第29回 秋田県教育研究発表会資料 【5日F会場③】 小学生の石に対する興味・関心を高める試み 「石の展覧会」を通じて 由利本荘市立石沢小学校 教諭 田口瑞穂 平成 26 年度日本理科教育学会第 64 回全国大会(愛媛大会)において口頭発表 1 目 的 この研究は,児童の石に対する興味・関心を 高めることを目的として行ったものである。第 1 学年の生活科では「土や砂で遊ぼう」という 単元があり,第 5 学年理科「流水の働き」と, 第 6 学年「土地のつくりと変化」においては, 石に関する学習が設けられている。その間の第 2~4 学年には,土や石に関する学習は行われ ない。第 5・第 6 学年の学習時には,石や土に 対する関心が低く,学習効果が上がらない児童 が多く見られる。そこで,その間を補い,石に 対する興味・関心を高める学習が必要であると 考えた。1 単元 5 時間を設定して石に関する授 業を行い効果を上げている例 1)があるが,そ の時間を見いだし難いのが実情である。また, 筆者は「ザ・石ころバトル」2)を提案し効果を 上げることができたが,やはり時間を特設する 必要がある。そこで,より簡便で効果的な方法 を考案することにした。 2 方 法 2014 年に,由利本荘市立石沢小学校全校児 童,76 人を対象に実施した。内容は以下の通 りである。 (1)児童の石に対する意識調査の実施(4 月) 第 2~6 学年の児童を対象に実施した。 (2)展示会の告知(赤い石について) 児童による告知を行った。 (3)石の出品・展示 提出された石は,出品者等の情報を記し たラベルと共に,理科室前の廊下に展示さ れた。 (4)表彰 出品者全員に対して,出品証が贈られた。 (5)出品者に対する意識調査の実施 (6)しましまの石の展示会の告知 (7)石の出品・展示と表彰 (8)みどりの石の展示会の告知 (9)石の出品・展示と表彰 (10)児童の石に対する意識調査の実施(7 月) 第 1~6 学年の児童を対象に実施した。 3 結果と考察 赤い石を出品した児童は 25 人(全校児童の 32.9%)で,49 個の石が理科室前の廊下に展示 された。児童たちの展示品に対する意識は高 く,その前を通る児童は,展示されている石を よく見ていた。 石を出品した児童のうち第 2~6 学年の児童 を対象に,事前と事後のアンケート結果を比較 して,その変容を調べた。 「1 あなたは石が好きですか。①好き,② 少し好き,③どちらでもない,④少しきらい, ⑤きらい」,という設問と選択肢において,① 好きに注目すると,事前に①を選択した児童は 22 人中 10 人であったのに対し,事後では 22 人中 18 人であった。これについて t 検定(両 側)を行ったところ,t(21)=3.92, p =7.78E-04 <.01 となり,1%水準で有意差が認められる。 したがって,「好き」を選択した児童の比率が 高くなったと言える。 4 まとめ アンケートの検定結果や児童の態度から,石 の展覧会は,児童が石に対する興味・関心を高 めるのに効果があると言える。「ザ・石ころバ トル」は,場と時間の設定が必要であった。し かし,石の展覧会は場の設定だけであり,より 簡便で効果的な方法であると言える。 この展覧会により変容した児童のうち,第 6 学年の児童は,理科の学習において,興味・関 心を持って意欲的に石の観察を行っていた。 5 今後の課題 第 5 学年の児童に関してもデータを取り,そ の効果を検証する必要がある。 参考文献 1) 加藤尚裕・引間和彦(2007)「初歩的な観察 能力を育てる指導の試み-小学校第3学年 特設単元「石をくらべよう」の実践を通し て-」地学教育,Vol.60,No.32,89-98. 2) 田口瑞穂(2011)「小学生の石に対する興 味・関心を高める指導の試み 「ザ・石こ ろバトル」を通じて」日本理科教育学会全 国大会要項(61),323.
© Copyright 2025 ExpyDoc