大会主題 「共に親しみ 共に楽しみながら 心をつなぐ音楽を求めて」

≪茨城県≫
第 56 回
大会主題
関東音楽教育研究会
茨城大会
「共に親しみ 共に楽しみながら
心をつなぐ音楽を求めて」
~ 一人一人が音楽で輝いて ~
1
楽で輝く」児童生徒の姿を次のように捉えた。
大会主題について
茨城県教育研究会音楽教育研究部では、
県として統一した研究主題を設定し、その
①活動の中で、音で試したり音楽に関す
具現化を図るべく、全県を対象とした事業
る用語などを適切に用いて言葉で表し
の他に、県内を5つのブロックに分け、そ
たりして考えている。
れぞれの地区ごとに授業研究を中心にして
②教師の適切な指導のもとで、児童生徒
音楽教育の研究を推進してきた。大会主題
同士が主体的・協同的に音楽活動に取
である「共に親しみ
り組んでいる。
共に楽しみながら
心をつなぐ音楽を求めて」は、平成22年
度に設定した本県音楽教育研究部の研究主
題である。この主題を基に、ブロックごと
目指す児童生徒の姿を実現し、大会主題
にそれぞれの課題及び実態を踏まえた副主
に迫るために、授業者は1時間の授業を以
題を設定し、授業研究を通して今日的な研
下の流れで指導する。その際、各指導過程
究を進めてきた。その結果、次に示すよう
(音楽的な直接・間接体験、音を伴う言語
な課題が明らかになった。
活動、協同的な音楽活動)での具体的な活
音楽科は、全員で心を合わせて音楽をつ
動及び指導内容を明らかにする。
くっていく協同的な体験を通して、一人一
①から③の過程は、1時間の音楽の授業
人が音楽で輝く喜びを実感することができ
の中において、児童生徒が、①音楽の要素
る教科である。しかしながら、何を(内容)、
や仕組みを知覚・感受し、②音楽活動の中
どう(方法)教えるかについて、教師個々
で音で試したり記号や用語を用いて言葉で
に委ねられているため、力量の差が出やす
表したり、③協同的に取り組んだりして主
い。また、グループ活動で練り上げた一人
体的に学習することを重視している。
一人の思いや意図を、学級全体の総意とし
①音楽的な直接・間接体験(
①音楽的な直接・間接体験(知覚・感受)
知覚・感受)に
て生かす活動の質的な高まりにも課題が見
ついて
この過程は、音楽を特徴付けている要素
られた。
2
(2)「音楽活動の指導過程」の明確化
(2)「音楽活動の指導過程」の明確化
そこで、本大会においては、学校教育の
や音楽の仕組み(中学校:音楽を形づくっ
中の音楽科の役割を改めて見つめ、誰が指
ている要素)を知覚し、感受する段階であ
導しても一定の学力が保障されるとともに、
る。すべての音楽活動を支える最も基礎的
学校という集団だからこそ味わえる音楽の
な能力であり、「情報の受信」である。
授業づくりに取り組むことで、教師の指導
子どもが、主体的・協同的に音楽の授業
力の向上を図り大会主題に迫りたいと考え
に取り組むために必要な知識・技能を、直
た。
接または間接体験させる具体策を工夫する
ことで、学びのエネルギーを生み出す。そ
研究の内容
の際、
〔共通事項〕は、子どもが出会う多様
(1)本大会が目指す児童生徒の姿
(1)本大会が目指す児童生徒の姿
な音楽を理解する学習活動の支えとなるの
研究を進めるにあたり、「一人一人が音
- 11 -
で、具体的に示しながら、発達段階に応じ
②第3学年 取手市立取手小学校
て分かりやすく魅力的に知覚・感受させて
授業者
いく。
題材「せんりつのとくちょうをかんじとろう」
②音を伴う言語活動(
②音を伴う言語活動(思考・判断)
思考・判断)について
(器楽)
①で知覚・感受したことを基にして、音
や音楽で試したり、音楽の用語などを用い
小向節子教諭
教材「メヌエット」「山のポルカ」
【本時で目指す子どもの姿】
旋律の特徴からイメージしたことをもとに、
て自分の言葉で表したりしながら思考・判
断する段階である。音楽科における学力の
リコーダーで旋律にふさわしい表現の仕方を
三要素の一つである「思考力・判断力・表
工夫する。
現力等の育成」は、この過程で身に付けさ
③第6学年 取手市立桜が丘小学校
せる。
授業者
ここでは、主体的・協同的な音を伴う言語
題材「曲想を生かした表現の工夫をしてみん
活動となるように、①で示した〔共通事項〕
なで歌おう」(歌唱)
を支えとして、思考・判断をさせていく。
教材「ふるさと」「広い空の下で」
また、言語活動をツールとして、創造的な
【本時で目指す子どもの姿】
雨澤恵梨香教諭
一人一人の思いや意図を共有し、曲想を生
学習活動が展開できる音楽科の特性を生か
して、発見したり創造したり問題解決をし
かした強弱を中心に表現を工夫する。
たりする音楽活動を重視していく。
④第5学年 取手市立戸頭東小学校
③協同的な音楽活動(
③協同的な音楽活動(表現)
表現)について
授業者
この過程は、①②を基にして、音楽で表
松山裕子教諭、坪井悟教諭(戸頭中)
題材『組曲「ぼくらのキリマンジャロ」をつ
現したり、感じ取ったことや考えたことな
くろう』(音楽づくり)
どを言葉で伝え合ったりする段階である。
教材「キリマンジャロ」
これらの活動は「情報の発信」に当たる。
【本時で目指す子どもの姿】
音楽の仕組みを生かし、思いや意図をもっ
表現及び鑑賞の両領域において、人間関係
を形成しながら協同的な音楽活動をするこ
て主体的に音楽表現をする。
とで音楽で輝く喜びを実感させていく。
⑤第4学年 取手市立永山小学校
3
授業者
研究実践(小学校は6授業)
三次摂子教諭
(1)分科会(研究授業及び研究協議)
(1)分科会(研究授業及び研究協議)
題材「音の重なりを感じ取ろう」(歌唱・鑑賞)
①第2学年 取手市立吉田小学校
教材「パレードホッホー」「ファランドール」
授業者
【本時で目指す子どもの姿】
石田加奈子教諭
旋律の特徴を生かしながら。2つの旋律を
題材「たがいの音をきこう」(器楽)
教材「ぷっかりくじら」「アイアイ」
重ねて歌う楽しさを味わう。
【本時で目指す子どもの姿】
⑥第6学年 取手市立寺原小学校
互いの音を聴き合いながら、工夫して合
奏をする。
授業者
飯島朋子教諭
題材「日本の歌を歌い継ごう」
~曲にこめられた思いを感じて~ (歌唱)
教材「ふるさと」
【本時で目指す子どもの姿】
歌詞の内容を理解し、長年歌い継がれてき
た唱歌のもつよさを感じ取る。
- 12 -
○児童生徒の実態から研究を立ち上げている
(2)研究演奏
(2)研究演奏
点がよい。学習指導要領の目標や指導事項
①取手市立白山小学校
指導
を実現することをゴールとするならばスタ
高橋恵子教諭
ートは目の前の児童生徒の実態である。よ
合唱組曲「利根川の詩(うた)」
りよい授業を目指すには、児童生徒の実態
(白山小学校オリジナル合唱組曲)
作詞
白山小学校児童
作曲
蓮沼万里
把握とねらいの明確化が不可欠である。
○本時の観点別評価の生かし方というところ
に、指導と評価の一体化の理念が具体的反
映されている。
「Cと判断する子どもへの働
きかけ」という項目とその手立てが学習指
導案上に位置付いていることは大変意味が
あることである。
●〔共通事項〕の「音楽を形づくっている要
素」を明確にし、それを支えとして、どの
ような指導事項の学習が実現したのか、各
指導事項の学習内容をより明確にしするこ
②つくば竹園学園
指導
とが更なる音楽科の充実につながる。
つくば市立竹園中学校
●〔共通事項〕=「音楽を形づくっている要
髙澤利枝子教諭
素」ではない。「聴き取ること」「感じ取る
合唱創作と管弦楽
「贈る歌
こと」の両方を大切にしているので、その
混声三部合唱のための」
作詞
片見好花
ことを評価の観点に示すことで、〔共通事
作曲
片見好花/桑名真結香
項〕アの趣旨を生かした指導と評価が可能
編曲
髙野光章
になる。
●本時の学習課題をより明確に、また鋭角的
(3)指導講評
(3)指導講評
文部科学省初等中等教育局
に示すとよい。 〔共通事項〕の趣旨を生か
教育課程課
すためには、指導事項を明確にし、そこか
教科調査官
4
国立教育政策研究所教育課程研究センター
ら主として扱う音楽をさらに絞り込んでい
研究開発部教育課程調査官
くことで、題材の学習全体の方向性が明確
成果と課題(○成果
津田
正之
先生
臼井
学
先生
になる。
本大会の成果を、県全体で共有するととも
●課題)
<指導講評より>
に、ご指摘いただいた課題を踏まえ、本県の
○子ども同士が共感尊重しながら、個と集団
音楽教育の充実発展に一層努めていきたい。
のかかわりの中で音楽の学びを深めてくと
いう、学校教育で大切にすべき学習の在り
方が端的に示されていた。
○本大会で提案された三つの段階を意識した
指導過程は、まさに音楽科の学習指導の特
質を、より具体的な学習指導の在り方とし
て示したものである。
- 13 -