大学生の関心は グローバル、しかし 将来の暮らしは地元志向

●特別レポート 全国大学生協連「2014年大学生の意識調査」より
81.1
86.0
大学生活全般に満足している
80.8
78.6
83.7
80.3
78.5
80.2
85.2
自分の通っている大学が好きである
80.7
78.8
83.2
82.1
77.4
80.5
83.2
大学の中に落ち着ける場所がある
72.2
72.5
71.9
74.4
71.0
69.5
73.7
教員との関係に満足している
61.1
58.7
64.2
52.5
56.4
65.8
74.0
表2 学業への意欲(とても思う、ややそう思うの合計)
1年
2年
3年
4年
92.3
89.9
95.4
94.9
93.3
90.8
89.1
93.7
90.7
70.0
69.8
70.4
69.9
68.6
69.1
72.9
70.2
69.6
64.7
65.8
63.2
61.0
60.7
67.7
71.4
69.0
59.0
62.7
68.8
54.9
59.8
60.0
66.7
65.6
63.2
62.3
36.7
33.7
40.6
26.8
32.2
42.0
50.3
37.1
35.7
先生に質問や相談をする
女性
大学生の学業への意欲に関し
ては、世間が持っている「勉強
しない大学生」というイメージ
をくつがえし、授業の出席率が
予想より高い結果になっている。
割合が高いことだ。最近の大学
比較的高い大学生活への
には、学生たちが談笑できるス
満足度
ペースが設けてあり、そのよう
なスペースに乏しかった高校と
全国大学生協連の「2014
年大学生の意識調査」が6月5
比べているのであろう。
日に公表された。2014年の
それを除いた「友人との関係」
月から 月にかけて、国公私 「大学生活全般」「通っている大
立大の学生3583人を対象に
学」
「教員との関係」に関しては、
実施した調査結果である。その
4年生が一番高い。在籍年数が
中から、大学生活に対する意識
長いと、以前はむしろ大学への
を見てみよう。
批判が高まることが多かったが、
最近は素直に自分が通う大学へ
表1は、大学生活への満足度
を示したものだが、そこからは、 の満足度が増していくようだ。
今の学生の満足度の高さがうか
特 に、「 教 員 と の 関 係 」 が 学
がえる。特に、女子学生の満足
年を経るにしたがって高くなっ
度 が 高 く、「 大 学 の 中 に 落 ち 着
ている。これは、高学年になる
ける場所がある」を除いた項目
と、ゼミや卒業論文の指導、実
で男子学生よりも高くなってい
習・実験、あるいはアクティブ
る。
ラーニングなどで、教員と接す
る機会が増え、交流が深まるた
ま た 学 年 別 に み る と、「 友 人
関係」は学年が上がるごとに満
めであろう。
足 度 が 高 く な る が、「 大 学 で の
意識の上では
居心地」や「大学生活の満足度」
「生徒化」のまま
は2年や3年になるとやや下が
る。 入 学 し た と き の 新 鮮 さ が
徐々に薄れてきているのかもし
れない。
意外なのは1年生の「大学の
中に落ち着ける場所がある」の
11
指導すべきだと思う」( ・1%) %)、「授業に関係なく自分の好
きな勉強もする」( ・7%)、「友
学生が半数を超えてきた。これ
人と議論することが好きであ
は「大学教育は本来自学自習を
る」( ・7%)に比べ、「履修
前提としている」という原則が
した授業の成績が気になる」と
崩れつつあるという見方もでき
いう学生が、実に ・3%も占
る。大学でも、高校と同じよう
めている。就職活動では企業か
にまず授業で基本を教えてほし
らそれほど重視されないと言わ
い、という要望が強いというこ
れる大学の成績であるが、自分
とは、学生が「生徒化」してい
の努力の成果が気になるという
る表れと言えるだろう。
こ と で あ ろ う か。 こ の 傾 向 は、
すなわち授業・学業への姿勢
特に女子学生に目立つ。
については、レジャーランドと
大学の進学率が高くなって大
揶揄された 年以上前とは違っ
学教育の大衆化が進み、大学生
て、意欲は比較的高いが、授業
の意識が高校生化していると言
中心の大学生活では、高校生活
とあまり変わらないともいえる。 えそうだ。
受験生時代の意識がそのまま残
低成長時代に身につけた
り、以前のように「大学に合格
堅実な経済感覚
したら、自由にやりたいことを
するぞ!」といった意識の切り
消費行動では、商品を購入す
る 際 に は、「 イ ン タ ー ネ ッ ト か
替えがなくなったようだ。これ
らの情報を参考」にしている学
は、受験勉強をそれほど必要と
生 が ・ 3 % を 占 め、「 将 来 を
しない推薦入学やAO入学者が
考えて、情報収集や準備」を意
増加していることも影響してい
識するなど、情報化時代に育っ
るかもしれない。
た若者らしい経済感覚を半数以
その結果、表2でもわかるよ
上が持っている。
うに、成績重視の学生が増えて
い る。「 実 験 や ゼ ミ 形 式 の 授 業
し か し、 必 要 な 物 で あ れ ば、
を 履 修 し た い と 思 う 」( ・ 0 「 多 少 高 額 な も の で あ っ て も、
54
70
62
79
64
92
2015 / 9 学研・進学情報 -16-
-17- 2015 / 9 学研・進学情報
文科系 理科系
12
10
最近の学生は、海外留学への関心は高いが、海外の仕事への意欲は低く、
地元で暮らしたいという学生が過半数を超える。普段はバイトに励みなが
ら、浪費を嫌い、授業への出席率も高い。そんな堅実な大学生の姿が浮か
んできた。
男性
60
全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連)
『2014年大学生の意識調査』より
所属学部
学 年
性 別
全体
(数字は%。)
(医歯薬は理科系に含む)
履修した授業の成績が
気になる
実験やゼミ形式の授業を
履修したいと思う
授業に関係なく自分の
好きな勉強もする
友人と議論することが
好きである
ト
80.7
ポ
79.5
レ
83.0
別
特
80.4
大学の授業に対する出席状況に
も に 高 い 数 字 だ。 そ れ に 対 し、
お い て も「 と て も 」 と「 や や 」 「 卒 業 単 位 に な ら な い 授 業 は 履
を 合 計 し た 割 合 は、
「履修した
修 し な い 」( ・ 5 %) と な っ
授業は必ず出席する」
( ・4
ており、学生の実利志向がうか
%)
、
「就職に役立つ授業を履修
がえる。
したいと思う」
( ・ 5 %) と
ま た、「 先 生 は も っ と 学 生 を
81.5
87
大学生の関心は
グローバル、しかし
将来の暮らしは地元志向
4年
3年
2年
1年
女性
男性
(数字は%。)
クラスや学科の友人との関係に
満足している
学 年
性 別
全体
85
ー
表1 大学生活への満足度(とても思う、ややそう思うの合計)
●特別レポート 全国大学生協連「2014年大学生の意識調査」より
14.2
19.0
スクール費用
5.5
4.7
1.8
旅行・レジャー
29.9
19.8
23.4
車・バイク
12.1
6.2
2.6
大型商品購入
8.5
4.3
1.3
衣類・バッグ
16.7
27.6
16.7
貯金
16.1
10.9
16.7
全体
文科系 理科系
4年
3年
2年
1年
女性
所属学部
学年
性別
1.2
就職活動費用
1.4
0.5
2.7
2.0
その他
39
4.9
海外・留学
卒業後は会社に縛られない
生き方をしたい
67.6
68.1
67
68.6
70.1
70.1
60.5
67.2
67.7
働かなくてもよければ
働きたくない
56.2
58.8
52.8
53.7
59.2
57.0
55.0
55.4
57.5
将来は地元で暮らしたい
54.8
53.0
57.2
55.0
52.2
58.0
54.1
56.5
52.6
大学院に進学したいと
考えている
35.3
44.1
24.1
36.2
35.6
34.4
34.6
15.3
59.8
育として「成長の場」の提供を
行う。ボランティアではなく有
償の活動も、大学業務全体に増
やす方向で、留学生支援などで
は、国際交流の活性化なども期
スチュ-デント・ジョブを組織し、学生が中心となって学内の仕事を行う。単なるアル
バイトでなく、就業体験に基づく人材育成を目的として、ワークスタディーとしての奨
学金として位置づけられている。
グローバルより
地元での自由な暮らし
ほうがよいだろう。
かもしれない。
開いた。
もはやアルバイト収入は必須の
自分の趣味のためであれば購
また、異性との交際について
収入源となっている。
入」
( ・3%)するし、
「欲し
学生数が1800人という比
も、女子学生の方が「異性の友
較的小規模の嘉悦大学の報告で
いものは我慢しないで買う」学
アルバイトの内容については、
だちが多い」割合が多いが、「友
は、近年「働ける大学」として
現在ブラックバイトが批判の対
生も ・1%いる。高齢者や主
人よりも恋人の時間を大事にし
注目される同大の、学生自身が
象となっているが、それに対応
婦などの厳しい消費生活とは違
た い 」 と 思 う 割 合 は、 女 性 の
運営するHRC(ヒューマン・
した注目すべき流れとして、学
い、現代の若者らしい消費感覚
・4%に対し、男性は ・7%
リ ソ ー ス・ セ ン タ ー)、 様 々 な
内バイトへの期待が高まってい
も垣間見える。
と4割近い。
学内業務やイベントや、授業支
る。「 学 内 バ イ ト 」 と は、 学 生
おもしろいのは、商品購入の
際、
「ブランドを気にする」学
援について報告があった。初年
が授業の空き時間に大学のキャ
また消費生活を支える収入面
生が、男子が ・7%なのに対
でアルバイトを増やしたいと
次教育で、各クラス2名のSA
ンパスの中で働いて、収入を得
し、女子が ・6%と予想外に
願っている学生は、ここ数年の
(スチューデントアシスタント)
る仕組みである。
低いことだ。ブランド志向は女
調査では %前後となっている。
をロールモデルとして配置して
文部科学省も2013年度以
子学生の方が高いと思われたが、 表3はアルバイト収入の使途だ
いる。時給もアルバイト賃金の
降、「 学 内 ワ ー ク ス タ デ ィ へ の
実際は女子学生の方が堅実なの
が
、「
生
活
費
の
維
持
」
が
年
々
増
え
、
相場は支給し、学内バイトの提
支 援 」 と し て、「 国 立 大 学・ 私
立 大 学 の 授 業 料 等 減 免 の 充 実 」 供という面だけでなく、学習効
果や授業の改善に結びつけてい
の中で、学生の経済的負担軽減
る。SAというと教員のサポー
のための多様な支援策を講じる
トという面が強いが、同大では
大学に予算措置を講じている。
学生の補助として機能し、教員
このような経済的負担を軽減
とのコラボで授業の質の向上に
するねらいだけでなく、学内バ
つなげているという。
イトは安心して働ける環境を作
り出し、就業体験を通じた学生
次の報告は、学部生4万3千
人、大学院生1万人、海外から
の成長を促すキャリア支援も考
の留学生数日本一という早稲田
えられ、新たに取り組む大学が
大。同大の「学生参画・ジョブ
増えているのである。
センター」は、2014年 月
全国大学生協連では、7月
日 に こ の 学 内 バ イ ト に つ い て、 に 開 設 さ れ た ば か り だ が、 ス
チューデント・ジョブを中心に
大学の狙いと取り組み、学生の
学内で働くことや、キャリア教
変化と成長を報告する研究会を
20.6
待できるとのことだ。
全国でこのような取り組みを
取り入れる大学例が表4のよう
に増えており、入学したら、学
内バイトの活用も考えに入れた
サークル費用
10
的行動に移そうとの思いは弱い
ようだ。
彼らの本音は、表5からもわ
か る。「 将 来 は 地 元 で 暮 ら し た
い」と回答している割合が5割
を超えているのである。束縛さ
れない自由な生き方を望むのと
同時に、慣れ親しんだ土地での
生活を望んでいる様子がうかが
われる。他の質問の調査結果で
は、とくに地元志向が強い学生
は、非地元志向の学生と比べる
とて海外就職志向が低い結果も
出ている。
また大学卒業後は「会社に縛
られない生き方をしたい」学生
が ・ 6 %、「 働 か な く て も よ
ければ働きたくない」学生が
・2%おり、現代の若者らし
く、自由な人生への憧れがみて
と れ る。 半 面、 バ イ ト に 励 み、
就活を優先する厳しい現状認識
も持っている。
* 高校生の進路指導においては、
このような大学生の揺れ動く意
識と生活の実態をふまえながら、
指導していくことも大切だろう。
(取材・文/木村誠)
2015 / 9 学研・進学情報 -18-
-19- 2015 / 9 学研・進学情報
2.0
男性
67
1.9
(数字は%。)
(医歯薬は理系に含む)
56
1.6
学内インターンシップ制度を、学生への経済的支援制度として、キャンパス内で勤務す
る学内勤務制度を運用している。
15
現在の大学にとって、グロー
バル人材の育成が重要課題に
なっている。
文部科学省は、グローバル人
材の育成を掲げて、留学支援事
業「 ト ビ タ テ 留 学 J A P A N 」
を 年度に立ち上げ、東京五輪
が開催される2020年までに、
大学生 万人、高校生6万人の
海外留学を目指している。
大学生協の調査で学生に海外
や 留 学 に 対 す る 意 識 を 問 う と、
「 と て も 」 と「 や や 」 を 合 わ せ
た海外留学希望者は ・6%と、
学生の間でもグローバル化への
意識は高かった。
と こ ろ が、「 将 来 は 海 外 で 仕
事をしてみたい」と答えた者は、
「 と て も 」 と「 や や 」 を 合 計 し
ても ・8%と半分以下にとど
まっている。英語重視や留学希
望など高いグローバル意識とは
裏腹に、自らグローバルに活躍
しようという気持ちはあまり強
くなく、将来、海外に出て具体
67
23.4
中村学園大学
・短期大学部
12
23.6
金沢工業大
26
34
26.2
45
生活費のゆとり
24
21.0
学内清掃などの仕事を有償ボランティアと位置付け、スチュ-デント・ジョブ制度をス
タートさせている。
東北文化大学
取り組み内容
大学名
留学費用
46
19.6
授業料
2014 年
2000 年
1990 年
年 度
39
17.5
48
60
生活費の維持
表5 将来の意識
(とても思う、ややそう思うの合計)
表3 アルバイト収入の使途の変化(2つまで選択)
表4 学内バイトを積極的に実施している他の大学例