HER2検査ガイド乳癌編第4版(PDFファイル)はこちら

HER2
乳癌編
[第四版]
検査ガイド
抗HER2薬の適正な症例選択のための
乳がんHER2検査病理部会作成
乳癌編 第四版 2014年4月
はじめに
〜グローバルスタンダードに準拠した HER2 検査・判定に向けて〜
本 HER2 検査ガイドは、ハーセプチンの本邦への導入を機に、2000 年 7 月に乳癌の臨床・病理の専門家および
関連企業によって組織された乳がん HER2 検査病理部会(旧 乳癌トラスツズマブ病理部会)が、病理医、臨床医向
けに、現在最も標準的と思われる HER2 検査の指針として作成したもので、科学の進歩、また医療を取り巻く環境
の変化に応じて随時見直しを図っている。
2007 年に ASCO(American Society of Clinical Oncology)/ CAP(College of American Pathologists)から
HER2 検査のガイドラインが作成された。2007 年 ASCO/CAP ガイドラインでは、従来用いていた検査判定
」
の設定などより厳密な判定基準が作成された。同時に、施設
の基準に変更がなされ、
「equivocal(境界域)
内の品質管理の実施、施設外の習熟度向上テストへの参加や CAP あるいは他の妥当性保証機構による認証取得が
義務づけられた。このガイドラインの内容に沿って 2008 年に乳がん HER2 検査病理部会においても HER2 検査ガ
イドの改訂が行われた。2013 年に ASCO/CAP ガイドラインが再び改訂され、免疫組織化学
(IHC)
法による
検査、in situ ハイブリダイゼーション(ISH)法による検査の判定基準に再び変更が加えられた。今回、この
動向を踏まえ、乳がん HER2 検査病理部会では、より正確な HER2 検査・判定を目指して 2013 年 ASCO/CAP ガ
イドライン*に準拠した HER2 検査ガイドの再改訂を行うこととした。判定基準は変更となるが、再現性、信頼性
のある結果を得るには、従来の推奨どおりマニュアルに沿った検体の取り扱い、染色方法、判定方法が必須である
ことは言うまでもない。
近年、HER2 検査における精度管理が一層重要視されるようになった。本邦では、2014 年に日本病理学会と日本
臨床衛生検査技師会の協力のもと、特定非営利活動法人日本病理精度保証機構
(JPQAS)
の活動が開始される。今後、
同機構による定期的な精度管理が定着するようになれば、わが国における精度の高い HER2 検査が長く維持され得
るものと期待される。
ASCO/CAP ガイドライン準拠につき、ご理解とご協力をお願いするとともに、本 HER2 検査ガイドに基づき適
正な検査が実施され、多くの乳癌患者が正しい治療の恩恵にあずかることを切に希望するものである。
*:ASCO/CAP のガイドラインは現在までに St.Gallen コンセンサス会議のガイダンスをはじめ、米国、英国、カナダなど各国においても幅広く導入されている。
開発の変遷
HER2 検査ガイドラインの変遷
概略
1983 年 マウス HER2/neu 遺伝子クローン化
1985 年 ヒト HER2/neu 遺伝子クローン化
1990 年
マウスモノクローナル抗体精製
muMAb2C4,4D5
1998 年 ハーセプチン mBC
承認
乳癌トラスツズマブ病理部会発足
2000 年 ハーセプチン mBC
承認
ASCO 腫瘍マーカーガイドライン改訂
2001 年 ハーセプチン mBC
承認
国内で HER2 検査ガイド乳癌編第 1 版出版 国内承認によるHER2 検査フローチャート作成
2002 年
国内で HER2 検査ガイド乳癌編第 2 版
2006 年 ハーセプチン eBC(術後)
2007 年 タイケルブ mBC
2009 年 タイケルブ mBC
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
新たに「equivocal(境界域)」を設けるなど判
ASCO/CAP HER2 検査ガイドライン制定 定基準がより厳密になり、施設内の品質管理、
外部精度管理の重要性を訴えた。
承認
承認
承認
ハーセプチン eBC(術前)
承認
パージェタ mBC
カドサイラ mBC
ASCO/CAP HER2 検査ガイドライン変更に
伴い、HER2 検査フローチャート改訂
胃癌トラスツズマブ病理部会発足
承認
ハーセプチン eBC(術前)
パージェタ mBC
国内で HER2 検査ガイド乳癌編第 3 版
承認
2010 年 ハーセプチン mGC
ハーセプチン mGC
承認
承認
2008 年 ハーセプチン eBC(術後)
FISH 承認によるHER2 検査フローチャート改訂
国内で HER2 検査ガイド胃癌編第 1 版出版
承認
承認
承認
様々な抗 HER2 薬が承認され、個々の患者に
対 し て、 こ れ ら の 抗 HER2 薬 の メ リ ッ ト を
享受できるかを明確に判断することが重要と
ASCO/CAP HER2 検査ガイドライン改訂 なっている。また、HER2 陽性の検査機器や手
法も進化しており、新しい機器や手法を使っ
た検査結果に対する判断基準の提示が求めら
れていた。
国内で HER2 検査ガイド乳癌編第 4 版
ASCO/CAP HER2 検査ガイドライン変更に
乳癌トラスツズマブ病理部会から乳がん
伴い、HER2 検査フローチャート改訂
HER2 検査病理部会へ名称変更
mBC:metastatic breast cancer
e B C:early breast cancer
mGC:metastatic gastric cancer
第四版 HER2 検査ガイドの改訂概要………………………………………………
2
解説…………………………………………………………………………………
3
HER2 検査フローチャート……………………………………………………… 2
HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2)
… ……………
予後および効果予測因子と各種ガイドライン…………………………………
ハーセプチン Herceptin … ……………………………………………………
®
4
4
4
パージェタ Perjeta ……………………………………………………………… 5
®
カドサイラ Kadcyla®… ………………………………………………………… 5
タイケルブ Tykerb®……………………………………………………………… 5
抗 HER2 薬対象症例の選択方法(HER2 検査法)
… ……………………………
理想的な検体………………………………………………………………………
検査対象となる乳癌組織… ……………………………………………………
過去の検体… ……………………………………………………………………
組織標本の準備と選択… ………………………………………………………
免疫組織化学法(Immunohistochemistry:IHC)
………………………………
IHC 法手順…………………………………………………………………………
IHC 法判定方法……………………………………………………………………
染色強度スコアの判定基準… …………………………………………………
6
7
7
7
7
8
8
8
9
IHC 検査に用いられる試薬……………………………………………………… 10
HER2 ATLAS… …………………………………………………………………… 10
in situ ハイブリダイゼーション法(in situ hybridization:ISH)
… ………… 11
ISH 法手順………………………………………………………………………… 11
ISH 法判定方法…………………………………………………………………… 11
Reference Laboratories… ……………………………………………………… 12
HER2 検査の精度管理……………………………………………………………… 13
最適な内部精度評価法… ……………………………………………………… 13
最適な外部からの習熟度評価と精度管理… ………………………………… 13
継続的な教育、普及活動… …………………………………………………… 13
乳がん HER2 検査病理部会における取り組み… …………………………… 15
【参考】改訂前の HER2 検査の判定基準… ……………………………………… 16
Q&A… ……………………………………………………………………………… 18
ハーセプチンについて… ……………………………………………………… 18
検査方法について… …………………………………………………………… 19
検体について… ………………………………………………………………… 20
判定方法について… …………………………………………………………… 23
その他… ………………………………………………………………………… 24
体外診断用医薬品………………………………………………………………… 25
IHC 法……………………………………………………………………………… 25
FISH 法… ………………………………………………………………………… 26
DISH 法…………………………………………………………………………… 26
CISH 法…………………………………………………………………………… 26
CLIA 法…………………………………………………………………………… 26
引用文献…………………………………………………………………………… 27
【参考】ASCO2000 腫瘍マーカーガイドライン… ……………………………… 27
関連サイト………………………………………………………………………… 28
第四版 HER2 検査ガイドの改訂概要
《HER2 検査フローチャート》
ASCO/CAP HER2 検査ガイドライン 1)に準拠
以下のフローチャートに基づき抗 HER2 薬の治療対象症例を選択する。
HER2 検査は原則として浸潤癌を対象とする。IHC 法 2 +のときは、ISH 法(同
じ検体)または新たな検査(IHC または ISH 法)を行う。
IHC法(浸潤部)
>10%の腫瘍細胞*に強い完全な全
周性の膜染色が認められる
>10%の腫瘍細胞*に不完全および
/または弱/中程度の全周性の膜染色
が認められる
または
≦10%の腫瘍細胞*に強い完全な全
周性の膜染色が認められる
IHC 3+
陽性
IHC 2+
equivocal
>10%の腫瘍細胞*にかすかな/かろ
うじて部分的な膜染色が認められる
染色像が認められない
または
≦10%の腫瘍細胞*に不完全で、か
すかな/かろうじて膜染色が認められ
る
IHC 1+
陰性
IHC 0
陰性
リフレックステスト**(ISH法を用いて同じ検体で)、または新たな検査(IHCまたはISH法を用いて可能なら新たな検体で)
を実施しなければならない。
*低倍率の対物レンズで容易に評価でき、均一および近接する浸潤細胞集団 **病理医が主治医の判断を得ることなく行うテスト2)
デュアルプローブによるISH法(浸潤部)
HER2/CEP17比≧2.0
HER2/CEP17比<2.0
HER2遺伝子コピー数の
平均が1細胞*あたり≧4.0
HER2遺伝子コピー数の
平均が1細胞*あたり<4.0
HER2遺伝子コピー数の
平均が1細胞*あたり≧6.0
HER2遺伝子コピー数の平均
が1細胞*あたり≧4.0∼<6.0
HER2遺伝子コピー数の
平均が1細胞あたり<4.0
ISH法
陽性
ISH法
陽性†
ISH法
陽性
ISH法
equivocal
ISH法
陰性
リフレックステスト**(IHC法を用いて同じ検体で)、代替えCh17プローブを用いたISH法、または新たな検査(IHCまたはISH法を用いて可能なら新たな検体で)
を実施しな
ければならない。
*均一および近接する浸潤細胞集団 **病理医が主治医の判断を得ることなく行うテスト2)
†この場合、Ch17モノソミーの可能性がある
シングルプローブによるISH法(浸潤部)
HER2遺伝子コピー数の平均が1細胞*あたり≧6.0
HER2遺伝子コピー数の平均が1細胞*あたり≧4.0∼<6.0
HER2遺伝子コピー数の平均が1細胞あたり<4.0
ISH法
陽性
ISH法
equivocal
ISH法
陰性
リフレックステスト**
(デュアルプローブISH法またはIHC法を用いて同じ検体で)、または新たな検査(IHCまたはISH法を用いて可能なら新たな検体で)
を実施しなければな
らない。
*均一および近接する浸潤細胞集団 **病理医が主治医の判断を得ることなく行うテスト2)
※本検査ガイドにおける HER2 検査フローチャートは、本邦で承認された体外診断用医薬品の判定方法と異なる。
Adapted from Wolff AC, et al: J Clin Oncol 31(31) 2013:3997-4013.
©
2013 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Readers are encouraged to read the entire article for the correct context at jco.ascopubs.org.
2
《解説》
ASCO/CAP HER2 検査ガイドライン改訂の背景
近年、分子標的薬剤の開発が相次ぎ、治癒率の向上がもたらされる一方で、
医療経済性も重要視され、より適正な対象への使用が求められている。
HER2 タンパクを特異的ターゲットとするハーセプチンは、対象症例選択の
ために HER2 検査・判定が行われているが、転移性乳癌だけでなく術後療法お
よび術前療法のための早期乳癌においても使用が可能となり(本邦では 2008 年
2 月および 2011 年 11 月に適応追加)、HER2 判定の頻度が著しく増加し、その
重要性がますます高まってきた。
乳癌領域で実施された過去の 20% 内外の HER2 検査が正確でなかったとす
る報告もみられることなどを背景に、ASCO/CAP では HER2 検査・判定のさ
らなる精度向上、精度管理を目的として、臨床腫瘍の専門医、病理学者をはじ
め米国国立機関の担当者から構成されるエキスパートパネルを組織し、新ガイ
ドラインが定められた。
■主な改訂点
・新たに乳癌と診断された全患者について、HER2 検査の実施を推奨する。
・組織標本の作成において、組織の固定時間は 6 時間以上 72 時間以内を推奨する
(従来は、6 時間以上 48 時間以内)
。
・IHC 法の 3 +を、強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞が、10% を超えて存
在する場合とする
(従来は 30% 以上)
。
・従来 IHC 法で陰性とされていた≦ 10%の腫瘍細胞に強い完全な全周性の膜染色
が認められるものを IHC2 +とする。
・ISH 法の陽性基準を、HER2 シグナル総数 /CEP17 シグナル総数比が 2 倍を超え
るもの、および 2 倍未満でも HER2 遺伝子コピー数が 6 コピー以上あるものとす
る。HER2 シグナル総数 /CEP17 シグナル総数比が 2 倍未満かつ、HER2 遺伝子
コピー数が 4~6 未満を equivocal、4 未満を陰性とする
(従来は、FISH 法判定基準
で HER2 シグナル総数 /CEP17 シグナル総数比が 2.2 倍以上を陽性、1.8~2.2 倍
を equivocal、1.8 倍未満を陰性)
。
・IHC 法、ISH 法 い ず れ の 検 査 も 技 術 的 問 題 で 実 施 で き な い、ま た は、陽 性、
equivocal または陰性か判定できない場合、判定不能とする。
判定基準の改訂点
判定結果
IHC 法(浸潤部)
ISH 法(浸潤部)
陽性
・HER2/CEP17 比≧ 2.0
強い完全な全周性の膜染色が認められる ・HER2/CEP17 比< 2.0 かつ
3+:
> 10%
HER2 遺伝子コピー数の平均が 1
細胞あたり≧ 6.0
equivocal
不完全および / または弱 / 中程度の全周
H ER 2 / C EP 1 7 比 < 2.0 か つ
性の膜染色が認められる> 10%、または
2+:
HER2 遺伝子コピー数の平均が 1
強い完全な全周性の膜染色が認められる
細胞あたり≧ 4.0~< 6.0
≦ 10%
1+:
0:
陰性
判定不能
かすかな / かろうじて部分的な膜染色が
認められる> 10%
H ER 2 / C EP 1 7 比 < 2.0 か つ
染色像が認められない、または
HER2 遺伝子コピー数の平均が 1
不完全およびかすかな / かろうじて膜染 細胞あたり< 4.0
色が認められる≦ 10%
IHC 法、ISH 法いずれの検査も技術的問題で実施できない、または、陽性、
equivocal、陰性か判定できない場合
Adapted from Wolff AC, et al: J Clin Oncol 31(31) 2013:3997-4013.
©
2013 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Readers are encouraged to read the entire article for the correct context at jco.ascopubs.org.
3
HER2(Human Epidermal Growth Factor Receptor Type 2)
HER2 遺伝子(HER2/neu、c-erbB-2)はヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝
子と類似の構造を有する癌遺伝子として同定された。HER2 遺伝子のコードす
る産物(HER2 タンパク)は細胞膜を貫通する受容体型糖タンパクで、チロシン
残基のリン酸化により活性化され、ras/raf などを経たシグナル伝達経路を介し
て細胞の増殖に関与している 3)。
《予後および効果予測因子と
各種ガイドライン》
ヒト乳癌症例の 15 〜 25% で HER2 遺伝子の増幅と HER2 タンパクの過剰発
現が認められる。HER2 遺伝子増幅/タンパク過剰発現のある乳癌患者は予後
不良であり 4)-6)、さらに anthracycline 系抗癌剤(doxorubicin など)に対する感受
性が高いとの報告 7)-9)、ホルモン療法(tamoxifen など)10)-13)および CMF 療
法 10)、14)、15)に対する治療抵抗性を示すとの報告もあり、予後因子、効果予測因
子の両面から臨床的に重要視されている。
このため、ASCO 腫瘍マーカーガイドラインをはじめ、St.Gallen コンセンサ
ス会議のガイダンス、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイド
ラインおよび日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインなどにおいて、HER2 検査
が推奨されている。
予後因子:病気のある時点からの予後を推測するための因子(prognostic factor)
効果予測因子:特定の治療に対する治療効果を予測する因子(predictive factor)
ASCO 腫瘍マーカーガイドライン 16)、17)
2000 Update of Recommendations for the Use of Tumor Markers in Breast and Colorectal Cancer: Clinical Practice
Guidelines of the ASCO
ASCO 腫瘍マーカー専門委員会では、HER2 に関し、次のような勧告を提示している。
1)HER2 過剰発現の免疫染色による判定はすべての原発性乳癌症例について行うべきであ
り、その時期は原発病巣診断時または再発診断時とする。
2)HER2 遺伝子増幅の測定も同様に意義がある。
◆このように ASCO では、現時点での可能な検査による、原発性乳癌診断時の HER2 検査を推奨している。
◆日本においては乳がん HER2 検査病理部会で、HER2 検査の時期は原発性乳癌診断時を推奨している。
◆転移巣に対する治療の場合は、2013 年 ASCO/CAP ガイドラインでは「転移が出現した患者では、組織検
」
となっている。
体が得られれば転移部位で HER2 検査を実施すること。
ハーセプチン Herceptin®
ハーセプチン(トラスツズマブ)は HER2 の細胞外領域ドメインⅣに特異的に
結合するモノクローナル抗体として米国 Genentech 社が開発し、1998 年に世
界で最初のヒト化モノクローナル抗体乳癌治療薬として米国 FDA により認可
された。日本においては 2001 年 6 月に薬価収載されている。
現在、日本において承認されているハーセプチンの効能・効果は「HER2 過剰
発現が確認された乳癌」
、
「HER2 過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再
発の胃癌」
である
。
HER2 過剰発現が確認された転移性乳癌に対するハーセプチンの効果は単剤 18)、19)
および化学療法との併用 20)で奏効率、TTP(Time to Progression;無増悪期間)
、
生存期間などの指標において有意な改善が確認されている
。
また、HER2 過剰発現が確認された乳癌に対する術後補助化学療法としての
ハーセプチンの効果は、無病生存率(p<0.0001)[ ハザード比 :0.64(95%CI:
[ ハザード比 :0.66
0.54-0.76)log-rank 検定 ] だけでなく全生存率(p=0.0115)
(95% CI:0.47-0.91)log-rank 検定]
の有意な改善が確認されている 21)。
4
パージェタ Perjeta®
パージェタ(ペルツズマブ)は、米国 Genentech 社が開発した HER2 の細胞外
領域ドメインⅡに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体である。米国では
2012 年 6 月、欧州では 2013 年 3 月に承認された。日本においては、2013 年 8 月
に薬価収載されている。現在、日本において承認されているパージェタの効能・
効果は「HER2 陽性の手術不能又は再発乳癌」である。前治療歴のない HER2 陽
性転移・再発乳癌に対して、プラセボ、ハーセプチンとドセタキセルの併用療法
(プ
ラセボ群)
に比べ、パージェタ、ハーセプチンおよびドセタキセルの併用療法
(パー
、p < 0.001
ジェタ群)で、無増悪生存期間[ハザード比 0.62(95% CI:0.51-0.75)
(層別 log-rank 検定)
]および全生存期間[ハザード比 0.66 (95% CI:0.52-0.84)
、
の有意な改善が確認されている 22)、23)。
p=0.0008(層別 log-rank 検定)]
カドサイラ Kadcyla®
カドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)は、米国 Genentech 社が開発し
た抗 HER2 ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブと細胞傷害性を
有するチューブリン重合阻害剤である DM1 が結合した抗体薬物複合体であ
る。米国で 2013 年 2 月に承認されて以降、日本および欧州でも同年に承認さ
れている。現在、日本において承認されているカドサイラの効能・効果は
「HER2
陽性の手術不能又は再発乳癌」である。タキサン系抗悪性腫瘍剤およびハーセ
プチンによる前治療歴のある HER2 陽性の切除不能な局所進行または転移性
乳癌に対して、無作為化臨床試験においてカドサイラ単独療法で、無増悪生存
]
期間[ハザード比 0.65(95%CI:0.55-0.77)、p < 0.001(層別 log-rank 検定)
および全生存期間[ハザード比 0.68(95%CI: 0.55-0.85)、p < 0.001(層別
log-rank 検定)]の有意な改善が確認されている 24)。
タイケルブ Tykerb®
タイケルブ(ラパチニブトシル酸塩水和物)は、英国 GlaxoSmithKline 社が
開発した EGFR および HER2 細胞内キナーゼドメインを標的とするチロシン
キナーゼ阻害剤である。米国では 2007 年 3 月に、HER2 過剰発現を示し治療
歴を有する進行性または転移性乳癌の治療として、ゼローダとの併用療法が承
認されている。日本においては、2009 年 6 月に薬価収載されている。現在、日
本において承認されているタイケルブの効能・効果は「HER2 過剰発現が確認
された手術不能又は再発乳癌」に対するゼローダとの併用療法である。アント
ラサイクリン系、タキサン系抗悪性腫瘍剤およびハーセプチンによる前治療後、
ゼローダによる治療歴のない HER2 過剰発現を示す進行性または転移性乳癌
に対して、ゼローダ単独療法に比べゼローダとラパチニブの併用療法で、TTP
の有意な改善が確認されている 25)。
5
抗 HER2 薬対象症例の選択方法
(HER2 検査法)
癌細胞における HER2 過剰発現は基本的に DNA レベルの遺伝子増幅に伴っ
て起きている。癌組織を対象とした、HER2 の検査法は、DNA レベルの増幅をみ
る方法、RNA レベルでの過剰発現をみる方法、そしてタンパクレベルでの過剰
発現をみる方法に分類される(表)
。タンパクレベル、DNA レベルでの
検査法として代表的なものが、それぞれ免疫組織化学(IHC)法とin situ ハイブ
リダイゼーション(ISH)法である。また、今後臨床応用が期待される方法として
明 視 野 で DNA の 解 析 可 能 な CISH 法、SISH 法、DISH 法、 血 中 癌 細 胞 の
RT-PCR 法による遺伝子増幅、mRNA 過剰発現検出などが挙げられる
。
多くの試薬が研究用として商品化されているが、わが国ではダコ HercepTest Ⅱ、
、ベンタナ ultraView パスウェー HER2
ベンタナ I-VIEW パスウェー HER2(4B5)
(4B5)
、ヒストファイン HER2 キット(MONO)
、ヒストファイン HER2 キット
、パスビジョン HER-2 DNA プローブキット、
(POLY)
HER2 FISH pharmDx「ダ
コ」
、ヒストラ HER2 FISH キット、ベンタナ インフォーム Dual ISH HER2 キット、
などが体外診断用医薬品として承認されている。他の商品は研究用試薬として入手
。血清中の shed 抗原を測定する ELISA 法、CLIA 法が各々
が可能である
米国、日本で治療効果のモニタリングのために体外診断用医薬品として承認され
ている
。これらの検査法が対象症例の選択に有用かどうかについては
明らかでない。わが国ではケミルミ Centaur-HER2/neu が体外診断用医薬品と
して承認されている。
HER2 検査法
測定対象
癌組織中のHER2遺伝子(DNA)
癌組織中のHER2遺伝子(RNA)
HER2検査法
Fluorescence in situ hybridization(FISH)
Chromogenic in situ hybridization(CISH)
Silver in situ hybridization(SISH)
Dual color in situ hybridization(DISH)
Southern blot
Polymerase chain reaction(PCR)
Northern blot
Reversed transcription-polymerase chain reaction
(RT-PCR)
癌組織中のHER2タンパク
血清中のHER2タンパク
Immunohistochemistry(IHC)
Western blot
Enzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)
Enzyme immunoassay(EIA)
Chemiluminescent immunoassay(CLIA)
6
理想的な検体
《検査対象となる乳癌組織》
乳癌の原発巣または転移巣の組織が対象となる。10% ホルマリン固定(でき
るだけ中性緩衝ホルマリンが望ましい)パラフィン包埋組織から未染薄切切片
を作製し、シランコートスライド(あるいは APS コート)またはニューシラン
コートスライド(あるいは MAS コート)にのせたもの
1. 初発乳癌の原発巣ないし転移巣の切開生検・針生検〔コアニードルバイオプ
シー、乳腺腫瘍画像ガイド下吸引術〕
/ 手術標本。 2. 転移性乳癌では過去に手術された原発巣の組織標本ないし転移巣の生検 / 手
術標本。
これらの乳癌で抗 HER2 薬投与を考慮した場合、IHC 法による HER2 タンパク
検査または ISH 法による HER2 DNA 検査を保険診療として行うことができる。
《過去の検体》
再発乳癌では転移巣の組織採取が困難な場合があり、そのような場合は過去
の手術による原発巣の組織ブロックが対象となる。この場合は標本作製法が統
一されていない可能性があり、検査結果の解釈には注意が必要である。
《組織標本の準備と選択》
理想的には、以下の条件で作製されたホルマリン固定パラフィン包埋組織ブ
ロックが望ましい
。
−推奨固定液 : 10% 中性緩衝ホルマリン
−推奨固定時間 : 6 時間以上 72 時間以内 ※
※6 時間未満の検体は、避けるべきである。
−未染色スライドの放置を避ける
(6 週間以内)
。
−組織切片はシランコートスライドまたはニューシランコートスライドにのせる。
組織ブロックの選択は日本病理学会認定病理専門医が行い、浸潤性乳癌の部
分を含んだブロックを HE 染色で選び、その隣接の組織切片を作製する。切片
の厚さは IHC 法 4µm、ISH 法 5µm が最適である。
ISH 法では浸潤部分で判定することになっているので、試薬を有効に使用す
るために、あらかじめ鏡検にて浸潤癌の部分や、可能なら免疫染色で陽性の部
分を選び、10mm ×10mm 程度の面積に組織切片をトリミングしてから行うこ
ともけっして積極的に推奨はできないが選択肢とする。過去の種々の条件で作
製された標本で ISH 法検査をする場合、必ずしもすべての標本で ISH 法検査が
可能であるとは限らないことも承知しておくべきである。
針生検標本に関する注意点
針生検では、多めの検体を採取することが望ましい。以下のように採取方法
や検体の取り扱いに注意する。
・ 片手で操作しやすく組織細胞の挫滅を防ぐために、生検針は 16G または 14G
で、ストロークが長い自動カッティング針を用いる。
・ 腫瘍組織を 3 本程度採取する。
・ 採取した検体は屈曲を防ぐため、濾紙などに伸展させ固定液につける。
・ 検体が乾燥しないように注意し、固定を行う。
7
免疫組織化学法(Immunohistochemistry:IHC)
組織切片を対象に特定分子に対する抗体を用い、抗原抗体反応によって組織
上で特定分子の発現や局在を知る方法である。病理検査として一般的に行われ
ている方法であり、各施設で作製される 10%ホルマリン固定パラフィン包埋
組織を用いて実施が可能である。
研究用試薬としては多くの HER2 免疫染色用抗体が市販されているが、各抗
体の特性、染色手技、判定方法により結果が異なる。したがって、抗 HER2
薬治療対象症例選択を適正に決定するためには厳密に標準化された染色手技と
判定方法に基づいて行われるべきである。
《IHC 法手順》
操作は、各添付文書に厳密に従って行う。陽性コントロールスライドを同時
に染色する。また、一次抗体陰性コントロールを同時に染色する(
「HER2
ATLAS」p.10 参照)。
《IHC 法判定方法》
判定基準は p.9 の表に示す通りである。HER2 染色強度は必ず日本病理学会
認定病理専門医が判定する。
標本観察手順
1.陽性および陰性コントロールスライドの特異染色性および染色強度を観察
し、染色手順および構成試薬の性能を確認する。
2.陽性所見を示す検体組織スライドを選択し、HER2 タンパク染色像を確認
する。
3.浸潤部分の乳癌細胞の陽性所見のみを検索対象とし、非浸潤部分の癌細胞
は検索対象から除外する。
4.光学顕微鏡の 4 倍対物レンズを使用して、検体組織内の癌細胞の HER2 タ
ンパク陽性染色像、陽性染色の強度、陽性細胞率を観察する。次に対物レ
ンズを 10 倍に切り替え、陽性所見が細胞膜か細胞質に局在するかを確認
する。細胞質のみに陽性所見がみられるものは陰性と判定する。
5.陽性であったほとんどの検体組織において、対物レンズ 10 倍で細胞膜に
局在する陽性像が確認できるが、陽性像が確認できない場合は、さらに対
物レンズ 20 倍で検索する。
8
《染色強度スコアの判定基準》
HER2 タンパク過剰発現の判定の際は、癌細胞の膜における染色性およびそ
の染色強度のみを対象とし、細胞質における反応は判定対象外とする。細胞膜
における反応性に関しては以下の基準で、スコア 0 ~スコア 3 +のカテゴリー
に分類する。
IHC 法の判定基準 1)
判定
スコア
陽性
3+
equivocal
2+
染色パターン
強い完全な全周性の膜染色が認められる> 10%
不完全および / または弱 / 中程度の全周性の膜染色が認められる> 10%、
または
強い完全な全周性の膜染色が認められる≦ 10%
1+
陰性
0
かすかな / かろうじて部分的な膜染色が認められる> 10%
染色像が認められない、または
不完全およびかすかな / かろうじて膜染色が認められる≦ 10%
スコア 3 +
スコア 2 +
スコア 1 +
スコア 0
(HercepTest による染色例)
9
《IHC 検査に用いられる試薬》
ダコ HercepTest Ⅱ、ベンタナ I-VIEW パスウェー HER2(4B5)、ベンタナ
ultraView パスウェー HER2(4B5)、ヒストファイン HER2 キット(MONO)、
ヒストファイン HER2 キット(POLY)、などの染色キットが体外診断用医薬品
として承認され、保険収載されている
。
いずれの染色キットについても、理想的な検体や固定方法については各抗体
の添付文書に従う。また、手技については、過剰発現を示す症例を陽性コント
ロールとして、抗 HER2 抗体をのせない標本を陰性コントロールとしてそれ
ぞれ入れること、抗体の希釈は各添付文書の記載に基づくこと、抗原賦活処理
(マイクロウェーブやオートクレーブなど)については各添付文書の記載ないし
文献に基づくこと、一次抗体をのせてから発色までは安定した結果が出ること
が確認されている方法で行うこと、などが遵守されるべきである。
いずれの試薬を用いた場合でも、判定は p.9 の《染色強度スコアの判定基準》
に準じて行う。「HER2 ATLAS」にはこれらの抗体の染色性について症例を提
示した。
※ 抗体の詳細については、p.28 の関連サイトを参照
HER2 ATLAS
乳がん HER2 検査病理部会(旧乳癌トラスツズマブ病理部会)では HER2 検
査標準化のためのアトラスを作成している。
HER2 ATLAS は、 中 外 製 薬 ホ ー ム ペ ー ジ(http://www.chugai-pharm.
co.jp/)→「医療関係者向け がん情報サイト CHUGAI ONCOLOGY at the
Front Line」
→「乳癌編」の中に収載されている。
10
in situ ハイブリダイゼーション法(in situ hybridization:ISH)
ISH 法は HER2 遺伝子(DNA)増幅の検出法の一つであり、FISH 法、CISH 法、
SISH 法、DISH 法がある。いずれもホルマリン固定パラフィン包埋組織切片上
で、標識した HER2 DNA プローブを用いて癌細胞の間期核における HER2 遺
伝子のコピー数を検出する方法である。わが国では体外診断用医薬品が承認さ
れ、保険収載されている(p.26 参照)
。HER2 検査において、世界的に ISH 法の
キットはシングルプローブとデュアルプローブがある。
《ISH 法手順》
コントロールスライドを必ず入れ、添付文書に記載された検査手順に厳密に
従う。
《ISH 法判定方法》
20 個の癌細胞で HER2、CEP17 の各々のシグナル数を蛍光顕微鏡または光学
顕微鏡で計数し、さらに癌細胞 20 個の CEP17 シグナル総数に対する HER2 シ
グナル総数の比率を算出する。HER2/CEP17 比が 2.0 以上、または 2.0 未満か
つ HER2 遺伝子コピー数の平均が1細胞あたり 6.0 以上を増幅陽性(ISH 法陽
性)
、HER2/CEP17 比が 2.0 未満かつ HER2 遺伝子コピー数の平均が1細胞あ
たり 4.0~6.0 未満を equivocal、HER2/CEP17 比が 2.0 未満かつ HER2 遺伝子
コピー数の平均が1細胞あたり 4.0 未満を増幅陰性(ISH 法陰性)と定義する。
equivocal と判定された場合は、リフレックステスト(IHC 法を用いて同じ検体
で)
、代替え Ch17 プローブを用いた ISH 法、または新たな検査
(IHC または ISH
法を用いて可能なら新たな検体で)を実施しなければならない。浸潤部分で判定
し、10% 以上の癌細胞を含む異なる細胞集団が近接してスライド上にある場合
には、その細胞集団についても 20 個以上の細胞でシグナル数を計数する。核が
重なった部分での計測は避ける。シグナルが近接している場合や、シグナルの
大小などの計測に関する問題については添付文書を参照する。
ISH 法の判定基準 1)
判定
内容
HER2/CEP17 比≧ 2.0 または
陽性
HER2/CEP17 比< 2.0 かつ HER2 遺伝子コピー数の平均が
1 細胞あたり≧ 6.0
equivocal
陰性
HER2/CEP17 比< 2.0 かつ HER2 遺伝子コピー数の平均が
1 細胞あたり≧ 4.0 ~< 6.0
HER2/CEP17 比< 2.0 かつ HER2 遺伝子コピー数の平均が
1 細胞あたり< 4.0
11
HER2
CEP17
陽性例
HER2
CEP17
HER2
CEP17
equivocal
陰性例 Reference Laboratories
下記 3 つの検査会社は、乳がん HER2 検査病理部会メンバーである。各社
において、標準化された方法で HER2 検査の実施が可能である。
(株)エスアールエル
データインフォメーション
TEL:042-646-5911
(株)ビー・エム・エル
(株)ピーシーエルジャパン
TEL:049-234-7301 FAX:049-234-7302
三菱化学メディエンス
(株)
インフォメーション室
12
TEL:03-5994-2111 FAX:03-6722-4243
HER2 検査の精度管理
ASCO/CAP ガイドラインでは、ハーセプチンの適正な症例選択のための
HER2 検査の精度維持、持続的な精度管理の重要性が強調されている。ガイド
ラインにおける推奨 8 項目のうち 3 項目で検査精度評価について述べられてお
り、以下にその抜粋を記載した(表 1)。2007 年のガイドラインに比較して、
2013 年のガイドライン 1) においては、外部精度評価プログラムへの参加の重
要性がより強調された内容となっている。本邦においても、特定非営利活動法
人 日本病理精度保証機構(JPQAS)の活動が開始されることもあり、内部精度
管理および外部精度評価の進捗が期待される。
《最適な内部精度評価法》
臨床検査室責任者の下で、継続して内部精度の評価を行うことが推奨されて
いる(表 1)。評価項目には、新しい検査法導入時に検査妥当性の評価を行うこと、
導入時および継続的な検査スタッフのトレーニングと習熟度評価を行うこと、
コントロールのルーチン使用、標準化された作業手順で実施すること、継続的
な病理医の習熟度評価と教育を行うこと、などが含まれる。IHC 法と ISH 法の
検査報告項目として、表 2 のような内容が推奨されている。
《最適な外部からの
習熟度評価と精度管理》
米国、英国、欧州などにおいて外部評価のプログラムが導入されている。米
国 ASCO/CAP ガイドラインでは、HER2 検査は CAP 認定臨床検査室か、認定
と習熟度テストの必須項目(表 3)を満たす臨床検査室にて行われるべき、と推
奨されている。CAP 検査室認定プログラム(2007 年開始)においては、HER2
検査を実施する全 CAP 認定臨床検査室が、ガイドラインに沿った習熟度テス
トに参加することを要求している。テストは各々のアッセイ法(IHC 法、ISH 法
など)により異なる。十分な例数からなる標本が年 2 回以上配布され、各臨床
検査室の成績が評価される。90% 以上正確に同定できれば合格、90% 未満であ
れば不合格となり認定プログラムの必須項目に基づいた対応が必要となる。
本邦においては、同様の外部精度評価プログラムが存在しなかったが、日本
病理学会と日本臨床衛生検査技師会の協力のもと、JPQAS による外部精度評
価プログラムが始動することとなった。
《継続的な教育、普及活動》
病理医、臨床医、患者、支援団体などに対する効果的で広範な教育活動も必要と考
えられる。CAP や ASCO その他により臨床検査室のみならず臨床医や患者に向けた、
精度評価の方法や意義に関するオンラインや講演による教育活動も実施されている。
表 1.精度管理にかかわる ASCO/CAP ガイドライン推奨項目の要約
最適な内部での精度評価法
新たな検査導入時の検査妥当性評価
継続的な精度管理と設備保全
検査導入時および継続的な検査スタッフのトレーニングと習熟度評価
コントロールのルーチン使用を含む標準化された作業手順の適用
手順変更時の妥当性再評価
継続的な病理医の能力評価と教育
最適な外部からの能力評価
年に2 回以上の外部習熟度テストプログラムへの参加
各テストで 90%以上の正答率があれば合格点
(合格点に達しなかった場合、臨床検査室は認定プログラムの必須項目に沿って対応する)
最適な臨床検査室認定
2 年に1 度の外部監査
毎年内部での自己監査が要求される(表 3 の項目)
(※CAP では合格点に達しない場合、当該手法によるHER2 検査を停止するとしている)
13
表 2.ASCO/CAP ガイドラインの HER2 検査報告項目
IHC 法
ISH 法
患者 ID
臨床医
日付
標本番号(枝番)
標本の採取部位と型
固定液の種類
固定までの時間
固定時間
使用抗体/メーカー
方法(検査/メーカー/ FDA 認可の有無)
画像解析法(用いた場合)
コントロール(過剰発現、低発現、陰性、内部)
検体の適正(評価に十分な量か)
結果
完全な膜染色を示す浸潤癌細胞の割合
染色性の均一性(あり/なし)
均一な暗調の全周性パターン(あり/なし)
患者 ID
臨床医
日付
標本番号(枝番)
標本の採取部位と型
固定液の種類
固定までの時間
固定時間
プローブ
方法(検査/メーカー/ FDA 認可の有無)
画像解析法(手動または自動)
コントロール(増幅、equivocal、非増幅、内部)
検体の適正(評価に十分な浸潤癌の量か)
結果
計測された浸潤癌細胞の数
観察者の数
核またはtile*あたりの CEP17シグナル数平均(デュアルプローブを用
いた場合)
平均 HER2/CEP17 比(CEP17プローブを用いた場合)
解釈
陽性、equivocal、陰性、解釈不能
IHC が併用されている場合はその旨も記載
2 種類(増幅されるものとされないもの)の癌細胞が認められた場合、
それぞれについて、実数と陽性または陰性判定の記載をする。増幅され
た集団の浸潤癌量についても記載する。組織検体において、全細胞集
団の 10%またはそれ以上で増幅された集団のみ記載する。
解釈
陽性、equivocal、陰性、解釈不能
コメント(共通)
ガイドラインの推奨に沿って検体が取り扱われたかを記載する。固定までの時間、固定液の種類および固定時間についての報告
記載は必要ないが、検査室台帳などに記録する。外部推奨ガイドラインに沿って検体が取り扱われた場合、病理報告コメントに明
確に記載する。
FDA 認可の方法を用いた場合:その旨を記載する。
FDA 認可の方法に変更を加えた場合:変更点を記載する
FDA 認可でない検査で実施または認可の検査を用いた場合:検査室はCAPまたはそれ以外の LDT**検査要求に従ったことを
記載する。
追加検査の申し込みまたは他検体を追加検査する場合、さらなる検査を続行する場合はコメント欄へ記載する。
*tile は画像システム計測に用いられる単位
**ラボラトリーディベロップテスト
Adapted from Wolff AC, et al: J Clin Oncol 31(31), 2013:3997-4013.
©
2013 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Readers are encouraged to read the entire article and the data supplement
for the correct context at jco.ascopubs.org.
表 3.CAP による臨床検査室認定のために必要な要素
検査方法の妥当性評価
標準的な操作手順の適用
検査にかかわるスタッフのトレーニング
検体と試薬の適切なラベル貼り
検体と試薬の適切な保存
備品の調整と精度管理
内部精度評価計画と遵守の証拠
解釈のための検査のクオリティ
技師と病理医の継続的な習熟度評価*
報告書の妥当性とクオリティ
結果の正確な提出
*検査実施者に対する同業者の定期的または継続的な能力評価による。不合格の場合、改善が試みられる。
14
《乳がん HER2 検査病理部会
における取り組み》
施設間の HER2 検査の精度を検証する目的で、乳がん HER2 検査病理
部会関連施設を中心に Japanese Ring Study26)を実施し、施設間におけ
る検査結果の一致率および海外で実施された Ring Study27)との一致につ
いて検討している。
その結果、IHC 法、FISH 法とも施設間で高い一致率が認められ、日本
における HER2 検査レベルは世界的レベルと同等の成績が得られた。一
方、再現性、信頼性のある結果を得るには、従来の推奨どおりマニュア
ルに沿った検体の取り扱い、染色方法、判定方法などが必須であること
が改めて確認されている。
15
【参考】改訂前の HER2 検査の判定基準
《HER2 検査フローチャート》
以下のフローチャートに基づきハーセプチンの治療対象症例を選択する。
HER2検査アルゴリズム:IHC法 HER2 検査は原則として浸潤癌を対象とする。IHC 法 2 +のときは、FISH
法にて再検査を行う。
IHC法 乳癌組織(浸潤部)
IHC法
IHC法 3+
(HER2陽性)
(浸潤癌細胞の>30%に均一な強度
での膜への染色が認められる)
IHC法 2+
(HER2 equivocal)
IHC法 0 or1+
(HER2陰性)
FISH法で再検査
ハーセプチン治療
の適応あり
FISH法陽性
FISH法 equivocal
HER2/CEP17比≧2.0 FISH法陽性
HER2/CEP17比<2.0 FISH法陰性
FISH法陰性
ハーセプチン治療
HER2検査アルゴリズム
:FISH法 の適応あり
FISH法 乳癌組織(浸潤部)
FISH法
FISH法陽性
HER2/CEP17比>2.2
*1
(または、 HER2遺伝子コピー数の
平均値が核1個あたり>6)
*1
(または、
FISH法 equivocal
HER2/CEP17比1.8∼2.2
FISH法陰性
HER2/CEP17比<1.8
HER2遺伝子コピー数の平均値が核1個あたり4∼6) (または、*1 HER2遺伝子コピー数の
平均値が核1個あたり<4)
FISH法で細胞数を増やしてカウント
ハーセプチン治療
の適応あり
(
or *2 FISH法で再検査
or *3 IHC法で検査
)
FISH法 equivocal
HER2/CEP17比≧2.0 FISH法陽性
HER2/CEP17比<2.0 FISH法陰性
*1 本邦においては*1の判定を用いるような体外診断用医薬品は承認されていない
*2 FISH法の再検査は保険償還されない可能性がある 医療診療報酬点数表(平成20年4月版)
より抜粋
・HER2遺伝子標本作製
HER2遺伝子標本作製は、乳癌の術後の患者又は乳癌の転移が確認された乳癌患者に対して、抗HER2ヒト化モノクローナル抗体抗悪性腫瘍剤の投与の適応を判断する
ことを目的として、FISH法により遺伝子増幅標本作製を行った場合に、当該抗悪性腫瘍剤の投与方針の決定までの間に1回を限度として算定する。
なお、本検査と
「N002」免疫染色(免疫抗体法)病理組織標本作製の「3」を併せて実施した場合は、主たるもののみ算定する。
*3 FISH法で細胞数を増やしてカウントした後も判定結果があいまいな場合に、IHC法による確定診断が推奨される
※本検査ガイドにおける HER2 検査フローチャートは、本邦で承認された体外診断用医薬品の判定方法と異なる。
※FISH 法の代替として DISH 法でも実施可能である。
16
■判定基準
・ IHC 法 3 +を、強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞が、30% を超え
て存在する場合とする。
・ FISH 法陽性の基準を、HER2 シグナル総数 /CEP17 シグナル総数比が 2.2
倍を超えるものとし、1.8 倍未満を陰性、1.8 〜 2.2 倍を新たな基準として設
定された
「equivocal(境界域)
」
とする。
判定結果
IHC法
判定基準の改訂点
強い完全な細胞膜の
陽性
3+:
>30%
陽性染色がある癌細胞
equivocal
陰性
2+
0∼1+
FISH法
HER2/CEP17比>2.2
HER2/CEP17比1.8∼2.2
HER2/CEP17比<1.8
本邦での運用方法
・ FISH 法において equivocal と判定後、FISH 法で細胞数を増やしてカウント
(もしくは再検査)
しても equivocal の場合は、従来の 2.0 を基準として使用する *。
・ FISH 法において equivocal と判定された場合の FISH 法での再検査など、本邦
では必ずしも保険償還されない可能性があるものも含まれているが、グローバ
ルスタンダードに準拠するという視点から、上記を除き ASCO/CAP のガイド
ラインと同じ基準としている。
* 英国のガイドラインにおいても同様に実施されている。
17
Q&A
Q 1 乳癌であれば全例がハーセプチンの治療対象になるのか?
(乳癌)は「HER2 過剰発現が確認された乳癌」
A 1 ハーセプチンの効能・効果
である。
<ハーセプチンについて>
Q 2 治療対象となれば、すべてハーセプチンが効くのか?
どの程度の効果なのか?
転移性乳癌における 1st line ハーセプチン単剤による奏効率をみると、
A 2 IHC
法 3+例 35%、FISH 法陽性例 34% で、IHC 法 2+/3+例 26%、FISH
法陰性例 7% に比較して高かった 19)。
1st line ハーセプチンとパクリタキセルとの併用における奏効率は IHC 法
3+例 49%、FISH 法陽性例 49% で、IHC 法 2+/3+例 41% より高かった。
1st line ハーセプチンと化学療法*との併用における奏効率は FISH 法陽
性 例 54%、FISH 法 陰 性 例 38%、 生 存 期 間 は FISH 法 陽 性 例 26.2ヶ 月、
FISH 法陰性例 24.0ヶ月と、FISH 法陰性例より FISH 法陽性例で奏効率
も高く、生存期間も長い結果であった 20)。
*化学療法= AC〔
(ドキソルビシンまたはエピルビシン)
+シクロホスファミド〕
または P(パクリタキセル)
転移性乳癌におけるハーセプチン単剤の治療効果(1st line)
35
30
6
34
26
20
10
7
0
IHC 2+/3+
n=27
IHC 3+
n=84
4.9
5
TTP(month)
Response Rate(%)
40
FISH+
n=79
4
3.5
3
2
1.7
1
0
FISH−
n=29
IHC 2+/3+
n=111
FISH+
n=79
FISH−
n=29
転移性乳癌におけるパクリタキセル併用におけるハーセプチンの治療効果(1st line)
40
41
8
54
49
7
7.1
30
7.0
25
6
38
4
20
17
10
3.0
3
2
1
H+P
IHC
2+/3+
H+P
IHC
3+
H+P
FISH+
H+CT
FISH−
H+CT
FISH+
P
IHC
2+/3+
0
22.1
25.0
25.0
24.0
26.2
20
5
30
0
6.9
Overall Survival(month)
50
49
TTP(month)
Response Rate(%)
60
H+P
IHC
2+/3+
H+P
IHC
3+
H+P
FISH+
P
IHC
2+/3+
18.4
15
10
5
0
H+P
IHC
2+/3+
H+P
IHC
3+
H+P
FISH+
H+CT
FISH−
H+CT
FISH+
P
IHC
2+/3+
H=ハーセプチン P=パクリタキセル 化学療法=AC〔
(ドキソルビシンまたはエピルビシン)
+シクロホスファミド〕
または P(パクリタキセル)
アントラサイクリン系薬剤を投与中の患者またはその前治療歴のある患者にハーセプチンを投与する際は、心不全などの重篤な心障害があらわれやすいの
で、心機能検査(心エコーなど)を頻回に行うなど十分に観察し、慎重に投与すること。ハーセプチンの効能・効果(乳癌)は「HER2 過剰発現が確認された
乳癌」
である。ハーセプチンの用法・用量は、HER2 過剰発現が確認された乳癌の場合、
「1 日 1 回、トラスツズマブとして初回投与時には 4mg/kg(体重)
を、
2 回目以降は 2mg/kg を 90 分以上かけて 1 週間間隔で点滴静注する」、または「1 日 1 回、トラスツズマブとして初回投与時には 8mg/kg(体重)を、2 回目以
降は 6mg/kg を 90 分以上かけて 3 週間間隔で点滴静注する」
である。
18
<検査方法について>
Q 3 HER2 検査に用いる体外診断用医薬品はどのようなものがあるのか?
の検査法は、DNA レベルの増幅をみる方法(Southern blot 法、Dot
A 3 HER2
blot 法、FISH 法、CISH 法、SISH 法、DISH 法)、RNA レベルでの過剰発現
、そしてタンパクレベルでの過
をみる方法(Northern blot 法、RT-PCR 法)
剰発現をみる方法(IHC 法、CLIA 法、ELISA 法、Western blot 法)に分類さ
れる。以下のような体外診断用医薬品などが市販されている。
HER2 タンパクおよび遺伝子の測定法 ※2014 年 4 月現在の情報をもとに掲載いたしております。
標的
方法
キット/ 抗体 / 試薬
製造販売元
抗原認識部位
抗体タイプ
検索対象
DNA
FISH
パスビジョン HER-2
DNA プローブキット*
アボット ジャパン
−
−
癌組織
DNA
HER2 FISH pharmDx「ダコ」*
ダコ・ジャパン
−
−
癌組織
DNA
ヒストラ HER2
FISH キット*
常光
−
−
癌組織
SPOT-Light
HER2 CISH Kit
インビトロジェン/バイオケア・
メディカル
−
−
癌組織
癌組織
DNA
CISH
DNA
HER2 CISH pharmDx「ダコ」**
ダコ・ジャパン
−
−
DNA
ヒストラ HER2 CISH キット*
常光
−
−
癌組織
ベンタナ インフォーム
Dual ISH HER2 キット*
ロシュ・
ダイアグノスティックス
−
−
癌組織
DNA
DISH
タンパク
IHC
ダコ HercepTest Ⅱ*
ICD
ポリクローナル
癌組織
タンパク
ヒストファイン HER2 キット ニチレイバイオサイエンス
*
(POLY)
ICD
ポリクローナル
癌組織
タンパク
ヒストファイン HER2 キット ニチレイバイオサイエンス
*
(MONO)
ECD
モノクローナル
癌組織
ライカマイクロシステムズ
ICD
モノクローナル
癌組織
タンパク
ベンタナ I-VIEW パスウェー
ロシュ・
*
HER2(4B5)
ダイアグノスティックス
ICD
モノクローナル
癌組織
タンパク
ベンタナ ultraView パスウェー
ロシュ・
*
HER2(4B5)
ダイアグノスティックス
ICD
モノクローナル
癌組織
ECD
モノクローナル
血清
タンパク
Bond ポリマーシステム
HER2テスト
タンパク CLIA ケミルミ
Centaur-HER2/neu*
ダコ・ジャパン
シーメンスヘルスケア・
ダイアグノスティクス
*体外診断用医薬品、ICD:細胞内領域、ECD:細胞外領域
**発売準備中
Q 4 CISH 法、SISH 法、DISH 法とは?
CISH(Chromogenic in situ hybiridization )法、SISH(Silver in situ
A 4 hybridization
)法は、FISH 法と同じ HER2 遺伝子増幅の検出法の一つである。
FISH 法が HER2 遺伝子増幅を蛍光シグナルとして検出するのに対し、CISH
法は色素産生物質、SISH 法は銀粒子によって検出するため、通常の光学顕微
鏡下で観察でき、標本の永久保存が可能である。CISH 法としては、常光の
ヒストラ HER2 CISH キット、ダコ・ジャパンのHER2 CISH pharmDx「ダコ」
がある。一方、DISH(Dual color in situ hybridization)法は CISH 法と SISH
法を組み合わせた方法で、腫瘍組織中の HER2 遺伝子および HER2 遺伝子
が局在する第 17 番染色体を、それぞれ黒色(HER2 遺伝子)と赤色(第 17 番
染色体)のシグナルとして光学顕微鏡下で観察できる。これにより、HER2 遺
伝子増幅状況と腫瘍組織の形態学的特徴の同時観察を実現している。
Q 5 ハーセプチンの海外臨床試験で使用された HER2 検査法 CTA とは何か?
は Clinical Trial Assay の略であり、IHC 法でのスクリーニングにより適格
A 5 CTA
症例を選び、ハーセプチンの有効性を検討した試験のことである。用いられた
抗体は CB11 ないし 4D5 であり IHC 法 2+と IHC 法 3+を投与対象とした。
19
<検体について>
Q 6 CTA と HercepTest の関連は?
HercepTest の米国での保険申請データでは一致率 79% であった。この
A 6 一致率がスクリーニング薬としての条件を満たしていたことが
FDA によ
る HercepTest 承認の根拠となっている。
Q 7 針生検標本による HER2 検査は、手術標本と同様に実施可能か?
針生検(コアニードルバイオプシー)標本と手術標本を用いた HER2 検査の
A 7 判定については、高い一致性が確認されている
。針生検標本と手術標本
28)
(スコ
における IHC 法による HER2 検査の判定結果の一致率は、3 カテゴリー
、2 カ テ ゴ リ ー( ス コ ア 0、
ア 0 or 1+ vs 2+ vs 3+)で 87%(κ=0.77)
1+ or 2+ vs 3+)で 94%(κ=0.83)であった。また、FISH 法による一致率
は、92%(κ=0.88)であった。なお、乳癌診療ガイドラインでは、針生検標
本における HER2 の検索は推奨グレード B *とされている。
*エビデンスがあり、推奨内容を日常診療で実践するよう推奨する。
針生検標本と手術標本の HER2 検査判定結果の一致率:IHC 法
3カテゴリー
(0 or 1+ vs 2+ vs 3+)
針生検標本におけるIHCスコア
0 or1+
2+
3+
手術標本における
IHCスコア
0 or1+
56
3
1
2+
4
11
0
3+
0
5
20
一致率
87%
( K = 0. 77)
2カテゴリー
(0、
1+ or 2+ vs 3+)
針生検標本におけるIHCスコア
0、
1+、
2+
3+
手術標本における
IHCスコア
0、
1+、
2+
74
1
3+
5
20
一致率
94%
( K = 0. 83)
IHC法3+:強い完全な細胞膜の陽性染色がある癌細胞>30%
・未治療の浸潤性乳癌患者 100 名からの針生検標本と手術標本について、3 名の病理医が HercepTest によ
り ASCO/CAP ガイドラインに基づき、それぞれ独立してスコアを判定した。
針生検標本と手術標本の HER2 検査判定結果の一致率:FISH 法
針生検標本におけるHER2/CEP17比
2.2超
1.8∼2.2
1.8未満
手術標本における
HER2/CEP17比
2.2超
11
0
1
1.8∼2.2
0
0
0
1.8未満
1
0
12
一致率
92%
( K = 0.88)
・未治療の浸潤性乳癌患者 25 名からの針生検標本と手術標本について、2 名の病理医がパスビジョン
HER-2 DNAプローブキットによりASCO/CAP ガイドラインに基づき、
それぞれ独立してスコアを判定した。
Q 8 HER2 検査を行うための標本がないがどうしたら良いか?
(針生検、経内視鏡的生
A 8 可能な限り、腫瘍組織の採取を試みるべきである
検など)。生検ができないような箇所から採取した腫瘍細胞検体もホルマ
リン固定でセルブロック化した標本から HER2 検査が可能である。
20
Q9
A9
転移巣に対する治療であるが、原発巣の検体で判断してよいか?(転移
巣と原発巣の一致率)
転 移 巣 と 原 発 巣 に は、10 % ~ 15 % の 不 一 致 例 が み ら れ る。2013 年
ASCO/CAP ガイドラインでは「転移が出現した患者では、組織検体が得
られれば転移部位で HER2 検査を実施すること。」
となっている 29)。
Q 10 原発・転移性乳癌いずれも HER2 検査に利用不可能な場合はどうしたらよいか?
現在、組織標本を用いた IHC 法や FISH 法と同等度の精度で HER2 を検出
A 10 できる検査はない。どうしても原発巣の検体が入手不可能あるいは転移巣
での生検が困難な場合は、CLIA 法による血清を用いた検査が可能である。
CLIA 法は、EIA 法と比較して一般的に広範囲かつ高感度の測定が可能であ
るとされているが、その意義については一定の見解が得られていない。そ
の他、血中癌細胞における HER2 増幅検出の研究も進んでいるが、まだ
実地に応用するには至っていない。
Q 11 胸水中の癌細胞や、穿刺吸引した癌細胞で HER2 の判定は可能か?
HER2 検
A 11 これらの細胞検体もホルマリン固定でセルブロック化した標本から
査が可能である。ただし、抗 HER2 薬の治療効果との関連性について一定
の見解は得られていない。今後さらなる検討が必要である。
法に適さないホルマリン固定パラフィン包埋組織標本はどのような
Q 12 IHC
ものか?
ホルマリン固定ではない標本、固定までの時間が長く組織融解を生
A 12 10%
じてしまっている標本、薄切後長時間放置(薄切から室温で 6 週間以上)
された未染色標本、浸潤癌が含まれていないもの、厚い組織切片(5µm
以上)
などが挙げられる。
10% 中性緩衝ホルマリンではない固定液を用いている場合、IHC 法の実
Q 13 施は可能か?
組織の固定は 10% 中性緩衝ホルマリンが抗原性保持の点で最も推奨され
A 13 る。しかしながら、本来望ましくない濃度
20% で固定する場合や緩衝で
なく純水で希釈した 10%、20% ホルマリンを用いている施設も多い。固
定時間も推奨されるものは 72 時間以内にすべきであるが、3 日間から 4 日
間までの固定日数であれば、抗原性の低下はさほどないものと考えられ
る 30)、31)。本来 10% 中性緩衝ホルマリン固定液での適切な時間での標本
固定が望まれるが、どうしてもやむをえない場合、各施設での固定条件
下で陽性、陰性コントロールを用いて精度を算出し、検査妥当性の確認
を済ませてから検査を行うことが勧められる(ISH 法も同じ)
。ただしアル
コール、アセトンでの固定は不可とされている。
21
10% 中性緩衝ホルマリンではない固定液を用いている場合、FISH 法の
Q 14 実施は可能か?
組織の固定は 10% 中性緩衝ホルマリンが抗原性保持の点で最も推奨され
A 14 ることに一切の疑いがない。しかしながら、本来望ましくない濃度
20%
で固定する場合や緩衝でなく純水で希釈した 10%、20% ホルマリンを用
いている施設も多い。このような条件下でも固定時間が 72 時間以内であ
ればけっして望ましくはないが、経験的には判定に大きな支障はないと考
える。また、固定時間が 72 時間、96 時間の場合でも、本邦における廣井
らの報告ではそれぞれ 10/10 例(100%)
、8/10(80%)で検出が可能であっ
た 32)。しかし、過度な固定や 10% 中性緩衝ホルマリン以外では、HER2
染色が低下するとの報告 33)もあり、正確な HER2 検査のためには、最適
条件による検体の標本作製が重要である。
Q 15 針生検の組織の固定時間は、6 時間未満でもよいか?
6 ~ 72 時間が推奨されている。2013 年の CAP FAQ
A 15 組織の固定時間は、
では、エストロゲン受容体についてであるが 6 時間未満の針生検標本で、
偽陰性になるとの報告がされており用いるべきでないとされている 29)。
Q 16 IHC 法に用いる検体として凍結検体や細胞検体で判定は可能か?
法に用いる検体は 10% ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片の
A 16 IHC
みとされている。
Q 17 IHC 法、FISH 法で用いる検体はどれくらい前のものまで実施が可能か?
法 は 5 年 以 上 前 の も の で 実 施 が 可 能 で あ っ た が、 良 好 な 状 態 で
A 17 IHC
HER2 の検索ができるか否かはそのブロック自体の保管状況に大きく依
存する。FISH 法も同様。
Q 18 組織切片作製後、未染の標本は検査まではどれくらい期間を空けてもよいのか?
6 週間以内とされている。可能な限り薄切後短期間に検査
A 18 薄切から室温保存で
すべきである。
Q 19 FISH 法に適さないホルマリン固定パラフィン包埋組織標本はどのようなものか?
海外を含め詳細な検討報告はない。適さないものとして、ホルマリン固
A 19 定パラフィン包埋組織でない標本、長時間固定された標本
〔一晩から 48
時間が適当。本乳がん HER2 検査病理部会での検討では 72 時間、96 時
間の固定例ではそれぞれ 10/10 例(100%)、8/10 例(80%)が判定可能で
あった〕、薄切後長時間放置(薄切から 6 週間以上)された未染色標本、
浸潤癌が含まれていないもの、厚い組織切片(6µm 以上)固定までの時
22
間が遅延して組織融解を生じた標本などが挙げられる。
Q 20 IHC 法で「過剰発現」とは、どのスコアを指すのか?
IHC スコア 2 +、3 +を指すが、ハーセプチンによる治療対象
A 20 は一般的には
IHC 法 3 +である。IHC 法 2 +は本文に示したように ISH 法による再
<判定方法について>
検査が必要とされる。ISH 法による再検査が不可能な場合は、他の科学
的検索、科学的根拠および臨床的所見を考慮しハーセプチンの適応とす
るかどうかを決定することが推奨される。
法において HER2 過剰発現の不均一性(heterogeneity : 染色の強い
Q 21 IHC
部分が限定される)をどのように判断したらいいのか?
10% を超える
A 21 強い全周性の細胞膜陽性染色の部分が、浸潤癌成分全体の
場合、HER2 タンパクの発現様式が不均一であっても IHC 法 3 +となり、過
剰発現と認識されるべきである。一方、そのような部分が浸潤癌成分全体
の 10% 以下の場合、IHC 法 2 +となり、ISH 法の再検査が推奨される。
また原発巣と転移巣の間で HER2 過剰発現 / 増幅の状態は 10~15%の例
で変化することが示されている。さらに転移巣の間でも HER2 受容体は
異なる場合がある。そのため
に述べたように可能なら転移巣で
の HER2 検査を追加しその状態に従って抗 HER2 薬使用について検討す
べきである。
法において equivocal と判定される症例の割合はどの程度ある
Q 22 FISH
か?
わ が 国 の 過 去 の FISH の デ ー タ で は、HER2/CEP17 比 < 2.0 か つ 平 均
A 22 HER2
コピー数≧ 4.0~< 6.0 の例は 216 例中 21 例(9.7%)であった 。
34)
N9831 試験では FISH で HER2/CEP17 比 2.0 未満の腫瘍が 156 例登録
されたが、そのうち 53 例が IHC3 +であったというデータがあるが、平
均 HER2 コピー数と平均 CEP17 コピー数については報告されていない。
これらの 53 例においてトラスツズマブ使用により DFS のハザード比は
0.57 に低下したと報告されている 35)。
N9831 試験における HER2 発現状況別のサブグループと DFS
HR
95%CI
P
0.45
0.57
1.11
0.51
0.32 to 0.63
0.08 to 3.89
0.36 to 3.43
0.21 to 1.23
<0.001
0.56
0.86
0.14
n
IHC/FISH HER2/CEP17 比
3+/≧2.0
1,408
3+/<2.0
53
0, 1, 2+/≧2.0 219
0, 1, 2+/<2.0 103
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
4.5
5.0
5.5
6.0
HR 比
〈Cox 比例ハザードモデル〉
Adapted from Perez EA, et al: J Clin Oncol 28(28) 2010: 4307-4315
©
2010 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Readers are encouraged to read the entire article for the correct context at jco.ascopubs.org.
23
<その他>
Q 23 各抗体における IHC スコアと治療効果は?
ハーセプチン単剤での各抗体毎のデータはない。併用では転移性乳癌に
A 23 おいて以下のデータ
(ハーセプチン+パクリタキセルでの結果)が報告さ
れている 36)。
IHC 法 0、1+(%) IHC 法 2+、3+(%)
HercepTest
PAb1
TAB250
CB11
No Response
51
31
49
69
56
33
Response(CR+PR)
44
67
No Response
55
17
Response(CR+PR)
45
83
No Response
53
24
Response(CR+PR)
47
76
Response(CR+PR)
No Response
p値
0.059
0.05
0.001
0.006
(χ2 検定)
Q 24 特殊型についてどのように判断すればよいか?
A 24 2013 年のガイドライン改訂時に以下の表が掲載されている
。
29)
初回の HER2 検査が陽性かつ、下記の組織病理学所見があった場合は再検査を実施
Grade 1 で下記に属する場合:
● ER および PgR 陽性の浸潤性乳管癌または浸潤性小葉癌
● 管状癌 (90% 以上の成分を示す )
● 粘液癌 (90% 以上の成分を示す )
● 篩状癌 (90% 以上の成分を示す )
● 腺様嚢胞癌 (90% 以上の成分を示す ) しばしば triple negative
針生検標本が陰性だった場合、新たに切除標本で HER2 検査を実施しなければならない
下記が認められた場合:
Grade 3
● 針生検では浸潤部が少なかった
● 生検組織で得られた浸潤癌成分とは異なった、高悪性度病変が見出された
● 針生検の結果が ISH、
IHC の両方で HER2 equivocal であった
● 生検組織標本作製過程に問題が示唆された場合や病理医が検査エラーを疑った場合
●
初回の HER2 検査が陰性で下記の組織病理学的所見があった場合は再検査を実施しない
Grade 1 で下記に属する場合:
ER および PgR 陽性の浸潤性乳管癌または浸潤性小葉癌
● 管状癌 (90% 以上の成分を示す )
● 粘液癌 (90% 以上の成分を示す )
● 篩状癌 (90% 以上の成分を示す )
● 腺様嚢胞癌 (90% 以上の成分を示す ) しばしば triple negative
●
Adapted from Wolff AC, et al: J Clin Oncol 31(31) 2013:3997-4013.
©
2013 American Society of Clinical Oncology. All rights reserved.
Readers are encouraged to read the entire article for the correct context at jco.ascopubs.org.
24
体外診断用医薬品
※ 2014 年 3 月現在の情報をもとに掲載いたしております。
《IHC 法》
ダコ HercepTest Ⅱ
(ダコ・ジャパン株式会社 体外診断用医薬品・保険収載済み)
HercepTest は 1998 年に米国 FDA によりハーセプチン治療対象症例選択のスクリーニン
グキットとして承認されており、ほぼ全世界で販売されている。日本では 2001 年 6 月に免
疫抗体法による組織・細胞中の HER2 タンパクの検出法として保険収載されている。一次抗
体としてポリクローナル抗体を使用しており、FISH との一致率は 89% とのデータがある。
このキットを用いた検査は簡便であり、標準化の観点からも十分な検討がなされており、多
く の 施 設・ 検 査 会 社 で 導 入 可 能 と 考 え ら れ る。HercepTest Ⅱ の 詳 細 情 報 は、http://
products.dako.jp/site/pharmaco/hertop.html を参照のこと。
ベンタナ I-VIEW パスウェー HER2(4B5)
ベンタナ ultraView パスウェー HER2(4B5)
(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 体外診断用医薬品・保険収載済み)
ベンタナ I-VIEW パスウェー HER2(4B5)ならびにベンタナ ultraView パスウェー HER2
(4B5)は、HER2 タンパクと反応する一次抗体としてウサギモノクローナル抗体(Clone
4B5)を使用している。ベンタナ I-VIEW パスウェー HER2(4B5)における FISH 法との一致
率は、88.2 ~ 90.0% との報告がある 37)。また、マウスモノクローナル抗体である CB11 と
比べると細胞質への染色が抑えられているため、膜への染色が明瞭となっている。ベンタナ
I-VIEW パスウェー HER2(4B5)ならびにベンタナ ultraView パスウェー HER2(4B5)の
詳細情報は、http://www.roche-diagnostics.jp/ を参照のこと。
ヒストファイン HER2 キット
(MONO)
(株式会社ニチレイバイオサイエンス 体外診断用医薬品・保険収載済み)
ヒストファイン HER2 キット(MONO)は一次抗体に HER2 タンパクの細胞外領域を認識す
るモノクローナル抗体(Clone SV2-61γ)
、染色系に標識ポリマーを利用した HER2 タンパク
抗原検出キットである。FISH 法との一致率が 98% との報告があり、効率的に診断が可能であ
る。また、抗原賦活化処理法としてプロテアーゼ処理法を用いており、熱処理法に比べ検出結
果の再現性がよく、短時間で簡便かつ鋭敏に HER2 タンパクを検出できるキットである。ヒス
トファイン HER2 キット(MONO)の詳細情報は http://www.nichirei.co.jp/bio/ を参照のこと。
なお、用手法の他に、自動染色装置ヒストステイナーによる機械での染色にも対応可能である。
ヒストファイン HER2 キット
(POLY)
(株式会社ニチレイバイオサイエンス 体外診断用医薬品・保険収載済み)
ヒストファイン HER2 キット(POLY)は一次抗体に HER2 タンパクの細胞内領域を認識
するポリクローナル抗体、染色系に標識ポリマーを利用した、鋭敏かつ簡便な HER2 タンパ
ク抗原検出キットである。染色に必要な試薬すべてが含まれている。ヒストファイン HER2
キット(POLY)の詳細情報は http://www.nichirei.co.jp/bio/ を参照のこと。
なお、用手法の他に、自動染色装置ヒストステイナーによる機械での染色にも対応可能である。
Bond ポリマーシステム HER2 テスト
(ライカマイクロシステムズ株式会社 体外診断用医薬品・保険収載済み)
Bond ポリマーシステム HER2 は、モノクローナル抗体(クローン名 CB11)を使用した、
高感度の HER2 タンパク検出キットである。
このキットは、同社が開発した全自動免疫染色装置、BOND シリーズに対応しており、簡
便かつ再現性のよい結果が得られている。なお、Bond ポリマーシステム HER2 テストの詳
細情報は、http://www.leicabiosystems.com/ を参照のこと。
25
《FISH 法》
パスビジョン HER-2 DNA プローブキット
(アボット ジャパン株式会社 体外診断用医薬品・保険収載済み)
パスビジョン HER-2 DNA プローブキット(PathVysion)は、ホルマリン(10% 中性緩衝
ホルマリン)固定パラフィン包埋組織のプレパラート上で、それぞれ別の蛍光色素で標識し
た HER2 DNA と 17 番染色体のセントロメア DNA(CEP17)プローブを用いるデュアルカ
ラー FISH 法である。本邦では、2002 年 1 月に乳癌、2010 年 12 月に胃癌の体外診断用医薬
品として承認されている。パスビジョン HER-2 DNA プローブキットの詳細情報は、http:
//www.abbott.co.jp/ を参照のこと。
HER2 FISH pharmDx「ダコ」
(ダコ・ジャパン株式会社 体外診断用医薬品・保険収載済み)
HER2 FISH pharmDx「ダコ」は、ホルマリン固定パラフィン包埋標本において HER2 遺
伝子増幅を FISH により検出する。3.5 時間という短時間で、高輝度の明瞭なシグナルが得
られ、正確なシグナルカウントが可能である。また、簡便な操作手順を採用するとともに、
非毒性の緩衝液を用いることで安全性にも配慮している。
HER2 FISH pharmDx「ダコ」の詳細情報は、http://www.dako.jp/ar39/p235733/prod_
products.htm を参照のこと。
ヒストラ HER2 FISH キット
(株式会社常光 体外診断用医薬品・保険収載済み)
ヒストラ HER2 FISH キットは、ホルマリン固定パラフィン包埋組織からの切片スライ
ド(4 ~ 5μ m)を用いて、蛍光顕微鏡下で HER2/neu 遺伝子増幅を検出することが可能な
キットである。HE 染色による病理検査用のパラフィン包埋組織を使用できるため、新たに
ホルマリン未固定の検体を用意する必要がない。また、検体スライドの前処理は脱パラフィ
ン、熱処理、酵素処理のみであり、プローブ溶液を検体スライドに滴下してホットプレー
ト上での同時熱変性によりハイブリダイゼーションさせる。このように、本キットは操作
工程が少なく簡便であることも特徴である。ヒストラ HER2 FISH キットの詳細情報は、
http://www.pathology.jp/hystra.html を参照のこと。
《DISH 法》
ベンタナ インフォーム Dual ISH HER2 キット
(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 体外診断用医薬品・保険収載済み)
ベンタナ インフォーム Dual ISH HER2 キットは、ホルマリン固定パラフィン包埋組織
切片上で、HER2 遺伝子と 17 番染色体のセントロメア (Chr17) をそれぞれ別の色素で検出
する、デュアルカラー ISH 法である。HER2 遺伝子および Chr17 のシグナルは、光学顕微
鏡で観察可能であり、標本全体の観察も同時に行える。ベンタナ インフォーム Dual ISH
HER2 キットの詳細情報は、http://www.roche-diagnostics.jp/ を参照のこと。
《CISH 法》
ヒストラ HER2 CISH キット
(株式会社常光 体外診断用医薬品・保険収載済み)
ヒストラ HER2 CISH キットは、ホルマリン固定パラフィン包埋組織切片上で、HER2 遺
伝子のみを DAB 色素で検出する1カラー ISH 法である。HER2 遺伝子は光学顕微鏡で観察
可能であり、組織形態も同時に観察できる。染色スライドは半永久的に保管できる。ヒスト
ラ HER2 CISH キットの詳細情報は、http://www.pathology.jp/hystra-kit.html を参照のこと。
《CLIA 法》
ケミルミ Centaur-HER2/neu
(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社 体外診断用医薬品・保険収載済み)
本キットは HER2 タンパクの細胞外領域を認識する 2 種類の特異的なモノクローナル抗
体を使用した化学発光免疫測定(CLIA)法で、反応形式はサンドイッチ法である。凍結保存
血清による測定も可能で、全自動として唯一の血清検査法である。血清中 HER2 タンパク
が過剰発現している患者のモニターおよび再発乳癌の診断補助として測定する。測定値は
トラスツズマブによる治療の影響を受けない。ケミルミ Centaur-HER2/neu の詳細情報は、
26
http://www.siemens.co.jp/diagnostics を参照のこと。
引用文献
1)Wolff AC, et al.: J Clin Oncol 31, 3997-4013(2013)
2)D' Angelo SP, et al.: J Thorac Cardiovasc Surg 141, 476-480(2011)
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【参考】ASCO2000 腫瘍マーカーガイドライン 17)
2000 Recommendation: c-erbB-2 overexpression should be evaluated on
every primary breast cancer either at the time of diagnosis or at the time of
recurrence. Measures of c-erbB-2 amplification may also be of value.
27
関連サイト
中外製薬
http://www.chugai-pharm.co.jp/
Roche:Herceptin. net(英語)
http://www.herceptin.net/
Genentech(英語:米国 Herceptin 販売会社)
http://www.gene.com/
ダコ・ジャパン(ダコ HercepTest Ⅱ他)
http://www.dako.jp/
ロシュ・ダイアグノスティックス(ベンタナ I-VIEW パスウェー HER2(4B5)他)
http://www.roche-diagnostics.jp/
アボット ジャパン(パスビジョン HER-2 DNA プローブキット)
http://www.abbott.co.jp/
http://www.pathvysion.com/(英語)
ニチレイバイオサイエンス(ヒストファイン HER2 キット他)
http://www.nichirei.co.jp/bio/
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス(ケミルミ Centaur-HER2/neu )
http://www.siemens.co.jp/diagnostics
Invitrogen(英語)
(その他 HER2 抗体)
http://www.invitrogen.com/
BioGenex(英語)
(その他 HER2 抗体)
http://www.biogenex.com/
WILEX(旧 Oncogene)
(英語)
http://www.wilex.de/
フナコシ
http://www.funakoshi.co.jp/
Genzyme(英語:米国大手検査会社)
http://www.genzyme.com/
LabCorp(英語:米国大手検査会社)
http://www.labcorp.com/
CAP(英語:College of American Pathologists)
http://www.cap.org/
NCCN(英語:National Comprehensive Cancer Network)
http://www.nccn.org/
ライカマイクロシステムズ株式会社
http://LeicaBiosystems.com/jp/
株式会社常光
http://www.pathology.jp/
乳がん HER2 検査病理部会
顧問
坂元 吾偉(医療法人社団正診会坂元記念クリニック・院長)
代表
長村 義之(国際医療福祉大学 教授・病理診断センター長)
笹野 公伸(東北大学大学院医学系研究科病理診断学分野・教授)
津田 均(防衛医科大学校病態病理学講座・教授)
徳田 裕(東海大学医学部乳腺・内分泌外科学・教授)
渡辺 亨(浜松オンコロジーセンター・センター長)
戸井 雅和(京都大学医学研究科外科学講座乳腺外科学・教授)
検討委員会
委員長
津田 均(防衛医科大学校病態病理学講座・教授)
秋山 太(がん研究会がん研究所病理部・臨床病理担当部長)
黒住 昌史(埼玉県立がんセンター病理診断科・科長兼部長)
増田 しのぶ(日本大学医学部病態病理学系腫瘍病理学分野・教授)
関連会社
アボット ジャパン株式会社
株式会社エスアールエル
協和メデックス株式会社
シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社
株式会社常光
ダコ・ジャパン株式会社
株式会社ニチレイバイオサイエンス
株式会社ビー・エム・エル(株式会社ピーシーエルジャパン)
三菱化学メディエンス株式会社
ライカマイクロシステムズ株式会社
ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
(50 音順)
ハーセプチン、パージェタ、カドサイラ製造販売会社
中外製薬株式会社
HER2、ハーセプチン、パージェタ、カドサイラに関する
詳しい情報は次のウェブサイトをご覧下さい。
www.chugai-pharm.co.jp/ www.herceptin.net/
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連絡先
事務局:中外製薬株式会社
東京都中央区日本橋室町 2-1-1 TEL:03-3273-0866
2014 年 11 月改訂
HER0132.04