昭和 28 年当時の風景 25 04 〈散策マップ〉 26 大 門 界 隈 04 大 門 界 隈 〈界隈めぐりレポート〉 かつて中村遊廓として世に知られた大門【写真①】。田 園地帯に突如うまれた楽園は、建物それぞれに意匠がこ らされ、破格のお金が惜しみなくつぎこまれた名建築群 であった。 遊廓の売り上げは多い時には、当時の名古屋市の予算 の 4 割にまで上るほど。かつて栄華をきわめた大門は今 どうなっているのか?今回委員会のメンバーで見て歩い てきた。 集合場所の区役所を出てから、大門までは歩いて約1 5分。昔の地図を片手に、キョロキョロしながら歩いて いると、 (怪しい集団がきた!)と思われたか、特殊浴場 の隣から、怖そうなお兄さんがやってきて「何をやって るの?」と尋ねられる。スーツ姿の集団は不思議にみえ たのだろうか。 【写真①】大門町 【写真②】長寿庵 大門一帯の北側半分には、今も良好な状態で残ってい る建築物がある。一行はまずこちらを散策。 ①長寿庵【写真②】 建物の壁に美人画がかざられているのが特徴的。べん がら塗りで、よくまとまったこぎれいな建物だ。上から 観ると、隣の病院とくっついているようだが、どうなっ ているのだろうか? 【写真③】元料亭稲本 ②元料亭稲本【写真③】 私は、料亭時代に一度だけ訪れた事がある。今は、料 亭をやめてしまい、道路側の建物だけをデイサービスの 業者が使っているようだ。中国風の特徴ある建築は、大 門の中でも一番見応えのある建物なので、今後、どう活 用して残って行けるのか気がかりである。 【写真④】デイサービスセンター 松岡健遊館(外観) 27 04 大 門 界 隈 ③デイサービスセンター松岡健遊館【写真④】 こちらでは、建物内の見学をさせてもらった。外観は 写真の通り、当時の趣きを残している。建物内部は、現 在デイサービスセンターとして使われているという事で、 バリアフリーの改装がされている。また、入浴施設など も作られている。 一方で、中庭【写真⑤】であったり、欄間やステンド グラス、あるいは調度品など当時のものも、残せるもの は残して活用されている。遊廓時代の流れをくむ格調あ るインテリア【写真⑥】により、高級旅館へ遊びにきた かのような雰囲気で、お年寄りが過ごす事ができる。 【写 真⑦】私が、事前の打ち合わせにうかがった時には「昔 ながらの建物の雰囲気があることで、利用者の方にはと てもご好評をいただいている。課題は、建物の維持費が かかること。修繕に毎年かなり費用がかかるので、こう したところを行政がバックアップしてくれるとよいのだ が…」というお話があった。 【写真⑤】デイサービスセンター 松岡健遊館(内観) 【写真⑥】デイサービスセンター 松岡健遊館(内観) 中村遊廓が出来上がると、その周りにも多くの店舗や 民家が立ち並ぶようになった。この日は、そうした建物 も見て回ってきた。 ①寿湯【写真⑧】 石造りのようなファサードが独特。番台のおばちゃん によると「100年ぐらいはやってるんじゃないかなぁ。」 との事。その間、一度も、建て替えはしてないそうだ。 まち歩き当日は、中には入らなかったが、浴場の壁には 見事なタイル絵があり、懐かしい感じのお風呂が楽しめ る。 【写真⑦】デイサービスセンター 松岡健遊館(内観 【写真⑧】寿湯 28 04 ②廓温泉【写真⑨】 昭和12年、汎太平洋博覧会にあわせて発刊された名 古屋のガイドブック「歓楽の名古屋」 (なんとも魅力的な 名前!)にも紹介されている銭湯。近所の方に聞くと、 数年前まで銭湯として営業をされていたようだ。立派な 構えだが、よく見ると高欄がこわれていたりして、今後、 どうなるのか心配。 ③起業支援ネットワーク大門庵【写真⑩】 こちらでも建物内部を見学させていただいた。この建 物は、飲み屋だった建物を、NPO団体“起業支援ネッ トワーク”が改装し、オフィスとして使っていたもの。 【写真⑪】案内をしていただいた森さんには「昔からの まちの中で仕事をしたいという事で、かなりの費用をか けて改装したが、使い勝手がどうしても悪かった。手を 入れても、時間がたつと建物自体がゆがんできて、建て つけが悪くなるなどの問題もある。また、風呂が無いと いう事も、ここで住み込みで働くには難点。ここもオー ナーの意向で24年には取り壊すことになった。」という お話を伺った。建物再活用も、松岡健遊館のように成功 する事例もあれば、うまくいかない事例もあるという事 で、勉強になる。 大 門 界 隈 【写真⑨】廓温泉 【写真⑩】起業支援ネットワーク大門庵 【写真⑪】起業支援ネットワーク大門庵 (内観) 中村遊廓では、通常、お客は廓で食事をとる事はなか った。そのためか、遊廓の周辺には飲み屋も多くあった。 まち歩きの終盤はそうしたところも見て回った。 ①大門横丁【写真⑫】 太閤通からアーケードが伸びる横丁。居酒屋やスナッ クが並んでいる。私たちが通った時には、まだお店は開 いていなかったが。見た感じは割ときれいなお店が多か ったので、今も営業しているようだ。 【写真⑫】大門横丁 29 04 大 門 界 隈 ②大門小路【写真⑬】 建物と建物の間のトンネルになった路地。3本のトン ネルが中でくっついているワンダーゾーン。トンネルの 中に入っていくと、左右にスナックや居酒屋が。なかな か入るには勇気がいるが、興味をそそられる場所だ。 ③中村映劇【写真⑭】 今回のルートの最後に選んだ場所がここ。遊廓があっ た頃から続く映画館。今ではめったに目の当たりにする 事がなくなった、ポルノ映画専門の映画館だ。それにし ても、なぜ遊廓の近くにポルノ映画館?ここで勉強して から出撃するのか、お金が無い時はここなのか(笑)ち なみにシニア割引がきく。 ≪番外編≫ ①おやつ饅頭【写真⑮】 寒い中、歩きつづけた一行は、反省会という名の休憩 をとるため、近くのお菓子屋「おやつ饅頭」へ。こちら も老舗。店のおばちゃんにうかがったところ、35年以 上の歴史があるという事だ。おやつ饅頭(今川焼)が8 0円。これを買って店内で食べていると、お茶もサービ スで出してくれた。 【写真⑬】大門小路 【写真⑭】中村映劇 ②萬珍軒 おやつ饅頭を食べただけでは反省不足な一行は、さら なる反省会を開くために萬珍軒へ。玉子とじラーメンで 有名なこのお店は、実は、古民家(長屋)を改装した歴 史的建築物の再活用事例でもある。半日のまち歩きで使 ったエネルギーをビールと中華で十分補給し、家路につ いたのであった。 【写真⑮】おやつ饅頭 30
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