国際比較を通してみた日本 Employment Outlook 2015 2015年7月 The 2015 edition of the OECD Employment Outlook provides an international assessment of recent labour market trends and short-term prospects with a special focus on statutory minimum wages. It also contains chapters on: skills and wage inequality; the role of activation policies to connect people with jobs; earnings mobility, labour market risk and long-term inequality; and job quality in major emerging economies. DOI: 10.1787/19991266 日本の労働市場情勢 OECD 日本 A.就業率 生産年齢人口(15-64歳)に 対する割合 % 74 72 70 68 66 64 62 60 B .調整失業率 労働力に対する割合 % 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 C.長期失業者割合 失業者に対する割合 % 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 D.若年層の失業率 若年層の労働力(15-24歳)に 対する割合 % 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 0 注)いずれもその年の第4四半期の数値 出典: OECD Short-Term Labour Market Statistics database, http://dx.doi.org/10.1787/data-00046-en. 最近の労働市場の趨勢と見通し 労働市場の状況は多くの OECD 諸国で改善し ているが、最近の経済危機からの回復は依然と して非常にむらがある。OECD 地域における雇用 の伸びは今でもあまりに遅く、2016年末で も危機により引き起こされた仕事のギャップを 埋めることができない。結果、OECD 全体にとっ ての失業率は緩やかな低下が続くと予測され、 2016年末までに6.6%になる。 日本は世界金融・経済危機を最も上手く乗 り切った先進国の一つとして際立っている。 生産年齢人口に対する就業率は金融危機直 前で OECD 平均を既に4.4%ポイント上回 っており、この優位は2014年第4四半 期までに7.1%ポイントに増加した (OECD 地域で65.9%に対し日本は73. OECD Employment Outlook 2015 © OECD 2015 0%)。就業率が最近上昇した一つの理由 は、より多くの女性が働けるよう促してい る政府の政策がかなりの成功を収めている ことにある。 日本の失業率3.5%は、危機前の水準を いくらか下回り、OECD 平均のたった半分で ある。若年層の失業率もまた下がっており、 特にヨーロッパにおける多くの OECD 諸国よ りもずっと小さい。 一つの困ったパターンは、日本で失業した 労働者の多くが長期に職がない状態のまま になることである。2014年末時点で、 全ての失業者の40.4%が一年以上仕事 に就いておらず、これは OECD 平均の36. 0%を上回る。 OECD Employment Outlook publication page 日本における雇用の水準における最近の強 い実績は、特に仕事の階段の一番下にいる 労働者にとって、匹敵する賃金の増加と組 み合わされてこなかった。 スキルと賃金の格差 OECD 国際成人力調査(PIAAC)の結果によれば、 スキル格差の差異と給与面でのスキルへの見返 りが賃金格差に関する国家間の差異のかなりの 部分を説明している。仕事について労働者がど れだけ広くスキルを活用しているかの差異もま た、賃金格差の水準を決定する重要な役割を果 たしており、これは労働者がスキルを習得し、 それを仕事で十分に活用するよう支援する政策 の必要性を示している。 職業生活の質 ある時点における勤労所得の格差が労働収入 における長期的格差にどれだけ結びつくかは、 勤労所得の流動性―勤労所得の階段の上昇・低 下と在職・離職の動きとして定義される―の程 度による。低い所得が長く続く主な原因には、 慢性的な失業、弱い認知スキル、不規則な仕事 の取決め、生産性に乏しい企業が含まれる。失 業給付は失業時の収入を守る。最低賃金は、勤 労所得の格差への長期的な影響はより弱いもの の、極端な低賃金となるリスクを減らす。 日本における全労働者(正規及び非正規) の年間勤労所得の格差は、OECD 平均よりか なり高い。Outlook によれば、勤労所得の階 段を上下する流動性が限られているため、 この格差は 10 年又は 20 年の期間を経ても ほんのわずかしかなくならない(図参照)。 2015年版の OECD Employment Outlook で は、日本の認知スキルの分布は他の調査参 加21カ国より平等だが、そのことがそう でない場合より賃金格差を低く保っている ことが新たに示されている(図参照)。ま た、日本の平均スキル水準は最も高い。 短期及び長期の勤労所得格差 労働力人口にある者の間でのジニ係数 長期的格差 OECD加 盟 の PIAAC参 加 国 ・ 地 域 に お け る 数 的 ス キ ル の 水 準 と 分 散 (2012年 ) 90パーセンタイル 10パーセンタイル 0.4 0.3 0.2 平均値 355 0.1 325 0 日本 295 265 235 205 出典: OECD Employment Outlook 2015 第2章 しかし、多くの日本の労働者は仕事で彼ら の認知スキルを十分に活用することができ ていない。仕事でのスキルの過小活用は特 に女性にとって深刻である。 もし、労働者がその数的スキルを仕事で十 分に活用することができれば、(ジニ係数 で測った)賃金格差は6.3%減少するだ ろう。 OECD 出典: OECD Employment Outlook 2015 第4章 女性は日本における高水準の勤労所得格差 と、それが続いていることの原因となって いる。これは女性が多数となっている非正 規雇用を特徴づける低賃金と限られたキャ リアの展望を反映している。 日本では女性は世帯における2番目の稼ぎ 手である傾向があるため、世帯間格差への 影響は比較的控えめになりがちである。し かし、より多くの女性が労働市場に入るよ う促す近時の政府の活動は、より多くの女 性がキャリアの階段を上ることができるよ うにするための活発な努力によって補われ る必要がある。 175 注)イギリス(イングランド、北アイルランド)とベルギー(フランドル)は一部地域が参加 短期的格差 0.5 ご連絡先: OECD 雇用労働社会問題局 雇用分析政策課 Mark Keese (+33 1 45 24 87 94; [email protected]) または Paul Swaim (+33 1 45 24 19 77; [email protected])
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