「CSRレポート2015」に 対する第三者意見

山 口 民雄プロフィール 新聞社に25 年勤務後、環境ベンチャー広報
CSR レポート 2015
部長、出版社環境誌編集主幹を経てフリー。大学非常勤講師のほか企
「C SRレ ポート2 015 」に
対 する第 三 者意見
業向けの CSR 関連の講師を務める。2005 年より毎年 350 社以上の
CSRレポートを分析、報告している。
( http://csr-project.jp/)
循 環 型 社 会 研 究 会 次世代に継承すべき自然生態系と調和した社
会の在り方を地球的視点から考察し、地域における市民、事業者、行政
の循環型社会形成に向けた取り組みの研究、支援、実践を行うことを目
特定非営利活動法人 循環型社会研究会代表
的とする市民団体。研究会内のCSRワークショップで、CSRのあるべき
山 口 民雄
姿を研究し、提言している。
( http://junkanken.com/)
第三者意見の執筆にあたっては報告書作
①については、2012年度より休業度数率が
は、改善に向けた過渡期の一現象となることで
成過程での意見交換が不可欠と考えており、 上昇してきていますが、
この点について、社長メ しょう。
今回もキックオフならびに初稿完成時に実施し
ッセージは
「従業員の安全を守ることは何よりも
ました。そして、初稿に対する私のコメントを46
重要な使命」
と表明し、
「危機的状況と認識」
と
課題に着実に対応して取り組んできています。
の項目にまとめられ、
それぞれの対応について
④についてはこの間、社会が要請する環境
明言しています。そして、
このメッセージの具現
また、
開示にあたっては
「GHGプロトコル・イニシ
「 来年度」
「 将来的に」 化として安全ビジョンの策定や全役員出席のも
「 2015年度版に反映」
アティブの算定基準」や「サプライチェーンを通
「対応が難しい」
が示されました。
こうしたコメント
との安全研修、安全意識調査を実施していま
じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガ
に対する真摯な姿勢は、報告書の継続的改善
す。悪化傾向を敏感に捉え、
トップが「危機的
イドライン」
(環境省・経済産業省)
を参考にして
に確実に反映してきており、高く評価できます。 状況」
と認識し、
リーダーシップを発揮され全社
います。
こうした積極的な姿勢を継続し、今後は
今後、
ほかのステークホルダーとのダイアログも
活動を展開されていることは、必ずや読者に感 「自然資本」や「リスクと機会」の観点からの報
積極的に行い、
ステークホルダー・エンゲージメ
銘を与えるものと思います。
ントが実現することを期待します。
告を期待します。
②については、2011 年の独占禁止法違反
最後にこの間、
申し上げている点ですが、
「マ
マークが2013
報告内容については
「NEW」
の認定を風化させず、国内外の状況に対応し
テリアリティ
(重要性)
の選択とそのプロセス開
年度版よりつけられましたが、本年度版にも随
て強化させてきていることがわかります。特に前
示」の実践です。現在は
「活動と成果から代表
所に見られ、社会的要請に対応した記載に留
述の「腐敗行為防止」
をはじめ
「法令遵守の誓
として記載されていま
的なもの」
が「PICK UP」
意していることが伝わります。たとえば、米国の
ここにはステークホルダーの視点が見え
約書取得」
「 内部通報窓口の積極的な周知」 すが、
海外腐敗行為防止法や英国の賄賂防止法な
などはコンプライアンス強化の本気度を示す象
ず真のマテリアリティとは言えません。冒頭で言
どによる摘発が相次ぎ、
グローバルに活動する
徴例と言えましょう。
及した対応ではマテリアリティについては
「将来
企業へ公正取引強化の要請がありますが、本
③については、昨年も言及しましたがその報
的に」
とのことでした。
しかし、
マテリアリティの選
「腐敗行為防止の取り組み」
として
報告書では
告内容は秀逸で、
ほかの報告書の規範となるも
や
択を重視するGRIガイドライン第 4 版( G4 )
記載されています。
また、
「 NEW 」による記載が
のです。昨年の第三者意見では、今後は
「必ず
IIRC
(国際統合報告審議会)
フレームを参考ガ
増える一方、重要な記載、指標が欠落するので
や事態は好転する」
と申し上げましたが、2014
イドラインとする企業では確実にその選択・開示
あれば必ずしも評価できませんが、
そうした事態
年度は総労働時間、
時間外労働時間が減少し
が増えています。マテリアリティ選択の過程で
は幸い見出せません。
ているにもかかわらず、
高ストレス者や長時間労
にあ
は、
必ずやG4の「報告内容に関する原則」
本報告書を通読して特に印象に残るのは
「ステークホルダーの包含」
(*)
も実現すると
働者健診者数、
メンタル疾患による休業者数、 る
①従業員の安全を守る並々ならぬ決意、②コン
日数が増大しています。幸い、報告書には「年
考えます。
この両者は重要な原則であり、報告
プライアンスの強化、③メンタルヘルス対策へ
代別休業者数と要因」
をはじめ、
こうした事態の
書の評価に大きな影響を与えます。
の積極的かつ継続的な取り組み、④着実な環
分析や今後の施策が記載されています。
こうし
境負荷低減の取り組みと開示、
の4点です。
た施策が着実に実施されることで今回の事態
第 三 者 意 見を受 け て
株式会社ジェイテクト 経営企画部
*ステークホルダーの包含 組織はステークホルダーを特定し、
その合理的な期待や関心にどう対応してきたかを説明すべきである
へのステップアップに必要なことと考えており、
その策定プロセスを含め、
「ステークホルダー・エンゲージ
社内の仕組み整備を進めてまいります。
制作開始にあたってのキックオフ会、中間での意見交換会に続き、
メント」
「自然資本や、
リスクと機会の観点からの環境報告」
も今後重要
完成したレポートへの貴重なご意見を賜り、
誠にありがとうございます。
になると考えられ、
それぞれ検討を進めてまいります。
また、地域に根ざし
当社が真のグローバル企業へとさらに成長していくために、2014年度
た取り組みを進める中で、
モノづくり企業として、
CSRの観点から雇用促
はJTEKT GROUP VISION、
中期経営計画を掲げて取り組んだ1年で
進などの地域活性化への貢献に引き続き取り組んでまいります。
した。中期経営計画の更新にあたっては、
ジェイテクトグループ全体で
レポート編集にあたっては、幅広い読者層を意識し、
できるだけ平易
着実に推進できるよう、事業本部ごとに実績評価と計画更新を実施し
な表現への見直しや社内用語の補足説明をいたしました。冊子「メッセ
ました。来年度以降も中期経営計画を軸に牽引してまいります。
また、
ージ」
は、
コミュニケーションツールとして、
ジェイテクトのCSRを身近に感
CSRの社内浸透についても、
グループを含むすべての職場で考え方が
じていただける内容と読みやすいボリュームに、
「詳細・データ」
は、継続
定着し、
それぞれの自律的な取り組みにつながるよう、
「 現地現物」、
的な開示と内容のさらなる充実に努めています。
直接顔を合わせての支援を引き続き進めてまいりたいと考えております。
ご意見いただいた
「重要性
(マテリアリティ)
」
については、次のステージ
当社の活動をステークホルダーのみなさまにご理解いただくとともに、
これからも愛される企業を目指してまいります。
Opinion _ 01