量的形質の場合 質的形質の場合は、「病気である」「病気でない」のように 2 つの表現型(3 つ以上のことも有る) を取ります。病気である場合を 1、病気でない場合を 0 として、変数と考えることもできます。 しかし身長や検査値は、 「大きい」 「小さい」のような質的表現型で表すことができないわけではあ りませんが、連続的な量として表したほうが適当と言えます。このように量的形質の場合、表現型は 連続的な変数、あるいは変量で表すことができます。量的変量の場合、まずそれが正規分布に従うか どうかを確認します。もし、そうではない場合、例えば変量の対数が正規分布に従う場合、変量の対 数を対象に解析を進めることもあります。 単一座位の影響 表現型が、ある単一座位の遺伝型 AA, Aa, aa と関連するとします。それぞれの遺伝型ごとに、表 現型は平均が異なり、分散が同じ正規分布に従うと仮定します。つまり Q|AA ∼ N (µAA , σ 2 ) Q|Aa ∼ N (µAa , σ 2 ) Q|aa ∼ N (µaa , σ 2 ) とします。Q が表現型で、Q|G ∼ N (µ, σ 2 ) は、遺伝型 G の条件のもと、表現型が平均 µ、分散 σ 2 の正規分布に従うことを示します。ただし、µAA , µAa , µaa は、それぞれの遺伝型に対応する表現 型の平均です。 ここで、アレルの相加性を仮定すると、E(Q|Aa) = [E(Q|AA) + E(Q|aa)]/2 より µAa = µAA + µaa 2 が得られます。 相加性が仮定できない場合、次のドミナンス偏位 d があるといいいます。 d = µAa − µAA + µaa 2 a の頻度を p とし、Hardy-Weinberg 平衡を仮定すると、集団全体の平均は E(Q) = µAA (1 − p)2 + 2µAa p(1 − p) + µaa p2 となりますが、相加性を仮定できる場合は簡単になり、 E(Q) = µAA (1 − p)2 + (µAA + µaa )p(1 − p) + µaa p2 = µAA (1 − p) + pµaa となります。 1 (1) 複数座位の場合 複数座位の場合、量的表現型は次の多変量線形モデルで計算されます。 Q = β0 + β1 X1 + β2 X2 + · · · + βn Xn + ² (2) ここで、βi , (i = 1, 2, · · · , n) は定数、² は n 個の座位以外の、環境を含めた要因の統合による変量で、 β0 を調整することにより平均 0 とすることが可能です。 i 座位について、上記のようにアレルの効果の相加性を認める場合、Xi は単純に片方のアレル a の 数(0,1,2)とし、 βi = µAa − µAA = µaa − µAa = µaa − µAA 2 とします。 相加性を認めない場合は、βi は同じく (µaa − µAA )/2 とし、 0 (AA の場合) 2(µAa −µAA ) Xi = (Aa の場合) µaa −µAA 2 (aa の場合) (3) とします。相加性を認める場合は、µAa = (µAA +µaa )/2 となるので、上記の式の Aa の場合は Xi = 1 となり、この式は相加性を認める場合にも成り立ちます。 特定の個人で、1, 2, · · · , n 座位の遺伝型が決まった場合、その個人の表現型を Qs とすると、 E(Qs ) = β0 + β1 x1 + β2 x2 + · · · + βn xn (4) となります。ここで、xi は i 座位で観察された遺伝型から、式(3)により決まる Xi の値です。 集団の表現型の平均 E(Q) については次の式が成り立ちます。 E(Q) = β0 + β1 X̄1 + β2 X̄2 + · · · + βn X¯n (5) ここで、X̄i は Xi の期待値です。 i 座位の遺伝型の情報(Xi = xi )のみで、計算した個人の表現型の期待値 E(Qi ) については次の 式が成り立ちます。 E(Qi ) = β0 + β1 X̄1 + β2 X̄2 + · · · + βi xi + · · · + βn X¯n (6) ここで、E(Qi ) は i 番目の座位から計算された表現型の期待値で、その座位の個人の遺伝型により、 3 種類の値、E(Qi |AA) = µAA , E(Qi |Aa) = µAa , E(Qi |aa) = µaa のいずれかの値をとります。こ れらの値は座位により異なります。 2 式(5,6)より E(Qi ) − E(Q) = βi xi − βi X̄i = βi (xi − X̄i ) (7) が求められますが、これより、 βi xi = E(Qi ) − E(Q) + βi X̄i (8) となり、式(8)に i = 1, 2, · · · , n を入れ、それを式(4)に代入すると E(Qs ) = β0 + n ∑ [E(Qi ) − E(Q)] + i n ∑ βi X̄i (9) i となります。 式(5)を参考にして、 E(Qs ) = n ∑ [E(Qi ) − E(Q)] + E(Q) (10) i を、求めます。 E(Qs ) は i から n までの座位の情報を統合した個人の表現型の期待値であり、求める値です。 E(Qi ) は i 座位のみの遺伝型情報で計算した表現型の期待値、E(Q) は集団の表現型の平均です。 具体的な計算 具体的には論文の中で、多くの場合、相加性を仮定し、βi と pi のみが記載されていることがほと んどです。pi は片方のアレル a の頻度であり、βi の符号とアレルの選択が合致するようにします。a アレルが増えるごとに表現型が増える場合、βi は正でなければなりません。 ここで、相加性を仮定する場合、Xi は、確率パラメータ pi 、サイズ 2 の二項分布に従うため、平 均と分散は、 X̄i V (Xi ) = E(Xi ) = 2pi = 2pi (1 − pi ) (11) であり、式(7)より、 −2βi pi (AA の場合) E(Qi ) − E(Q) = βi (1 − 2pi ) (Aa の場合) 2β (1 − p ) (aa の場合) i i となります。ただし、pi は i 座位における a アレルの頻度です。 3 (12) つまり βi がわかり、a アレルの頻度 pi がわかれば、この座位の遺伝型に応じてこれから E(Qi )−E(Q) を計算できます。それが各座位について計算できれば、式(10)より E(Qs )、即ち、各座位の遺伝 型を決めた上での表現型の期待値を求めます。 相加性を仮定した場合、V (Q) は式(2)より、式(11)を参考に V (Q) = n ∑ V (βi Xi ) + V (²) = 2 i=1 n ∑ βi2 pi (1 − pi ) + V (²) i=1 となります。 複数の論文の βi を統合する方法 複数の論文の βi の統合は逆分散法によるメタ解析の手法により行います。 4
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