講演内容は遠隔教育センターweb サイトにて動画でも配信していま すので、併せてご参照ください。 (http://www.waseda.jp/dlc/) (1)ご挨拶 氏名 中野 美知子 所属・役職 遠隔教育センター所長,教育・総合科学学術院 教授 <中野所長より開会のご挨拶> ¾ 本日のシンポジウムは、遠隔教育センター・ICT 調 査研究特別委員会(JACET) ・外国語教育メディア学 会(LET)関東支部・オンデマンド授業流通フォー ラム(FOLC)−CCDL の4団体による共催で実施し ている。 ¾ また、大連理工大・大連外国語大・南台科技大・淡 江大の教員にも参加いただいている。 ¾ 各団体・参加者、また開催に尽力いただいたスタッフの皆さまに感謝申し上げたい。 ¾ 今回は「時空を超えた新たなる教育スタイルの確立へ」という非常に大きなテーマ のもと、遠隔教育センターが運営してきた授業の実施報告を行う。 (2)CCDL 授業「異文化交流実践講座」代表学生プレゼンテーション 1.CCDL 代表学生プレゼンテーション(1) Comparison of English Education at Elementary School between China and Japan 氏名 大和田 戸谷 和治 仁美 所属・役職 東京音楽大学 准教授 国際教養学部 2年 <大和田准教授より CCDL 授業概要説明> ¾ CCDL(Cross-Cultural Distance Learning)授業 は 、 Social and Global Issues , Media , International Career Path の3種類のコースを 用意している。 ¾ 15 週の授業のうち、LiveOn というオーラルチャ ットシステムを用いて海外協定校と4∼5回のジョイントレッスンを行い、授業で 学んだことをもとにしたグループプレゼンテーションを学生の最終課題としてい る。 ¾ 本日は学期末試験期間でありながら、幸運にも 2009 年度前期の CCDL 授業受講生か ら3名の代表学生をプレゼンターとして招くことができた。 ¾ まずは、Social and Global Issues コースを受講した戸谷さんより Comparison of English Education at Elementary School between China and Japan というテー マで、代表学生プレゼンテーションを行ってもらう。 <代表学生 ¾ 戸谷さんのプレゼンテーション> 中国の学生が英語を流暢に話すことにジョイン トレッスンを通じて気付き、中国の英語教育に ついて関心を持ち、日本との比較を行った。 ¾ 両国の英語学習のスタートは、日本では小学校 5年から週に1時間、総合学習の時間でのみ行 われることに対し、中国では小学校3年から週 に3時間行われる点で異なっている。 ¾ 小学校での英語教育内容は、単に外国語や外国文化への慣れを目指す日本に比べ、 中国では早い段階から異文化理解など高度な内容が教えられ、他にもジェスチャー やアクセントなどが英語の発話に与える影響などへの言及も行われる。 ¾ 一方で、文法学習を重視しない課題解決型の授業で、形成的評価を行う点などの類 似点もある。 ¾ 両国とも英語教育をより向上させるため、新たな初等教育時代からの教育政策を展 開している。日本でも English Dumbs(英語のリーディングやライティングは得 意でも、リスニングやスピーキングが苦手な人) を生み出さない教育を目指した 政策が進められている。 ¾ LiveOn を用い、中国の学生との議論や交流といった素晴らしい機会をこの授業を通 じて得ることができたことを感謝している。 2.CCDL 代表学生プレゼンテーション(2) What We Learned from our CCDL :What makes us good friends? 氏名 生田 祐子 ジョン 豊永 所属・役職 文教大学国際学部 ウォンジン 開 商学部 教授 2年 国際教養学部 2年 <生田教授より CCDL 授業概要説明> ¾ 今年度初めて CCDL 授業を担当した。最終的に 16 名が台湾の淡江大学との異文化交流授業を通じ て学んだ体験をもとに、最終プレゼンテーション を行った。 ¾ プレゼンテーションのペアはテキストに掲載さ れている診断指標に従って組んだ。 ¾ 今回の代表学生のジョンさん・豊永さんは、お互いが異なる個性や価値観を持った 学生のペアとして、共通に取り組んだテーマについて発表してもらう。 <代表学生 ¾ ジョンさん・豊永さんのプレゼンテーション> 「友達になる」ということは全ての人間の希望だ と思うが、たびたび障害が起こる。CCDL 授業を通 じて学んだ、どうすれば親しい友達になれるのか ということについて発表したい。 ¾ 非言語的コミュニケーション(NVC)が CCDL 授業 で学んだなかで特に印象深い。NVC には、笑顔・ 相手の眼を見る・会釈・ハンドジェスチャーなどがあり、これらを用いれば言語が 通じない相手でも感情を伝えたり、読み取ったりすることができる。 ¾ このように日々のコミュニケーションでは NVC に大きく依存している。CCDL 授業で は言語コミュニケーションを中心に台湾の学生と交流したが、彼/彼女らのことを 理解し、友達になることはとても難しかった。 ¾ 他者を理解するためには次の三つの視点から考えることが重要である。 ・「視点を変える」ことで他者の多様な側面を理解すること。 ・相手が非言語的・非直接的で衝突を避けることを好む「ハイコンテクスト」文化か、 より直接的に考えを言葉に表す「ローコンテクスト」文化か理解すること。 ・アジア人は「集団主義」・欧米人は「個人主義」と一般的に言われているが、それ ぞれの性質を知るとともに、そうではないケースもあると理解すること。 ¾ これらを通じた Cross-Personal Learning が他者と友達になるために必要である。 (3)CCDL 授業実施報告 CCDL Class Report: Finding New Self-identities through CCDL 氏名 生田 祐子 ¾ 所属・役職 文教大学国際学部 教授 CCDL 授業には、英語をリアルに扱う体験がで きること、英語を学ぶモチベーションを与え る こ と 、 Social Skills と Facilitation Skills が身に付くこと、共同学習による感情 の共有、自己認識、新たな自己の発見ができ ること、といった点で重要性がある。 ¾ CCDL 授業は、淡江大学 Alex Tu 先生のクラスと Social and Global Issues をテー マに行った。交流ツールに LiveOn、課題提出には Course N@vi を用いた。 ¾ 広範な学部から学生が受講しており、TOEIC スコアは 750∼965、海外歴のある学生 や今後留学を考えている学生など、高いモチベーションを持つ学生が参加した。 ¾ トピックごとに準備授業2回を経て海外大学とのジョイントレッスンを合計4回 行い、2回の Reflection Paper の提出と最終プレゼンテーションを学生に課した。 ¾ 学生からはジョイントレッスンをもっと増やして欲しいという要望があった。 ¾ 授業運営上の課題として、1つ目にパートナー校との安定したネットワーク、2つ 目に4回以上のジョイントセッションを行うべきだが、両国のアカデミックカレン ダーや休日の差異により実施できないこと、3つ目にトピックに対する教員の深い 理解と準備が必要なこと・そのためのワークショップ実施が求められること、4つ 目に Global Issues のトピック内容に多様性が求められる、ことが挙げられる。 ¾ CCDL 授業は多くのサポートスタッフや技術に支えられており、教員だけでは運営が できないサポートスタッフとの共同プロジェクトである。 ¾ 授業最終日に学生を 20 分間日本語で討論をさせたところ、英語のみで関係を築い ていた学生たちは日本語使用に対し違和感を覚えていた。教員へは自然に英語で話 しかけてしまうといった使う言語コード転換を体験し、英語では教員に対してもよ り率直に話せること・中立的な感覚を身に付けられることに気付いたり、英語でな らばより前向きに楽しく話せたりすることを発見していた。 ¾ 「世界共通語」としての英語(ELF: English as a Lingua Franca)を用いる環境 下で、学生は言語認識や新たな自己の発見を体験することができていた。 ¾ 言語決定論(Linguistic Determinism)の再考や言語と思考の相対理論など、さら なる研究課題があるが、これらを CCDL 授業の実践を通じることで今後も深めてい くことができればと考えている。 (4)オンデマンド授業実施報告 Effective Communication and Feedbacks to e-Learners 氏名 森田 裕介 ¾ 所属・役職 人間科学学術院 准教授 早稲田大学eスクールは人間科学部が提 供する遠隔教育プログラムで、人間科学 部全教員がeラーニング講義を担当し、 学生はいつでも・どこでも・何度でも講 義を視聴することが可能である。 ¾ eスクールの学習者は非常にモチベーシ ョンが高く、多くの質問を教員に行い、 またその返答やフィードバックを求めている。そのため、そういった期待にいかに 応えるかが課題となっている。 ¾ この課題に対し、今期はレポートへのフィードバックを締切から 12 時間以内に返 すという、eラーニング学習者への「迅速なフィードバック」を行うことを試みた。 ¾ この試みをある講義の受講者 29 名に対し行いアンケートをとったところ、 「迅速な フィードバック」がeラーニング学習者のモチベーション向上や授業への参加意思 を向上させることに繋がっていることが明らかとなった。 ¾ また学生からは、教員からのフィードバックに対してさらに学習者がコメントを行 うことができる仕組みがあると良い、といった声もあった。 ¾ この他、9回のライブ(同期型)遠隔授業・3回のオンデマンド(非同期型)授業・ 2回の Face to Face 授業を組み合わせたブレンディッドラーニングを実施した。 ¾ ライブ遠隔授業は Polycom で行い、Moodle を用いた LMS で資料や課題の提示、オン デマンド授業の配信を行った。 ¾ 遠隔授業では、Polycom を自身の前に設置して目線を受講者に送ることができる工 夫をし、早稲田大学側から相手大学の PC・プレゼンテーションファイルを操作する ことができるシステムを用いた。 ¾ このような3種類の授業形態によるブレンディッドラーニングだったが、学生から はよりライブ授業を好むという傾向が見られた。 ¾ この嗜好は学生の学習スタイルや専攻に依存すると考えられる。この講義の学生は 教育学専攻で、コミュニケーションや対面授業をより重視していたと考えられる。 ¾ ICT の発達で遠隔教育は容易に行えるようになったが、授業での用い方は学生の嗜 好や専攻などによって考える必要があり、eラーニング学習者とのコミュニケーシ ョンの取り方がより重要であることがこれらの取り組みから明らかとなった。 (5)講評 氏名 向後 千春 所属・役職 遠隔教育センター教務主任,人間科学学術院 准教授 <向後教務主任より閉会の挨拶> ¾ 大和田先生・生田先生には、CCDL 授業の報告を 行っていただいたことに感謝申し上げたい。 ¾ 森田先生は、私自身が所属している人間科学部 の同僚であり、eスクールに関する報告をいた だいたことに改めて感謝したい。 ¾ また、戸谷さん、ウォンジンさん・豊永さんに は素晴らしい CCDL 授業を受けてのプレゼンテーションを披露していただき、感銘 を受けた。 ¾ 私が早稲田大学の学生だった頃は CCDL 授業のような英語の授業はなく、戸谷さん の発表に出てきたような"English Dumbs"の一例のようになってしまっているが、 近年の早稲田大学の学生は CCDL 授業を通じて素晴らしい国際コミュニケーション 力を身に付けている。 ¾ 今後も CCDL 授業が、アジアの国々や人々の間でのより深い理解を育んでいくこと を期待している。 ¾ 最後に、本シンポジウムに参加していただいたすべての講演者と出席者に改めて御 礼申し上げ、閉会の挨拶としたい。ありがとうございました。
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