2015/8/17 文献 社会階層(2) 機会格差の拡大? 佐藤俊樹著 『不平等社会日本』 中央公論新社 85年と95年の比較 • 85年と95年の比較 社会移動の量 • 不平等社会日本 • 機会格差は拡大したか 85年と95年の比較 戦後になって、増大した 社会移動のパターン 85年と95年の比較 移動はしやすくなっ たが、機会格差はそ 社会移動の量 のままだった 戦後になって、増大した “1990年代以降、一部の社会階層については、 機会格差が拡大している”という説が2000年頃 に主張されるようになった 社会移動のパターン 1 2015/8/17 85年と95年の比較 85年と95年の比較 80年代から90年代にかけて、機 会格差にどのような変化があっ たのかを確認し、その是非を考 える 85年と95年の比較 1985年 1985年 1995年 粗移動率 0.712 0.729 構造移動率 0.279 0.228 循環移動率 0.434 0.501 85年と95年の比較 1995年 粗移動率 0.712 ≒ 0.729 構造移動率 0.279 > 0.228 循環移動率 0.434 < 0.501 85年と95年の比較 富裕層 社会移動率の問題点 全体の傾向だけを問題にしている 階層ごとに継承のしやすさが異なっているのに、 そのことを考慮していない 85年と95年の比較 富裕層 中間層 貧困層 中間層 貧困層 たとえ、中間層と貧困層で開放性が 高まっても、富裕層の閉鎖性が高か まれば、それは問題となりうる 2 2015/8/17 85年と95年の比較 富裕層 85年と95年の比較 富裕層 全体の傾向だけでなく、階 層別に開放性を測ることが 必要になる 中間層 貧困層 たとえ、富裕層と中間層で開放性が 高まっても、 中間層 貧困層 85年と95年の比較 専門職 管理職 事務職 販売職 熟練職 半熟練職 非熟練職 農 業 1985年 0.701 0.822 0.786 0.757 0.740 0.785 0.889 0.195 1995年 0.620 0.809 0.923 0.746 0.803 0.920 0.946 0.195 開放性係数の変化(1985年SSMデータ & 1995年SSMデータ) 85年と95年の比較 専門職 管理職 事務職 販売職 熟練職 半熟練職 非熟練職 農 業 1985年 1995年 0.701 0.620 > 0.822 0.809 > 0.786 0.923 0.757 0.746 専門職と管理職は、 0.740 開放性が低下してい 0.803 る 0.785 0.920 0.889 0.946 0.195 0.195 85年と95年の比較 専門職 管理職 事務職 販売職 熟練職 半熟練職 非熟練職 農 業 1985年 0.701 0.822 0.786 0.757 0.740 0.785 0.889 0.195 1995年 0.620 0.809 0.923 0.746 0.803 0.920 0.946 0.195 開放性係数の変化(1985年SSMデータ & 1995年SSMデータ) 85年と95年の比較 職業威信の高い階層 開放性係数の変化(1985年SSMデータ & 1995年SSMデータ) 3 2015/8/17 85年と95年の比較 それ以外の階層 農業を除き、もともと開放性が高く、かつ強 まっている 85年と95年の比較 職業威信の高い階層 ・・・ それ以外の階層 ・・・ 前者に比べて後者の方が圧倒的に数が多 いため、全体としては開放性が増大して いるようにみえた 不平等社会日本 • 85年と95年の比較 佐藤(2000)による批判 • 不平等社会日本 • 機会格差は拡大したか 不平等社会日本 事務職(20代有名大卒) 事務職(50代高卒) 従来の研究では、社会移動における“年齢の 意味”が十分に考慮されてきていなかった 不平等社会日本 事務職(20代有名大卒) 事務職(50代高卒) 50代では、管理職 に移動している可能 性が高い 4 2015/8/17 不平等社会日本 従業員(創業社長の息子) 従業員(50代) 不平等社会日本 経路依存性 不平等社会日本 従業員(創業社長の息子) 従業員(50代) 50代では、経営者 に移動している可能 性が高い 不平等社会日本 経路依存性 今は同じ職業階層に所属していても、これから辿る ことになる経路に違いがある 経路の違いは、 経路依存性を考慮しないと、社会移動の開放性を 過大に評価することになる 不平等社会日本 不平等社会日本 • 佐藤(2000)で採られた方法は・・・ • 佐藤(2000)で採られた方法は・・・ 若すぎると、将来の 生じると予想される 格差を見落とす 5 2015/8/17 不平等社会日本 不平等社会日本 • 佐藤(2000)で採られた方法は・・・ 高齢になると、 40歳時の職業で比較する 不平等社会日本 不平等社会日本 閉鎖性の増大 不平等社会日本 不平等社会日本 戦後生まれになると、W雇上 (専門職・管理職)の閉鎖性だ けが、急激に増している 6 2015/8/17 不平等社会日本 佐藤(2000)の主張 • 85年と95年の比較 • 不平等社会日本 多くの職業階層について開放性に変化はな かったが、専門職・管理職については若い世 代で • 機会格差は拡大したか 機会格差は拡大したか 機会格差は拡大したか 20代・30代 40代・50代 どのような経路を辿ることになるのか、外からは みえない 経路にどのような違いがあったのか、はっきりと みえるようになる 機会格差の存在を客観的に捉えることがむずかしい 機会格差は拡大したか 40代・50代 機会格差は拡大したか 佐藤(2000)の含意 しかし、分かったときには、 経路にどのような違いがあったのか、はっきりと 手遅れである(どうしようも みえるようになる ない) 機会の不平等を計測することは困難なので、 7 2015/8/17 機会格差は拡大したか 機会格差は拡大したか 佐藤(2000)の含意 佐藤(2000)への批判 (1) 戦後生まれになって上層ホワイトカラーの閉鎖 性が強まったということは、これからさらに強ま る可能性があることを示唆している 機会格差は拡大したか 機会格差は拡大したか 佐藤(2000)への批判 (1) 佐藤(2000)への批判 (2) 40歳未満(1995年当時)については、仮説の域 にとどまらざるをえない 機会格差は拡大したか 機会格差は拡大したか 佐藤(2000)への批判 (2) 残された課題 機会格差の存在を考慮してもなお、現実の日 本社会には十分な社会移動が存在する 1 2000年代に入っても、佐藤(2000)で指摘さ れた傾向は続いているのか? 2 次回、検討 8
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