ブートストラップ電源で駆動し高い精度を持つ 電流センシング IC IR2171

ブートストラップ電源で駆動し高い精度を持つ
電流センシング I C
IR2171
インターナショナルレクティファイアージャパン株式会社 髙木 秀人
■概要
IR2171 は、IR の高耐圧技術を使用しモノリシックで
構成された電流検出用 IC です。
ッチングされており、その様な高速高電圧でスイッチ
ングされている部分にて微小電圧を取り出すことは非
図 1 は、一般的なインバータ出力段の構成と各部分
常に難しい事でした。この様な部分で電流を検出する
で測定した場合の電流波形を表しています。通常、モ
為には高価で大型な電流センサや、リニアフォトカプ
ータに流れている電流を検出するには、インバータ出
ラ等を使用した付属回路を設ける必要がありました。
力、GND ラインなど、さまざまな部分にて電流を検出す
IR2171 はその様な高電圧でスイッチングされている
る事ができますが、インバータ出力以外の部分で電流
部分でも正確に微小電圧を検出し、ロジックレベルで
を検出した場合、実際にモータに流れている電流と同
出力が可能な 1 チップの IC となっています。その中に
じにする為には検出した信号を加工する必要がありま
は高精度のオペアンプ、A/D コンバーター、レベルシフ
す。しかし、インバータ出力で検出すれば一番正確に
タを内蔵しており、40kHz の PWM で出力されます。2 次
電流が検出でき、また加工する必要もなくなります。
側電源はゲートドライブのブートストラップ電源を共
その為、この IR2171 はインバータ出力ラインで直接電
用することができ、また出力はデジタル出力の為、直
流が検出できる様に考えられ設計されています。
接 DSP 等で取り込む事が出来ます。パッケージは
一般的にインバータ等のモータ駆動回路は図 1 の様
に 3 相ブリッジ回路で構成されています。その為、イ
SOIC(8pin、16Pin)と DIP(8pin)の 3 タイプが用意され
ています。
ンバータ出力は常に高い電圧と低い電圧が高速にスイ
一般的なインバータ出力段
モータ
<図1>主なインバータでの測定部分別電流波形
■特徴
項目
①ハイサイドオフセット
ボルテージ
ハイサイドオフセットボルテージ
600V
600V(max)
Vin 入力電圧レンジ
②モノリシック構造
③PWM 出力
仕様
-260∼+260mV
出力周波数
40kHz
④低消費電流の為、ブートスト
ラップ電源で駆動
⑤温度ドリフトが小さい
40kHz
出力 Duty 範囲
7%∼93%
VBS 消費電流
1mA(max)
アウトプット電圧
20V(Max)
ロジック電源
⑥オープンドレイン出力
9∼20V
<表1>主な仕様
表 1 は IR2171 の主な仕様です。
項目
実力値
単位
0.2
%
0.0003
%/℃
トータルオフセット
0.5
mV
トータルオフセット温度ドリフト
20
uV/℃
ゲインエラー
1
%
ゲインエラー温度ドリフト
35
ppm/℃
0.06
%
バンド幅(-3db)
15
kHz
位相(1kHz)
-10
°
リニアリティ
リニアリティ温度ドリフト
■動作原理
図2 に内部ブロック図を示しま
す。
シャント抵抗に電流が流れる
事によって電圧が発生し、その電
電源変動影響:PSRR(1Vp-p、6kHz)
圧が入力端子(Vin+と Vin−端
子)から高精度OP アンプに入力さ
れ、増幅されます。その後 A/D 変
<表2>テスト結果
換され40kHz のPWM信号となりパ
ルス発生回路に送られます。パル
VB
ス発生回路では二つのパルスに
変換され、その信号は二つの P-
Vcc
パルス発生
回路
チャンネルレベルシフタを通し
てレベルダウンされます。レベル
PO
ダウンされた二つの信号はパル
A/D
変換
OP
アンプ
パルス復元回路
&
dv/dtフィルタ
COM
図 3 に応用回路を示します。
<図2>内部ブロック図
この応用回路はインバータの出
力段とコントローラの主な構成
を表しています。これは IGBT の
ゲートドライバに IR2137(IR 製:
ハイサイド側に IGBT の過飽和検
出機能を持っている)を、電流検
出に IR2171 を使用しています。
Vin-
VS
ス復元回路で再度PWM 信号として
復元し、出力されます。
Vin+
また、コントローラには
簡単な回路構成でモータ電流で
TMS320C240(TEXAS
INSTRUMENTS
の制御はもちろん、どんな短絡モ
製)のDSP を使用してIR2171 の出
ードでも保護をかける事ができ
力を直接 DSP に入力しています。
ます。
この様な構成を取る事によって、
この様に多機能になっても使
せるためD/A 変換を行っています
が、実際には D/A 変換を行う必要
速度
2500rpm/DIV
はなく、直接 DSP 等で読み込む方
法が使えます。
電流センサ出力
&
IR2171 出力
5V/DIV
■今後
今回は IR2171 について紹介し
ましたが、オーバーカレント出力
を持った電流検出 IC(IR2172)も
モータ電流
10A/DIV
リリース予定です。また、ゲート
ドライブIC ではIGBTの保護機能
を持った IR2137、その他ソフトス
<図4>動作波形
タート IC(IR1110)もリリースし
ています。この様に今後 IR では
用部品点数を少なくする事がで
き、あわせてトータルコストを下
げる事ができます。
させた時の波形です。
このサーボドライブには電流
センサが使用されていましたが、
その部分を IR2171 に置き換え動
作させました。今回はサーボドラ
■IR2171の実力
イブに組み込む為、モータライン
表 2 は IR2171 のテスト結果で
にシャント抵抗(20mΩ)を入れ、
す。この結果からも分かるように、
IR2171 の出力を D/A 変換し電流
リニアリティなどの特性はもち
センサの出力に合わせています。
ろん、温度による特性への影響が
上側の波形が速度(5000rpm まで
小さくなっています。また、2 次
約 40msec で加速、減速させてい
側の電源変動による影響も少な
ます)、中央にある波形が電流セ
くなっています。これは、モノリ
ンサの出力と IR2171 の出力、下
シック構造である事や、温度の影
側の波形が実際に流れている電
響を受けにくい設計、電源変動に
流(電流プローブによる測定)で
強くなる設計を行っている事に
す。電流センサと IR2171 どちら
より達成しています。
の出力もまったく同じ波形とな
り重なっています。電流センサと
比べても同じ波形となり IR2171
■動作実験
図4 は実際にサーボドライブの
電流検出に IR2171 を使って動作
を使用しても問題なく動作する
事が確認されています。
今回は電流センサ出力に合わ
よりモータドライブアプリケー
ション全体を考え、ゲートドライ
ブはもちろん、それ以外の部分に
ついても開発、発売していく予定
です。
DC BAS+ Line
VCC
VCC
+ C11
15u 25V
R38
220
IC5 TMS320C240
2
VS 5
R1
10
IR2171
IC2
1 VCC
D2
R16
1
D3
D4
VIN+ 8
5
6
8
9
7
11
R13
10
13
DESAT3
HIN3
VS3
LIN1
VB2
LIN2
HOP2
HON2
HSSD2
LIN3
FAULT
DESAT2
F-CLR
VS2
SD
VB1
HOP1
HON1
HSSD1
BRIN
BR
DESAT1
ITRIP
VS1
33
15
500
Tr1
1
IRG4PH50KD
C3
2.2uF 25V
34
33
D6 10BF60
1
2
R3
R20
R21
33
15
500
C9
0.47u
46
IRG4PH50KD
4
R22 20K
R3420K
60
D7 10BF60
1
2
R5
R23
R24
33
15
500
Shunt
Resistor
C5
2.2uF 25V
56
4
55
LS3
12
R25 20K
R11 200K
COM
LS1
33
15
500
19
20
21
22
R9
R30
R31
33
15
500
27
IC4A
LM339M
7
6
C6
0.1u
R12
1.00K
D1
DL4148
2
C7
100p
Tr6
1
IRG4PH50KD
23
24
25
26
Tr4
1
3
R8
R28
R29
Tr2
1
IRG4PH50KD
DC BAS- Line
1
<図3>応用回路
3
-
14
33
15
500
1
Shoot Through/Negative
Ground Fault Protection
+
LOP1
LON1
LSSD1
12
1
LS2
VCC
R10
20K
3
R7
5.1K
VCC
LOP2
LON2
LSSD2
R6
R26
R27
2
VDD
VSS
16
17
18
1
R35
0.02
3
LOP3
LON3
LSSD3
C8
4.7n
IRG4PH50KD
C4
2.2uF 25V
45
59
58
57
Tr5
1
R19 20K
R3320K
50
49
48
47
Tr3
1
2
10
R2
R17
R18
2
4
HIN2
37
36
35
D5 10BF60
1
2
4
R37 0.02
IRG4PH50KD
1
R36
0.02
Shunt
Resistor
J1
1
2
3
W
V
U
CONECTOR
2
3
HOP3
HON3
HSSD3
R3220K
3
2
HIN1
38
3
1
VB3
2
72
73
90
C10
0.47u
IR2137
VCC
3
15
C2 C1
0.1u 2.2uF 25V
3
IC3
54
55
2
VS 5
3
VB 6
4 OC
2
VIN- 7
3 COM
1
2 PO
1
10BF6010BF60 10BF60
52
67
68
69
70
Brake IGBT Gate
R15
1
2
ADCIN0/IOPA0
ADCIN1/IOPA1
ADCIN9/IOPA2
4 OC
R14
1
2
XINT2
XINT3
VB 6
3
PDPINT
CAP1/QEP1
CAP2/QEP2
CAP3/QEP3
CAP4/QEP4
94
95
96
97
98
99
VIN- 7
3 COM
1
PWM1/CMP
PWM2/CMP
PWM3/CMP
PWM4/CMP
PWM5/CMP
PWM6/CMP
VIN+ 8
2 PO
2
R4
1K
DSP
R39
220
IR2171
IC1
1 VCC
2
VDD
Motor
Output