国立大学法人 17 大学人文系学部長会議共同声明 文部科学大臣 殿 平成 27 年 10 月 9 日 文部科学省は,去る 6 月 8 日,各国立大学法人に対して「国立大学法人等の組織及 び業務全般の見直しについて」の通知を発出し,「特に教員養成系学部・大学院,人文 社会科学系学部・大学院については,18 歳人口の減少や人材需要,教育研究水準の確 保,国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し,組織の廃止や社会的 要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」とした。 この通知をめぐっては,日本学術会議幹事会声明「これからの大学のあり方―特に教 員養成・人文社会科学系のあり方―に関する議論に寄せて」 (7 月 23 日) ,日本経済新 聞朝刊記事「大学を衰弱させる「文系廃止」通知の非」 (7 月 29 日) ,日本経済団体連 合会「国立大学改革に関する考え方」 (9 月 9 日)等,各方面から反発や批判の声が高 まっている。 こうした中,9 月 18 日には,日本学術会議幹事会における文部科学省説明資料とし て,「新時代を見据えた国立大学改革」という,先の通知を若干修正する内容の文章が 高等教育局から出され,文部科学省の HP に掲載された。しかしながら「組織の廃止や 社会的要請の高い分野への転換」という方針についての変更はない。 人文社会科学系学部・大学院のみをことさら対象にし,「ミッションの再定義」に応 えようとしている国立大学法人に対して「組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換」 を迫ることには大きな疑問を抱かざるを得ない。人文社会科学の学問は社会の基盤形成 に寄与するものであり,教育研究における人文社会科学の軽視は,わが国における人的 基盤を根底から揺るがしかねない。また,全国的な高等教育の機会均等の観点からも, 地方国立大学の存在意義は大きい。この文部科学省の見解に対しては,国立大学法人 17 大学人文系学部長会議として強く抗議する。 国立大学法人が,その強み・特色・社会的役割を踏まえながら,これからの時代の新 たなニーズと真摯に向き合い,それぞれの大学の個性や特色にあった機能強化を進めて いかなければならないことは当然である。文部科学省は,人文社会科学の存在意義を踏 まえ,一律に人文社会科学系学部・大学院の改革を迫るのではなく,それぞれの大学の 特性に応じて柔軟に支援していくことを強く要望する。 国立大学法人 17 大学人文系学部長会議 弘前大学人文学部長 今 井 正 浩 岩手大学人文社会科学部長 横 山 英 信 山形大学人文学部長 北 川 忠 明 福島大学行政政策学類長 久 我 和 巳 茨城大学人文学部長 佐 川 泰 弘 埼玉大学教養学部長 高 木 英 至 富山大学人文学部長 大工原 ちなみ 信州大学人文学部長 吉 田 正 明 静岡大学人文社会科学部長 今 野 喜和人 三重大学人文学部長 後 藤 基 島根大学法文学部長 吹 野 卓 山口大学人文学部長 根ヶ山 徹 徳島大学総合科学部長 平 井 松 午 愛媛大学法文学部長 西 村 勝 志 高知大学人文学部長 吉 尾 鹿児島大学法文学部長 平 井 一 臣 琉球大学法文学部長 浜 崎 盛 康 寛
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