタルを作 成 して,水 をはじめ酸 ,アルカリを使 ってさまざまな
条 件 で抽 出 し,アルギニンの存 在 形 態 を類 推 した.
また,抽 出 条 件 を最 適 化 してコンクリート中 のアルギニンを分 析 する方 法 を確 立 した.
また一 方 で,アルギニンは強 アルカリ性 の水 溶 液 中 では分 解 して,オルニチンやシトルリン
といった他 のアミノ酸 を生 成 する.コンクリートは生 コンクリートの段 階 から強 アルカリ性 であり,
アルギニンが分 解 する可 能 性 がある.アルギニンの分 解 及 びオルニチン,シトルリンの生 成
反 応 を追 跡 した.
2.2 実 験 方 法
(1) 水 および酸 ・アルカリ溶 液 によるコンクリートからのアルギニン抽 出 方 法
① 実 験 に用 いた供 試 体 組 成
ポルトランドセメントを用 いて,Table 1 に示 した組 成 でアルギニンを混 和 させたモルタル及
びコンクリートを作 製 して,2 か月 間 風 乾 養 生 し,実 験 に用 いた.アルギニンはセメントに対 し
て 3%混 和 させた.モルタル供 試 体 はφ5cm x 10cm,コンクリートのそれはφ5cm x 10cm で,
いずれも円 柱 である.
10
表 1 モルタルとコンクリート組 成
Name
W/C
Composition[%]
Arg/C
[%]
W
C
S
G
Arg
[%]
NM-3
40.0
11.9
29.7
57.4
0.0
1.0
3.3
NC-3
58.5
6.4
11.0
38.0
44.3
0.3
3.0
※W:水 , C:セメント, S:細 骨 材 , G:粗 骨 材 , Arg:アルギニン
② モルタルからの水 抽 出
はじめに,添 加 アルギニン量 に対 する抽 出 回 収 率 と抽 出 水 量 との関 係 を調 べた.モルタ
ル NM-3 を 90m 未 満 まで粉 砕 して,それぞれ 50,100,200,250,500,1000ml の超 純 水
に 1g ずつ分 散 させて 1 時 間 撹 拌 した.懸 濁 液 を濾 紙 で分 離 した後 に抽 出 液 中 のアルギニ
ンを HPLC で分 析 した.アルギニン分 析 については,HPLC にて検 出 されるアルギニン(Arg),
オルニチン(Orn),シトルリン(Cit),アンモニア(NH 4 ,アルギニン由 来 )をすべてアルギニン換
算 して,合 算 した総 アルギニン量 をアルギニン濃 度 とした. また同 様 に抽 出 液 中 の Ca と Si
濃 度 を原 子 吸 光 法 で分 析 した.
続 いて,水 抽 出 時 間 と回 収 率 の関 係 を検 討 した.粉 砕 した NM-3 1g を秤 量 して,500ml
の超 純 水 に分 散 させて撹 拌 させながら抽 出 液 中 のアルギニン濃 度 変 化 を追 跡 した .
③ 水 抽 出 残 渣 からの酸 ・アルカリ抽 出
酸 抽 出 では,水 抽 出 後 の濾 過 残 渣 に塩 酸 を添 加 して,残 存 するアルギニンを抽 出 した.
モルタル NM-3 を 90m まで粉 砕 した粉 末 1g ずつを水 500ml に分 散 させて 2 時 間 撹 拌 後
に,濾 別 して残 渣 を得 た.その残 渣 に対 して,それぞれ塩 酸 の濃 度 ( 0.1,0.5,2N)と量 (100,
250,500ml)を変 えた条 件 で,1 時 間 抽 出 した.酸 抽 出 後 に濾 過 した抽 出 液 中 のアルギニン,
Ca,Si 濃 度 を分 析 した.アルギニン濃 度 は上 述 したように,アルギニン,オルニチン,シトルリ
ン,アンモニアをアルギニン換 算 して合 算 した値 を用 いた.
アルカリ抽 出 では,酸 抽 出 後 の濾 過 残 渣 に NaOH 溶 液 を添 加 して,残 存 するアルギニン
を抽 出 した.モルタル NM-3 を粉 砕 した粉 末 1g ずつを水 500ml で 2 時 間 抽 出 した.濾 別
後 の残 渣 に 2N HCl 500ml を加 えて 1 時 間 抽 出 .さらに濾 別 した酸 抽 出 残 渣 に,それぞれ
NaOH の濃 度 (0.1,0.5,2N)と量 (50,100,250ml)を変 化 させた条 件 で,1 時 間 抽 出 した.
11
アルカリ抽 出 後 に濾 過 して,抽 出 液 中 のアルギニン,Ca,Si 濃 度 を分 析 した.
(2) コンクリート中 のアルギニンの分 布 の把 握
コンクリート NC-3 のブリージングによる鉛 直 方 向 の組 成 分 布 を確 認 した.供 試 体 を深 さ方
向 に垂 直 に切 断 して複 数 の断 片 ごとにアルギニン,Ca,水 分 濃 度 を分 析 した.
水 分 濃 度 は,90m まで粉 砕 した供 試 体 を 105℃ 12 時 間 乾 燥 させたときの乾 燥 減 量 を
自 由 水 として求 め,950℃ 1 時 間 加 熱 した時 の強 熱 減 量 から自 由 水 分 を引 いた値 を結 合 水
として求 めた.
(3) ペーストと骨 材 へのアルギニンの吸 着 実 験
骨 材 はセメント協 会 より入 手 した標 準 砂 を用 いた.ペーストは W/C70%のアルギニンを含 ま
ないペーストを作 製 した.それぞれ 90m まで粉 砕 して 1g を秤 量 し,100mg/dl の Arg 水 溶
液 50ml に分 散 させて,塩 酸 で pH を調 製 した後 に,20℃で 1 時 間 撹 拌 した.撹 拌 後 に濾 紙
で濾 過 して清 澄 液 を得 た.HPLC でアルギニン濃 度 を測 定 し,溶 液 中 の減 尐 量 を,骨 材 と
ペーストへの吸 着 量 として吸 着 等 温 線 を作 成 した.なお,本 清 澄 液 にアルギニンを添 加 して,
溶 存 態 のアルギニンが減 尐 していないことを確 認 した.
(4)アルカリ水 溶 液 中 でのアルギニンの分 解 挙 動
アルギニンを水 に溶 かして 9g/dl(517mmol/L)の水 溶 液 を調 製 した。塩 酸 、及 び NaOH を
用 いて所 望 の pH に調 製 した後 に、ウォーターバス中 で一 週 間 振 盪 した。振 盪 中 の水 溶 液
を採 取 し、HPLC にて Arg,Orn, Cit の濃 度 変 化 を追 跡 した。
続 いて,分 解 速 度 ,生 成 速 度 ともに一 次 反 応 速 度 式 に従 うものとして、それぞれ反 応 速
度 式 を以 下 の(1)~(3)式 で表 し,実 験 結 果 より反 応 速 度 定 数 を決 定 した。
アルギニン分 解 速 度 式
C Arg  k Arg C Arg ,i exp  k Arg t 
(1)
オルニチン生 成 速 度 式
COrn  COrn,i 
k Orn C Arg ,i
k Arg
1  exp  k t 
Arg
(2)
シトルリン生 成 速 度 式
CCit  CCit ,i 
k Cit C Arg ,i
k Arg
1  exp  k t 
Arg
(3)
12
ここで,
C Arg :アルギニン濃 度 [M], k Arg :アルギニン分 解 定 数 ,C Arg , i :アルギニン初 濃 度 [M],
t:時 間 [hr],C O r n :オルニチン濃 度 [M],C O r n , i :オルニチン初 濃 度 [M],
k O r n :オルニチン分 解 定 数 ,C C i t :シトルリン濃 度 [M],C C i t , i :シトルリン初 濃 度 [M],
k C i t : シトルリン分 解 定 数
オルニチンとシトルリンの生 成 速 度 は,アルギニン濃 度 に比 例 するものとして,以 下 のよう
に(2)式 と(3)式 を導 出 した.
オルニチンの生 成 速 度 はある時 刻 でのアルギニン濃 度 に比 例 するとして,(4)式 で表 す.
dCOrn
 kOrnC Arg
dt
(4)
(4)式 を時 刻 t=0 から t まで積 分 すると,(5)式 が得 られる.

COrn
COrn,i
t
dCOrn   kOrnC Arg dt
0
(5)
(5)式 の左 辺 は以 下 のように計 算 できる.

COrn
COrn,i
dCOrn  COrn COrn
 COrn  COrn,i
Orn,i
C
(6)
(5)式 の右 辺 を計 算 は以 下 のように計 算 できる.
t
k
0
Orn
C Arg dt
 k Orn  C Arg ,i exp  k Arg t dt  k OrnC Arg ,i  exp  k Arg t dt
t
t
0
0
t
 1

k OrnC Arg ,i
k OrnC Arg ,i
t
 k OrnC Arg ,i 
exp  k Arg t  
exp  k Arg t   exp 0 0 
 k Arg 
 k Arg  exp  k Arg t   1
  k Arg 
 0

k OrnC Arg ,i
k Arg


1  exp  k t 
Arg
(7)
(6)式 と(7)式 より(2)式 を得 た.シトルリンも同 様 に(3)式 を導 出 した.
2.3 実 験 結 果
(1) 水 および酸 ・アルカリ溶 液 によるコンクリートからのアルギニン抽 出
①モルタルからの水 抽 出
13
抽 出 水 の水 量 に対 する回 収 率 を図 2 に示 した.また併 せて,Ca と Si の回 収 率 をそれぞれ
示 した.アルギニンは抽 出 水 量 にしたがって回 収 率 が増 加 し,500ml 以 上 で約 79%と回 収 率
は一 定 となり,アルギニンの溶 出 実 験 には 1gのモルタルに対 して 500mL の蒸 留 水 で十 分 で
あることがわかった.なお,Ca と Si では,1000ml の水 で抽 出 した時 にはそれぞれ 31%と 11%
が回 収 されたが,1000ml を超 えても,回 収 率 は増 加 する傾 向 にあった.
100
Recovery ratio [%]
80
Arg
Ca
Si
60
40
20
0
0
200
400
600
800
1000
Water volume [ml/g]
図 2 抽 出 水 量 に対 する Arg,Ca,Si の回 収 率 の変 化
② 水 抽 出 時 間 の回 収 量 への影 響
抽 出 水 量 を固 定 して回 収 率 の時 間 変 化 を追 跡 した結 果 を図 3 に示 した.アルギニンも Ca
も抽 出 初 期 より急 速 に溶 出 して 1 時 間 でほぼ上 限 に達 した.このことから,アルギニンの回 収
率 が上 限 に達 した 500ml を超 えても Ca の回 収 率 が増 加 したことは,Ca の溶 解 速 度 ではなく
飽 和 溶 解 度 が回 収 率 の律 速 となっていたためと考 えられた.
14
100
Arginine
Ca
Recovery ratio [%]
80
60
40
20
0
0
5
10
15
20
25
Time[hrs]
図 3 水 抽 出 時 間 に対 する Arg と Ca の回 収 率 の変 化
③ 塩 酸 による抽 出
水 抽 出 残 渣 から塩 酸 で抽 出 した結 果 を図 4 に示 した.濃 度 と液 量 を変 化 させた結 果 ,5~
7%のアルギニンを抽 出 でき,容 量 を増 加 させるほど回 収 率 は増 加 した.
Recovery ratio of Arginine [%]
10
100ml
250ml
500ml
8
6
4
2
0
0
0.5
1
1.5
Acid Concentration [N]
2
図 4 水 抽 出 後 の塩 酸 抽 出 でのアルギニン回 収 率
また,塩 酸 で抽 出 した Ca と Si の回 収 率 を図 5 と 6 に示 した.Ca 回 収 率 は,100ml では 50%,
250ml,500ml のときは 60%が回 収 されたが,塩 酸 濃 度 による違 いは見 られず一 定 だった.
15
Si 回 収 率 は液 量 を増 すほど増 加 した.また,2N の塩 酸 で抽 出 した際 には回 収 率 がやや減
尐 した.これは,ケイ酸 塩 溶 液 に強 酸 を添 加 してケイ酸 塩 ゲルが沈 殿 するために 1 ,塩 酸 抽 出
液 中 に回 収 できなかったためと考 えた.
Recovery ratio of Ca [%]
100
100ml
250ml
500ml
80
60
40
20
0
0
0.5
1
1.5
2
Acid Concentration [N]
図 5 塩 酸 抽 出 での Ca 回 収 率
120
100ml
250ml
500ml
Recovery ratio of Si [%]
100
80
60
40
20
0
0
0.5
1
1.5
2
Acid Concentration[N]
図 6 塩 酸 抽 出 での Si 回 収 率
16
④ NaOH での抽 出
酸 抽 出 残 渣 から NaOH で回 収 した結 果 を図 7~9 に示 した.濃 度 を上 げると混 和 量 の 2~
8%のアルギニンを回 収 できた一 方 で,Ca はほぼ回 収 されず,Si は 1~3%回 収 率 だった.
10
50ml
100ml
250ml
Recovery Ratio [%]
8
6
4
2
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
Alkali concentration[N]
図 7 酸 抽 出 残 渣 からのアルカリ抽 出 での Arg 回 収 率
Recovery ratio of Ca [%]
10
50ml
100ml
250ml
8
6
4
2
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
Alkali concentration [N]
図 8 アルカリ抽 出 での Ca 回 収 率
17
Recovery ratio of Si [%]
10
50ml
100ml
250ml
8
6
4
2
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
Alkali concentration [N]
図 9 アルカリ抽 出 での Si 回 収 率
⑤ 全回収率
各 抽 出 操 作 で,水 500ml,2N 塩 酸 500ml,2N NaOH 200ml で抽 出 した各 成 分 の回 収 率 を
表 2 に示 した.水 抽 出 の結 果 から,コンクリートを水 中 に沈 設 したときには,最 大 で混 和 量 の
80%ほどが溶 出 ,回 収 された.また酸 アルカリ溶 液 を用 いた抽 出 操 作 によって,セメントの水 和
物 が壊 され Ca とアルギニンはさらに 10%ほど回 収 率 は増 加 した.一 方 で,Si の回 収 率 は約
80%であったが,これは強 酸 の抽 出 操 作 でケイ酸 塩 ゲルが析 出 して,抽 出 液 中 には溶 解 せず
に沈 殿 したものが回 収 できなかったためと考 えられた.
また,各 抽 出 液 中 の濃 度 を表 3 に示 した.水 抽 出 液 中 の Ca は水 中 の飽 和 溶 解 度 よりも低
い濃 度 を示 し,未 反 応 のセメント成 分 と可 溶 性 の結 晶 成 分 だけが抽 出 されたものと考 えた. Si
は Ca/Si 比 が高 い時 には溶 解 度 が下 がることから 2 , 3 ,飽 和 濃 度 に達 していたために回 収 率 が
低 かったと考 えた.アルギニンは各 抽 出 操 作 で飽 和 溶 解 度 4 には達 しておらず,セメント水 和
物 成 分 の溶 解 が抽 出 の要 点 であることがわかった.
18
表 2 各 抽 出 操 作 での回 収
[%]
Arginine
Ca
Si
Water
78.2
31.0
11.9
Acid
10.3
59.8
67.4
Alkali
1.9
0.4
1.9
Total
90.4
91.2
81.2
表 3 各 抽 出 操 作 時 の溶 質 濃 度 [10 - 3 M]
Arginine
Ca
Si
0.05
1.13
0.17
(90) *
(2-3) *
(0.1-0.2) *
0.01
2.18
0.95
Water
Acid
(230) *
Alkali
0.00
0.01
0.03
Total
0.06
3.32
1.15
*: solubility
(2) コンクリート中 のアルギニンの分 布
コンクリート作 成 時 のブリージングのアルギニンへの影 響 を観 察 するために, NC-3 円 柱 供 試
体 を,打 設 時 の上 面 から深 さ方 向 に垂 直 に輪 切 りにした断 片 中 の各 成 分 を分 析 し,その結
果 を表 4 に示 した.アルギニン濃 度 は上 方 ほど濃 く,骨 材 との比 重 差 で上 方 に移 動 する Ca と
同 様 の傾 向 を示 した.このことから,アルギニンはコンクリート製 作 時 に,水 に溶 解 し,コンクリ
ート上 層 に移 動 したと考 えられた.
19
表 4 円 柱 形 コンクリートの組 成 分 布
Depth
Arginine
Ca
Free Water
Combined Water
[cm]
[%]
[%]
[%]
[%]
0.5
0.30
6.1
2.0
5.2
1.5
0.29
5.9
1.9
4.8
9.0
0.27
5.6
1.5
4.7
17
0.26
5.7
2.0
5.2
(3) ペーストと骨 材 へのアルギニンの吸 着 特 性
コンクリートの細 孔 溶 液 中 では負 に帯 電 したセメント水 和 物 の表 面 に正 電 荷 をもつ Ca が電
気 的 に吸 着 しており
5 , 6, 7
,セメント水 和 物 の溶 解 とともに,Ca の溶 出 に影 響 を与 える.
アルギニンもまたアミノ基 とカルボキシル基 が水 溶 液 中 で解 離 してイオンとなるため電 荷 をも
つ(図 10)ことから,ペーストや骨 材 に対 する吸 着 特 性 を検 討 するために,アルギニン水 溶 液
の pH を変 化 させて,セメントペースト及 び骨 材 への吸 着 平 衡 を調 べた.その結 果 ( 図 11)から,
中 性 から弱 アルカリ性 でアルギニンの吸 着 が観 察 された一 方 で,pH12 以 上 の強 アルカリ条
件 では吸 着 されなかった.このことから,コンクリートを製 作 して間 もない初 期 には,強 アルカリ
環 境 となっているため,アルギニンの多 くは吸 着 せず,自 由 水 中 に存 在 しているが,沈 設 して
時 間 が経 過 し,pH が十 分 に下 がるとその多 くが吸 着 しやすくなると考 えられた.
この吸 着 挙 動 をアルギニンの解 離 状 態 から考 えると,図 12 に示 したようにアルギニンは中 性
から弱 アルカリ条 件 では一 部 が正 に帯 電 しており,強 アルカリでは無 電 荷 か負 に帯 電 してい
る.ペーストや骨 材 は負 電 荷 をもつので,強 アルカリでは吸 着 しないが,中 性 から弱 アルカリで
は吸 着 しているものと考 えられた.以 上 のアルギニンの吸 着 特 性 を Freundlich 式 の吸 着 等 温
式 で表 すことができた(図 13).
20
Alkali
Acid
COOH
COOH
COO-
pH
COO-
HC
HC
HC
HC
NH3+
NH2
NH2
NH2
CH2
CH2
CH2
CH2
+
+
+
CH2 - H
CH2 - H
CH2 - H
CH2
CH2
CH2
CH2
CH2
+
+ H+ NH
+ H+ NH
NH + H
NH
C
C
C
C
NH3+ NH
NH3+ NH
Positive
NH3+ NH
Zero
Electrical Charge
NH2
NH
Negative
図 10 アルギニンの水 溶 液 中 での解 離 状 態
Adsorbed Arginine [mg/g]
5
4
Paste
Aggregate
Neutral pH
3
Mildly
alkaline
pH9 - 11
2
1
Strong alkaline pH12
-
0
10
20
30
40
50
60
Arginine concentration[mg/dl]
70
図 11 アルギニンのペーストおよび粗 骨 材 への吸 着 平 衡
21
100
Composition of ion [%]
Arg(+)
80
Arg
Arg(-)
60
40
20
0
7
8
9
10
11
pH
12
13
14
Arg(+): 正 電 荷 のアルギニン
Arg(-): 負 電 荷 のアルギニン
図 12 アルギニンの酸 解 離 曲 線
10
Adsorbed Arginine [mg/g]
○ Paste
△ Aggregate
1
y = 1.05 * x^(0.33)
y = 0.25 * x^(0.76)
0.1
0.01
0.01
0.1
1
10
100
Positive ion of Arginine [mg/dl]
図 13 アルギニン正 電 荷 のペーストや骨 材 への吸 着 平 衡
(4)アルカリ水 溶 液 中 でのアルギニンの分 解 挙 動
アルギニンは強 アルカリ性 の水 溶 液 中 では分 解 して,オルニチンとシトルリンというアミノ酸
と副 生 物 としてアンモニアを生 成 する.コンクリート中 の自 由 水 は pH12~13 という強 アルカリ
であり,アルギニンの分 解 が懸 念 された.一 方 で,オルニチンやシトルリンはいずれもさまざま
な生 体 機 能 をもつアミノ酸 として知 られており, アルギニン同 様 に水 圏 の生 物 に対 してさまざ
22
まな好 影 響 を与 えることが期 待 できる.
ここでは,純 水 中 のアルギニンの分 解 挙 動 を把 握 し,実 際 にモルタルやコンクリート中 の挙
動 と比 較 した.
① 純 系 アルカリ性 水 溶 液 中 のアルギニンの分 解 挙 動
アルギニン水 溶 液 (25℃,pH13)中 のアルギニン,オルニチン,シトルリン濃 度 の経 時 変 化
を図 14 に示 した.150 時 間 で約 10%のアルギニンが分 解 して濃 度 が減 尐 し,オルニチン,シ
トルリンが生 成 した.
50
500
Arg
40
30
300
20
200
Orn
Cit
100
0
0
50
100
Orn, Cit [mM]
Arg[mM]
400
10
0
150
Time[hr]
図 14 アルギニン水 溶 液 中 (pH13,25℃)のアルギニン
(Arg),オルニチン(Orn)およびシトルリン(Cit)の濃 度 変 化
続 いて,温 度 ,pH を変 化 させた実 験 結 果 から,25℃での反 応 速 度 定 数 を得 た(表 5).ア
ルギニンの等 電 点 pH11.5 と pH13 では約 10 倍 の速 度 で反 応 が進 行 することが分 かった.
また,pH12 と pH13 では,アルギニンの分 解 は約 5 倍 で進 行 し,オルニチン,シトルリンが生
成 することが分 かった.コンクリート中 では,水 セメント比 やセメント量 など組 成 の違 いで,アル
ギニンの分 解 に差 が生 じることが推 察 された.
23
表 5 25℃での分 解 定 数 k A r g と生 成 定 数 k O r n 及 び k C i t
[1×10 - 6 /hr]
pH13
pH12.8
pH12
pH11.5
kArg
770
550
150
66
kOrn
810
430
33
6.8
kCit
72
41
4.4
1.1
② モルタル中 のアルギニンの分 解 挙 動
2.3(1)で示 したモルタル NM-3 の抽 出 操 作 で採 取 した抽 出 液 中 の,アルギニン,オルニチ
ン,シトルリン,アンモニア組 成 を図 15 に示 した.2 か月 の養 生 後 に粉 砕 して水 抽 出 した結
果 ,すでに分 解 反 応 が進 行 し,オルニチン,シトルリンが生 成 して いた.水 抽 出 ,酸 抽 出 とも
に,アルギニンはほとんど存 在 せず,オルニチン,シトルリンが主 成 分 だった.
さらに,アルカリ抽 出 液 は 99.8%がシトルリンであった.これは,抽 出 操 作 に用 いた NaOH
は 0.1N 以 上 であり,pH13 を超 える強 アルカリ性 のなかで抽 出 したために,抽 出 操 作 中 にわ
ずかに残 ったアルギニンがすべて分 解 してしまったものと考 えた.
100
Proprttion[%]
80
60
40
20
0
Water
Acid
Alkali
Extraction Method
Arg
Orn
Cit
NH4
図 15 モルタルの各 抽 出 段 階 での Arg,Orn,Cit,NH4 の組 成
24
③ コンクリート中 のアルギニンの分 解 挙 動
さらに,2.3(2)で示 したコンクリート NC-3 の抽 出 液 中 の,アルギニン,オルニチン,シト
ルリン,アンモニア組 成 を図 16 に示 した.NM-3 よりもアルギニンの割 合 が高 く,その分 オル
ニチンが尐 なかった.これは,NC-3 のほうが NM-3 よりもセメント含 量 が尐 なくてアルカリ性 が
弱 かったために,アルギニンの分 解 が,NM-3 よりも進 行 しなかったものと考 えた.
100
Proprtion[%]
80
Arg
Orn
Cit
NH4
60
40
20
0
図 16 コンクリートの各 抽 出 段 階 での Arg,Orn,Cit,NH4 の組 成
2.4 コンクリート中 でのアルギニンの存 在 形 態 に関 する考 察
これまでの結 果 より,コンクリート中 では水 溶 性 のアルギニンの 80%,非 水 溶 性 の成 分 が
20%存 在 することがわかった.ここでは,さらにそれらの存 在 形 態 について考 察 する.
水 溶 性 の成 分 の内 訳 を NC-3 の分 析 結 果 を例 にとって考 察 した結 果 を Table 5 に示 す.は
じめに,セメント,骨 材 ,水 ,とアルギニンを加 えた時 には,すべてのアルギニンは水 に溶 解 す
ると考 えると,その濃 度 は 5.2g/100g-H 2 O となる.セメント水 和 反 応 が進 行 すると,セメント成 分
の水 和 に水 が使 われるために,アルギニンは残 った未 反 応 の水 中 に濃 縮 される. NC-3 の自
由 水 濃 度 を測 定 すると,その濃 度 は初 期 組 成 の約 4 倍 だった.この自 由 水 中 にアルギニンが
濃 縮 されるとその濃 度 は 19g/100g-H 2 O になる.これは,アルギニンの 25℃での飽 和 溶 解 度
とほぼ等 しかった 4 .溶 解 されていないアルギニンは,析 出 したり,セメント水 和 反 応 の生 成 物
である Ca(OH) 2 の結 晶 と結 晶 の間 に取 り込 まれるものもある 8 と考 えられる.また,表 面 近 くで
は水 分 が蒸 発 してアルギニン結 晶 が析 出 するものも,微 量 であるが存 在 すると思 われるが,そ
の割 合 は今 後 の検 討 課 題 である.
25
上 田 らが NC-3 と同 じセメントあたり 3%のアルギニン入 りモルタルを作 成 して細 孔 溶 液 中 の
アルギニン濃 度 を調 べたところ,その濃 度 は 4.2~5.5g/100g_H2O だった
9, 1 0 , 11
.
これらのモルタルの初 期 組 成 におけるアルギニン濃 度 は 4.8~5.5g/dl であり,概 ね硬 化 後
の細 孔 溶 液 中 の濃 度 に等 しかった(表 7).この結 果 は,セメント水 和 反 応 で水 分 が使 われた
ときにその水 に溶 けていたアルギニンは未 反 応 の水 のなかで濃 縮 されていないことを示 してい
る.水 和 反 応 に使 用 された水 に含 まれていたアルギニンは析 出 したり,反 応 物 中 に取 り込 ま
れていて,水 には溶 解 していないものと考 えられる.
表 7 モルタル組 と硬 化 後 の細 孔 溶 液 中 のアルギニン濃 度
Composit ion [%]
Name
W/C [ %]
W
C
S
NaCl
Arg
Arg/C
[ wt%]
Initilal Arg/W
[g/100g H2O]
Arg in Pore
Solution
[g/100g H2O]
HN-3
55
13.0
23.7
62.1
0.4
0.7
3.0
5.5
4.5-5.5
SN-3
58.5
12.4
20.3
66.3
0.4
0.6
3.0
4.9
4.2
同 様 のことが NC-3 でも起 こっているものと考 えると,可 溶 性 のアルギニンは全 体 の 80%存
在 するものの,初 期 組 成 に対 して自 由 水 が 1/4 になっていることから,実 際 に自 由 水 中 で溶
けているアルギニンは全 体 の 25%程 度 であり,残 りの 55%は可 溶 性 ではあるものの,アルギニ
ン結 晶 として析 出 したり,ブリージング水 とともにコンクリート表 面 で析 出 したり,Ca(OH) 2 結 晶
に取 り込 まれて存 在 しているものと考 えた.
表 6 アルギニンの存 在 形 態
Free water
Ratio of
Soluble in
Arginine crystal
existing form
water
Bleeding
[%]
25
55
Ca(OH) 2
Insoluble in water
20
2.5 結 言
コンクリート中 のアルギニンの存 在 形 態 について検 討 し,以 下 のことが明 らかになった.
① コンクリート中 のアルギニンの 90%を回 収 できた.
26
② コンクリートに混 和 させたアルギニンの約 80%は可 溶 性 の状 態 として存 在 している.
③ コンクリート中 の可 溶 性 のアルギニン 80%は,自 由 水 中 に 25%,残 り 55%は結 晶 化 してい
る.
④ アルギニンの pH による電 荷 の違 い(Arg+,Arg±,Arg-)を考 慮 することで,正 電 荷 のア
ルギニンがペーストと骨 材 に吸 着 することを明 らかにできた.
⑤ コンクリート作 製 時 にアルギニンは分 解 反 応 が進 行 し,コンクリート中 にはアルギニン,オ
ルニチン,シトルリンの 3 種 類 のアミノ酸 が存 在 している.
参考文献
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ート論 文 集 ,44,pp726-731(1990)
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3. J. J. Chen, J. J. Thomas, H. F. W. Taylor and H. M. Jennings, “Solubility and structure
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pp.54-60(2011).
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hardened cement paste considering calcium leaching”, Cement Science and Concrete
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8. J.W. Mullin, “Crystallization fourth edition”, pp.216 -288 (2001) Butterworth
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9. 上 田 隆 雄 ,佐 藤 和 博 ,飯 干 富 宏 ,宮 川 豊 章 ,“アルギニンを混 入 したコンクリートの塩 害
27
抵 抗 性 能 に関 する研 究 ”,セメント・コンクリート論 文 集 ,投 稿 中 (2014)
10. 藤 田 亜 也 ,”アルギニンを添 加 した環 境 活 性 コンクリートの耐 塩 害 性 に関 する検 討 ”,徳
島 大 学 卒 業 論 文 ,2013.
11. 吉 光 涼 ,”アミノ酸 を添 加 した環 境 活 性 コンクリート中 の鉄 筋 腐 食 に関 する検 討 ”,徳 島
大 学 卒 業 論 文 ,2014.
28
3.海 水 中 でのアルギニンのコンクリートからの溶 出 特 性
3.1 緒 言
コンクリートを海 水 に沈 設 すると,Ca や Na,K などのアルカリ成 分 とともにアルギニンも溶
出 することが知 られている.アルカリ成 分 の溶 出 については多 くの報 告
1~3)
があるが,コンクリ
ートからのアミノ酸 の溶 出 特 性 についての詳 細 は不 明 である.
そこで,アルギニン混 和 コンクリートを海 水 に沈 設 して,その溶 出 挙 動 を把 握 し,長 期 寿 命
の可 能 性 を検 討 した.
3.2 実 験 方 法
(1) 海 域 に浸 漬 させたコンクリート中 からのアルギニンの溶 出 速 度 の測 定
アルギニンをセメントに対 して 10%含 むコンクリート NC-10(表 7,サイズ横 30 cm x 縦 30
cm x 厚 み 7 cm)を作 成 し海 に設 置 した.定 期 的 に引 き上 げて,φ2 cm x 2 cm のコアを表
面 から奥 に 2 つ(0~2 cm の表 層 と 2~4 cm の中 層 )採 取 した.コアを海 水 かけ流 し水 槽 に
2 週 間 設 置 して,藻 類 を繁 茂 させたあとに剥 ぎ取 り,このときの藻 類 の生 長 の指 標 として
Chl.a を分 析 した.その後 藻 類 をはぎ取 ったコアを 溶 出 試 験 に供 した.コアは表 面 の一 面 の
みを 残 し てテフ ロン性 の シールテープで 被 覆 し ,アルギニンの溶 出 面 を 限 定 し た.その 後 ,
100 mLの容 器 内 に滅 菌 人 工 海 水 (塩 分 30 psu)を 50 mL 入 れ,そこにコーティング処 理 を
行 ったコンクリートを浸 漬 し,150 rpm で振 とうさせた.溶 出 時 間 は 24 時 間 ,水 温 は 20℃ で
行 った.溶 出 液 を HPLC にて分 析 し,アルギニン,オルニチン,シトルリン,アンモニアを分 析
し,それぞれアルギニン換 算 して合 算 した濃 度 を,溶 出 液 中 のアルギニン濃 度 とした.
表 7 コンクリート組 成
Name
W/C
Composition[%]
Arg/C
[%]
W
C
S
G
Arg
[%]
NC-10
45.8
6.5
14.3
31.8
46.0
1.4
10
NC-0
45.8
6.7
14.5
32.2
46.6
0
0
29
(2) 海 水 水 路 に浸 漬 させたコンクリート中 からのアルギニンの溶 出 速 度 の測 定
実 験 に用 いたコンクリート 6 種 類 の組 成 を表 1 に示 した。それぞれ,高 炉 セメントを使 って
アルギニン濃 度 の異 なる BB-1、BB-3、BB-5 と,対 照 品 として、普 通 ポルトランドセメントを使
った NN-3,そして、BB-3 の上 面 を濃 度 の薄 いモルタルでキャッピングした CB-05(厚 み
5 mm)、CB-10(厚 み 10 mm)である。
ブロックは直 径 10 cm x 高 さ 20 cm の円 柱 状 で、水 と接 する上 面 以 外 は耐 水 性 の樹 脂 で
被 覆 されている。接 水 面 積 は 78.5 cm 2 となる。30 日 の養 生 後 、ブリージングの影 響 を回 避 す
るため樹 脂 コーティング前 に、BB-1,BB-3,BB-5,NN-3 の両 端 を 1 cm ずつカットした。CB-05
と CB-10 は上 面 をキャッピングしているので、底 面 のみ 1 cm カットした。
上 面 からのみアルギニンが溶 出 するようにした供 試 体 を,海 水 掛 け流 し水 槽 に沈 設 した.
定 期 的 に供 試 体 を水 槽 内 より取 り出 して,その時 点 での溶 出 速 度 を測 定 してから水 槽 に戻
す操 作 を繰 り返 した.
溶 出 速 度 測 定 の際 は,供 試 体 をかけ流 し水 槽 から引 上 げて全 体 を洗 浄 した後 で,50 ml
の人 工 海 水 が入 っている容 器 に,コーティングしていない供 試 体 の上 面 が人 工 海 水 と接 す
るように逆 さにして置 いた.12 時 間 後 に人 工 海 水 を採 取 して,100 ml にメスアップ後 にアル
ギニン濃 度 を HPLC で分 析 した.また,洗 浄 した後 の上 面 に水 をかけて静 置 し,その表 面 の
pH を pH 試 験 紙 により簡 易 に測 定 した
4)
.
表 8 供 試 体 組 成 と沈 設 本 数
名前
W/C
単 位 量 [kg]
Arg/C
Arg/
[%]
W
C
S
G
Arg
[%]
Total[%]
BB-1
64.5
150
233
925
987
2.3
1
0.10
BB-3
64.5
150
233
925
987
7.0
3
0.31
BB-5
64.5
150
233
925
987
11.7
5
0.51
NN-3
58.5
149
255
878
1027
7.7
3
0.30
CB-0.5
64.5
150
233
925
987
7.0
3
0.31
CB-1
64.5
150
233
925
987
7.0
3
0.31
MM-1
50
450
900
2700
0
9
1
0.22
備考
MM-1 にて
0.5 cm 被 覆
MM-1 にて
1 cm 被 覆
表面被覆用
モルタル
30
(3) コンクリート内 部 のアルギニン濃 度 の変 化 の測 定
海 水 水 路 に設 置 した NC-3 を,0,30,90,180,270,360 日 目 に引 き上 げて,1~2cm 間
隔 で乾 式 切 断 した。切 断 片 の円 周 方 向 に被 覆 した 樹 脂 を除 去 した後 、供 試 体 を 90m 未
満 に粉 砕 し,塩 酸 および NaOH による抽 出 にて残 存 するアルギニン量 を分 析 した.抽 出 条
件 は,粉 砕 した供 試 体 1g を 100ml の 2N HCl で 3 時 間 抽 出 した後 に,濾 別 して酸 抽 出 液
を得 た.その抽 出 残 渣 から 2N NaOH 50ml で 5 時 間 抽 出 して,アルカリ抽 出 液 を得 た.それ
ぞれの抽 出 液 中 の,アルギニン,オルニチン,シトルリン,アンモニア濃 度 を HPLC で分 析 し
て, それぞれの濃 度 をアルギニン換 算 した量 を合 算 し ,前 章 で述 べたように回 収 率 を 90%と
して補 正 した値 を残 存 アルギニン量 とした.
また,溶 出 しうる可 溶 性 のアルギニンの残 存 量 を見 積 もるために水 抽 出 も同 様 に行 った.
粉 砕 した供 試 体 1g を水 500ml に分 散 させて 2 時 間 撹 拌 した後 に,濾 別 した抽 出 液 中 の総
アルギニン量 を HPLC で分 析 した.
さらに,NN-3 と BB-3 の深 さ方 向 に輪 切 りにした断 片 のうち,深 さ方 向 に 0~1cm,1~
2cm,2~4cm,10~12cm,16~18cm のものを 90μm 未 満 に粉 砕 したのちに,5g を採 取 して
水 10ml を加 えて懸 濁 させた.一 晩 振 盪 させたのちに懸 濁 液 の pH を測 定 した.
3.3 実 験 結 果
(1) 海 域 に浸 漬 させたコンクリート中 からのアルギニンの溶 出 速 度 の経 時 変 化
コンクリート NC-10 から採 取 したコアを用 いてアルギニンの溶 出 速 度 を追 跡 した.海 水 と接
する表 層 コアの溶 出 速 度 を図 17 に,その奥 の中 層 から採 取 したコアの溶 出 速 度 を図 18 に示
した.
表 層 のコアからは,沈 設 直 後 の 10 日 間 はブリージングに由 来 すると思 われる激 しい溶 出 を
示 し,溶 出 速 度 は 10 -2 ~10 1 mg-N/cm 2 /day だった.その後 800 日 間 で 10 -3 mg-N/cm 2 /day
程 度 まで緩 やかな溶 出 速 度 の減 尐 を示 した.
中 層 のコアは,180 日 目 から 700 日 目 まで,表 層 よりも速 く 10 -2 ~10 1 mg-N/cm 2 /day 程 度
まで減 尐 しながら溶 出 した.海 水 と接 していない中 層 のコアの溶 出 速 度 の減 尐 が観 察 された
ことは,コンクリート内 部 から表 面 への拡 散 によるアルギニンの移 動 によるものと考 えた.
31
Elution rate [mg-N/cm2/day]
102
10
1
100
-1
10
-2
10
-3
10
10-4
0
200
400
600
800
1000
Elution time [days]
図 17 NC-10 の表 層 より採 取 したコアの溶 出 速 度 の経 時 変 化
2
10
2
Elution rate [mg-N/cm /day]
1
10
0
10
10-1
10-2
10-3
10-4
0
200
400
600
800
1000
Elution time [days]
図 18
NC-10 の表 面 2~4cm より採 取 したコアの溶 出 速 度 の経 時 変 化
(2) 海 水 水 路 に浸 漬 させたコンクリート中 からのアルギニンの溶 出 速 度 の経 時 変 化
コンクリートをかけ流 し水 槽 に沈 設 し,定 期 的 に引 き上 げ,適 宜 アルギニンの溶 出 速 度 を
追 跡 した.NN-3 の結 果 とコンクリート表 面 に付 着 した水 の pH を図 19 に示 した.沈 設 直 後 の
2 日 間 はブリージングに由 来 すると思 われる激 しい溶 出 (phase I)を示 し,溶 出 速 度 は
10 -2 ~10 -1 mg-N/cm 2 /day だった.2 か月 間 で 10 -2 mg-N/cm 2 /day から 10 -3 mg-N/cm 2 /day に
まで溶 出 速 度 は減 尐 し(phase II),その後 10 -3 mg-N/cm 2 /day 程 度 の緩 やかな溶 出 (phase
III)を示 した.
32
NC-10 では初 期 の激 しい溶 出 後 ,800 日 程 度 まで溶 出 速 度 が減 尐 した.これは,NC-10 が
NN-3 よりもアルギニン含 量 が高 いため,NN-3 で観 察 された phase III にあたる安 定 した溶 出
段 階 にまだ達 していないものと考 えた.
また,コンクリート表 面 の pH は沈 設 直 前 では pH12 だったが,一 か月 後 には pH10 を示 し,
11 か月 後 には pH8.5 にまで低 下 した.
Elution rate [mg-N/cm2/day]
100
Phase I
-1
10
Time [month] 0 1 12
Surface pH 12 10 8.5
Phase II
10-2
10-3
Phase III
10-4
0
50
100
150
200
250
300
350
Elution time [day]
図 19 NN-3 表 面 からの溶 出 速 度 の経 時 変 化
続 いて,高 炉 セメントを用 いたコンクリート BB-1,BB-3,BB-5 の溶 出 速 度 を図 20 に示 し
た.NN-3 の結 果 と同 様 に初 期 の激 しい溶 出 のあとに,緩 やかな溶 出 を示 した.また,アルギ
ニン濃 度 の高 い BB-5 がもっとも高 い溶 出 速 度 を示 した.30 日 以 降 の溶 出 速 度 を比 較 する
と,BB-5/BB-1=2.4 倍 ,BB-5/BB-3=1.8 倍 ,BB-3/BB-1=1.6 倍 で,添 加 濃 度 の比 よりも小 さ
かった.
33
-1
BB-1
Elution rate [mg-N/cm2/day]
10
BB-3
BB-5
-2
10
-3
10
0
100
200
300
400
500
Elution time [day]
図 20 供 試 体 表 面 からの溶 出 速 度 の経 時 変 化
次 に,セメントあたりのアルギニン添 加 量 は同 じで,セメントの種 類 が異 なる BB-3 と NN-3 を
Elution rate [mg-N/cm 2/day]
比 較 した(図 21).その結 果 ,ポルトランドセメントを使 った NN-3 の溶 出 速 度 が高 かった.
10
-1
10
-2
10
-3
BB-3
NN-3
0
100
200
300
400
500
Elution time [day]
図 21 ポルトランドセメントと高 炉 セメントの溶 出 速 度 の違 い
34
さらに,BB-3 とその表 面 にモルタルを被 覆 した CB-05 と CB-10 の溶 出 速 度 を比 較 した(図
22).その結 果 ,初 期 の溶 出 速 度 が抑 制 された. 覆 することで初 期 溶 出 を抑 制 して,効 率 よ
くアルギニンを使 用 することが可 能 になると考 える.
また,初 期 の激 しい溶 出 ののちには緩 やかな溶 出 を続 け, CB-05 と CB-10 の溶 出 速 度 は
BB-3 と併 せて比 較 しても,先 に述 べた BB-1,3,5 の濃 度 の異 なる供 試 体 の溶 出 速 度 の差
よりは小 さかった.被 覆 の厚 みの 0.5cm と 1cm の違 いは,溶 出 の安 定 期 ではあまり影 響 して
いないことから,被 覆 されたモルタルからの溶 出 よりその奥 から比 較 的 溶 出 しやすいアルギニ
Elution rate [mg-N/cm 2/day]
ンが表 面 まで移 動 しているものと考 えた.
10
-1
10
-2
10
-3
BB-3
CB-05
CB-10
0
100
200
300
Elution time [day]
400
500
図 22 モルタルで表 面 を被 覆 したときの溶 出 速 度 の差
(3) コンクリート内 部 のアルギニン濃 度 の経 時 変 化
①コンクリート内 部 のアルギニン濃 度
海 水 水 路 に設 置 したコンクリートの海 水 に接 する表 層 0~1cm と 1~2cm の部 分 のアルギ
ニン濃 度 を,コンクリートに対 する重 量 濃 度 として図 23~28 に示 した.
海 水 に接 する表 層 0~1cm の部 分 では,BB-1,BB-3,BB-5,NN-3 は沈 設 直 後 から 30
日 目 で著 しく減 尐 し,90 日 以 降 は緩 やかな減 尐 を続 けた. 一 方 で,BB-3 の表 面 にモルタ
ルを被 覆 した CB-05 と CB-10 は 30 日 目 にアルギニン濃 度 が増 加 して,90 日 以 降 減 尐 し
た.これは,沈 設 の早 い段 階 で,アルギニン濃 度 が比 較 的 高 い BB-3 の部 分 から,濃 度 の低
いモルタル部 分 にアルギニンが供 給 され たために,内 部 の濃 度 が増 加 したものと考 えた.
また,表 層 から 1~2cm の部 分 では,BB-1,BB-3,BB-5,NN-3 は 0~1cm の部 分 に比
較 すると多 くアルギニンが残 っており,またその減 尐 度 合 いも緩 やかだった. CB-05 と CB-10
35
の濃 度 変 化 はあまり見 られなかった.
0.5
BB-1(0-1cm)
BB-1(1-2cm)
0.4
Concentration [concrete%]
Concentration [concrete%]
0.5
0.3
0.2
0.1
0
0
50
0.4
0.3
0.2
0.1
0
100 150 200 250 300 350 400
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
Elution time [day]
図 23 BB-1 内 部 の Arg 濃 度 変 化
図 24 BB-3 内 部 の Arg 濃 度 変 化
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
BB-5(0-1cm)
BB-5(1-2cm)
0.1
0
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
図 25 BB-5 内 部 の Arg 濃 度 変 化
Concentration [concrete%]
0.5
Concentration [concrete%]
BB-3(0-1cm)
BB-3(1-2cm)
NN-3(0-1cm)
NN-3(1-2cm)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
図 26 NN-3 内 部 の Arg 濃 度 変 化
36
0.5
0.5
Concentration [concrete%]
0.3
0.2
0.1
0
0
50
CB-10(0-1cm)
CB-10(1-2cm)
0.4
Concentration [concrete%]
CB-05(0-1cm)
CB-05(1-2cm)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
100 150 200 250 300 350 400
0
50
Elution time [day]
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
図 27 CB-05 内 部 の Arg 濃 度 変 化
図 28 CB-10 内 部 の Arg 濃 度 変 化
②コンクリート内 部 の可 溶 性 のアルギニンの経 時 変 化
水 抽 出 で得 られた水 に可 溶 なアルギニン量 の変 化 を,コンクリート中 の重 量 濃 度 として図
29~32 に示 した.水 に可 溶 な成 分 は表 層 0~1cm,1~2cm の部 分 ともに溶 出 日 数 にしたが
って減 尐 したが,枯 渇 はしなかった.表 層 0~1cm 部 分 のほうが,1~2cm 部 分 よりも可 溶 性
成 分 が減 尐 しており,コンクリート深 奥 部 から供 給 される速 度 よりも,表 面 から外 部 に拡 散 す
る速 度 が速 いことが分 かった.
深 奥 部 から表 層 にアルギニンが供 給 されたためか,あるいはまだアルギニンが残 っている
か区 別 できなかったが,今 後 の課 題 である.
0.5
BB-1(0-1cm)
BB-1(1-2cm)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
Concentraion of soluble fraction [wt%]
Concentraion of soluble fraction [wt%]
0.5
BB-3(0-1cm)
BB-3(1-2cm)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
図 29 BB-1 内 部 の水 に可 溶 なアルギニン 図 30 BB-3 内 部 の水 に可 溶 なアルギニン
37
0.5
BB-5(0-1cm)
BB-5(1-2cm)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
Concentraion of soluble fraction [wt%]
Concentraion of soluble fraction [wt%]
0.5
NN-3(0-1cm)
NN-3(1-2cm)
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
図 31 BB-5 内 部 の水 に可 溶 なアルギニン 図 32 NN-3 内 部 の水 に可 溶 なアルギニン
③溶 出 試 験 供 試 体 粉 末 懸 濁 液 の pH 変 化
溶 出 試 験 後 の供 試 体 の深 さ方 向 の断 片 を粉 末 にした後 に,水 で懸 濁 し たときの pH を測
定 し,溶 出 試 験 中 のコンクリート内 部 からのアルカリ成 分 の溶 出 した深 さを類 推 すした.
NN-3 と BB-3 懸 濁 液 の pH をそれぞれ表 9 と表 10 に示 した.NN-3 は 30 日 目 から 0-1cm
の部 分 の pH が減 尐 し,180 日 目 には 1-2cm の深 さの部 分 も減 尐 をはじめた.一 方 で,BB-3
は初 日 から 0-1cm の部 分 の pH が減 尐 を始 めたが,1-2cm 部 分 の pH の減 尐 を始 めたのは
270 日 目 からだった.360 日 経 過 後 は,2-4cm の部 分 に達 しているかどうか不 明 だった.
懸 濁 液 の pH の減 尐 は,コンクリート中 のアルカリ成 分 の溶 出 によるものと考 えられる.一
般 に水 に浸 漬 させたのちのアルカリ成 分 の溶 出 は,初 めに Na,K が溶 出 したのちに Ca が溶
出 をはじめる.細 孔 溶 液 中 の Ca が溶 出 しながら Ca(OH) 2 が溶 けだして飽 和 溶 液 になってお
り,Ca(OH) 2 がなくなると最 後 にセメント水 和 物 の溶 出 が尐 しずつ始 まる. 25℃での水 酸 化 カ
ルシウムの飽 和 溶 解 度 は 800ppm ほどであり(化 学 便 覧 ),海 水 中 には 400ppm ほどの Ca が
含 まれているので表 面 近 傍 のコンクリート内 部 の細 孔 溶 液 は 400ppm ほどのカルシウム濃 度
を維 持 しているものと考 える.800ppm から 400ppm まではカルシウムが溶 出 していき,その後
は海 水 中 の炭 酸 と反 応 して CaCO 3 が生 成 して減 尐 した分 の Ca がコンクリートから溶 け出 す
ことで,尐 しずつコンクリート中 のアルカリ成 分 が減 尐 しているものと考 える.
純 粋 な水 溶 液 中 の Ca の拡 散 係 数 はアルギニンよりも桁 違 いに大 きく,またその濃 度 も高
いことから,アルギニンが溶 出 する範 囲 は Ca より小 さいと考 えると,360 日 の溶 出 で,0~2cm
の範 囲 のアルギニンが溶 出 していると考 えた.
38
表 9 溶 出 試 験 供 試 体 NN-3 粉 末 の水 懸 濁 液 の pH
Depth
Immersed date [day]
[cm]
0
30
90
180
270
360
0-1
12.4
12.3
12.3
12.2
11.5
11.5
1-2
12.4
12.4
12.4
12.3
11.8
12.4
2-4
-
-
-
-
12.5
12.2
10-12
12.4
12.4
12.4
12.4
12.3
-
16-18
12.4
12.4
12.4
12.4
12.4
-
※ Slurry consisted 5 g of concrete powder and 10 ml of water.
表 10 溶 出 試 験 供 試 体 BB-3 粉 末 の水 懸 濁 液 の pH
Depth
Immersed date [day]
[cm]
0
30
90
180
270
360
0-1
11.8
11.9
11.7
11.7
11.2
11.3
1-2
12.2
12.3
12.1
12.1
11.5
11.8
2-4
-
-
-
-
11.8
11.8
10-12
12.3
12.0
12.2
12.1
11.9
-
16-18
12.1
12.2
12.2
12.0
11.7
-
※ Slurry consisted 5 g of concrete powder and 10 ml of water.
④コンクリート内 部 のアルギニン濃 度 分 析 値 と溶 出 量 から推 算 したアルギニン濃 度 の比 較
コンクリート内 部 の 0~1cm部 分 に残 存 しているアルギニン濃 度 (コンクリート全 体 に対 する
濃 度 )と,スポット溶 出 速 度 から推 算 した 0~1cm 部 分 のアルギニン濃 度 を比 較 した.その結
果 を図 33-36 に示 した.
スポット溶 出 速 度 から推 算 する際 には,はじめに各 溶 出 期 間 での スポット溶 出 速 度 を積 分
することで溶 出 量 を求 めた.次 に,アルギニンが深 さ 0~1cm の部 分 からだけ溶 出 したものと
仮 定 して,各 溶 出 期 間 での溶 出 量 を 0~1cm 部 分 の初 期 濃 度 (0 日 時 点 )から引 いて,アル
ギニン濃 度 を計 算 した.
内 部 分 析 結 果 からわかるように,アルギニンんは 1~2cm 部 分 からも溶 出 していることから,
本 来 の 0~1cm 部 分 は溶 出 して出 ていく分 のほか,1~2cm 部 分 から補 給 されているので,0
39
~1cm からのみ溶 出 したと仮 定 した推 算 値 よりも高 くなるはずである.
しかしながら,分 析 結 果 と推 算 値 は概 ね一 致 した. この原 因 としては,深 奥 部 より補 充 さ
れる部 分 が尐 ないためと考 える.
Concentration [concrete%]
0.50
Estimation
Experiment
0.40
0.30
0.20
0.10
0.0
0
100
200
300
400
500
Elution time [day]
図 33 BB-1 の内 部 濃 度 分 析 と溶 出 量 から推 算 した濃 度 の比 較
※concrete%: コンクリート全 体 に占 めるアルギニンの割 合
Concentration [concrete%]
0.50
Estimation
Experiment
0.40
0.30
0.20
0.10
0.0
0
100
200
300
400
500
Elution time [day]
図 34 BB-3 の内 部 濃 度 分 析 と溶 出 量 から推 算 した濃 度 の比 較
※concrete%: コンクリート全 体 に占 めるアルギニンの割 合
40
Concentration [concrete%]
0.50
Estimation
Experiment
0.40
0.30
0.20
0.10
0.0
0
100
200
300
400
500
Elution time [day]
図 35 BB-5 の内 部 濃 度 分 析 と溶 出 量 から推 算 した濃 度 の比 較
※concrete%: コンクリート全 体 に占 めるアルギニンの割 合
Concentration [concrete%]
0.50
Estimation
Experiment
0.40
0.30
0.20
0.10
0.0
0
100
200
300
400
500
Elution time [day]
図 36 NN-3 の内 部 濃 度 分 析 と溶 出 量 から推 算 した濃 度 の比 較
※concrte%: コンクリート全 体 に占 めるアルギニンの割 合
⑤コンクリート内 部 のアミノ酸 組 成 の変 化
表 層 0~1cm の部 分 に残 存 しているアミノ酸 組 成 の経 時 変 化 を図 37~40 に示 した.それ
ぞれ分 析 時 点 でのアミノ酸 濃 度 に対 するアルギニン (Arg),オルニチン(Orn),シトルリン
(Cit),アンモニア(NH4)の割 合 として示 した.
沈 設 270 日 よりアルギニンが減 尐 してシトルリンが増 える傾 向 が見 られたものの,オルニチ
ン組 成 は安 定 していた.一 年 間 にわたって,アルギニンが分 解 したり腐 敗 したりしてアンモニ
アになることもなく,アミノ酸 として存 在 していることがわかった.コンクリート中 の pH は高 くアル
41
ギニンが分 解 しやすい環 境 であるものの,沈 設 している海 水 の温 度 が,コンクリート硬 化 時 よ
りも低 いためであり,コンクリート作 製 から養 生 中 の影 響 が大 きいものと考 えられた.
ただし,半 年 経 過 後 のアルギニンの減 尐 の原 因 については,pH は沈 設 期 間 中 に低 下 し
ていることからアルカリ条 件 による分 解 の進 行 は考 えにくく,別 の要 因 があると考 えられるが
今 後 の課 題 である.
100
100
Arg
Orn
Cit
NH4
80
Proportion [%]
Proportion [%]
80
60
40
20
0
Arg
Orn
Cit
NH4
60
40
20
0
50
0
100 150 200 250 300 350 400
0
50
Elution time [day]
Elution time [day]
図 37 BB-1 内 部 のアミノ酸 組 成
図 38 BB-3 内 部 のアミノ酸 組 成
100
100
Arg
Orn
Cit
NH4
60
40
20
Arg
Orn
Cit
NH4
80
Proportion [%]
Proportion [%]
80
0
100 150 200 250 300 350 400
60
40
20
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
図 39 BB-5 内 部 のアミノ酸 組 成
0
0
50
100 150 200 250 300 350 400
Elution time [day]
図 40 NN-3 内 部 のアミノ酸 組 成
42
3.4 コンクリート中 からのアルギニンの溶 出 特 性 に関 する考 察
(1) アルギニンの存 在 形 態 と溶 出 特 性
これまでの実 験 結 果 から,アルギニンがコンクリート深 奥 部 から表 面 に拡 散 しながら水 中 に
溶 出 していることと,アルギニンの一 部 はコンクリートに吸 着 することがわかった.
これらのことから,次 のようにアルギニンの溶 出 機 構 を考 えることができた.初 めにコンクリー
ト作 成 時 に生 じたブリージング水 に含 まれ,高 濃 度 と水 分 蒸 発 によって析 出 したコンクリート
表 面 のアルギニンは沈 設 初 期 に溶 出 する(Phase Ⅰ).溶 出 の安 定 期 では,図 41 に示 したよ
うに溶 出 していると考 えられる.アルギニンはコンクリート内 部 では,自 由 水 中 で 溶 存 している
が, pH が低 下 するコンクリート表 面 近 くではアルギニンの多 くはコンクリートに吸 着 し,海 水 と
の固 液 平 衡 によって溶 出 している(Phase Ⅲ)と考 えた.そして,Phase II は,Phase I から
Phase III に移 行 する遷 移 期 間 であると考 えた.
図 41 アルギニンの溶 出 機 構 のイメージ図
A: アルギニン
溶 出 期 間 中 にどの程 度 のアルギニンが吸 着 しているか考 察 した.アルギニンはコンクリート
中 の存 在 形 態 は,図 42 に示 したように分 けられる.大 きく,水 に溶 出 され得 る可 溶 性 成 分 と,
セメント水 和 物 に取 り込 まれた非 可 溶 性 成 分 に分 けられる.さらに,可 溶 性 成 分 の中 では,水
中 に実 際 に溶 けている溶 存 態 のアルギニンと,吸 着 しているアルギニンと,その他 析 出 してい
るアルギニンが存 在 する.溶 存 態 のアルギニンは pH に応 じて解 離 して,正 電 荷 ,無 電 荷 ,負
電 荷 をもつアルギニンが平 衡 状 態 で存 在 している.吸 着 するアルギニンは,正 電 荷 を持 った
アルギニンのみである.そして,その他 のアルギニンは溶 出 などによりアルギニン濃 度 が減 尐
すると溶 け出 して溶 存 態 になるものと考 えられる.
43
可 溶 性 アルギニン
A
その他
(析 出 など)
溶 けている
溶 存 態 アルギニン
A2+
A-
A±
A+
吸 着 している
吸 着 アルギニン
A+
A+
A+
セメント水 和 物 中 の
非 可 溶 性 アルギニン
A
A
図 42 アルギニンの存 在 形 態 概 念 図
実 験 により表 面 近 傍 の pH は沈 設 初 期 の 12.5 から 1 年 後 には 8.5 まで低 下 したことがわ
かった.このときの溶 存 態 のアルギニンの平 衡 状 態 は表 11 に示 すように,溶 出 初 期 では吸 着
する正 電 荷 のアルギニンはほとんど存 在 せず,安 定 期 以 降 の pH8.5 にさがった段 階 では 76%
のアルギニンが吸 着 しうる状 態 で溶 存 しており,吸 着 平 衡 が存 在 している.
100
Composition [%]
80
60
40
20
0
Phase I
Arg+
Phase II
Arg
Phase III
Arg-
図 43 コンクリート表 面 でのアルギニンの電 荷 割 合
44
(2) 数 年 後 の溶 出 速 度 の推 算
これまでに得 られた結 果 から,数 年 後 の溶 出 速 度 を推 算 した.
先 に示 し たように溶 出 は,コンクリート内 部 からのアルギニン拡 散 とセ メントペーストへのア
ルギニンの吸 着 平 衡 の組 合 せによって,PhaseI~III の 3 段 階 に分 けられ,それぞれに溶 出
特 性 が異 なる.そこで,Phase 毎 に溶 出 速 度 を下 記 の(1)式 で表 すものとし,Phase 毎 に溶 出
速 度 結 果 にフィッティングして溶 出 速 度 定 数 を決 めた.
𝐹𝑡 = 𝐹𝑡=0 × exp⁡(𝑘𝑡)
(4)
F t : 溶 出 時 間 t の時 の溶 出 速 度 [mg-N/cm 2 /day]
F t = 0 : 溶 出 時 間 初 期 の溶 出 速 度 [mg-N/cm 2 /day]
k: 溶 出 速 度 定 数 [1/day]
t: 溶 出 時 間 [day]
𝐹
定 数 は,(1)式 を(2)式 のように変 形 して,ln (𝐹𝑡 )の時 間 に対 するプロットの傾 きから決 めた.
0
𝐹𝑡
ln ( ) = 𝑘𝑡
𝐹0
(5)
ただし,PhaseII は PhaseI から III にいたる遷 移 期 間 と考 えているため,PhaseII は除 いた.
供 試 体 BB-1,BB-3, BB-5, NN-3 の溶 出 速 度 の比 F/F0 の自 然 対 数 を溶 出 段 階 PhaseI,
PhaseIII についてフィッティングした結 果 を図 49,50 に示 し,各 Phase での溶 出 速 度 定 数 k
を表 12 に示 した.
続 いて,得 られた溶 出 速 度 定 数 k の平 均 値 k a v e r a g e を用 いて 実 際 の実 験 値 と比 較 した結
果 を図 50 から 53 に示 した.PhaseII の部 分 は PhaseI の終 了 日 とした 22 日 の値 と PhaseIII
の開 始 日 97 日 の値 を結 んだ.この結 果 ,BB-1,BB-3,BB-5 については,実 験 値 にたいし
て概 ね一 致 するようにフィッティングできた.
そして,この k a v e r a g e を使 って実 験 に用 いた供 試 体 (φ10 x 20cm)の 10 年 後 の溶 出 速 度
を推 算 した結 果 を図 54~56 に示 した.10 年 後 は 10 - 5 ~10 - 4 [mg-N/cm2/day]で溶 出 した.
また,その溶 出 量 は添 加 量 の 8~13%になり,表 面 からの溶 出 深 さとして 1.6~2.6cm に相 当
すると推 算 された.
45
1
0.50
PhaseI (BB-1)
0
PhaseI (BB-3)
0.0
PhaseI (BB-5)
-0.50
ln(F t/Ft=0)
ln(F t/Ft=0)
-1
-2
-1.0
-3
PhaseIII(BB-1)
PhaseIII(BB-3)
-1.5
-4
-5
0
5
10
15
20
-2.0
25
PhaseIII(BB-5)
50
100 150 200 250 300 350 400 450
Time[day]
Time[day]
図 49 Fitting curve for Phase I
図 50Fitting curve for Phase III
表 12 溶 出 速 度 定 数 k
kBB-1
kBB-3
kBB-5
-0.17
-0.23
-0.18
-0.0017
-0.0007
-0.0011
Phase I
(0-20day)
Phase III
(97-417day)
0
0
10
Experimennt(BB-1)
Fitting(BB-1)
-1
10
-2
10
-3
10
-4
0
100
200
300
400
500
Elution rate [mg-N/cm2/day]
Elution rate [mg-N/cm2/day]
10
10
[1/day]
Experimennt(BB-3)
Fitting(BB-3)
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
0
Time[day]
図 51 BB-1 溶 出 速 度 と推 算 値 の比 較
100
200
300
400
500
Time[day]
図 52
BB-3 溶 出 速 度 と推 算 値 の比 較
46
0
10
Elution rate [mg-N/cm2/day]
Experimennt(BB-5)
Fitting(BB-5)
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
0
100
200
300
400
500
Time[day]
図 52 BB-5 溶 出 速 度 と推 算 値 の比 較
10
0
3
10
0
2
2.5
-1
10
-2
10
-3
2
1.5
1
10
-4
10
-5
0.5
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
10
-5
1
2
4
0.5
Estimation(BB-3)
Estimation(BB-1)
0
1.5
Elution Depth [cm]
Depth(BB-1)
Estimation [mg-N/cm 2/day]
10
Elution Depth [cm]
Estimation [mg-N/cm 2/day]
Depth(BB-3)
6
8
0
12
10
0
2
4
Time[Year]
6
8
10
0
12
Time[Year]
図 54 BB-1 溶 出 速 度 と深 さの経 時 変 化 推 算 図 55 BB-3 溶 出 速 度 と深 さの経 時 変 化 推 算
10
0
2
10
-1
10
-2
10
-3
10
-4
10
-5
1.5
1
0.5
Elution Depth [cm]
Estimation [mg-N/cm 2/day]
Depth(BB-5)
Estimation(BB-5)
0
2
4
6
8
10
0
12
Time[Year]
図 56 BB-5 の溶 出 速 度 と深 さの経 時 変 化 の推 算
47
(3) 藻 類 の繁 茂 に影 響 するアルギニン溶 出 速 度 の下 限 値
溶 出 実 験 に用 いたコンクリート(アルギニン添 加 濃 度 はセメントあたり 1,3,5%)上 の藻 類 を剥
ぎ取 って、Chl.a を分 析 した。
表 面 の Chl.a 量 と添 加 アルギニン濃 度 の関 係 を図 に示 した。添 加 濃 度 が高 いほど Chl.a が
高 かった。さらに、このときの溶 出 速 度 に対 する Chl.a を図 に示 した。溶 出 速 度 ゼロの点 がない
とはっ きりし ない が、もし溶 出 速 度 ゼロの 時 に 溶 出 速 度 5 x1 0 - 4 [mg-N/cm2/day] の 時 と同 程 度
に Chla があったとすれば、藻 類 の生 長 に寄 与 させるためには下 限 値 は5 x10 - 4 以 上 の溶 出 が
必 要 になる。
0.05
Chl.a[g/cm2]
0.04
0.03
0.02
0.01
0
0
1
2
3
4
5
6
Initial Arginine [cement%]
図 57 コンクリート表 面 の Chl.a と添 加 アルギニン濃 度 の関 係
0.05
Chl.a[g/cm2]
0.04
0.03
0.02
0.01
0
0
5 x 10
-4
1 x 10
-3
1.5 x 10
-3
Elution rate [mg-N/cm2/day]
図 58 コンクリート表 面 の Chla.a とアルギニン溶 出 速 度 との関 係
48
3.5 結 言
コンクリートからのアルギニンの溶 出 特 性 について検 討 し,以 下 のことが明 らかになった.
① 溶 出 速 度 分 析 から,水 中 に沈 設 した時 には,極 初 期 の急 激 な溶 出 期 間 (phase I),その
後 の早 い溶 出 期 間 (phase II),最 後 に緩 やかに溶 出 する期 間 (phase III)の 3 つに区 分
することができた.
② アルギニンを混 和 したコンクリートの表 面 を,濃 度 の薄 いモルタルで被 覆 することで,初 期
の急 激 な溶 出 を抑 制 できることがわかった.
③ 溶 出 によってコンクリート表 面 の pH が変 化 し,一 年 後 には可 溶 性 のアルギニンの 76%は
吸 着 態 として存 在 することがわかった.
④ 溶 出 中 の各 アミノ酸 組 成 は緩 やかな速 度 で変 化 しており,水 中 に沈 設 中 よりもコンクリー
ト作 製 から養 生 中 までの期 間 でのアルギニン分 解 の影 響 が大 きいものと考 察 した.
⑤ 溶 出 速 度 の経 時 変 化 から,一 次 元 の拡 散 モデルを使 ってコンクリート中 の見 かけの拡 散
係 数 を決 定 し,10 年 後 の溶 出 速 度 を推 算 した結 果 、10 年 後 も 1 x 10 -4 mg-N/cm 2 /day
以 上 の溶 出 速 度 を維 持 することが示 唆 された.
⑥ 海 水 水 路 での藻 類 中 の Chl.a 量 と溶 出 速 度 を比 較 することで,5 x 10 -4 mg-N/cm 2 /day
の溶 出 速 度 で顕 著 に増 加 することが分 かった.そしてそれは,4 年 後 の溶 出 速 度 に相 当
する.
参考文献
1. 大 即 信 明 , 平 山 周 一 , 宮 里 心 一 ,横 関 康 祐 , “モルタルからの Ca 溶 出 およびそれに伴 う
変 質 の長 期 予 測 に関 する基 礎 的 研 究 ”, 土 木 学 会 論 文 集 , Vol.634, No.45, pp.293 -302
(1999).
2. 芳 賀 和 子 , 豊 原 尚 実 , 須 藤 俊 吉 , 金 子 昌 章 , 小 林 康 利 , 小 澤 孝 , “セメント硬 化 体 の溶
解 に伴 う変 質 (I)遠 心 力 法 によるセメント硬 化 体 の通 水 試 験 ”, 日 本 原 子 力 学 会 和 文 論 文 ,
誌 Vol.1, No.1, pp.20-29 (2002).
3. 井 元 晴 丈 , 蔵 重 勲 , 廣 永 道 彦 , 横 関 康 祐 , “塩 化 ナトリウム水 溶 液 に浸 漬 させた
普 通 ポルトランドセメント硬 化 体 の溶 脱 挙 動 ”, コンクリート工 学 年 次 論 文 集 , Vol.26, No.1,
pp. 903-908 (2004).
49
4.結 論
コンクリート中 でのアルギニンの動 態 と海 水 への溶 出 特 性 について,以 下 のことが明 らかにで
きた.
① 可 溶 性 の成 分 が 80%を占 め,残 り 20%はセメント水 和 物 中 にあって非 水 溶 性 で溶 出 しない.
② 溶 出 は PhaseI から III まで 3 つに区 分 できる.はじめは急 激 に溶 出 するが,安 定 期 にはいる
とアルギニンがコンクリートに吸 着 して固 液 平 衡 を保 ちながら溶 出 する.
③ 10 年 後 は 1 年 後 の 1/100 の速 度 で溶 出 する.内 部 は表 層 0-1cm 程 度 まで溶 出 する.
④ 表 層 0-1cm を有 効 に使 用 して効 果 を持 続 させるために,表 面 を被 覆 する方 法 を提 案 した.
50
謝辞
本 論 文 は,徳 島 大 学 大 学 院 先 端 技 術 科 学 教 育 部 環 境 創 生 工 学 専 攻 エコシステム工 学 コ
ース環 境 衛 生 工 学 研 究 室 ,日 建 工 学 株 式 会 社 ,ならびに筆 者 が所 属 する味 の素 株 式 会 社 と
が共 同 で行 ったアミノ酸 を混 和 したコンクリートに関 する研 究 において,筆 者 が行 ってきた研 究
成 果 をまとめたものであります.
本 研 究 期 間 にお世 話 になったすべてのみなさまの,熱 い志 と情 熱 とご支 援 のおかげで,論
文 を作 成 できました.心 より厚 くお礼 申 し上 げます.
徳 島 大 学 大 学 院 教 授 上 月 康 則 博 士 には,共 同 研 究 を開 始 してから本 論 文 の作 成 まで,
終 始 力 強 いご指 導 ご鞭 撻 を賜 りました.心 から厚 く感 謝 いたします.
日 建 工 学 株 式 会 社 顧 問 中 西 敬 博 士 には,本 研 究 開 始 のみならず共 同 研 究 開 始 以 来 ,
様 々なご指 導 ,ご助 言 をいただきました.心 より 感 謝 の意 を表 します.
徳 島 大 学 大 学 院 教 授 上 田 隆 雄 博 士 には,本 論 文 の取 りまとめに際 し,多 くの貴 重 なご意
見 を賜 りました.また,本 論 文 の審 査 を通 じて,貴 重 なご助 言 ,ご教 授 を賜 り, 深 く感 謝 の意 を
表 します.
徳 島 大 学 大 学 院 教 授 橋 本 親 典 博 士 には,本 論 文 の審 査 を通 じて,貴 重 なご助 言 ,ご教
授 を賜 り,深 く感 謝 の意 を表 します.
徳 島 大 学 大 学 院 講 師 山 中 亮 一 博 士 には,研 究 遂 行 上 貴 重 なご指 導 を賜 るとともに,暖
かいご配 慮 とご助 言 を賜 り,深 く感 謝 の意 を表 します.
日 建 工 学 株 式 会 社 西 村 博 一 氏 ,飯 干 富 広 氏 ,金 子 靖 祐 氏 には,本 研 究 ならびに共 同
研 究 の遂 行 にあたり,貴 重 なご助 言 ,ご協 力 をいただきました.
味 の素 株 式 会 社 田 保 橋 建 氏 には,共 同 研 究 開 始 以 来 熱 心 にご指 導 ご鞭 撻 を賜 り,本 学
入 学 の機 会 を作 成 していただきました.心 より感 謝 の意 を表 します.
味 の素 株 式 会 社 多 良 千 鶴 氏 には,本 研 究 ならびに本 テーマ開 始 以 来 チームメンバーとし
てともに実 験 を行 い,貴 重 なご助 言 とご配 慮 をいただきました.心 より感 謝 の意 を表 します.
WDB 株 式 会 社 青 木 若 菜 氏 には,研 究 遂 行 上 多 大 なるご協 力 をいただきました.厚 くお礼
申 し上 げます.
味 の素 株 式 会 社 小 林 正 樹 氏 ,南 慶 太 氏 ,福 田 光 則 氏 ,羽 賀 治 郎 氏 ,城 下 欣 也 氏 , 北 村
辰 男 氏 ,東 森 郁 彦 氏 には,研 究 遂 行 にあたり多 大 なるご理 解 とご支 援 を賜 りまして,深 く感 謝
申 し上 げます.
51
本 研 究 を通 じて,学 生 のみなさんとともに研 究 を進 めました.特 に,水 口 祐 太 氏 ,中 田 紘 子
氏 ,山 口 奈 津 美 氏 ,近 森 光 氏 ,沓 掛 安 宏 氏 ,高 奥 賢 氏 ,津 山 拓 郎 氏 ,鴨 狩 諒 氏 には研 究 の
遂 行 にあたりご協 力 いただき,感 謝 もうしあげます.
最 後 に,本 研 究 遂 行 にあたって常 に応 援 してくれた友 人 ,同 僚 ,家 族 そして妻 佳 代 に感
謝 いたします.
52