日本のマンガ文化 と フランスのバンドデシネ文化 1.マンガの歴史研究と定義 第1グループ 1枚の風刺漫画からストーリーマンガまでを総括的 にとらえ、中世の絵巻物『鳥獣人物戯画』や、それ以 前の作品までも漫画として見なす。 第9回 言語文化研究会 9月27日実施 → 「漫画」 漢字で表記する。 第2グループ ストーリーマンガのみに範囲を限定している。 主に戦後、手塚治虫の登場以後の展開に重点を置 いている。 担当:島根 瞬 → 「マンガ・まんが」カタカナ、平仮名で表記す る。 2.バンド・デシネの成り立ち ロドルフ・テプフェール 1799 ~ 1846 年 ( Rodolphe Töpffer ) バンド・デシネの源流を作る。 教師(スイス)、作家、画家 初めは知人に見せる目的で BD を書いていた。 1831年、 BD 『 Histoire de M. Jabot 』(ジャボ氏物 語)を初出版。 コマ漫画形式を考案。(コマ漫画の父) ・ Father of Comic Strip: Rodolphe Töpffer ・ Töpffer, l'invention de la bande dessinée バンド・デシネについて バンド・デシネ作品の世代の流れ サイズ・値段 →A4 版 BDに影響を与え たもの 1920年代から アメリカの新聞漫 画の影響を受け ている。 → 年に 1 巻 →10 ~ 13€ シリーズもののB Dの刊行頻度 3~4年かかるB Dもある。 子供向け作品が主流の時代( 1940 ~ 1980 ) 第9の芸術 『タンタンの冒険』『クックとプッケ』エルジェ作 邦訳作品は芸術 性の高いものが 多い。フランス で売れているの は娯楽性の強い もの。 *雑誌の衰退により、1980年以降は「アルバム」による出版 が主流になる。 写実的で大人向けの作品が主流の時代 (1960 ~ 1990) 『ブルーベリー』『アンカル』メビウス作 フランスで有名な BD 日本ではメビウス作品が有名だが、 フランスでは『タンタンの冒険』、 ゴシニー作+ユデルゾ画『アステリッ クスの冒険』などが圧倒的に有名。 BD 多様化の時代( 1990 ~) 娯楽性の強い作品が数多く出現する。 若い作家たちが、停滞していたBD界に活気を与えた。 エルジェ (Hergé) 1907~1983 1925 年に 20 世紀新聞( Le Vingtieme Siècle ) に就職し、それがきっかけで連載をはじめる。 手塚治虫≒エルジェ 『タンタンの冒険』の続編が、 第三者によって描かれる可能性 がでてきている。 ・アングレーム国際漫画祭で、 続編制作の是非が問われたが、 回答の約7割は続編を望んで いなかった。 Moebius ( Jean Giraud )1938~2012 ぺンネーム「ジャン・ジロー」「メビウス」 ・作品によってペンネームを使い分けている。 「筆とペン」 「拘束と自由」などの違い。 ・『ブルーベリー』 ジャン・ジロー名義 ・『アンカル』 メビウス名義 ・『 Inside Moebius 』 ジャン・ジロー=メビウス名義 3.なぜフランスでマンガが読まれるのか? 日本のマンガ家たち(手塚治虫、大友克洋、浦沢直 樹)は、 メビウスの描く「線」に影響されている。 日本マンガの歴史的な連続性 ・日本語学習のため ・友人・親子間のコミュニケーション (インターネットも含む) ・価格の安さ(日本のマンガは 700 ~ 800 円) ・日本アニメの放送中止 ・2000年以降、アカデミックな機関でのマンガ研究が盛ん になる。 マンガは現実逃避のために読むのか? → 暴力的、性的な描写が見たいから買うわけではない。 読者層 バンドデシネ、アメコミは女性の読者が少ない。 ジャンル的に多様な日本のマンガは、フランスの女性にも読 まれている。 画像+ナレーション(語り)+時間表現 → 絵巻物 『鳥獣人物戯画』など 1300 年以上の歴史がある。 *日本マンガは他の表現物(BD、アメコミ)よりレベルが高い? 字幕組 (ファンサブ) ・違法で日本のマンガ・アニメを自国の言語に翻訳して いる集団。 ・マンガの出版部数の低下。 ・スキャンレーション →scan + translation = scanlation *日本のマンガは衰退してしまうのか? 4.荒木飛呂彦の BD を読んでみよう 『 Rohan au Louvre 』 ( 岸辺露伴 ルーブルへ行く ) ルーブル美術館とフュチュロポリス社が実施してきた、 BD プロジェクトとして荒木飛呂彦が 2009 年に描いた バンドデシネ。 『 Rohan au Louvre 』 あらすじ 当時学生だった岸辺露伴は、 2 ヶ月ほど祖母の家 に泊まって新人コンテストに投稿するマンガを描い ていた。 露伴の祖母は旅館を改造して賃貸アパートを経営 していた。 ルーブル美術館を題材にして、 オリジナルの作品をつくるとい う主旨。 露伴の祖母は偏屈な人間であり「喫煙不可、夫 婦・子供連れ不可、バイク不可、ペット不可、料理 不可、ドライヤー不可、楽器および麻雀不可、門限 は 10 時」などといって入居に制限をつけていた。 BD ではあるが、形式は 日本のマンガに近い。 そのため部屋はいつも空いている状況だったが、 露伴の滞在時にある女性の入居者がやってくる。そ して彼女から、ルーブル美術館にある「最も黒い 絵」について聞かされる。
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