KALS 大学院入試対策講座 受講生の皆様 研究計画書について

KALS 大学院入試対策講座 受講生の皆様
100%合格に向けて!チューターからメッセージ
研究計画書について
横浜校チューター:嶋田陽介
みなさん、こんにちは。最近は、大きな台風が 2 つも日本に上陸して、大変な思いをした方もいらっしゃるか
もしれませんが、徐々に気候も良くなり過ごしやすい時期になってきまし
た。読書の秋ではないですけど、学習するにはいい時期だと思います。ぜ
ひ、みなさん自分の目標に向かって着実に学力を上げていきましょう。
今回は、研究計画書について考えて行きたいと思いますが、春から勉強されている方、そろそろできており
ますかね?
今回の最後に、参考(引用)文献の記載の仕方なども載せておくので、参考にしながら、最後ま
でしっかり自分の計画書を作成してください。
そして、面接の際には、必ず研究計画書についての質問がきますので、自分の研究計画について、3 分程度
で簡単に伝えられるように、まとめておいてください。面接の練習をやっていると、自分の研究計画書をうま
く説明できない方がよくいらっしゃいます。やることは、もちろん分かっておられるのですが、説明すること
ができない方が多いのを感じます。なんのためにこの研究をするのか説明できなかったり、臨床的な意義を説
明できなかったり。研究について説明するのは難しいですが、相手に伝えるということがとても重要ですので、
しっかりと練習しましょう。うまく説明できるまで、何度も繰り返して下さい。
まとめるときも、そんなに難しく考えないで結構です。研究計画書に記載している通りに伝えれば大丈夫!
テーマ→背景(先行研究概観)→目的→方法→(仮説)
、という順番で説明していきましょう。
○○について(テーマ)という研究を考えております。これまでは、A については、
B ということが言われていますが(先行研究概観)…、C についてはまだ明らかに
なっておりません。従って、当研究では D を明らかにすることを目的としていま
す。対象は、E を考えており、E に対して、F と G の質問紙を取り、H の統計処理
により解析します(方法)。私の仮説としては、…と考えます。
といった感じで答えていければ、問題ないかと思います。計画書に記載した通りに答えていくことが、相手
にとってもわかりやすい答え方です。
うまくまとまるように、練習してください!!
秋から入られた方
研究計画書のイメージすらできない、という方もいらっしゃると思いますので、まずはどんな流れで進めて
いけばよいのか、簡単にまとめていきますので、ぜひ参考にしてください。
心理学の研究計画書には、以下のような一般的な形式が決められています。因みに、この形式は一般的な心
理学の論文の形式に則っています。
〈研究計画書の基本的なフォーマット〉
(1) 問題と目的
(2) 仮説
(3) 方法
(4) 引用文献
以上のように、各項目を設け述していきます(項目ごとに分けなくても結構ですが)。それでは、以下、それ
ぞれについて簡単にご説明していきます。
各項目について
(1) 問題と目的
……… これまでのその分野における研究の動向、研究の目的・理由、社会的意義
⇒ “なぜこの研究をするのか!”
まず、現在その分野において何が問題として認識されているのか。そして、その問題に関して過去から現
在までにどのような研究がなされ、どのような知見が得られているのか。さらに、その既存の知見を踏まえ、
自分はどのようなことを研究しようとしているのか。最終的には、自分の研究は(臨床)心理学的にどのよう
な意義があるのか、を論理的に説明していきます。
※こう書くとスッキリ!※
「問題と目的」部分では、①自分のテーマの概説 → ②先行研究でどのようなことが言われているか → ③
先行研究では未だ言及されていないこと → ④この研究の目的 → ⑤この研究の臨床的意義
という流れで記載すると、論理的に説明できます。
① 自分のテーマの概説
⇒主に、研究計画書の導入部分になります。この部分では、自分の取り上げたテーマが現在どのよう
な現状に置かれているのか、そしてそれがどのような社会的問題となっているのか、などを書いてい
きます。
(ex : 学校におけるいじめは 1980 年代より校内暴力とともに増加し、○○年にはいじめによる自殺者
が…)
② 先行研究でどのようなことが言われているか
⇒テーマの概説をした後に、このテーマについて、現在までに先行研究ではどのような知見が得られ
ているのか、を紹介していきます。その際に重要なのは、引用している箇所にはこれは引用文献であ
るということをしっかり明記することです。
※例えば…
「……特に、ソーシャルサポートが精神的健康の維持に有効であることは、これまでに多くの研究に
おいて確認されている(●●,2006)。……」
このように、引用先を明示して下さい。文中で明記する場合は、誰の、何年の知見なのか、の
みの記載で結構です。引用文献の記載がない場合、「剽窃(ひょうせつ)」となってしまい、先
行研究を自分のものとして説明するという違反行為をしてしまうことになるからです。
③ 先行研究では未だ言及されていないこと
⇒先行研究ではどのような知見が得られているのかを概説した後に、これまでの先行研究では言われ
ていないこと、いわば「穴」について言及していきます。ここからは、皆さんご自身の独自の視点で
書きすすめていきます。ここからの構想が、まさに皆さんの研究のオリジナリティになっていきます。
ここで重要なのが、ただ研究されていないから研究する、というだけでは説得力に欠ける文章になっ
てしまうので、なぜそのなされていない研究をする必要性があるのか、なぜその意味があるのか、と
いうような独自の視点の妥当性を文章に織り交ぜて説明していくと、厚みのある論理展開になります。
④ この研究の目的
⇒そしていよいよ、この研究の目的を明示していきます。今まで説明してきた問題部分の記載を元に、
この研究の実施目的を書いていきましょう。……ところで、なぜ目的?と感じる方もいらっしゃると
思いますが、研究に限らず、何かを行おうとする場合、必ずその行動には目的が存在しますよね。た
だ闇雲に「このような問題があるから調査する」、というだけでは論理的に説明に足りません。従って、
「この研究では△△ということを検討することを目的とする」、という風に言うことで、この研究の実
施目的を言明することになります。
⑤この研究の臨床的意義
⇒最後に、できればこの研究の臨床的意義について言及します。皆さんの研究で得られた知見が心理
臨床領域でどのように役立つのか、どのように貢献するのか、ということを書いていきます。それが
そのまま、研究活動の社会的意義にも繋がります(意義、と聞くとちょっと壮大な印象を受けますが、
研究には目的・意義はつき物です。これには、倫理的な面や、社会的説明責任など、いろいろな観点
が関連しています)。
(2)仮説
…… 先行研究から想定されうる結果の予測 ⇒“このような結果が得られるのでは!?”
上記の部分では、いわば、自分が「こうではないだろうか」と思ったことを調べることがそのまま目的
になります。そして、その自分の予測が仮説になり、それを検証し、その仮説が正しいのか間違ってい
るのか(仮説が支持されたのかされなかったのか)を証明することが、その研究の成果になります。その
仮説をここで明記していきます。こうして研究を始めるにあたっての、論理的説明が完成します。
(※「仮説」は、「問題と目的」の部分に組み込まれて記載されることもあります。また、質的研究を行
う場合は、この限りではありません)
(3)方法
…… 対象者、調査の方法(質問紙・面接・実験)、分析法など ⇒“この研究のやり方はこうだ!”
「方法」の部分には、この研究の具体的な実施方法を述べていきます。ここで書くべきことは、対象者、
手続き、材料、などです。誰(対象者)にどのようなこと(面接法?質問紙法?実験法?)をして、データ
をとるのか。そして、その結果をどのように分析していくのか、の構想を説明していきます。量的分析
であるのか、質的分析であるのか、の言及も必要になります。
(4)引用文献 …… 研究計画書内で引用した先行文献の明記 ⇒“これらの先行研究を引用しました!”
最後に、研究計画書を作成するにあたって利用した先行研究の一覧を明記し
ていきます。文中で引用文献として明記したものは、すべて漏れなく記載す
るようにしてください。引用文献は必ず著者の名前のアルファベット順(A→
Z)に並べます。この辺もきちんと方法が決まっています。
【引用文献の記載の仕方】
本文中の同一箇所でいくつかの文献を引用するときは、同じ括弧内に著者の姓のアルファベット順に並べて、
それらをセミコロンで区切る
例)「一般的に、遺された家族関係の均衡を破るもっとも解決の難しい喪失として子どもの死が挙げられて
きた(Oliver,1999 ; Worden,1991)。」
文献の配列順序
・日本語文献と外国語文献とは分けずに、著者の姓名のアルファベット順に並べる
・同じ姓の著者が2人いたら、名前の頭文字のアルファベット順に並べる
・同一著者の文献がいくつかある場合、出版年の早いものから順に並べる
・同じ年に刊行された同一著者の文献がいくつかある場合、本文と文献の両方で、年次を示す
数字の直後にアルファベット小文字 a,b,c,…を付して区別する
例) 2001a, 2001b,…
・共著の場合は、第1著者の姓により、アルファベット順に並べる
次回は専門職大学院についてお話ししたいと思います!