なりました。建設業の新分野進出は、その後、公共事業

米田雅子
第十回建設トップランナーフォーラム
平成二七年六月三十日
「地方創生のトップランナー／十年の軌跡」開催のご挨拶
建設トップランナー倶楽部代表幹事
本日は、北海道から九州までたくさんの方にお集まりいただき、ありがとうござ
います。二〇〇六年に始めた建設トップランナーフォーラムは、めでたく十回目を
迎えました。
本日は、太田大臣、林大臣、石破大臣をはじめ、国交省、農林水産省、経産省、
大学などから、朝のフォーラムから夜の懇親会までに、多くの素晴らしいご来賓を
お迎えしています。ご多忙ななかでお越し下さる皆様に厚くお礼を申し上げます。
建設トップランナー倶楽部は、公共事業が減少するなか、夢をもって新事業に挑
戦してきた建設経営者の集まりです。全国五五社の幹事、六百社の参加企業が、日
本青年会議所建設部会、地方建設専門紙の会、自治体の方による建設新事業施策研
究会と共に、地域の社会基盤と雇用を守るために頑張ってきました。
思いおこせば十年前、建設会社が本格的に農業に取り組み始めた頃は、法律や制
度の壁にぶつかりました。農業系の融資は使えず、農地はなかなか貸してもらえま
せんでした。しかし、地元密着の建設業が農林水産業の方々と協力して実績を積む
につれて、逆風は順風に変わりました。農地法の改正で、企業が農地を借りること
ができるようになり、政府は企業の農業参入を積極的に応援して下さるようになり
ました。また、農商工連携として、商業の方と連携して地域のブランドをつくる動
きも支援して頂き、各地で新しい動きが始まっています。
林業と建設業が共に働く林建協働では、林業の基盤として崩れにくい作業道の重
要性を訴え、林野庁の施策に反映していただき、各地で実現されています。岐阜県
の皆様と共に林建協働をはじめた当初は、林業の方々の理解を得るのは容易ではあ
りませんでしたが、作業道ができると林業の方にも喜ばれ、ウインウインの関係に
なりました。
建設業の新分野進出は、その後、公共事業縮小の代替策として政府が支援すると
ころとなりました。しかし、進出してはみたものの、うまく行かないことが多くあ
りました。地域のニーズに合わない進出、政府の補助金に依存しすぎた進出、本業
の片手間に行った事業など、頓挫する企業が相次ぎました。
そこで、私たちは、建設業の複業化というスローガンを掲げました。
複業化は複数の本業をもつことです。農業も林業も片手間ではとても軌道にのり
ません。複数の本業をもち、それらを組み合わせて相乗効果を生み出すことをめざ
したのです。例えば、建設業と農業では、同じ機械を両方で活用できるだけでなく、
繁忙期のずれを利用して年間の仕事の平準化がはかれます。建設業と林業では、作
業道の整備や機械化を建設業が進めることで木材搬出量を増やすと共に、建設業が
もっと木を使うことで木材需要を増やすことができます。建設業の介護参入では、
介護事業を行うと共に、そこで得たノウハウを活かした介護施設の建設やリフォー
ムが行えます。
この他にも建設トップランナーは、環境ビジネス、エネルギー、地域ブランド、
観光振興など、地域が必要とする複業を進めて参りました。
こうして、農業や介護の利益は少なくとも、相乗効果で会社全体の経営を安定さ
せ、地域に役立つ企業となっていきました。その地域が必要とする会社になること
で、地域と共に発展してきました。
複業という考え方は、地方創生にとっても有効な手段となります。過疎の進む地
域では市場規模が小さく専業での自立は難しいからです。経済理論によると、市場
が大きくなるときは専門分化が有効です。しかし、人口が減少し市場が縮小する地
方では、あれもこれもの複業が一つの方策となります。
こうして十年がたち、過疎地の雇用の最後の砦として、地域の総合産業に育った
建設会社も現れました。地方創生で、Ｉターンの若者を受け入れる過疎地には、複
業で地域の雇用を支える建設会社の存在があります。縁の下の力持ちとして、社員
に給料を払い続ける、その重さ、その責任感に、私はエールを送りたいと思います。
建設トップランナー倶楽部は、複業だけでなく、建設本業を強化していくこと、
時代に合わせて新しい建設業を作ること、そして海外進出もめざしています。
インフラの町医者となることを大きな目標に掲げ、日本列島の地域防災の最前線、
老朽化するインフラの守り手としても大きな役割を果たして頂きたいと考えていま
す。
東日本大震災でみせた地域建設業の働きは、素晴らしいものがありました。初動
対応に参加した建設会社の約六割が、発災後の四時間以内に活動を開始したことは、
世界の奇跡だと思います。
建設トップランナーの方々も、災害時には道路啓開の先頭にたち、平時には防災
訓練にいそしむと共に、インフラの維持・管理における技術開発や共同受注方式の
提案など、数々の新しい事業を展開してきました。
災害の多い日本には、地域をよく知る地域建設業が必要です。そして、社会資本
の整備は、地方創生に欠かせません。建設業の本来の使命を果たしながら、安定的
に次の世代を育てられる、そんな業界になることを願ってやみません。
本フォーラムでは、多くの課題をのりこえながら、着実に発展した企業の姿をご
覧いただければと思います。そして、次の十年に向けて、建設業の力を活かした地
方創生の可能性について議論していただければと願っております。
以上
米田雅子
「フォーラムを終了して
お礼の言葉」
第十回建設トップランナーフォーラムは、全国から四百名の参加者、太田大臣、林
大臣、石破大臣に加え国交省・農林水産省・経産省等から多数のご来賓を迎え、盛
大に催すことができました。素晴らしい発表の数々に活発なパネルディスカッショ
ンと、充実した内容になりました。ひとえに、ご支援・ご指導くださる皆様のおか
げと心から感謝申しあげます。
建設トップランナー倶楽部代表幹事

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