監修:イエジー・スコリモフスキ ポーランド映画祭 2015 POLAND FILM FESTIVAL2015 戦後 70 年、ポーランド映画の軌跡をたどる 《ポーランド映画の都ウッチ》 Powerd by Instytut Polski w Tokio 企画:ポーランド広報文化センター ポーランドのウッチ国立映画大学(1948 年設立)は、米ハリウッド・レポーター誌が選ぶ 2012 年版「世界の映画学校ベスト 25」にも選ばれた名門映画大学。これまでに、ワイダ、 ポランスキー、キェシロフスキ、スコリモフスキ、コンヴィツキ、ハス他、名だたる映画作 家たちを多数輩出してきました。また、『幸せのありか』のマチェイ・ピェプシツァなど、 近年のポーランド映画界を席巻する作家たちの多くもウッチ映画大学の出身者です。 ウッチは 19 世紀に世界屈指の繊維工業地帯として発展し、ポーランド・ドイツ・ユダヤの 民族と文化が共存する都市として知られましたが、二度の大戦で大きな経済的打撃を受けま した。しかし戦後に見事な復興を遂げ、現在はワルシャワに継ぐポーランド第2の都市と呼 ばれています。 本特集では、19 世紀のウッチを舞台にしたワイダの壮大な歴史劇『約束の土地』をはじめ、 “ポーランド派”が活躍した 1950 年代から現在まで、ウッチ映画大学が世に送り出した貴 重な作品群をご紹介します。ポーランド映画を支えてきたウッチの文化と魅力を、たっぷり とお楽しみください。 「エヴァは眠りたい」 EWA CHCE SPAĆ 監督:タデウシュ・フミェレフスキ 1957 年/99 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 幻想とリアルをバランスよく織り交ぜた不条理でダークなユーモアとルネ・クレール風の抒 情性をあわせもつフミェレフスキ(1954 年ウッチ映画大学卒)の大ヒット作。本作は娯楽 喜劇として作られた戦後最初の作品と言われ、全住民が警官か泥棒という奇妙な町に若い娘 エヴァがやってくる物語は、ポーランドの現実を暗示しているかのようだ。サン・セバステ ィアン映画祭グランプリ。©KADR Film Studio 上映日時:11/15(日)15:30 11/17(火)12:55 「身分証明書」 RYSOPIS 監督:イエジ―・スコリモフスキ 1964 年/76 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 ウッチ映画大学在学中に、主にウッチ市で撮影されたスコリモフスキ自作自演の長編第一作。 24 歳のアンジェイは毎日を無為に過ごしていたが、ある日兵役を志願。映画は彼が兵役に つくまでの 16 時間を追いながら、主人公の社会に対する怒りや行き場のない焦りを表現。 物語性の否定。斬新なカメラワーク等、巨匠の才気溢れる演出に痺れる 1 本。 ©STUDIO OKO 上映日時:11/14(土)13:00 11/19(木)15:15 「約束の土地」 ZIEMIA OBIECANA 監督:アンジェイ・ワイダ 1974 年/169 分/カラー/デジタル・リマスター版 70 年代のワイダ(1953 年ウッチ映画大学卒)は文学作品を数多く映画化しているが、なか でも国内外で高い評価を得ているのが本作である。ウワデゥスワフ・レイモントの小説をも とにユダヤ、ポーランド、ドイツという異なった民族に属する若き親友 3 人が工業都市ウッ チで身を立てようとする物語は、青春群像劇でありながら、同時に富む大都市の肖像にもな っている。© STUDIO FILMOWE „PERSPEKTYWA” 上映日時:11/16(月)19:30 11/18(水)19:30 「ヴァバンク」 VABANK 監督:ユリウシュ・マフルスキ 1981 年/109 分/カラー/デジタル・リマスター版 ウッチ映画大学を卒業後、70 年代後半から活躍しているマフルスキの大ヒット作。30 年代 のワルシャワで刑務所帰りの詐欺師が再び悪事を働く犯罪コメディ。米映画の名作『スティ ング』を想起させる出来栄えは一級品。ポーランドで知らない人はいないとも言われる本作 は、同じキャストとスタッフで続編もつくられている。また主演俳優は監督の父親である。 タイトルは va banque(仏)からの借用。ギャンブラーの隠語で、「全財産を賭けること」 を意味する。©KADR Film Studio 上映日時:11/15(日)17:40 11/19(木)10:30 《ポーリッシュ・シネマ・ナウ!》 Powerd by CULTURE.PL 企画:CULTURE.PL ポーランドの最新映画を紹介する本特集では、若手映画監督ヤン・コマサ監督が撮った“ワ ルシャワ蜂起”についての映画2本や、2015 アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミ ネートされた 2 作品など、2014〜15 年に発表され注目を集めた作品群を上映。ポーランド 映画の現在をご紹介します。 「ヨアンナ」 JOANNA 監督:アネタ・コパチ 2013 年/45 分/カラー/デジタル アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞にノミネートされた本作は、末期ガンに侵された母ヨ アンナと息子の日常を描いた作品。ピアノ曲による美しい旋律にのせ冷静なまなざしでひと つの命を捉えたのはドキュメンタリー畑の女性監督アネタ・コパチ。柔らかいトーンで統一 された映像と被写体との関係性に彼女の個性が光る。©Wajda Studio 【『わたしたちの呪縛』と併映】 上映日時:11/18(水)15:15 11/20(金)17:15 「わたしたちの呪縛」 NASZA KLĄTWA 監督:トマシュ・シリヴィンスキ 2013 年/27 分/カラー/デジタル ワルシャワ映画学校の生徒のトマシュ・シリヴィンスキの短編 2 作目となる本作は、自身の 家族の日常を描いたドキュメンタリー。難病の子供を持つ両親が不安を抱えながら厳しい現 実に立ち向かっていく様子を克明に記録。子供の愛らしさに心が救われる本作はアカデミー 賞短編ドキュメンタリー賞ノミネートの栄誉に輝いた。© WARSAW FILM SCHOOL 【『ヨアンナ』と併映】 上映日時:11/18(水)15:15 11/20(金)17:15 「リベリオン ワルシャワ大攻防戦」 MIASTO 44 監督:ヤン・コマサ 2014 年/130 分/カラー/デジタル 第二次大戦末期の 1944 年、ドイツ占領下のワルシャワで連合国軍とソ連軍による援助を期 待して、国内軍と市民が立ち上がったワルシャワ蜂起の全貌を描いた傑作戦争映画。ウッチ 映画大学出身の新鋭ヤン・コマサが放つ 2014 年ポーランド興収 NO.1 の大ヒット作はスロ ーモーションの大胆な使用、リアルな戦闘場面、大規模なセット撮影等、見る者を圧倒する 感動巨編である。Ⓒ2014 AKSON STUDIO FILM MIASTO SP. Z.O.O. 上映日時:11/14(土)20:00 「ワルシャワ蜂起」 Powstanie Warszawskie 監督:ヤン・コマサ 2014 年/85 分/カラー/デジタル 約 20 万人以上の民間人が犠牲になったといわれるワルシャワの壮絶な市街戦の一部始終を 記録、編集した貴重な映像。戦時下の市内で、国内軍の映画班によって撮影されたニュース・ フィルムをもとに、ワルシャワ蜂起博物館全面協力で作品のカラー化、音声の追加等、ポー ランド映画界が総力をあげて作り上げたドキュメンタリー・ドラマ。歴史を記録する執念に 脱帽。©Warsaw Uprising the film 上映日時:11/18(水)17:15 11/20(金)15:15 「シンギング・ナプキン」 ŚPIEWAJĄCY OBRUSIK 監督:マリウシュ・グジェゴジェク 2015 年/91 分/カラー/デジタル 現ウッチ映画大学学長マリウシュ・グレゴレックによる前衛的オムニバス作品。出演者は専 門大学の学生たち。監督自らが生徒との対話からヒントを受けてつくりあげた 4 つの挿話は、 親子の確執、若夫婦の日常、麻薬中毒の恋人たち、文学作品からの引用で構成されている。 ラストは学生全員によるボリウッド・スタイルの踊りで幕切れとなる奇抜な一編。 ©PWSFTviT 2015 上映日時:11/18(水)12:55 11/20(金)12:55 《戦後 70 年/ワイダと戦争》 作品のなかでたびたび戦争の記憶を描いてきたアンジェイ・ワイダは、第二次世界大戦中、 父が「カティンの森事件」の犠牲となり、自身も対独レジスタンス運動に参加したことはよ く知られています。戦後 70 年となる今年は、ワイダの「抵抗三部作」に加え、日本で初上 映となる貴重な作品『サムソン』を上映します。 「世代」 POKOLENIE 監督:アンジェイ・ワイダ 1954 年/88 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 “ポーランド派”の先駆的作品と目されるワイダの長編第一作。貧民街出身の男が共産主義 者の抵抗運動に参加している女に恋をするという単純な物語だが、矛盾した性格をもち苦悩 を抱えた悲劇的キャラクターの登場、ネオレアリズモ風の撮影、『灰とダイヤモンド』のツ ィブルスキの出演等ワイダ作品の特徴が垣間見れる一本である。 上映日時:11/14(土)15:30 11/16(月)15:15 11/19(木)17:15 「地下水道」 KANAŁ 監督:アンジェイ・ワイダ 1956 年/97 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 ワルシャワ蜂起に参加したイエジ・ステファン・スタヴィンスキ脚本によるワイダの傑作。 対独レジスタンスが地下の下水道で繰り広げる死闘をドキュメンタリー風に演出した本作、 光と影を巧みに使った撮影は後年ホラー、サスペンスジャンルの作品に多大な影響を与えて いる。カンヌ映画祭審査員特別賞。©STUDIO FILMOWE „KADR” 上映日時:11/14(土)17:40 11/17(火)17:15 「灰とダイヤモンド」 POPIÓŁ I DIAMENT 監督:アンジェイ・ワイダ 1958 年/110 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 ヴェネチア映画祭で国際批評家連盟賞を受賞し監督ワイダの名を一躍世界に知らしめた歴 史的作品。戦時中レジスタンス活動に従事し、戦後はテロリストとなり悲惨な最後を遂げる 青年。ロマン主義的な主人公のキャラクター、寓意を多用した演出、シャープなモノクロ映 像で描かれる青春の栄光と挫折は今見ても切ない。©STUDIO FILMOWE „KADR” 上映日時:11/15(日)10:30 11/18(水)10:30 「サムソン」 SAMSON 監督:アンジェイ・ワイダ 1961 年/118 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 日本初上映 1939 年−43 年のワルシャワを舞台に、ユダヤ人居住区の墓堀人の手で助けられたユダヤ人 の運命を描いた本作。旧約聖書の英雄サムソンになぞらえた主人公の過酷な体験は、戦時下 における不条理な日々を見るものに印象づける。今回が日本での初上映。ポーランド国内で もこの映画の存在を知る人は少ないといわれる幻の作品。若き日のポランスキーも出演して いる。©KADR Film Studio 上映日時:11/15(日)13:00 11/20(金)19:30 《アンコール上映》 毎年たくさんのポーランド映画を紹介してきたポーランド映画祭。そのなかでも人気の高か った作品 7 本をアンコール上映します。以前に見逃していた方も、もう一度スクリーンで見 たいという方も、ぜひこの機会にご覧ください。 「縛り首の縄」 PĘTLA 監督:ヴォイチェフ・イエジー・ハス 1957 年/96 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 アルコール中毒の患者クバが破滅へと向かう 1 日の出来事を暗いトーンで描いたハスの長 編デビュー作。ネオレアリズモやフィルム・ノワールからの引用等ポーランド映画界で“黒 いリアリズム”と呼ばれる作品群を代表する 1 本。時計や電話といった小道具の使い方や限 定された空間を生かした演出に才気が光る。©KADR Film Studio 上映日時:11/17(火)10:30 「サラゴサの写本」 RĘKOPIS ZNALEZIONY W SARAGOSSIE 監督:ヴォイチェフ・イエジ―・ハス 1965 年/183 分/モノクロ/デジタル・リマスター版 毎年上映会で多くのファンから支持されている本映画祭きっての超カルト作。“ポーランド 派”の異色監督ハスの代表作であるこの映画は 17 世紀のスペインを舞台に繰り広げられる 愛と冒険の物語。夢の論理をそのまま視覚化したような迷宮感覚は今見ても衝撃的。ブニュ エル、スコセッシ、リンチらを魅了した幻想怪奇譚。©KADR Film Studio(digitally restored) 上映日時:11/17(火)19:30 「砂時計」 SANATORIUM POD KLEPSYDRĄ 監督:ヴォイチェフ・イエジ―・ハス 1973 年/125 分/カラー/デジタル・リマスター版 ブルーの・シュルツの短編『砂時計のサナトリウム』をもとに第二次大戦前のポーランドに おけるユダヤ人社会を描いた本作。超現実的な風景描写、ノスタルジックな抒情性等『サラ ゴサの写本』の監督ハスならではの時空を超えた迷宮世界が炸裂する。ユダヤ系の画家マル ク・シャガールの絵画を想起させる傑作。©KADR Film Studio(digitally restored) 上映日時:11/15(日)20:00 「借金」 DŁUG 監督:クシシュトフ・クラウゼ 1999 年/97 分/カラー/デジタル・リマスター版 『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』や『パプーシャの黒い瞳』で我が国にもファン が増えつつあるクラウゼ監督の隠れた銘品。マフィアに脅され負債回収をするはめになった 男が巻き込まれる悲劇の連鎖。腐敗と向き合う一市民の孤独をテーマにした本作はポーラン ド国内で議論を巻き起こした。99 年ポーランド映画祭グランプリ受賞。 ©KADR Film Studio 上映日時:11/16(月)17:15 11/19(木)12:55 「裏面」 REWERS 監督:ボリス・ランコシュ 2009 年/99 分/カラー/デジタル 50 年代のワルシャワを舞台にしたブラック・コメディ。出版社勤務の女主人公は母、祖母 と 3 人暮らし。なかなか嫁にいかない娘に母たちはやきもき。ある日不良にからまれた彼女 はイケメンの男に救われる。やがてふたりは……。共産主義時代の世相を風刺した本作は 2009 年アカデミー賞外国語映画賞ポーランド代表に選ばれている。©KADR Film Studio 上映日時:11/16(月)12:55 「イーダ」 IDA 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ 2013 年/80 分/モノクロ/デジタル 60 年代初頭のポーランドを舞台に孤児として育てられた少女が自身の出生の秘密を知るた め旅に出る。モノクロ撮影、スタンダード・サイズの画面、切り詰められたセリフ等ミニマ ルな映像美で描かれるロードムービーは“ポーランド派”へのオマージュが随所に。2015 年ポーランド映画初のアカデミー賞外国語映画賞受賞。 ©Phoenix Film Investments and Opus Film 上映日時:11/14(土)10:30 11/17(火)15:15 「幸せのありか」 CHCE SIĘ ŻYĆ 監督:マチェイ・ピェプシツァ 2013 年/107 分/カラー/デジタル ポーランド映画祭 2013 でプレミア上映され大評判となった『ライフ・フィールズ・グッド』 が劇場公開時のタイトルで再登場。幼少期より障害をもつ主人公の半生をペーソスに満ちた 語り口で描いた本作。生きることの意味、人間の尊厳、真実の愛とは何かを巧妙な映像感覚 とユーモア溢れる演出で描いた監督の手腕に脱帽! ©Trmway Sp.z.o.o Instytucja Filmowa “Silesia Film”, TVP S.A, Monternia.PL 2013 上映日時:11/16(月)10:30 11/19(木)19:30 11/20(金)10:30
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