1 静岡県立大学短期大学部 一般教育研究会誌(1)-3 (2001) あなたは何問わかりますか? 望月 綾子 突然ですが、次の設問は○か×どちらでしょうか? ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ 問題 大陸は何万年もかけて移動し続けている 現在の人類は原始的動物種から進化したものだ 地球の中心部は非常に高温である 我々が呼吸に使う酸素は植物が作ったものである すべての放射能は人工的に作られたものである ごく初期の人類は恐竜と同時代に生きていた 男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子である 抗生物質はバクテリア同様ウイルスも殺す 電子の大きさは原子の大きさよりも小さい レーザーは音波を集中することで得られている 日本の正解率 83% 78% 77% 67% 56% 40% 25% 23% 30% 28% これは、文部省が行った「科学技術に関する意識調査」の中の、科学知識を問うた 設問と日本人の正解率です。調査は昨年2∼3月に実施され、全国の18∼69歳の 3000人を対象に面接、2146人から有効回答(71.5%)を得て、欧米13カ国の 様々な調査結果と比較、分析したそうです。知識については、上の設問で正解率を算 出し、日本の平均正解率は51%で、首位のデンマーク(64%)とは10ポイントも差 が付き下から3番目だったそうです。科学技術への関心については、発見やその利 用に注目し理解しているかどうかを問い、さらに新聞を毎日読むか、科学技術関連の 雑誌を定期購読しているかどうかといった点を加味して「科学技術に注目している人」 を判定し、その割合を国別に比較したそうです。その結果、最高はフランスの15%、 日本はそれより大幅に少ない4%で、ビリから2番目だったそうです。 この調査の対象は18歳以上ですが、一方、高校一年生を対象に経済協力開発機 構(OECD)が昨年国際学習到達度調査(PISA)を実施したところ、科学応用力の日 本の平均点は32カ国中2位という、今回の調査とは対照的な結果が出たそうです。 つまり、日本人は大人になるに連れて科学技術への関心が薄れていき、基礎知識も 足りないと言うことの現れなのでしょうか。中学生、高校生までは試験や入試のため に勉強するけれど、本当は科学技術が好きでもないし、大切とも思わない…そんな声 が聞こえてくるような気がします。 2 これは、ある新聞に記載されていた記事から抜粋したものです。こんなこと知らなく ても、社会生活をする上で困ることはないし就職には関係ないし…と思う方もいるか もしれません。しかし、みなさんは、本学を卒業してから進むであろう医療・保健・福祉 の分野において、いずれも「人」と接する専門職に就くのですから、それぞれの専門 知識や実践力を備えているだけでは通用しないのではないかと思います。世の中に は、様々な環境で育ち、考え方もいろいろな人がたくさんいます。そういった相手を理 解し、支えていくために、広い視野で物事を考えることや、豊かな人間性を育てること が必要となるのではないでしょうか。そのために、専門科目だけでなく教養科目をもっ と大事にし、自分を高めるとともに、自分の生活に関わる地域や社会、そして地球全 体を学ぶ場としていただきたいと思います。 今回は新聞の中から科学技術についての記事を紹介しましたが、上のような記事 だけではなく、みなさんが進む医療・保健・福祉の分野、例えば医療技術の高度化や 最先端の治療法、遺伝子診断・治療やクローン技術などの生命科学の発展や倫理 的問題、高齢社会や介護関連の話、幼児教育や幼児虐待など、毎日といっていいほ ど記事が出ています。まずは、自分に関連のある分野を、そしてそれだけではなくい ろいろなことにも興味を持ち、視野をひろげていってほしいと思います。 最後になりましたが、設問の正解は次の通りです。 ①○ ②○ ③○ ④○ ⑤× ⑥× ⑦○ ⑧× ⑨○ ⑩× あなたは何問わかりましたか?
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