Heterosigmaakashiwoに よるビタ ミソB12結 合物質の生産 と そ

Nippon Suisan GakkaishiHeterosigmaakashiwoに
62(4), 647-653 (1996)
よ る ビ タ ミ ソB12結
そ のB12結
張
合 物 質 の生 産 と
合物質の性質
敬 国,西
島 敏 隆,深
見 公雄
1995年10月23日受付)
Production
of
Vitamin
B12
Jingguo
The
der
by
effect
influence
H.
on
H.
the
the
was
dissociation
akashiwo,
stable
der
at
pH
inhibited
B12 binder
The
of 2-20
and
the
growth
was
present
of B12-requiring
found
study
ng/l;
of
52.8ng/l
8-9
and
their
it
the
the
production
secreted
secretion
of 4-50•Ž,
of B12-requiring
rates
but
production
Properties
of vitamin
B12 bin
B12 binder
and
of the
into
the
ranged
from
B12
under
H.
The
to 0.21
activity
both
its
was
rate
incubated
fg B12/cell/day.
secreted
by
of B12 binder
irradiation.
akashiwo
The
pre-and
production
alga
B12 binder
ultraviolet
including
for
the
0.11
and
medium.
media
when
Binding
labile
culture
in the
phase
of free
phytoplankton
Its
Fukami*1.
of B12 binder.
growth
complex
of
determined.
was
the
Some
properties
B12 concentration
exponential
the
on
constant=2.57•~1010M-1).
temperatures
be
Kimio
chemical
of
on
B12,
(association
to
most
middle
bound
and
were
increased
the
and
medium
of the
dependent
B12 concentration
constant
was
was
during
in the
some
phytoplankton
B12 binder
highest
B12 concentrations
The
and
akashiwo
Nishijima,*1
B12 concentration
secreted
lower
Heterosigma
Toshitaka
evaluated,
produced
of B12 binder
by
of B12-requiring
of B12 binder
test-cultures;
at
was
growth
akashiwo
amount
Zhang,*1
of vitamin
akashiwo
Binder
(
itself
The
and
the
H.
was
B12 bin
effect
of
non-specific.
suggests
phytoplankton
that
the
after
B12 binder
blooms
キ ー ワ ー ド: Heterosigma akashiwo,ビ
secreted
of H.
タ ミンB12,ビ
多 くの植物 プ ラン ク トンは微量 栄養 物質 として,ビ タ
by H.
akashiwo
akashiwo
in natural
タ ミ ンB12結
could
合 物 質,結
the
合 態B12,解
供 試 藻 お よ び 培 養 条 件 試 験 に はHeterosigma
これを不活性 化 してB12要 求 性微生 物 に よる利 用 を妨
,げ
shiwo(Hnna)HADAのNIES-6株,Skeletonema
る物 質,ビ
tum(GREVILLE)CLEVEのNIES-324株
B12 binder
離定数
材料 および 方法
遊離態B12は 一 次生 産 を制 御 す る因子 の一つ と考 え られ
タ ミ ンB12結 合 物 質(vltam㎞
growth
を 舅 らか に す る こ と を 目的 と した 。
ミンB12 (以 下B12と 略 す)を 必須 に要 求 し,海 水 中の
ている。一方,海 水 中の遊 離態B12と 特異 的 に結合 し
inhibit
seawater.
costa
お よ びGymno
-
があ る種 の 植 物 プ ラ ソ ク トンの 培養 液 中 に 検)出 され
dinium
る1,2)こ
と,さ らに 内湾 の 海 水 中 には 溶存 態 全B12の う
株 の,い
ち,相 当量 が不活 性 な結合 態B12と して存 在 す るこ とが
国 立 環 境 研 究 所 か ら,後 者 は 南 西 海 区 水 産 研 究 所山 口 峰
明 らか にさ れ た。3)した が って,海 水 中 のB12結 合物 質
生 博 士 か ら譲 受 した 。 培 養 は,い
は,B12の 存 在形 態 を制 御 し赤潮原 因種 を含 むB12要 求
ASP2NTAを
性プ ラソク トソの選 択的 増殖 阻害 や非要 求性 プ ラソ ク ト
sec,14:10の
ソ との種 間競争 に重 大 な影響 を与 えて いる こ とが考 え ら
本研究 では海 水 中のB12結 合物 質 の生態 学的 役割 を解
明す るため,植 物 プ ランク トン に よる結合 物質 生産 に関
する特性 とともに,そ れ ら結 合物質 の生物・ 化 学的牲 質
of Agriculture,
Kochi
University,
et KOMINAMI
全B12,遊
用 い て,水
は
ず れ も完 全 人 工 培 養 液
温20℃,照
度64∼96μE/m2・
明暗サ イクル で行 った。
離 態B12お
存 在 す るB12結
よび 結 合 態B12の
添 加 して20℃
培養 し
した 後,蛋 , 白
加 え て 遊 離 態B12を
した 。 残 存 した 結 合 態B12を
Kochi 783, Japan).
測 定 試 料 水
で1時間
合 物 質 を全 て 結 合 態B12と
質 被 覆 活 性 炭(PCC)を
Nankoku,
ex ODAのax-2
-
ず れ も無 菌 クローン 株 を 使 用 した 。 前2者
に 過 剰 の 遊 離 態Bl2を
れ る。4)
*1高 知 大 学 農 学 部(Faculty
mikimotoi MIYAKE
aka-
吸着除去
加 熱 分 解 し てB12を
遊離 さ
せ
,こ
れ をEuglena
graciTis z株 に よ る バ イ オ ア ッ セ イ
20℃
で1時
間 放置 後,遊
法 に よ っ て 測 定 した 。3)結合 物 質 の 量 は こ れ と結 合 す る
状 態 に あ る結 合 態B12の
B12の 量 で 表 した 。 ま た,遊
Euglenaパ
い て,バ
離 態B12未
イ オ ア ッ セ イ 法 に よ りB12量
遊 離 態 お よ び 結 合 態B12の
細 胞 内 のB12結
態B12の
含量 は,B12欠
試 験 藻 体 を 異 な るB12濃
を 測 定 し,こ
合 計 量(全B12量)と
合 物 質 お よび 全B12(遊
合 計 量)の
添 加 の試料 につ
れを
した 。
離 態 お よび結合
如 培地 で前 培養 した
量 を 測 定 した 。 遊 離 態B12量
合 態B12量
は
は蛋 白
理 後 そ の 放 射 能 を 計 数 して 求
離 定 数 は 以 下 の よ う に 算 定 した 。
遊 離 態B12とB12結
Menten型
度 の 培 地 に接 種 し て 培 養 後,増
よ び こ れ ら と平 衡
イ オ ア ッセ イ 法 に よ り,結
質 被 覆 活 性 炭(PCC)処
め,解
離 態B12お
合 物 質 と の 結 合 は,Michaelis-
の 式2)で 表 さ れ る。
B=BmaxF/Kd+F
(6)
殖 の 各 段 階 か ら収 集 し た 細 胞 を リン 酸 緩 衝 液(0.1M,
pH7.8)中
で 超 音 波 処 理 し,上
澄 液 に っ い て 上 記 と同
様 の 方 法 に よ っ て 測 定 した 。
H. akashiwoに
よ るB12結
如 お よ びB12濃
度20ng/lの
合 物 質 の 生 産 試 験 B12欠
培 地 で 前 培 養 したH.
shiwoを,0,2,10,20,お
よ び40ng/lのB12を
地 で 培 養 し,細 胞 内 お よび 培 養 液 中 のB12化
aka-
ドグ ラ ス に 取 り,顕
微 鏡 下 で 細 胞 数 を計 数 した 。B12結
B12/ce11・day)は
以下 の式 に従
植 物 ブ ラ ソ ク トソ の 増 殖 量 は,初
め の 細 胞 数 をN
(cells/ml),t日
後 の 細 胞 数 をN(cells/ml),比
をμ(1/day)と
す る と,
(1)
と表 す こ とが で き る。 そ こ で,プ
胞,単
後 のB12結
合 物 質 濃 度 をY(ng
B12/l),初
合 物 質 の 分 泌 速 度 をP(ng
μt
(2)
時Y=Y0を
が得 られる。
位 時 間 当 た り のB12結
よび 紫 外線 に曝 露 しなか っ
10分
で10分
間(45℃),紫
の 強 度 で0∼8時
結合
合 態B12の
放射
記 と同 様 に 百 分 率 で 表 した 。 温 度 の試 験
間,pHの
試 験 で はpH4∼10.5で
外 線 の 試 験 で は100∼150μW/cm2
間,そ
れ ぞ れ 曝 露 した 。
培 養 し たH.
(Filtrate)7.5mlに2.Omlの
NTAの
合物 質 の分
akashiwoの
に,ビ
タ ミン 混 合 液S3お
濃 度 を2倍
地)を
に 強 化 し,B12を
加 え て,栄
はASP2NTA培
添 加 し,こ
藻,S. costatumお
H. akashiwaをB12濃
間 培 養 し,分
度2ng
画 分 子 量10,000の
/l
養 濾 液 中 の 遊 離 態B12の
製 のCyanocobalamin(57Co)を
れ ら にB12欠
液0.5
如 培 地 で 飢 餓 培 養 した 本
よ びG.mikimotoiを
限
結
除去 と
akashimoに
hiwoを
はAmer-
使 用し た(比
照試験
接 種 して 培 養 し,
増 殖 量 を 経 時 的 に 測 定 した 。
B12結 合 物 質 の 濃 縮 を 行 っ た 。 そ の 一 部 に57Co-B12を
添 加 して そ の 結 合 能 を 確 認 し た 。57Co-B12に
よび
除い
地 を 使 用 し た 。 さ らに 培
養 濾 液 お よび 対 照 試 験 用 培 地 に 各 種 濃 度 のB12溶
mlを
素,
養 物 質 濃 度 がASP2
組成 を 下 回 ら な い よ う に した 。 ま た,対
(Control)に
度
培 養 濾液
栄 養 物 質 補 強 液(窒
酸 塩 濃 度 を5倍
(4)
で 求 め る こ とが で き る。
cham社
能 を 測 定 し,上
微 量 金 属 混 合 液PIIの
P=μ(Y-Y0)/(N-N0)(5)
外 濾 過 膜 を 用 い て,培
時 に測
合 物 質 に あ ら か じめ57Co-B12を
(3)
泌 速 度Pは
合物質 の調製
添加
放 射 能 を測 定 して,同
れ を 同 様 の 条 件 に 曝 露 して,結
たASP2NTA培
Y=P(N-N0)/μYo
細 胞,単
合 物 質 を 各 種 の温
れ に57Co-B12を
た 試 料 の 放 射 能 に対 す る百 分 率 で表 した 。 結 合 態B12の
リン,炭
これ に(1)式 を 代 入 して
の 培 地 で10∼12日
よ び紫 外 線 に 曝 露 し,こ
lOng/lで12日間
代入 す る
Y=PN0(〓μt-1)/μY0
B12結
記 に よ って 調 製 したB12結
度,pHお
合 物 質 の結
B12結 合 物 質 の 藻 類 に 対 す る 増 殖 抑 制 効 果B12濃
と な る。 こ れ を 積 分 し て,t=0の
従 っ て,1藻
安 定性 に及
よ び 紫 外 線 の 影 響 B12結
合 能 は,上
で は4∼80℃
細
すると
dY/dt=PN=PN0〓
と,(3)式
ぼ す 温 度,pHお
さ せ,こ
ラ ン ク トン に よ って 生
合 物 質 濃 度 をYo(ngB12/l),1藻
位 時 間 当 た り のB12結
B12/cell・day)と
(F+Kd)・(B-Bmax)=-Kd・Bmax (7)
安 定 性 は,B12結
N=N0〓μt
度 を表 す。 こ
求 め た6)。
12結合
B
物 質 の 結 合 能 お よ び 結 合 態B12の
定 した 温 度20℃,pH8.0お
増 殖0速 度
量,Bmaxは
解 離 定 数,す
与 え る 遊 離 態B12濃
して 得 られ た 結 合B12の
め に 存 在 したB12結
結 合 態B12の
結 合 態B12の
れ を 変 形 して 得 ら れ る双 曲 線 か らKdを
含 む培
っ て 算 定 し た 。5)
産 さ れ たt録
遊 離 態B12,Bは
な わ ちBmaxの1/2を
合 物含量 を
経 時 的 に 測 定 した 。 ま た 培 養 液 の 少 量 を 界 線 入 り ス ラ イ
合 物 質 の 分 泌 速 度, P(ng
こ こ で,Fは
B12結 合 物 質 の 総 量,Kdは
活
果
よ るB12結
異 な るB12濃
合
H. 物 質 の 分 泌
度 で 前 培 養 した 藻 体 をH.
さ aka-s
ら に種 々
のB12濃
度 で 培 養 し,得
られ た 増 殖 量,培
地 中 に残 存 す
性=11.49GBq/μM)。
るB12量
お よ び 細 胞 外 へ 分 泌 さ れ たB12結
合 物 質量 の経
結 合 態B12の 解 離 定 数 の 測 定 上 記 のB12結 合 物 質 の
一 定 量 に57Co-B
12を0∼600ng/lに
な る よ う に 添 加 し,
時 的 変 化 をFig.1に
示 す 。 ま ずH.
akashiwoの
殖 収 量 は前 培 養 お よ び 試 験 培 養 時 のB12濃
最大 増
度 に依 存 した
•-‚È‚©‚Á‚½‚ª,‚»‚êˆÈ•~‚ÅŒ°’˜‚É‘•‘債,’è•íŠú‚Å•Å‘å‚Æ‚È‚Á‚½•B
Fig.
2.
Influence
tion
of B12 concentration
of B12 binder
bation
of H.
H.
akashiwo
20ng/l(•¬)
dard
by
on
akashiwo
cells
in
of B12. Vertical
0ng/l
bars
(•¬)
示 す 。 これ か ら,細
養 液 中 に分泌 され た
試 験 培 養 時 のB12濃
た 。 ま た,分
度 が 高 い ほ ど多 くな る 傾 向 が 見 ら れ
ず れ の 試 験 培 養B12濃
度 に よって 異 な
度 で も,20ng/lで
前 培養
如 で飢餓 前培養 した場合 の方
が 明らかに多 かった。
次 に,B12結
Table
合 物 質 の 一 細 胞 あ た りの 分 泌 速 度 は
1に 示 す とお り,プ
ラ ソ ク トソ の 増 殖 段 階 お よび
前 培 養 ・試 験 培 養 のB12濃
度 に よ って 相 当 異 な る こ とが
わ か っ た 。 す な わ ち,B12結
殖 期 の 前 期 よ り,中
合物 質 の分泌速 度 は指数 増
期 に 大 き く,指 数 増 殖 期 全期 間 に 亘
っ て 前 培 養 を20ng/lで
行 った 場 合 よ り飢 餓 前 培 養 した
場 合 に 大 きか っ た 。 さ ら に20ng/lで
は 試 験 培 養 時 のB12濃
上
で増殖 量が飽 和 した。
前 培 養 した 場 合 に
度 の差 に よって分泌 速度 に大 きな
差 違 が 認 め ら れ な か っ た が,B12欠
は 試 験 培 養 時 のB12濃
培養 液中 に残存 す るB12量 は細 胞密 度の増 加 に対応 し
て減少 し,B12濃 度10ng/l以
合
Bl2/lの 範 囲 で あ り,
泌 量 は 前 培 養 時 のBl2濃
し た場 合 に 比 べ て,B12欠
が,い ず れの場 合 も試 験培 養時 のB12濃 度20ng/l以
度 との 関 係 を
胞 外 へ 分 泌 さ れ たB12結
物 質 の 最 大 含 量 は,17∼34.7ng
Fig. 1. Influence of B12concentration in culture
medium on the growth of H. akashiwo(A-B),
their utilization of free B12(C-D)and secretion
of B12 binder (E-F), comparing the effect of
pre-incubation of cells at 0 ng/1 of B12starvation(A, C and E)and at 20ng/l of B12(B, D
and F).
and
stan-
deviations.
こ れ ら の 結 果 か ら得 ら れ た,培
り,い
secre-
pre-incu-
indicate
B12結 合 物 質 の 最 大 含 量 と培 養 時 のB12濃
Fig,2に
the
after
如 で 前 培 養 した 場 合
度 が 低 い ほ ど分 泌 速 度 が 顕 著 に増
大 した。
上 の培 養 で は,指 数 増殖
H. akashiwoの 細 胞 内B12化
期 前期 に相 当す る培養 開 始 後 か ら6日 目 まで に急 激 に
B12欠 如 の 培 地 で 飢 餓 培 養 後,こ
減 少 し,藻 体 に よるBl2摂 取 が この期 間に活発 に起 こる
試 験 培 地 で 培 養 した 。 得 ら れ た 細 胞 内 のB12結
合 物H. akashiwoを
れ を 種 々 のB12濃
こ とがわ か った。 また,定 常期 頃 には培養 液 中のB12濃
よ びB12含
度 がわず か に増 加 す る傾 向が み られ,死 細胞 か らのBl2
示 す 。 こ れ か ら,B12結
溶 出が示 唆 さ れ た。 一 方,培 地 中 に分 泌 ・蓄 積 さ れた
fg B12/cell(fg=10-15g)の
B12結 合物 質 量 はH.akashiwoの
養 で は 指 数 増 殖 期 の 初 期 に 高 か っ た 。 一 方,細
増 殖 と ともに増 加 し,
活 発なB12摂 取 が見 られた培 養 開始6日 目まで は比較 的
B12含
量 と培 地中 のB12濃
度の
合物 質 お
度 と の 関 係 をTable
2に
合 物 質 含 量 は3.1∼15.5×10-3
範 囲 で あ り,同
量 は6.5∼368×10-3fg/cellで,培
一 濃度 の 培
胞 内の
地 中 のB12濃
Table 1.
Effects of B12 concentration
Table 2.
Table 3.
Contents
Production
on the growth of H. akashiwo
and their B12 binder production
of B12 binder and total vitamin B12 in the cells of H. akashiwo
of vitamin B12 binder by H akashiwo cultured in different B12 concentration
度 が高 くな るほ ど細胞 内のB12保 持 量 が多 くな る傾 向が
見 られ た。 また,細 胞 内のB12含 量 は指 数増殖 期前 期に
最 も高 く,指 数増殖 期 中 。後 期 はこれ より減 少 した。 こ
れ ら細 胞 内のB12結 合 物 質含 量 はB12含 量 に比 べて 概 し
て低 かった。
これ ら細胞 内B12結 合物 質含 量 を基 に,本 藻が細 胞の
内外 に生産 したB12結 合物 質 の総量 とそれ らに対 す る分
泌量 ・細胞 内含量 の割 合 をTable 3に 示 す。 これ か ら細
胞 内のB12結 合 物質 の 全生産 量 に対 す る割合 は1∼16%
で あ り,20お
よび40ng/lの
培 養 初 期 で 細胞 内 に 保持
され る割合 が高 くな ったが,細 胞 外へ の分泌 量 に比べて
ご くわ ず か で あ り,生 産 さ れ たB12結 合物 質 の 大部 分
は,細 胞外 に分泌 され るこ とが 明 らかに なった。
B12結 合 物 質 に よ る 赤 潮 プ ラ ン ク トン の 増 殖 抑 制
が 細 胞 外 に分 泌 したB12結 合物 質 が,Bl2H. akashiwo
を必 須 に要 求 する赤 潮 ブラン ク トソ,H. akashiwo,
お よびS. costatumの 増G.
殖に
mikimotoi
影 響 を与 え るか
否 か を試験 した 。試 験 結 果 はFig,3に 示 す とお り,い
ず れの プ ラソク トンもH. akashiwoが 生産 したB12結 合
物質 に よって増殖 が抑制 され,培 養 液 への遊離 態B12の
補 強に よって 抑制 が 回復 した 。B12結 合物 質 を含 まない
対 照試 験 か ら,H. akashiwo, G. mikimotoiお
よびS
は,そ の増 殖 量 が飽 和 す るた め に は,そ .れぞ
costatum
れ 約20,5お
よび20ng/l程
度 の遊 離 態B12を 必 要 とす
る と算定 さ れ るが,H. akashiwoの
培養 濾 液 を用い た場
合,こ れ らプ ラソ ク トンの増 殖量 を飽 和 させ るにはそれ
ぞ れ約150ng/l, 20ng/lお
よび60ng/lの
遊離 態B12の
補 強を要 す る こ とがわ か っ た。 これ らの結 果 か ら,H. akashiwo
Fig. 3.
が 生 産 したB12結 合 物 質 は 自分 自身 を 含 め
Growth
inhibition
of three
species
of
phytoplankton
by B12 binder secreted by H.
akashiwo and their growth recovery after the
addition of free B12. Vertical bars indicate standard deviations.
て,B12要 求種 の 増殖 を抑 制 し,そ の 抑制 効果 に種特 異
性 が認 め られず,増 殖 抑制 はB12結 合物 質 に よる遊 離態
Bl2の 不活 性化 に よる もの と推 察 された。
B12結 合物 質 のB12結 合 能 お よび結 合 態B12の 安定 性
が生 産 したB12結 合 物 質 のB12結 合能,おH. akashiwo
よび これ ら とB12が 結 合 した 結合 態B12の 安定性 に及ぼ
曲 線 をFlg.
す温度,pHお
数 は52.8ag/l(結
よび紫外 線 の影 響 を試験 した。 その結 果
5に 示 す 。 こ れ か らBl2結
はFig.4に 示 す。 これ に 見 る とお り,B12結 合 物 質 の
こ れ に 柑 当 す る遊 離 態B12濃
B12結 合能 はpH8∼9,水
半 量 が 結 合 態B12(残
が,pH4∼6お
れ もB12結 合 能 は約50%以
B12はpH8∼10,水
温4∼50℃ で変 化 しな か った
よび10以 上,水 温60℃ 以 上 で,い ず
合 物 質 の解 離 定
合 定 数2.57×1010M-1)と
算 定 さ れ,
度 で は 全B12結
り は 遊 離 型 のB12結
合物 質量 の
合 物 質)と
し
て 存 在 す る こ と を示 して い る。
上 消失 した。 一方,結 合態
考
察
温50℃ 以下 で はほ とん ど分解 され
な かった が,pH4∼6,水
温70℃ 以上 で80%以
上分 解
植 物 プ ラ ン ク トン が 生 産 す るB12結
され る こ とがわ か った。 さ らにB12結 合能 お よび結合態
B12は 共 に紫 外 線 に対 して不 安定 で あ り,8時 間の 紫外
蛋 白 質 で あ り,7,8)細胞 外 へ 分 泌 さ れ るB12結
線照射 に よって約80%消
こ れ が 過 剃 生 産 さ れ た も の と 推 察 さ れ て い る 。9)本実 験
失 または分 解 した。
B12結 合 物 質 の 解 離 定 数H. akashiwoが
生 産 した
B12結 合 物質 と遊離 態B12に 結合 した結 合 態B12の 解離
合 物 質 はB12の
合物 質 の生理学 的
役 割 に っ い て,B12結
の 結 果 に よ れ ば,H. akashiwoに
殖 期 前 期 に 集 中 して 起 こ り,こ
摂 取 に関与 す る糖
よ るB12摂
合 物 質 は,
取 は 指数 増
れ と対 応 して そ の 後 の 指
Fig. 4. Effect of pH, temperature and time of ultraviolet
the stability of bound B12 secreted by H akashiwo.
irradiation
ngB12/lに
on the binding activity
of B12 binder and
相 当)10)よ り か な り少 な い 。 ま た,Davies
and Leftley2)に よ れ ば,海
産 種Mantoniella squamata,Dunaliella primolecta, Phaeo
お よび
のB12結
22.9∼44.8,
合 物 質 の 細 胞 外 分 泌 量 は そ れ ぞれ
P. lutheri
76.6∼92.8,
39∼135お
よ び323∼320ng
B12/lで あ る。*2分 泌 量 測 定 時 の 植 物 プ ラ ン ク トン の 培
養 期 間 に そ れ ぞ れ 差 が あ り,厳
が,こ
れ か ら,H. akashiwoの
ほ ぼ 同 等 で あ り,他
に,B12要
密 な比 較 は 困難 で あ る
の3種
分 泌 量 はM. squamataと
に比 べ て やや 少 な い。 さ ら
求 種 のS. costatumお
よ びG. mikimotoiで
は
生 産 した 結 合 物 質 の 殆 ど を細 胞 内 に 保 持 す る こ とが 知 ら
Fig. 5. Dissociation
by H akashiwo.
(Kd=52.8ng/l,
curve of B12 binder secreted
れ て い る。*3こ れ ら の こ とか ら,B12結
Bmax=72.1ngB12/l)
本 研 究 の 結 果,H. akashiwoは
生 産 し たB12結
の 大 部 分 を 細 胞 外 へ 分 泌 し,そ
数 増 殖 期 中期 にBl2結
合物 質の細胞 外 への分泌 速度 が最
も大 き くな っ た 。 一 方,細
殖 期 の 前 期 に 多 く,B12欠
した が,こ
れ はBl2欠
胞 内 のB12結
合物質 は指数 増
乏 に よ っ て そ の 含 有 量 が増 大
乏 時 に もB12摂
取 を維 持 し よ う と
す る 機 構 の 一 つ と考 え られ る 。
外 分 泌 速 度 は0.01∼O.21fgB12/cell/dayで
合 物質 の細 胞
あ っ た。 こ
れ を 他 の 植 物 プ ラ ソ ク トンの 分 泌 速 度 と比 較 す る と,海
産 植 物 プ ラ ン ク トンPavlova lutheriで
cells・day(0.017fgB12/cell・dayに
よ びB12を
は,12.5fM/106
tner and Altmeyerは16種
は 定 常 期 ま で に14∼34.7ngB12/lのB12結
合
の分 泌量 は淡
水 産 植 物 プ ラ ン ク ト ンE. gracilisの0.18PM/m1(244
の 増 殖 に対 す
の 海 産 植 物 プ ラ ン ク トン が
合物 質 は7種
異 な る種 が 生 産 したB12結
の 試 験 藻 の 増 殖 を 阻 害 し,
合 物 質 の増 殖 抑 制 効 果 に,種
特 異 性 が 認 め られ な か っ た こ とを 報 告 して い る。1)これ
らの こ とか ら,植
物 プ ラ ソ ク トン が 生 産 す るB12結
合物
特 異 性 が な い もの と推 察
さ れ る。
の 場 合 と ほ ぼ 一 致 し て い る 。 一 方H. H.
akashiwo
akashiwo
物 質 を 細 胞 外 へ 分 泌 した が(Table3),こ
増 殖 を 抑 制 し,3種
る 抑 制 効 果 に 種 特 異 性 は 認 め られ な か っ た 。 ま た,Pin-
質 に よ る 増 殖 抑 制 効 果 に は,種
相 当)2)と 報 告 さ れ,
合物質
の 結 合 物 質 は 自 分 自身 お
必 須 に 要 求 す る プ ラ ソ ク トンS. costatumお
よ びG. mikimotoiの
生 産 したB12結
本 研 究 で 得 ら れ たH. akashiwoのB12結
合 物 質の 細胞 外
へ の分泌量 は種 に よって相 当異 な るこ とがわか った。
H. akashiwo
が 細 胞 外 に 分 泌 したB12結
定 数52.8ng/lは,他
の 海 産 プ ラ ン ク トン で 得 られ て い
る 解 離 定 数,0.94∼45.3pM(1.2∼61ng/l)2)の
あ り,本
藻 のB12結
合物 質 の解 離
範囲に
合 物 質 も 他 種 由 来 の そ れ と 同 様,
*2106cells
あた りで裟 示 され てい る分 泌量 を,測 定時 の増殖 密度(cells/ml)か
ら換 算 した
*3張 敬 國 ・西 島敏隆 ・深 見公 雄:平 成7年 賃本水 産学会 春季大 会講 演要 旨集,1995,P,324. .
B12と 高 い親和 性 を有 す る こ とが わか った。 さ らに,本
参 考
藻のB12結 合物 質 は通 常 の海 水 の水温 ・pH域 では安 定
であ る もの の,太 陽光線 に相 当す る紫外 線 に よって分解
され,海 水 の表面 付近 では その影響 は無 視で きな い と思
1) I.
2)
A. G. Davies
microalgal
inder
H. akashiwo
はB12の 豊 富 な 環 境 で は,105ce11s/ml
程 度 ま で増 殖 す る過程 で約23∼35ngB12/lのB12結
物 質 を細胞 外 へ分泌 す る(Table3)。
のB12要 求量 は10∼20ng/lと
中 に10ng/lの
遊 離 態B12が
合
nique.
3)
多 くのB12要 求種
され る11)ので,現 場 海水
の 最大B12結 合物 質分 泌量(35ng/l),お
4)
富栄養 化 した 内湾 域 では,全B12の
6)
using
an
西 島 敏 隆 ・張 敬 国・ 深 見 公 雄:浦
by
of the vitamin
ultrafiltration
-b tech
ノ 内湾 海水 中 に おけ る
合 物 質 の 分 布 と季 節 的 消 長.日
A. F. Carlucci
水 誌, 61, 762-768
(
and P. M.
Bowes:
Vitamin
mixed
西 島 敏 隆:沿
岸 海 域 に お け るB群
production
and
culture. J. Phycol, 6,
ビタ ミン の動 態 に関 す
潮 発 生 に 関 連 し て.高
高 河 原 勇:活
知 大 学 農 学 部 紀 要,
43,
性 測 定 法,「 蛋白 質 ・酵 素 の 基 礎実 験 法」
(堀 尾 武 一 ら編)第1版,南
江 堂,東
京,
1981, pp
387-
388.7
K. W.
Daisley:The
lis proteins
occurrence
that bind
vitamin
and nature
of Euglena
graci
B12. Int. J. Biochem.,
1, 561-
574 (1970).
8)
伊 勢 川 裕 二:ビ
タ ミ ンB12,「
ユ ー グ レナ 生 理 と生 化 学 」
(北 岡 正 三 朗 編),第1版,学
が知 られて い る。3)本
研究 の 結 果 は,遊 離 態B12を 不 活
会 出 版 セ ン タ ー,東
京,
1989, pp 138-144.
9)
重要 な位置 を占 める こ とを示 し,こ れ らB12結 合 物質 は
自然 海水 中のB12を 不 活性 化 し,B12を 要 求 す る植 物 プ
determined
B12 binding
constant
1-151 (1985).
うち かな りの部 分
性化 するB12結 合 物質 の起 源 と して植物 プラ ンク トンが
Vitamin
and
(1979).
Ecol. Prog.. Ser., 21, 267-273 (1985).
る 研 究-赤
)
が徴生物 が直接 利用 で きない結 合態 として存 在 す るこ と
complex
Mar.
B12-binder
393-400 (1970).
5)
を必須 に要求 す るプラソ ク トンの増殖 が抑制 され るこ と
が考 え られ る。
Leftley:
utilization by phytoplankton in
活性化 され る と算定 され る。 したが って,本 藻が 大増殖
した後に は,遊 離態B12が 有意 に減 少 し,そ の結果B12
and J. W.
Vitamn
15, 391-398
1995).
よび
不
L. Altmeyer:
ectocrines: dissociation
ビ タ ミ ンB12結
存 在 す る 場 合,H. akashiwo
その解 離定 数 を用 い て計 算す る と,約37%のB12が
and V.
献
other algal inhibitors. J. Phycol.,
われる。
10)
ラソ ク トンの増 殖 を抑制 す る と ともに,B12要 求 種 と非
L. Provasoli and A. F. Carlucci: Vitamins
lators. in "Algal
physiology
D. P. Stewart),
Oxford,
F. Watanabe,
tion, some
Y. Nakano,
protein
J. Gen.
11)
London,
1974, pp 741-787.
protein
1385-1389
from
389-394 (1989).
Purifica
role of an ex
Euglena
gracilu.
(1988).
潮発 生 と ビ タ ミンB12.バ
イン ダ ス ト リー, 47,
regu
(ed. by W.
H. Ochi, and S. Kitaoka:
binding
Microbiol., 134,
西 島 敏 隆:赤
and growth
and biochemistry"
and possible physiological
tracellar cobalamin
要求種 の種間 競争 に も影 響を与 え てい る もの と推 察 され
る。
J. Pintner
文
イオサ イ エン ス と