大阪市立科学館研究報告 第25号 2015年 p.197-200

大阪市立科学館研究報告 25, 197 - 200 (2015)
都島工業高校資料1
―真空管―
宏*
大 倉
概 要
2003 年 、都 島 工 業 高 等 学 校 電 気 科 から無 線 関 係 教 材 として長 年 にわたって保 存 してきた多 数 の機
器類の寄贈を受 けた。そのうちの真 空 管 関係の資料 を報 告する。
1. はじめに 
2003 年 、都 島 工 業 高 等 学 校 から多 数 の機 械 類 の
関 係 教 材として収 集・保 存されてきた多 数の機 械 類の
資 料(段ボール箱にして約 80 箱分 )の寄 贈を受けた。
資料を寄贈していただいた。昨 年 度から展 示 場 3 階の
資 料 は、真 空 管 をはじめ電 流 ・電 圧 計 、検 流 計 、高
展示ケースと地下 1 階 アトリウムの展 示ケースでその一
周 波 容 量 測 定 器 、発 振 機、無 線 機 、電 話 機、ラジオ、
部 の展 示 公 開 を始 めたが、本 稿 ではそのうちから主だ
マイクロフォン、コンデンサ、リレー、コイル、テレビカメラ、
った真空管資料について報 告 する。
ブラウン管 など 多 岐 に 渡 り、 当 館 ではこれらを 都 島 工
業高校コレクションと呼んでいる。
3. 真 空 管
真 空 管 は、整 流 、検 波 、増 幅 、発 振 、変 調 などを行
うために用いたかつての花形電子部品である。
歴史的には電球から生まれ、フレミングが 2 極管を
発明したのが 1904 年、ドフォレが 3 極管を発明したの
が 1906 年とされる。
真 空管はその形 態から、ナス管、ST管、GT管 、mT
管 、サブミニアチュア管 、ニュービスタ管 などに分 類 さ
れる。
2. 都島工 業高校 資 料
大 阪 市 立 都 島 工 業 高 等 学 校(「都 工」)は、明治 40
年に創立された日 本 有 数の工 業 高 校 である。100 年を
超 す歴 史 の中 で常 に先 進 的 ・創 造 的 な実 践 に取 り組
み、全国的に高い評 価 を受 けてきた。機 械 科 、機械電
気 科 、建 築 科 、都 市 工 学 科 、電 気 電 子 工 学 科 、理 数
工 学 科 の 6 つの学 科を有し、所 在 地は大 阪 市 都島区
である。
2003 年 2 月、当 館は電 気 科 で長 年にわたって無線
真 空 管 の 形 態 。左 か ら ナ ス 管 、S T 管 、G T 管 、
mT 管 、 ミ ニ ア チ ュ ア 管 。 (出 展 : ウ ィ キ ペ デ ィ
ア
 *
大 阪 市 立 科 学 館 、中 之 島 科 学 研 究 所
[email protected]
真空管より)
形 態 から使 われていた大 体 の年 代も分かり、ナス管
が 1930 年代、ST管が 30~50 年代、GT管が 40~50
大倉 宏
年 代 、mT 管が 50 年 代 以 降 、サブミニアチュア管とニュ
4-3
S T 管 (24B、2 A5 、 5 Z 3 )
ービスタ管が 60 年 代 以 降 である。しかし、寿 命の長い
ものや復刻版もあるので注 意が必 要 である。
また、分かり易い外 形に足 (電 極)の本 数 がある。4 本 、
5 本、6 本、7 本をそれぞれUX、UY、UZ、UTと呼ん
でいて、真 空 管の名 前 についていることもあるので、名
前 を聞 いただけで足 が 何 本 なのか分 かる。 GT管 は、
足が 8 本(US オクタクル)が標 準のメタル管をガラス化
したものなので、たいてい足 が 8 本ある。UX、UY、UZ
はGT管よりたいてい前の管 である。mT管は足が 7 本
だったり 9 本だったり 12 本 だったりする。
4. 都島の真空管
寄贈を受けた都 島の資 料 のうち 1 割 弱 が真 空管で
わりと大 型のST管。検 波 増 幅 用 UY‐24B。電 力 増
幅用2A5は42の前身。
あった。
ラジオ・無線 用 のST管 、GT管 が多 く、戦 前 のものも
多 数 あるが 、ナス 管 は 数 本 しかなく オー ディオ用 のい
わゆるヴィンテージ管 は含 まれていない。しかし、船 舶
用 の 大 型 送 信 管 や 戦 中 の マイクロ 波 管 、その 試 作 な
ども含まれていて興 味 深 い。
4-1 ポ ピ ュ ラ ー だ っ た 真 空 管 (76、42、 6Z P1)
5Z3は、有 名な2A3と共 に発 表された整 流 管。米R
CA製とGE製 がある。しかし残 念 ながら当 の2A3は資
料には含まれていない。
4-4
整 流 管 (K X 1 5 3 な ど )
かつてラジオなどに使 われポピュラーだった増 幅 用
3 極 管UY‐76、電 力 増 幅 用 5 極 管UZ‐42、6ZP1は
いろんなメーカーのものが資 料 の中 に多 数 含 まれてい
た
1)
。
4-2 テ レ ビ 用 真 空 管
送 信 用 整 流 管 (2 極 管)KX153(サイモトロン
じめ各種整流管。
4-5
テレビの電力増幅 用mT管も多 数 含まれていた。
送信用大型管
船舶などで使われていた。
2)
)をは
都島工業高校資料1 ―真空管―
4-6
ブラウン管
が見える。大阪管は、分割陽極マグネトロンを発明した
大阪大学の岡部 金次郎博 士が発明した真空管。
4-8
木の台に乗せられた真空管たち
かつて都 島 工 業 高 校 内 でもスチールケースに収 め
られ 展 示 さ れ てい て、木 台 にソ ケ ット が 固 定 さ れ 真 空
管 がはめられていた。木 台 には管 名 の書 かれたものも
東芝の 16 型テレビ用 受 像 管 16AUP4/400CB4。
4- 7
マグネトロンの試作?
いくつかあり、ほとんどは一 致 していたが、中 には不 一
致もあった。
80 は整流管 3) 。UY-76、UY-227 は検波増幅用傍
熱 型 3 極管。UY-227はRCAが開発し、その改良型
を東京電気がUY-27Aとして発売していた。KX12 は
半 波 整 流 管 、KX 112Bは全 波 整 流 管 。UX32は RF
増 幅 4 極管、UX111Bは検波増幅 4 極 管 。
マイクロ波を発信させるための管 。
K250 は高真空 整流 管、B‐2500Aは安定抵 抗管、
HX966B、HX968 は水銀入 り半波整流管である。
MX-11と 名 付 けられた真 空 管 。ネット 等 で調 べて
見たが何も引っかからない。竜 胆 型 の分 割 陽 極がある。
これもマグネトロンだと思われる。
UZ42 は電力増幅 5 極管、6E5 はマジックアイ、6C6、
UZ57 は RF 増 幅 5 極管、UZ77 は検波増幅 5 極 管
である。
MX -11 の 載 った 木 台 。 左 側 には 大 阪 管 の 文 字
大倉 宏
HX-968Dは 熱 陰 極 水 銀 入 り 半 波 整 流 管 で小 容 量
の送 信 機 の高 圧 直 流 電 源 に使 用 された。 残 念 ながら
管頂部のプレートが破損している。
KY84、KX5Z3 は全 波 整 流 管 、HX83 は水銀入り
整流管、また 6WC5 は周 波 数 変 換 7 極 管、6ZDH3A
は検波増幅 2 極 3 極 管 である。
T66G‐GTはグリッド制 御 サイラトロン、PT 25Gは光
電管である。2K29 と 2K45 はマイクロ波 増 幅・発振用
左端のUY-807 は高周波電力増幅用 4 極 ビーム管
のクライストロンだと思われる。
でポピュラーな管。4 極ビーム管の草分けである6L6の
4-9 エーコン管 、サブミニアチュア管 、X線 管
プレート端子を管頂に変更し絶縁耐圧上げた。
参考文 献
1)い と し の 真 空 管 た ち
http://www13.ocn.ne.jp/~mvm1/newpage128.html
2)真 空 管 [整 流 用 真 空 管 ]物 語
資 料 の中 には、珍 しいエーコン管 、サブミニュアチュ
http://homepage2.nifty.com/kawoyama/tubestor
ア管、それにX線 管も含まれていた。
yrectifiertube.html
4-10 水銀整流 管
3)日 本 真 空 管 デ ー タ ・ ベ ー ス
http://homepage2.nifty.com/kawoyama/tubedata
.htm
資料の中には、水 銀 整 流 管も多 数 含 まれていた。