沈まぬ太陽

麻酔科医に薦めたい本
自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座 沈まぬ太陽
山崎豊子 著
新潮文庫(1)
∼
(5)
巻
(1)
(2)2001年12月
(3)
∼
(5)2002年 1月
(1)
(5)本体680円 + 税
(2)
∼
(4)本体767円 + 税
竹 内 護
族係を命ぜられた主人公は、想像を絶する悲劇に直
面する。
会長室篇:何故、日本航空は崩壊して行ったのか?次
第に白日の下にさらされる腐敗の構造。しかし、そ
れは終わりなき暗闘の始まりであった。勇気とは、
そして良心とは何かを問う壮大なドラマは完結に向
かう。
文庫本 5 冊に及ぶ大作であるが、あまりに面白過ぎ
私が最も敬愛する作家は、2013年に88歳で亡くなっ
た山崎豊子である。「白い巨塔」は、医療関係者には
て、逆に少しずつ読みたくなる作品である。是非、若
い先生方にも読んでいただきたい。
既読の方も多いであろう。長編小説はすべてお薦めで
最後に、私にいつも良書を紹介して下さる、とちぎ
あるが、11年間のシベリア抑留から帰還した主人公
子ども医療センター小児泌尿器科教授、中井秀郞先生
が商社マンとして第 2 の人生を歩む「不毛地帯」、戦
に謝意を表します。
時下のアメリカにおける日系二世の悲劇を描いた「二
つの祖国」、中国残留孤児の波乱万丈の生涯を描いた
「大地の子」は、戦争の悲惨さを痛切に訴えた超大作
である。いずれも日本人なら一度は読んでおきたい。
なかでも「沈まぬ太陽」は山崎豊子の最高傑作と考え
る。晩年の作品、「運命の人」になると、ワンパター
ンの駄作?という気もしてくるが…、遺作「約束の海」
では、やはり戦争の悲惨さを訴えている。80歳超の著
者の能力、取材力さらに執念には、ただ感嘆するしか
ない。
「沈まぬ太陽」は以下の 3 部からなる。
アフリカ篇:主人公は、カラチ、テヘランからナイロ
ビへの足掛け 8 年に亘る流刑にも等しい左遷人事に
耐える中で、家族と離別する。人命を預かる企業の
非情と、その不条理に不屈の闘いを挑んだ男の運命
が描かれていく。
御巣鷹山篇:御巣鷹山で「日航ジャンボ機墜落事故」
プロフィール
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竹 内 護 Mamoru Takeuchi
自治医科大学麻酔科学・集中治療医学講座
1960年:岡山県生まれ
1985年 3 月:岡山大学医学部卒業
1985年 4 月:岡山大学医学部麻酔・蘇生学教室入局
1987年 2 月:広島市民病院麻酔科 研修医
1989年 7 月:国立循環器病センター麻酔科 レジデント
1990年 7 月:岡山大学医学部麻酔・蘇生学教室 医員
1993年 1 月:Melbourne Royal Children’
s Hospital ICU
overseas fellow
1996年 8 月:岡山大学医学部麻酔・蘇生学教室 助手
2002年 6 月:岡山大学医学部歯学部附属病院集中治療部 講師
2005年 5 月:岡山大学医学部歯学部附属病院麻酔科蘇生科 医局長
2007年 4 月:自治医科大学とちぎ子ども医療センター
小児手術・集中治療部 教授
2010年11月:自治医科大学麻酔科学・集中治
療医学講座 教授
2014年 4 月:自治医科大学附属病院 副病院長
現在に至る
が発生。未曾有の大事故が、詳細な取材により生々
しく描かれている。凄絶な遺体の検視、事故原因の
究明、非情な補償交渉。救援隊として現地に赴き遺
専門:心臓麻酔、小児麻酔、集中治療
趣味:巨人と高校野球を愛する野球評論家
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