地元企業お仕事100選 (有限会社 小倉飯店) 開催日:平成27年5月16日(土) 場 所:若者ワークプラザ北九州・セミナールーム(小倉北区) 講演者:有限会社小倉飯店 代表取締役 ハン ケイセイ 樊 継聖 氏 下記は、当日お話していただいた概要をまとめたものです。 私は樊 継聖と申します。昭和 20 年に中国大連市に生れ、昭和 54 年秋、九州工業 大学の留学生として来日しました。昭和 60 年、中国料理小倉飯店社長に就任し、平成 8 年、中国料理門司倶楽部社長に就任しました。現在、北九州市では中国料理店として 最も規模が大きく、歴史が長い両店舗を経営しています。 1 現在の仕事をするきっかけ もともと私は中国料理店の経営者になる事は夢にも思っていませんでした。学生時代 の夢は「立派なエンジニアになる事」で、そのために勉強に励んで国立大学に入り、自 動車設計製造技術を学んでいました。しかし、大学 3 年の時に中国の文化大革命が起 こり、学校の授業が中止となり学生運動に参加せざるを得ませんでした。 その後、大学生およびすべての知識人が国の政策に従い、強制的に向き不向きを問わ ず、農村、鉱山、工場の現場労働者として働かされ、私も例外ではありませんでした。 工場の現場で毎日単純作業を繰り返し、いつま で経っても技術者らしい仕事はさせてもらえ ませんでした。日本では考えられないかもしれ ません。 しかし、その後思わぬ人生の転機が訪れまし た。昭和20年、戦後間もなく中国から日本に 渡った父が、25 年ぶりに里帰りをしました。 父との再会が実現され、昭和54年秋に九州工業大学に留学するために日本へやってき ました。4 年間の留学生活を終え、中国に帰ろうかと思ったときに、父が今の中国料理 小倉飯店と門司倶楽部の事業を受け継いで欲しいと言いました。考えた末、日本に残り、 父が築いた事業を受け継ぎ、更に発展させようと決心しました。 技術者から飲食店の経営者に転身するのは、言うまでもなく、すべてゼロからのスタ ートでした。配膳室の皿洗いやホールサービス、客室の後片付け、次の宴会のセッティ ング等一生懸命働きました。そのほか、調理、営業などを一つ一つ学びながら覚えまし た。こうした店の業務すべてを実践したことはその後の経営に大変役立ちました。 2 小倉飯店と門司倶楽部の概要 旧門司市の迎賓館だった門司倶楽部は東京の丸の内駅の設計者、建築家の辰野金吾先 生が設計され、当時の門司市経済四団体の商工会館として、格式の高い社交の場でした。 ときの門司市長柳田桃太郎先生とのご縁(旧満州政府時代、父の上司であった柳田先生 との信頼関係が築かれていた)で、父樊慶文は中国料理店として門司倶楽部の歴史に新 しいページを開きました。5 年後、今の小倉飯店を開店させ、それぞれ 62 年と 57 年 という歴史を刻んできました。 小倉飯店は小倉のビジネス繁華街の真中に立地し、和洋大小客室 20 を数え、6 人か ら 400 人収容できる個室、大ホールと 100 席を有するレストランとを併せると、全 館 800 人のお客様を同時におもてなしができます。一方、門司倶楽部は旧門司市が栄 えた昭和 30 年代から昭和 60 年代が特に大繁盛し、門司地域のお客様と深い絆で結ば れ、地元の男女老若のお客様にとって欠かせない飲食店となっています。 3 仕事をするうえで大切なこと 小倉飯店と門司倶楽部が老舗として生き残った一番の要因と言えば、お客様と働く社 員を大事にすることだと思っています。半世紀が経っても親子二代、三代に渡ってご利 用いただいているお客様は大勢いらっしゃいます。会社の行事でずっとご利用頂いてい る法人客もたくさんいらっしゃいます。また、従業員 の場合は、調理、サービス係りの社員はほとんど定年 まで働いています。 中には 45 年間勤めた人もいます。 今の社員の平均勤務年数は 20 年以上です。それは、 経営者として社員を大事にしているからだと思います。 二番目の要因は、料理の味を大事に守ってきたこと です。その理由は調理人が変わらないからです。 サービス業の本質は心からお客様へのおもてなしを する事です。味の好みは様々です。例えば食材のアレ ルギー、年齢によっては量より質、精進料理、子供料理等、メニューに載っていない料 理も、その都度、お客様のご要望に応えるため、特別に作ります。また、団体客の場合 は会場の設営から途中の進行に色々なご要望があり、それは何度も綿密な打合せを経て 決まっていきます。長年の常連客の要望は長年勤務している社員が熟知しているので、 安心してご利用できると言われています。 また、新メニュー、新商品を絶えずに開発し、お客様のニーズに合せて確実に来店客 を増し、売上げの確保に工夫をしています。 2 年前、当店は北九州の飲食店では初めて 2,980 円の低価格で、55 品の作りたて の中華を時間無制限で食べ飲み放題という商品を作り出しました。大反響を呼び、予約 が殺到し、金・土曜日は満席の日が続いています。おかげさま、毎月の来店客が 800 人前後増え、売り上増につながりました。 宴会部門でも、臨機応変の対応を活用し、お客様のご予算とご要望に沿う方向で、常 におもてなしの心で前向きに応えます。それによってお客様に好評を頂いております。 利用回数増の好循環になっています。 以上で述べた事をまとめて、結論を申しますと、仕事も職業も、選べるときにも選べ ないときにも、時には運命に任せ、一生懸命に前向きに進み続けることでやり甲斐を必 ず感じるときが来ます。若い皆様には、何でもチャレンジ精神を持って前進して欲しい と思います。
© Copyright 2024 ExpyDoc