海外だより[D.C.通信]52 アメリカ東海岸のファーマーズ

D.C.通信
海外だより
September, 2015
連載 52
中村岳志(JA全中農政部WTO・EPA対策課<在ワシントン>)
アメリカ東海岸のファーマーズ
マーケットを訪ねて
けれど、鮮度や味を考えれば納
得」などの好意的な声が多く聞
かれ、生産者と消費者の双方に
メリットがもたらされていると
アメリカ生活で困っているこ
主に小規模事業者が出店してお
とのひとつが、新鮮な野菜類が
り、近郊地域・州の産品が並ぶ。
なかなか手に入らないことだ。
品ぞろえは豊かで、新鮮な野
■小規模農家の重要な販路
アメリカにおける野菜生産量
菜や果物はもちろん、各種食肉、
訪 問した FM( 都 市 部 中 心 )
(2014年)は、カリフォルニア
魚介類のほか、パンやジャム、
への出店農家の多くは、大規模
州(51.8%)を筆頭に、アリゾナ
ピ ク ル ス、 チ ー ズ、ソーセー
流通に乗らない小規模家族農業
州(7.7%)
、フロリダ州(7.1%)
、
ジなど自家製の加工品も並ぶ。
者であり、FM は重要な販路の
感じた。
ひとつとなっていた。彼らによ
ワシントン州(4.2%)
、ジョー
ジア州(3.9%)の西部・南部の
■鮮度が付加価値に
れば、地元の野菜も直接買い付
5 州 で 7 割 超 を 占 め て お り 注、
アメリカの FM を訪れて驚い
けに来るレストランも増えてお
生産者の多くは大規模である。
たことのひとつが価格設定だ。
り、それをきっかけに契約取引
取扱量が多い大手小売店は、
日本では一般的に、
「新鮮」か
に発展するなど、新たなビジ
大規模農場から大ロットで仕入
つ「手頃」であることが、消費
ネスチャンスを創出する場にも
れているが、国土が広大なアメ
者にとっての直売所の魅力のひ
なっているという。
リカでは輸送に時間がかかるた
とつとなっていると思うが、こ
め、鮮度の低いものが陳列され
ちらでは、一般的なスーパーと
■アメリカで広がる地産地消
ていることも珍しくない。
比べてもかなり高めだ。
アメリカでは近年、消費者の
そうした中で新鮮な野菜を手に
買い物客からは、「値は張る
食への関心の高まりを受けて、
入れる選択肢のひとつが、ファー
Farm to Table(農場から食卓へ)
マーズマーケット(FM)だ。
と呼ばれる地産地消の取り組み
が広まってきているとのこと。
■近郊の新鮮野菜が並ぶ FM
今後もこうした取り組みがま
アメリカの FM は、常設の直
すます拡大し、小規模家族農家
売所が多い日本と異なり、週末
の発展につながることを期待し
などの特定日に、公園や学校な
たい。
どに農家や事業者が集まって開
かれている場合が多い。大規模
小売店とは対照的に、FM には
地元の消費者でにぎわう FM(ニュー
ヨーク・ユニオンスクエア)
注:米国農務省「Vegetables 2014
Summary」
(2015年 1 月)
2015/09
月刊 JA
33