第60回日本透析医学会 学術集会・総会 シンポジウム12 2015年6月28日(日) 14:20~16:50 第1会場(パシフィコ横浜) 演題番号:SY-12-6 VA管理における外科的再建を踏まえた VAIVT治療 医療法人 心信会 池田バスキュラーアクセス・透析・内科 池田 潔 はじめに 1990年台にVAIVT治療が本邦でも普及することになりましたが、2000年台初期 にグラフトの閉塞・狭窄治療においてVAIVTを優先させる方向性へ転換していき ました。 閉塞まで治療を行わない考え方から、管理された状況のなかで狭窄の段階での 治療への転換点でした。 その後、2011年4月から3ヶ月ルールが始まり治療の方向性が保険的に規制さ れることになりました。 当院におけるVA管理法 紹介され全患者を何らかの治療後(穿刺指導を含 む)1~6ヵ月の範囲で超音波検査にて経過観察を 行っている。 OPE・PTA件数 (件数) PTA(1,377件) OPE(429件) カテーテル(57件) 600 12 500 117 400 14 12 17 96 98 315 323 2012/1/1-12/31 2013/1/1-12/31 399 91 300 267 200 100 2 27 73 0 2010/9/1-12/31 2011/1/1-12/31 2014/1/1-12/31 目的 血流不全を定期的に超音波で管理することで、閉塞を回 避する努力を行ってきた。 閉塞症例の外科的再建となった症例の割合から今後の VAIVT治療の方向性を検討した。 対象 VAトラブル953回 期間:2013年1月~2014年12月 (24ヵ月) 結果 閉塞に対してVAIVTを行い外科的再建となった症例 AVF群500回中81例閉塞の9例(11.1%) AVG群210回中51例閉塞の6例(11.8%) VAIVTを回避して外科的処置例が他に38例(閉塞全体の 22.3%)であった。 VAトラブルに対して全体では68例(7.1%)が外科的再建 の対象となった。 期間:2010年9月1日~2011年8月31日 VA トラブル 332回 PTA:237回 AVF:130回 閉塞:12例 9.2% 非再開通:4例 手術:95例 28.6% AVG:107回 ウロキナーゼ6万単位+ ヘパリン5000単位 24.3% 非再開通:9例 75%はOPE 血栓吸引で開通:1例 閉塞:20例 閉塞:26例 22.2%でOPE 血栓吸引で開通:7例 PTA未施行でOPE:1例 PTA後再建術:2例 + PTA後再建術:2例 = PTA後:4例 全閉塞例の10.5%は、PTA後に開通せず手術となった。 AVFの閉塞例では、成功率が低く再建術が妥当であった。 閉塞症例の取り扱い方 緊急来院後→超音波にて血栓の状況を把握 血栓溶解可能と判断→ウロキナーゼ6万単位+ヘパリン 5000単位を局所に投与し2-3時間待機 血流再開群はPTAを行う。 血流再開しない場合 →超音波検査で血栓量を把握し 少量であれば、PTAを施行。 →大量と判断したら外科的にフォ ガティーを使用し血栓除去後に PTAを追加もしくは外科的再建術。 期間:2013年1月1日~2014年12月31日 VAトラブル 953回 PTA:712回 74.7% AVF:500回 29.5% 16.2% ウロキナーゼ6万単位 ヘパリン5000単位 14例(17.3%) PTA 25.3% AVG:210回 70.2% 閉塞:81例 手術:241回 閉塞:51例 閉塞:38例 24.3% ウロキナーゼ6万単位 ヘパリン5000単位 4例(7.8%) PTA 15例(29.4%) 血栓吸引+PTA 26例(51.0%) 27例(33.3%) 血栓吸引+PTA 28例(34.6%) PTA⇒再建 6例(11.8%) PTA⇒再建 PTA⇒血栓除去 2例(3.9%) 9例(11.1%) 血栓吸引+PTA⇒血栓除去 2例(3.9%) 血栓溶解を行った閉塞の19例(14.4%)がPTAでは不通過 15.8% カフ型カテーテル挿入 4例(10.5%) 血栓除去+再建 13例(34.2%) 再建 8例(21.0%) 血栓除去 8例(21.0%) (以下:hybrid手術) 血栓除去⇒ PTA⇒再建 1例(2.6%) 血栓除去⇒再建⇒ PTA 1例(2.6%) 血栓除去+PTA 5例(13.2%) 3ヶ月ルールでの保険請求の実際 1/1 3/31 5/1 7/1 9/1 11/29 〇 × 〇 × 〇 × 請求(+) 3回 請求(-) 3回 〇 × × × × × 3ヶ月以内:5回 3ヶ月以降:1回 90 60 50 10 2015/06/03 次回PTAまでの期間 2015/03/21 2015/01/17 2014/11/22 2014/10/11 20 2014/08/30 30 2014/07/12 (日数) 2014/04/19 2014/02/25 2014/01/02 2013/11/25 Case2358 73才・男 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Non - com Super - non - com 保険非請求 80 70 閉 塞 40 狭窄 ハイブリッド 0 8 5 狭窄 3 1 2015/06/03 PI 2015/03/21 2015/01/17 2014/11/22 2014/10/11 2014/08/30 4 2014/07/12 2014/04/19 2014/02/25 2014/01/02 2013/11/25 Case2358 73才・男 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Non - com Super - non - com 保険非請求 7 6 閉 塞 閉 塞 2 ハイブリッド 0 1.2 0.8 閉 塞 2015/06/03 RI 2015/03/21 2015/01/17 2014/11/22 2014/10/11 2014/08/30 2014/07/12 2014/04/19 2014/02/25 2014/01/02 2013/11/25 Case2358 73才・男 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Non - com Super - non - com 保険非請求 1 閉 塞 0.6 0.4 狭窄 0.2 ハイブリッド 0 450 400 200 閉 塞 50 2015/06/03 流量 2015/03/21 2015/01/17 2014/11/22 2014/10/11 2014/08/30 150 2014/07/12 2014/04/19 2014/02/25 2014/01/02 2013/11/25 Case2358 73才・男 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Non - com Super - non - com 保険非請求 350 300 250 閉 塞 狭窄 100 ハイブリッド 0 Case2358 73才・男 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Case2358 73才・男 2014.11.22 PTA 完全拡張 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Case2358 73才・男 2014.11.22 PTA 完全拡張 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Case2358 73才・男 2014.11.22 PTA 完全拡張 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 Case2358 73才・男 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 2015.06.03 Hybrid Operation (AVF再建・PTA・血栓除去術) Case2358 73才・男 原疾患:糖尿病性腎症/透析歴:9年11カ月 2015.06.03 Hybrid Operation (AVF再建・PTA・血栓除去術) 3ヶ月以内に行ったVAIVT症例数の割合 全症例数 3ヶ月以内 実施VAIVT数 比率 (%) 2010/9/1~2012/3/31 199 56 28.1 2012/4/1~2013/3/31 179 34 19.0 2013/4/1~2013/12/31 146 39 26.7 2014/1/1~2014/12/31 286 131 45.8 2010/9/1~2012/3/31 137 44 32.1 2012/4/1~2013/3/31 98 16 16.3 2013/4/1~2013/12/31 64 20 31.2 2014/1/1~2014/12/31 96 48 50 期間 AVF AVG 期間:2010年9月~2014年12月 (総括) 1) 3ヶ月以内のPTAは、AVF群ではP.I,R.I,血流量は有意に 3ヶ月以降に行っている群より悪化している。緊急性が あった症例であった。 2) 閉塞症例とならないために、経過観察を超音波で行い データベースでPTAを施行しているが、血管温存や手 技の問題で他施設依頼の症例を受け入れることで3ヶ 月以内症例は増加している。 K/DOQI recommendations :2006 For surveillance of grafts ① Intra-access flow.(monthly) ② Static venous dialysis pressure.(weekly) ③Duplex ultrasonography 超音波screeninngは、PTFE graft の開存期間を有意に延長した。 Regular ultrasonographic screeninng significantly prolongs patency of PTFE grafts.Malik J,KI 2005;67(4):1154 しかし、 Arteriovenous graft では、定期的超音波検査によるsurveillance によって、pre-emptive angioplasty は64%増加した。 Randomized comparison of ultrasound surveillance and clinical monitorring on arteriovenous graft outcomes. Robbin ML,KI 2006;69(4):730 追加報告 PTA後再狭窄に関する動物実験 前回まで: PTA直後の内膜肥厚の報告を行った。 追加実験にて: 初回PTA後4週間での内膜肥厚の拡張方法によ る違いの報告 対象・方法 実験モデル、日本白ウサギ♂(3-4kg)(n=6)。 池田式(n=3)、高圧単回拡張(n=3) AVF作成 2週間 狭窄作成 右総頚動脈と右外頸静脈 5mm杉田クリップ使用 に側々吻合 約65%狭窄作成 4週間 クリップ解除 4週間 PTA 10mmバルーンで拡張 (20atmで30秒) ----- ----------------------- 1. 2. 3. 4. 5. 6. 右総頚動脈と右外頸静脈に側々吻合で動静脈吻合を作成。 2週後静脈心臓側に5mmの杉田クリップで狭窄を作成。 杉田クリップは内径3.5mmを使用し、約65%狭窄を作成。 4週後杉田クリップを解除。 コンクエスト10mmバルーンで20atm・30秒高圧単回拡張を施行。池田式で拡張を施行。 PTA4週後屠殺、PFAで灌流固定。 屠殺 拡張実験③ 最初の実験では、白ウサギにAVFを作成、その4週間後に静脈に狭窄を作成、 その直後に屠殺した。 しかし、狭窄作成に4週間待つと拡張が大きくなりすぎるため、2週間に変更した。 また、PTA後の経過を観察するため、狭窄を作成した2週間後にPTA、その4週 間後に屠殺した。 AVF作成 動脈 吻合部 静脈 AVF作成2週間後 吻合部 径10mmに拡大した静脈 杉田クリップで狭窄を作成 約65%狭窄を作成 杉田クリップで狭窄を作成後4週後に解除 10mmバルーンで拡張 コンクエスト <高圧単回拡張> <池田式> AVF作成後、杉田クリップをV側の 心臓側にクリップして2週間おく クリップから4週間後にPTA施行 4週間後に屠殺 結果② 血流量の比較 800 700 600 500 400 300 200 完全閉塞 100 0 高 圧 低 圧 15-02 15-13 15-20 15-01 15-12 15-19 AVF作成前 AVF作成後 2w後狭窄前 41 32 40 37 30 46 208 105 126 128 98 115 277 358 199 256 212 252 2w+4w後クリッ 2w+4w+4w屠 2w+4w後拡張後 プ解除前 殺時 139 274 280 510 335 40 182 105 255 256 225 285 685 290 462 314 500 高圧単回拡張 15-02_9EM染色×1.25倍 15-02_9EM染色×20倍 15-13_9EM染色×1.25倍 15-13_9EM染色×20倍 内膜肥厚 高圧単回拡張 15-02_9HE染色×1.25倍 15-02_9HE染色×20倍 内膜肥厚 平滑筋細胞の浸潤 内膜肥厚 15-13_9HE染色×1.25倍 15-13_9HE染色×20倍 内膜肥厚 池田式 15-01_7EM染色×1.25倍 15-01_7EM染色×20倍 15-12_10EM染色×1.25倍 15-12_10EM染色×20倍 池田式 15-01_7HE染色×1.25倍 15-01_7HE染色×20倍 15-12_10HE染色×1.25倍 15-12_10HE染色×20倍 結果 1) 高圧単回拡張群では、拡張術後の4週間で1例が閉塞 していた。 2) 高圧単回拡張群では、明らかな内膜肥厚と平滑筋細胞 の浸潤を認めた。 3) 池田式では、内膜肥厚は高圧単回拡張と比べて明らか に経度であった。 4) 低圧からの拡張であれば、20気圧から30気圧まで拡 張で加圧しても、内膜は経度の肥厚で断裂することなく拡 張されていた。 今後の方針 低圧からの拡張は、高圧領域にゆっくり達することで 組織学的に有効な拡張方法であることが示唆された。 開存期間を延長するために完全拡張考慮する場合 にも、低圧からの開始が重要だと考えられた。 再狭窄部位へのPTAが短期間に繰り返される内膜肥 厚症例となった局所は、現在あるデバイスでは長期開 存が望めないことから、外科的再建時期の考慮も重 要と考えられた。 1) 拡張方法の違いによる初回PTA後の炎症所見の違いを認めた。 2) 内膜肥厚が著明になった再狭窄部を人為的に作製しないためにも より低侵襲な方法でのPTAが望ましいことが示唆された。 これから望まれる治療選択 AVF狭窄での動物実験モデルから内膜肥厚の加圧法での違いが証明 されたことは、今後はデバイスによる違いを明らかにすることも可能と なった。 このことを踏まえたデバイスの選択や開発が可能となる。
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