1 _フランス・ヴァンデ産のうずらに詰め物をしたオードブル「うずらの冷製チェリー添え」 。2 _オーストラリア産仔羊の 背肉の野菜包み焼き「仔羊のクレピネット」 。3 _干草、人参、林檎を飼料として育ったハンガリー産のうさぎを使った「う さぎの背肉のきのこ詰めともも肉のマスタード風味」 。いずれも黄綬褒章受章記念パーティで出された一品。 伝説的レシピが甦った 受賞記念パーティ 8月 日月曜日。仙台国際ホテ ル平成の間で、中村善二さんの黄 てもうすぐ 年。半世紀に及ぶ料 理人人生を中村さんに振り返って もらった。 さんが得意とする料理で、199 スタード風味﹂は、いずれも中村 の背肉のきのこ詰めともも肉のマ ずらの冷製チェリー添え﹂﹁うさぎ された﹁仔羊のクレピネット﹂﹁う ていた。スペシャリティとして供 66年、 歳の時東京に修業へ。 され、西洋料理の道に進む。19 テルで食べたバニラアイスに魅了 でも述べていたが、松島パークホ という割烹だった。受賞スピーチ 町に生まれる。生家は﹃松島屋﹂ 中村さんは1947年、鹿島台 バニラアイスから はじまった料理人人生 3年にアズ出版より刊行されたフ 綬褒章受賞記念パーティが行われ 50 のコンソメスープやビュルゴー家 品だ。他にも仙台国際ホテル自慢 理事典 全6巻﹄に掲載された一 ランス料理の指南書﹃肉・野菜料 にわたって師匠となる番場善勝 選んだ。そこで出会ったのが生涯 厨房に入れる霞ヶ関三井倶楽部を 部かという選択肢の中で、すぐに パレスホテルか、霞ヶ関三井倶楽 ﹁修業時代は濃密だったが、挫 ︵故人︶さんである。 ュ!﹂ 。親しみと敬意を込めて彼 お客様に向かっていた。 ﹁ムッシ あるにもかかわらず、その視線は 自らの褒章の受賞記念パーティで パーティだった﹂と振り返った。 仙台国際ホテルの心意気を示せた 様に提供するタイミングも良く、 パーティ後、中村さんは﹁お客 った。 だけど、分からずにやって、油と 入れた。入れるにはコツがあるん オイルで沸かした野菜の中に酢を ﹁エスカベシュを作っていた時に、 だよ﹂ 。中村さんはこう振り返る。 た。 ﹁エリートじゃないよ。雑草 れ、トーストの焼き具合で怒られ なったが、紅茶の淹れ方に怒鳴ら を洗った。賄いを任されるように も早く出勤し、厨房を掃除し、鍋 ランス語に苦闘しながら、誰より 折も味わった﹂と中村さんは言う。 はそう呼ばれる。料理長になった 熱湯が顔にかかったことがあった。 の熟成フロマージュなど、最高級 時、周りからそう呼ばれるように 洗礼を浴びたよ。それでもこの道 地方の高校生がフランス料理の第 なったという。このパーティにも 一線で働くのである。読めないフ 中村さんの褒章を祝い、手伝おう でやるのか、と﹂ 。だが、中村さ の食材と料理が提供された、仙台 と仙台の料理人がたくさん集って んはひるまなかった。 ﹁とにかく る。レシピに疑問を持たなくては は必ず理由があるし、必然性があ ったのはこの頃からかな。料理に 書で料理の背景を調べるようにな 勉強するしかなかった。辞典や原 いないんだよね﹂と中村さん。茶 デスクもあるんだけど、ほとんど 作ってもらっています。社内には 結婚式やパーティに今でも出番を ﹁お客様の顔を見るのが好きで、 な客観を感じた。 と、プロデューサーとしての冷静 とともにフランス語で丁寧に記さ レシピや盛り付けなど、イラスト クで誰からも愛される存在だから も顔がほころんだ。明るくフラン て中村さんは輝き続けるのだ。 こそ、仙台国際ホテルの象徴とし 見た。 れたノートに、反骨心と探究心を 目っ気のある笑顔に思わずこちら 駄目で、そこに美味しさの理由が の言葉に、職人としてのプライド 思う存分タクトを振るってきた彼 る、と。ホテルの総料理長として によって決定されるべき芸術であ リストなど、すべてのファクター ならず、空間やサービス、ワイン は総合芸術だ﹂と言う。料理のみ 中村さんは﹁ホテルレストラン たシェフたちが後に続く。 川浩司さんと、ディシプルを冠し 彦さん、 ﹃セラン﹄の料理長・中 にあたった。洋食料理長・菅井敏 こと。そう心に決め、後進の指導 ちばん重要な仕事は人材を育てる 総料理長就任。総料理長としてい 度を追求し続けた。2006年、 ションの中で、常にお客様の満足 所で人を動かす術。相反するミッ すべ の追求と、ホテルという大きな場 に就任する。料理人としての技術 開業時に合わせ洋食部門の料理長 1989年、仙台国際ホテルの ホテルレストランは 総合芸術 いた。フランス料理の世界に入っ でも稀に見るクオリティの宴とな ル貝、ベルナール・アントニー氏 ハム、モンサンミッシェル産ムー のシャラン鴨、純血バスク豚の生 18 ある﹂ 。 代 から 代 に か け て 作 フランス料理のレシピ辞典や10冊にも及ぶノ 1981年、第16回現代フランス料理技術特別講習会で学んだジョルジュ ・デュリ氏と。当時パリのル・グランド・ホテルのシェフを務めていた。 ートなど、料理人としての50年を支えた資 料を見せてくれた。 ったノート 冊がいまなお残る。 30 042 043 10 中村善二さん 仙台国際ホテルの厨房で、料理人たち と。 「開業して27年経ちますが、厨房 がきれいで誰にでも見せられます。料 理を美味しく作るのは腕で、仕事場を 綺麗にするのは心。どちらも大事」 31 20 2 3 INTERVIEW 仙台国際ホテル総料理長 1947年、大崎市鹿島台町生まれ。東京でフランス料理 を学び、1989年の仙台国際ホテル開業時から洋食部門の 料理長を務める。2006年総料理長に就任。現在は東武ホ テルマネジメント全体の総料理長も兼ねる。2008年厚生 労働省の「現代の名工」に選定され、2015年黄綬褒章を 受章。社団法人日本エスコフィエ協会理事、社団法人宮城 県調理師会会長、 大崎市の「おおさき宝大使」 も務める。 「料 理は香りだと思っていますので、それをお客様と分かち合 いたい。フランベをやるのもそう。だから仙台国際ホテル では大人数のパーティでも現場での仕上げにこだわり、出 来たてをご提供したいと思っています」 復活の味 フレンチ 肉 魚 鍋 中華 どんぶり&お昼 アテ 1 黄綬褒章、 現代の名工、 ディシプル…。 ムッシュが語る、 フランス料理とともにある半世紀
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