安全保障法制改正法案に反対する会長声明

安全保障法制改定法案に反対する会長声明
政府は、本年5月14日、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法等を改正する
平和安全法制整備法案及び新規立法である国際平和支援法案(以下併せて「本法案」
という。)を閣議決定し、翌15日、これを国会に提出した。
しかし、本法案は、憲法の定める恒久平和主義、立憲主義及び国民主権原理に反
するものである。本法案の問題点は多岐に渡るが、特に重要な点として以下の3点
を指摘できる。
第1に、本法案は、我が国に対する武力攻撃が発生していなくとも、我が国と密
接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かさ
れ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事
態(「存立危機事態」)が発生すれば、武力行使を可能とする。
しかし、これは、憲法9条の解釈として認められない集団的自衛権を容認するも
のであり許されない。
第2に、本法案は、自衛隊の後方支援につき、我が国周辺の「周辺事態」に対応
する米軍の支援に限定していた周辺事態法を重要影響事態法に改正し、我が国の平
和と安全に重要な影響を与える事態(「重要影響事態」)が発生すれば、我が国の周
辺地域でなくても、また米軍以外であっても自衛隊の後方支援を可能とする。さら
に、国際平和支援法という恒久法を新設することにより、国際社会の平和及び安全
を脅かす等の要件を満たす事態(「国際平和共同対処事態」)が発生すれば、個別立
法なしに自衛隊が協力支援できることとされている。
しかも、これら支援の場所は「現に戦闘が行われている現場」以外であれば可能
であり、また、支援の方法も武器の提供以外であれば弾薬の提供等まで可能である。
しかし、かかる支援を自衛隊が行うことは、相手国からは他国の武力行使と一体
に見られない保証はなく、ゆえに自衛隊が武力行使せざるを得ない状態に至る危険
性があり、憲法9条の禁止する武力行使につながるものである。
第3に、本法案は、自衛隊の活動領域を従前の国連平和維持活動に限らず、国連
が統括しない有志連合等を含む「国際連携平和安全活動」まで拡大し、従来の平和
維持活動において禁じられてきた住民等の安全確保業務や「駆け付け警護」を行う
こと、及びそれらの任務遂行のための武器使用を認めている。
しかし、これは、隊員が自己の身を守るという自己保存のための自然権的な権利
として例外的に認められてきた武器使用の範囲を、これを越えて自衛隊の任務遂行
のためにまで広げるものであって、これにより自衛隊が戦闘行為をするに至り、ひ
いては武力行使に発展する危険を含んでいる点で憲法9条に反する。
以上のとおり、本法案は徹底した恒久平和主義を定めた憲法9条に反するもので
ある。
加えて、本法案は、法律によって憲法を改変しようとする点で、国民の権利を保
障するため国家権力を憲法で制限するという立憲主義に反し、かつ憲法改正手続を
経ていない点で国民主権原理にも反する。
よって、当会は、本法案に強く反対するものである。
2015年(平成27年)6月16日
函館弁護士会
会長
木
下
元
章