環境ガイドライン改訂案に関するご意見とそれに対する

環境ガイドライン改訂案に関するご意見とそれに対する考え方・対応
1.
環境ガイドライン全般
2.
環境レビュー
3.
意思決定
4.
情報公開
1.環境ガイドライン全般
ご意見
考え方・対応
今回の貴法人環境ガイドラインの改訂は、基本的には、OECD加盟国
OECD のコモンアプローチでは、適合を確認すべき主要な国際基準と
の輸出信用機関(ECA)の環境社会配慮確認の規範とされている
して、世界銀行のセーフガードポリシー、国際金融公社のパフォーマン
OECD環境コモンアプローチの改訂(2012年6月)や、世界銀行のセー
ススタンダードが記載されております。NEXI の環境ガイドラインにおい
フガードポリシーや国際金融公社(IFC)のパフォーマンススタンダード
てもコモンアプローチと同様の国際基準の適用を記載している他、コモ
の内容に対応するものであり、今回の改訂案に特段異論はない。
ンアプローチやこれら国際基準の内容を踏まえたものになっておりま
ガイドライン全般
産業界としては、近年、海外事業展開において、他国企業との競争が す。
激化する中、貴法人と同様の機能を持つOECD加盟国の輸出信用機関 また、コモンアプローチでは、公的輸出信用政策と環境・社会保護政策
との比較において同水準の確認内容・手続とし、Equal Footingの原則を との一貫性が謳われており、NEXI の環境ガイドラインでも、環境社会
確保するよう求めてきたところであるが、上記のように、今回の改訂が
に配慮した外国貿易その他の対外取引の健全な発展等に寄与するこ
国際的ルールの内容に沿うものであることから、この面でも少なくとも
とを目的として記載しております
OECD加盟国とのEqual Footingは確保されていると認識している。
これらを踏まえ、NEXI としては、ガイドラインに沿った確認を行い適切
また、今般の改訂案では、日本政府の政策を踏まえつつ、環境社会に な環境社会配慮を確保しつつ、商業上の秘密や機動的な案件形成へ
配慮した外国貿易その他の対外取引の健全な発達等に寄与していく旨 の配慮等、これまで通り日本企業の国際競争力確保に十分配慮し、日
明示された点は評価でき、今後ともより積極的な支援を期待する。
本の公的機関として外国貿易その他の対外取引の健全な発達等に寄
与していく所存です。
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2.環境レビュー
ご意見
考え方・対応
被影響住民への聞き取りについて (FAQ)
環境ガイドラインの基本方針には、プロジェクトにおける環境社会配慮
①「被影響住民を含む、プロジェクトのステーホルダーへの対応も、一
の主体はプロジェクト実施者であり、NEXI はそれを確認する立場であ
義的にはプロジェクト実施者が行うものであり、日本貿易保は適切な対
ることが示されており、これは環境ガイドライン全体を通じた基本的考
応が行われているかを、環境レビューを通じて確認する」とあるが、事
え方になっております。他方、環境レビューにおいては、地域住民や現
業者が適切に対しているかは、事実関係を客観的かつ正確に把握で
地 NGO を含むステークホルダーからの情報も重要と考えており、被影
きなければ、判断できないと考える。したがって 事業者の情報のみな
響住民に大きな影響が及ぶ場合においては、個別に状況を判断し、
らず、 実査等における住民・第三者への聞き取り・情報収集をより強
NEXI が必要と認める場合には、引き続き聞き取りを行って参ります。
化していく前向きな方向を FAQ でも示すべきである。
また、ご指摘いただいたステークホルダーから NEXI に対し直接意見を
②「大規模な非自発的住民移転を伴うプロジェクトや周辺に先住民族
いただいているような場合についても、同様に対応して参ります。
が居住しているプロジェクト等で被影響住民に大きな影響が及ぶ場合
なお世銀や IFC への言及は、これら機関の基準でも義務付けまでは実
においては、個別に状況を判断し、日本貿易保険が必要と認める場合
施していない状況を記載したものですが、なお書き部分は削除したい
は聞き取りを行うこともある」としているが、住民・第三者が NEXI に対し
と思います。
て書簡等による意見を表明・提出している場合においても、当該ステー
以上を踏まえ、以下のように FAQ の変更を行います。
クホルダーへの 聞き取りを行なう姿勢を示すべきである。
Q. プロジェクトが周辺の住民等に大きな影響を及ぼす場合には、環境
③ここでは、義務付けられているか否かが重要 ではないので、「な
レビューでのプロジェクト予定サイトへの実査等において、被影響住民
お、世銀や IFC の基準においても、環境レビューにおける被影響住民
への聞き取りを行うべきではないでしょうか。
への聞き取りを義務付けてはいないと認識しています。」という後ろ向
A. プロジェクトにおける環境社会配慮の主体はプロジェクト実施者で
きな姿勢ととれる文言は削除すべきである。仮に世銀や IFC に言及す
あり、日本貿易保険はそれを確認するという立場です。被影響住民を
るのであれば、世銀や IFC が実質的に住民への聞き取りをしているか
含む、プロジェクトのステークホルダーへの対応も、一義的にはプロジ
否かに焦点を当てるべきである。
ェクト実施者が行うものであり、日本貿易保険は適切な対応が行われ
ているかを、環境レビューを通じて確認することになります。
このような確認手続きの一環として、 大規模な非自発的住民移転を伴
うプロジェクトや周辺に先住民族が居住しているプロジェクト等で被影
響住民に大きな影響が及ぶ場合 、ステークホルダーから日本貿易保
険に対し直接意見をいただいているような場合に おいては、個別に状
況を判断し、日本貿易保険が必要と認める場合には、被影響住民への
聞き取りを 実施し ます。
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ご意見
考え方・対応
検討する影響のスコープ(別紙1)
改訂案では、2012年6月のOECD環境コモンアプローチの改訂におい
温室効果ガスや火力発電、人権への配慮に関しては、環境ガイドライ
て環境社会配慮項目に温室効果ガスが追記されたことを受け、「なお、 ンに基づき、必要な環境社会配慮確認を適切に実施して参ります。な
大気には温室効果ガスを含みうるが、これに関する具体的な環境社会 おこれらに関しては、OECD におけるコモンアプローチの議論におい
配慮の要件等については、コモンアプローチを踏まえた対応を行う」と
て、種々検討がなされている状況であり、これらに関する今後の議論
の文言が追記された。
の結果を踏まえ、必要な対応を実施していく所存です。
OECDにおいては、温室効果ガスについて排出量の計測や報告の方
法、また火力発電に対する支援について経験の蓄積や更なる検討が
重ねられている段階であり、「コモンアプローチを踏まえた対応を行う」
という今回の改訂案を支持する。
また改訂案では、社会的関心事項について「人権の尊重を含む」という
文言が追記された。この追記によって、環境社会配慮の対象が拡大す
るものではないと理解するが、人権配慮の対象はプロジェクトに関連
する人権に限ることとし、プロジェクト実施主体が自ら具体的に対応す
ることが可能な事象に限定することが必要である。
3.意思決定
ご意見
考え方・対応
今回の改訂により、但し書きとして、「内諾の可否等の意思決定が必要
環境ガイドラインにおきましては「スクリーニング及び環境レビューの
な時点で環境レビューに必要な文書を入手しえない場合、意思決定後
結果を考慮して内諾の可否等の意思決定を行う」と記載しております通
に環境レビューを行うことを前提に、意思決定を行う場合がある」との
り、カテゴリ A 及び B に分類されたプロジェクトにおいては、環境レビュ
記載が追加されたことを歓迎する。
ーは意思決定のために必要な手続きとなっております。
意思決定への反映(本文4.)
昨今のわが国の資源・エネルギー情勢を踏まえ、早期の段階で資 しかしながら、昨今の事例の一つとして、資源・エネルギー分野におい
源権益を取得する案件の重要性は高まっており、こうした資金ニーズ ては、環境レビューに必要な文書を入手しえない早期の段階で資源権
に対応いただけるスキームを構築いただいたことの意義は大きい。
益を取得する案件の重要性が高まっている状況を踏まえ、例外的な扱
いとして、意思決定後に環境レビューを行うことを前提に、意思決定を
行うことを可能と致しました。
今後とも環境ガイドラインの目的に記載の通り、環境社会に配慮した外
国貿易その他の対外取引の健全な発展等に寄与すべく、本項目に係
わる手続きについても適切な運用を図って参ります。
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4.情報公開
ご意見
考え方・対応
保険契約締結後の環境関連文書の公開について(本文6.)
①カテゴリ A、B、FI 案件の環境関連文書は、保険契約締結後も、環境 NEXIの環境ガイドラインに基づく環境レビューに関する環境関連文書
レビュー結果、モニタリング結果と並べて、ウェブサイトでの 公開を継 の公開は、カテゴリA、B案件について実施しております。
続すべきである(項番 7)。
コンサルテーション会合で議論させていただきましたように、保険契約
②項番6 で議論されたような「案件の性質上、例外的に、内諾の可否等 締結後の環境関連文書の継続公開については、ウェブサイト全体の利
の意思決定が必要な時点で環境レビューに必要な文書を入手しえない 便性・予算等を総合的に勘案し、できるだけ速やかに実施可能となるよ
場合」、FAQ2.3 では、「環境レビューに必要な文書を入手できたところ う努めたいと考えております。
で、通常通りの環境レビューを実施していきます。なお、環境レビュー なお、公開が実施可能となるまでの間は、ご要望に応じて個別に情報
で用いた ESIA や環境レビュー結果については、通常どおりウェブサイ 提供させていただく所存です。
トにて公開します」とある。こうしたケースに対応するためにも、付保決
定後の環境関連文書の公開体制を改訂ガイドラインの施行に合わせ
て十分整備しておくべきである。
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(参考資料)お寄せ頂きましたご意見
お寄せいただきましたご意見
※ 掲載はご意見の幣法人への到着順。
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(ご意見 1)
保険契約締結後の環境関連文書の公開について(本文 6.)
①カテゴリA、B、FI案件の環境関連文書は、保険契約締結後も、環境レビュー結果、モニタリング結果と並べて、ウェブサイトでの
公開を継続すべきである(項番 7)。
②項番 6 で議論されたような「案件の性質上、例外的に、内諾の可否等の意思決定が必要な時点で環境レビューに必要な文書を
入手しえない場合」、FAQ2.3 では、「環境レビューに必要な文書を入手できたところで、通常通りの環境レビューを実施していきま
す。なお、環境レビューで用いた ESIA や環境レビュー結果については、通常どおりウェブサイトにて公開します」とある。こうした
ケースに対応するためにも、付保決定後の環境関連文書の公開体制を改訂ガイドラインの施行に合わせて十分整備しておくべき
である。
被影響住民への聞き取りについて (FAQ2.8)
①「被影響住民を含む、プロジェクトのステーホルダーへの対応も、一義的にはプロジェクト実施者が行うものであり、日本貿易保
は適切な対応が行われているかを、環境レビューを通じて確認する」とあるが、事業者が適切に対しているかは、事実関係を客
観的かつ正確に把握できなければ、判断できないと考える。したがって 事業者の情報のみならず、 実査等における住民・第三
者への聞き取り・情報収集をより強化していく前向きな方向を FAQ でも示すべきである。
②「大規模な非自発的住民移転を伴うプロジェクトや周辺に先住民族が居住しているプロジェクト等で被影響住民に大きな影響が
及ぶ場合においては、個別に状況を判断し、日本貿易保険が必要と認める場合は聞き取りを行うこともある」としているが、住民・
第三者が NEXI に対して書簡等による意見を表明・提出している場合においても、当該ステークホルダーへの 聞き取りを行なう姿
勢を示すべきである。
③ここでは、義務付けられているか否かが重要 ではないので、「なお、世銀や IFC の基準においても、環境レビューにおける被
影響住民への聞き取りを義務付けてはいないと認識しています。」という後ろ向きな姿勢ととれる文言は削除すべきである。仮に
世銀や IFC に言及するのであれば、世銀や IFC が実質的に住民への聞き取りをしているか否かに焦点を当てるべきである。
参考 - 1
(参考資料)お寄せ頂きましたご意見
(ご意見 2)
総論
今回の貴法人環境ガイドラインの改訂は、基本的には、OECD 加盟国の輸出信用機関(ECA)の環境社会配慮確認の規範とされ
ている OECD 環境コモンアプローチの改訂(2012 年 6 月)や、世界銀行のセーフガードポリシーや国際金融公社(IFC)のパフォー
マンススタンダードの内容に対応するものであり、今回の改訂案に特段異論はない。
産業界としては、近年、海外事業展開において、他国企業との競争が激化する中、貴法人と同様の機能を持つ OECD 加盟国の
輸出信用機関との比較において同水準の確認内容・手続とし、Equal Footing の原則を確保するよう求めてきたところであるが、上
記のように、今回の改訂が国際的ルールの内容に沿うものであることから、この面でも少なくとも OECD 加盟国との Equal Footing
は確保されていると認識している。
また、今般の改訂案では、日本政府の政策を踏まえつつ、環境社会に配慮した外国貿易その他の対外取引の健全な発達等に寄
与していく旨明示された点は評価でき、今後ともより積極的な支援を期待する。
(個別項目への意見)
4. 意思決定への反映
今回の改訂により、但し書きとして、「内諾の可否等の意思決定が必要な時点で環境レビューに必要な文書を入手しえない場
合、意思決定後に環境レビューを行うことを前提に、意思決定を行う場合がある」との記載が追加されたことを歓迎する。
昨今のわが国の資源・エネルギー情勢を踏まえ、早期の段階で資源権益を取得する案件の重要性は高まっており、こうした資
金ニーズに対応いただけるスキームを構築いただいたことの意義は大きい。
別紙 1. 対象プロジェクトに求められる環境社会配慮
(3)検討する影響のスコープ
改訂案では、2012 年6 月の OECD 環境コモンアプローチの改訂において環境社会配慮項目に温室効果ガスが追記されたこと
を受け、「なお、大気には温室効果ガスを含みうるが、これに関する具体的な環境社会配慮の要件等については、コモンアプロー
チを踏まえた対応を行う」との文言が追記された。
OECD においては、温室効果ガスについて排出量の計測や報告の方法、また火力発電に対する支援について経験の蓄積や更な
る検討が重ねられている段階であり、「コモンアプローチを踏まえた対応を行う」という今回の改訂案を支持する。
また改訂案では、社会的関心事項について「人権の尊重を含む」という文言が追記された。この追記によって、環境社会配慮の対
象が拡大するものではないと理解するが、人権配慮の対象はプロジェクトに関連する人権に限ることとし、プロジェクト実施主体が
自ら具体的に対応することが可能な事象に限定することが必要である。
以上
参考 - 2