2015年 日本の外食・食品サービス業界見通し

2014 年10 月
OUTLOOK
外食・食品サービス
二極化傾向の日本市場
2015 年 日本の外食・食品サービス業界見通し
OUTLOOK | 二極化傾向の日本市場
概要
業界スナップショット
アリックスパートナーズ
「2015年 日本の外食・食品サービス業界見通し」1によると、日本の
外食・食品サービス市場は2011年から2013年にかけて2年間で4.5%拡大した。
2012年から
2013年の年間成長率は2.3%である。
2003~11年に3.2%減少した一人当たりの外食支出
も、2012年から2013年に2.5%増加した。
業界全体の中では、中食セグメント、中でもコンビ
ニエンスストアが安定した成長を見せた。
また企業業績をみると、2013年には、米国レストラ
ン・チェーン上位10社の売上高成長率は0.3%にとどまる中、日本の上場レストラン・チェー
ン上位10社は売上高を7.2%伸ばした。
こうした成長を受けて、米国レストランチェーンと比
較すると規模の小さな日本のレストラン・チェーン上位10社は、収益性が相対的に低いにも
かかわらず、資本市場でのバリュエーションが高くなっている。
市場価値をさらに高めるため
には、
これら上位企業は売上成長とコスト削減に引き続き取り組む必要があるだろう。
消費者調査
日本の消費者は、家計に対する不安や価格重視の傾向を背景に、2014~15年にかけて外
食支出を2%程度減らすことが予想される。
しかし、外食支出を増やす予定と回答した人の
割合は、外食頻度を増やす予定と回答した人の割合よりも高くなっており、
これはおそらく品
質への関心が引き続き高いためと思われる。
このことは、市場が価格に敏感な消費者と質
を重視する消費者に二極化していることを示している。
消費者はカジュアル・ダイニング・レ
ストランを最も革新的な業態と見なしている。
コンビニエンスストアは朝食市場で、
カジュア
ル・ダイニングは夕食市場で、
そしてカジュアル・ダイニングとファーストフード店は昼食市場
で優位に立っている。
コンビニエンスストアで食事を購入する高年齢の消費者が増えてお
り、持ち帰りサービスの利便性を評価する消費者も増加している。
消費者の外食習慣は全
体としてデジタルメディアの影響をあまり受けていないという結果が出ているが、一方で、
レ
ストランの食事代をモバイル・デバイスのアプリケーションで支払う消費者は増加している。
事業者にとっての選択肢
日本の人口動態を考慮すると、日本の外食・食品サービス市場は全体として長期的な成長
は見込まれない。
したがって、市場参加者は市場シェアを獲得するために迅速に動く必要が
ある。
また、消費者の相反するニーズを捉えることが鍵になる。
市場が二極化しているからこ
そ、品質が高いと認知されたブランド、
または価格の割に質が高いと認知されたブランドが
成功する可能性が最も高くなる。
また、
レストラン・チェーンは規模の経済が機能する業界で
あるが、日本企業はグローバル・プレーヤーとの比較では規模が小さいため、買収・合併
(M&A)戦略を検討することが必要だと思われる。
すべての事業者にとって、(1)マーケティング
部門とオペレーション部門の連携強化、(2)購買力強化、(3)M&Aあるいは隣接市場への参入
による規模の追求といったオペレーション面での改善も重要になってくるだろう。
1
アリックス•パートナーズの「2015年 日本のレストラン・外食・食品サービス業界見通し」は、業界の現状、独自の消費者調査また最新の業界トレンドについてまとめたもの
で、半年に1回刊行されている。
本レポートのすべての参照、事実および意見は本「2015年 日本の外食・食品サービス業界見通し」に記載されている。
2
OUTLOOK | 二極化傾向の日本市場
日本で事業を行う外食・食品サービス企業が今後新たな成長を遂げるため
には、多くの課題がある。10年間のマクロ経済の停滞期を経て、過去2年間
は若干の成長が見られた。今後は人口動態や消費者の嗜好の変化が新た
な課題となるだろう。特に、55歳超の層を取り込むとともに、価格重視の消
費者と品質重視の消費者に二極化した市場に対して、収益性を維持しなが
ら対応する最善の方法を見つける必要に迫られるだろう。
日本の上場レストラン・チェーン上位10社にとってもそうしたこ
やや楽観的:業界スナップショット
率は市場全体よりも高く、
米国レストラン・チェーン上位10社よ
日本の外食・食品サービス市場全体は過去10年間停滞してお
とは容易ではない。
これらの企業の2013年における売上高成長
市場トレンドの詳細
りも高い成長を見せた。
しかし、
日本企業は規模が小さく、
収益
り、成長率は1.2%にとどまった。
ただし、市場は2012~13年に
力が低い。
こうした企業が市場価値を維持するためには、
コスト
若干回復し、市場規模は2年間で4.5%拡大した(図表1)。
市場
削減に取り組みつつ、
成長を加速させる努力が必要である。
全体の中で2003~13年に最も成長したのは、調理済み食品(
中食)セグメントであり、10年間に2.7%拡大した。
その一方で、
コンビニエンスストア、
ファーストフード・チェーン、
カジュアル・
レストラン•セグメントは1.9%増、
ドリンクサービスは1.5%減、
ダイニング・レストラン、高級レストランで構成される業界のす
その他セグメントは3.1%減となっている。
また、中食セグメン
べての企業は、競争力を維持していくためにオペレーションの
トをより詳細に見ると、
コンビニエンスストアにおける中食の
改善に真剣に取り組む必要がある。
競争力のある企業は、
マー
売上高は2003~13年の間に伸び率18%と急拡大しており、
そ
ケティングとオペレーションの連携を強化し、購買部門の能力
れ以外の販路の中食の伸び率10.6%を大きく上回っている。
向上や事業規模の拡大を検討すべきだろう。
図表1:日本の外食・食品サービス市場成長率
日本の外食・食品サービス業界の市場規模(単位:兆円)
1.2%
単位:兆円
35
30
4.5%
31.7
31.7
31.8
32.1
32.2
32.0
31.2
31.2
30.7
31.3
32.1
6.6
6.6
6.4
6.3
6.2
6.1
5.8
5.7
5.4
5.6
5.7
5.2
5.2
5.2
5.3
5.1
5.0
4.8
4.7
4.7
4.7
4.8
7.7
7.8
8.0
8.1
8.2
8.1
8.1
8.2
8.4
8.6
8.7
12.1
12.1
12.2
12.4
12.8
12.8
12.6
12.6
12.2
12.5
12.8
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
25
20
15
10
5
0
その他
中食
ドリンクサービス
レストラン
市場は直近2年間回復が見られる
注:中食にはコンビニエンスストアで販売される調理済み食品を含む
出所:外食産業総合調査研究センター、富士経済、
アリックスパートナーズによる分析
3
OUTLOOK | 二極化傾向の日本市場
図表2:日本の一人当たり外食支出
日本における年間一人当たり外食支出の推移
+1.5%, 年率: 0.1%
単位:千円
300
250
2.5%
248.1
248.0
249.1
250.9
251.7
250.0
243.9
243.7
240.3
245.7
252.0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
200
150
100
50
0
日本の年間一人当たり外食支出は過去10年間変化が見られなかったが、直近2年間は伸長し、2013年は2.5%増となった
出所:外食産業総合調査研究センター、富士経済、総務省統計局、
アリックスパートナーズによる分析
業界構造と外食・食品サービス企業の業績
は、日本の上位レストラン・チェーンが10%であったことに対
し、米レストラン・チェーンは20%であった。
総資産回転率は
業界構造という面では、日本の外食・食品サービス市場は非
1.4%でどちらも同水準だった。
常に細分化されており、上場企業上位10社の市場シェアは
6%にすぎない(米国は上位10社で15%のシェアである)。
日本
2014年7月現在、米レストラン・チェーン上位10社の時価総額
の上位10社のうち、欧米系の企業はマクドナルドとスターバッ
は25兆8,000億円と、日本のレストラン・チェーン上位10社の
クスの2社だけである。
その二社以外は日本企業で、
ファースト
8,130億円のおよそ32倍である。
しかしながら、日本の上位企
フードのゼンショー、持ち帰りサービスのシダックス、居酒屋
業の株価収益率(PER)は平均すると38.4%で、米企業の29.2%
のワタミ、中食のプレナス、
カジュアル・ダイニング・レストラン
よりはるかに高い。
資本市場は、日本企業の成長率の高さに注
のコロワイドやロイヤル・ホールディングスなどがある。
2013
目し、米企業よりも高い評価をしていると考えられる。
年、ゼンショーが売上高(4,680億円)、市場シェア(1.5%)、店
舗数(約5,000店)、店舗当たり売上高(9,800万円)で業界トッ
どこで、いつ、何回外食するか:消費者の選択
プであった。
日本マクドナルドホールディングスがこれらすべて
今回の消費者調査によると、日本で外食したいと考える消費
の指標で2位であった。
者に最も人気のある業態はコンビニエンスストアで
(図表3)4 、
次にファーストフード店、
カジュアル・ダイニング、高級レストラ
日本の上場レストラン・チェーン上位10社の売上高は
ンと続く。
米国では対照的に、
ファーストフード店での外食の
2012~13年に合計で7.2%増大したが、
これは日本市場全体の
頻度が最も高く、2013年には月5.8回、2014年には減少してい
2.3%増よりかなり高い成長率で、グローバルに事業を展開す
るものの月4.4回で、日本で月2.7回に比べてはるかに多い。
日
る米上場レストラン・チェーン上位の0.3%増と比べるとはるか
本では、1か月あたりの外食回数合計には変化がないが、
ファ
に高い。2 しかしながら、同期間の利払前・税引前・償却前利益
ーストフード店の回数が減り、高級レストランの食事の平均回
(EBITDA)率では、日本の上場レストラン・チェーンは 米レス
数が増加した。
トラン・チェーンを大きく下回っており、日本企業の平均6.9%
に対し、米レストラン・チェーン上位10社の平均は20.4%であ
3
った 。
また、2013年のEBITDAを用いた 総資産利益率の平均
2
3
4
0.3%という数字は、著しく業績の悪かったダーデン・レストランツの影響を大きく受けている
(同社の市場シェアは26.5%縮小した。
)
同社を除外して計算すると、米上場レストラン・チェーン上位9社の市場シェアは2012~13年に3.6%増加した。
20.4%には、
マクドナルド・コーポレーションの著しく高いEBITDA利益率36.7%を含む。
同社を除外して計算すると、米上場レストラン・チェーン上位9社の平均EBITDA利
益率は11.6%である。
本調査では、
以下の4つのレストラン業態について消費者に質問した。
コンビニエンスストア:例えばセブン・イレブンやミニストップ。
ファーストフ ード店:顧客が店舗内のレジか
ドライブ・スルー窓口で食事を注文する形式の店舗。
カジュアル・ダイニング・レストラン:すべてのテーブル・サービスを提供するが、
あまりフォーマルではない店舗。
高級レスト
ラン:(1) 給仕は通常しっかりと訓練され、
特別なコース料理を提供し、
(2) 幅広いワインリストがあり、
(3) 高級素材を使用した内装が特徴で、
(4) 通常、
係員付き駐車サービスも
提供している店舗。
4
OUTLOOK | 二極化傾向の日本市場
外食頻度の動機となるもの
所得水準も決定要因になる。
本調査によると、
高所得層の消費
性よりもすべての業態のレストランで外食に訪れる頻度が高い
がある。
しかしながら全体として見ると、
外食頻度の主な決定要
者は低所得層に比べるとすべての業態で外食頻度が高い傾向
外食頻度は性別によって明らかに異なる。
男性の回答者は、女
因は性別と年齢で、
男性は女性よりも外食頻度が高く、
また
傾向がある。
外食頻度には年齢も関係している。
18~24歳の層は他の年齢層よりも外食頻度が高いことが本調査
で分かった
(図表4)。
また、
全回答者の外食する場所の選択は、
例えば、25~34歳の回答者が過去1年間にコンビニエンススト
ターミナル駅や勤務場所からの近さよりも、
移動経路や自宅か
アで食事を購入した回数は平均で月8.6回だが、
その他の年齢
らの近さがより強い決定要因になっていることが分かった。
群では4.8~7.7回であった。
コンビニエンスストアについて言
えば、全体では80%近くが食事を買うだけの目的で訪れると
回答しているが、55歳以上の層でも78%が食事を買うだけの
外食支出の計画
れはレストラン・チェーンにとって、高年齢層の消費者を獲得の
費は、過去12か月間の実績よりも2.2%少ない(1,485円から
日本の消費者が今後12か月間に使う予定の1回あたりの外食
目的でコンビニエンスストアを利用するということであった。
こ
1,452円へ)
(図表5)。
これは、米国の消費者が9.1%支出を減
ためには、
コンビニエンスストアが強力なライバルであること
らすと予定している
(14.91米ドルから13.55米ドルへ)のに対
を示唆している。
ファーストフード店、
カジュアル・ダイニング、
高級レストランの合計でみると、外食頻度が最も高い年齢群
し、かなり緩やかな減少である。
図表3:最も人気のあるレストラン業態
図表4:外食頻度の決定要因
は、18~24歳であった。
週1回以上外食する (過去12か月間、男女別)
1か月あたりの外食回数(過去12か月間、
レストラン業態別)
Japan
7
46%
6.0 6.2
6
∑ 2013: 12.0
42%
∑ 2014: 11.6
5
全体
4
3.3
3
2.3
2.0
コンビニ
ファーストフード
カジュアル
全体
5
∑ 2013: 19.2
42%
3.3 3.1
2.8
3.0
2.5
1.8
コンビニ
全体
2.8 2.6
1.5
1
0
25-34
44%
34%
北海道
35-44
45-54
35%
55+
49%
44%
45%
33%
26%
16%
東北
関東
中部
近畿
中国
四国 九州・沖縄
週1回以上外食する (過去12か月間、年収別)
1.2
58%
食料品店 ファースト ファースト・ カジュアル
高級
フード カジュアル
レストラン
Q1 2013
18-24
∑ 2014: 15.6
4.4
4
45%
週1回以上外食する (過去12か月間、地域別)
5.8
6
48%
高級レストラン
2014
米国
7
51%
42%
0.4
2013
2
55%
0.7
1
0
女性
男性
週1回以上外食する (過去12か月間、年齢別)
2.7
2
3
40%
42%
Q1 2014
47%
42%
35%
外食回数合計には変化がないが、
ファーストフード店に行く
回数は減り、高級レストランへ行く回数は増えている
全体
5
3百万円未満 3百万円以上、5百万円以上、 8百万円以上
5百万円未満 8百万円未満
OUTLOOK | 二極化傾向の日本市場
男女別に見ると、今後12か月間の外食支出に関して、女性の
他に、外食時の注文点数を減らす、食料品店で調理済み食品
回答者の方が男性よりも慎重になっていることがわかる。
男
を買う回数を増やす、
より安いレストランで食事するなどで、中
性の22%が外食の頻度を減らすつもりと回答したのに対し、
には時々食事を抜くという回答もあった。
女性は29%だった。
最も高頻度で訪れるレストランを決める際に重要な3つの要
日本の消費者が外食の頻度や支出を減らす予定としている背
因を挙げてもらったところ、食事全体の価格という回答が最も
景は何であろうか。
58%の回答者が家計の悪化あるいは家計
多く
(57%)、次に食事の質(50%)、立地(41%)という回答が
支出を減らす必要性があるからだと回答しているが、
これは
多かった。
このような特徴から、日本の外食・食品サービス市
2013年の同比率60%よりも若干低かった。
米国では、最も多
場は、価格重視と食の品質重視の2つのセグメントに分化して
かった回答は2013年、2014年とも健康的な食事をしたいとい
いることが示唆される。
う理由であった(2013年は50%、2014年は47%)。
対照的に日
本では、
「健康的な食事がしたい」という理由で外食支出を減
時間帯の選択
った。
実際に、日本の消費者がどこで外食をするかを決める
は昼食と夕食だが、朝食も若干伸びており、時間帯全体に占
らすという回答は2013年が32%、2014年はわずかに28%であ
調査によれば、1日のうち外食する時間帯で圧倒的に多いの
際、
そのレストランに健康的なメニューがあるかどうかは重要
める比率では5%から7%に上がっている
(図表6)。
さらに、
そ
でないようである。
健康的なメニューがあるかどうかを
「非常
れぞれの時間帯にどのようなレストランを訪れるかについて
に重要」とした回答者は7%に過ぎず、49%がメニューに記載
は明確な好みが見られる。
朝食時間帯はコンビニエンススト
されている栄養に関する情報で注文を決めることはない、
と
アが優勢で、夕食時間帯はカジュアル・レストラン、昼食時はフ
回答した。
ァーストフード店が優勢である
(カジュアル・レストランも僅差
で2位)。
今後12か月間の外食支出を減らす予定と回答した日本の消
革新的なものに対する関心
費者のうち、
より価格の低い食事を注文することでこの目標を
達成すると回答したのは35%で、昨年に同じ回答をしたのは
外食での支出を多くするきっかけになるものを尋ねたところ、
24%であった。
31%がクーポン、
プロモーションおよびその他
「よりおいしい食事」との回答が64%、
「メイン料理の品ぞろえ
の割引を利用する予定と回答し、2013年の34%よりも若干減
の良さ」との回答が38%だった。
この2つの回答は、
「デザート
少した(米国では対照的に、外食支出を減らすためにクーポ
の選択肢の多さ」、
「アルコール飲料の種類」、
「前菜メニュー
ン、
プロモーションおよびその他の割引を利用する予定と回答
の多さ」を上回っている。
この回答は日本の消費者の革新的な
した消費者が2013年、14年とも最も多かった)。
実際に
ものに対する関心を表している。
そして、革新という面で最も
は、48%が割引情報や特典を探すことが時々あり、通常好んで
進んでいるのはカジュアル・ダイニング・レストランであると調
食べているものに関する割引であれば、
そのような特典を提
査の回答者は考えている。
革新の内容としては、
メニューに新
供しているレストランを訪れると回答している。
外食支出削減
しい品が加わって定期的に更新されるということ、通常メニュ
図表5:日米の外食支出の計画
図表6:外食時間帯の選択
のために行うこととして日本の消費者が回答したのは、
その
ーに加えて特別または季節メニューがあるということ、あるい
食事の時間帯 過去12か月間
1回あたりの平均外食支出
今後12か月間と過去12か月間の比較
日本
¥1,600
¥1,500
¥1,485
$16.00
–2.2%
¥1,452
$15.00
¥1,400
$14.00
¥1,300
$13.00
¥1,200
$12.00
$14.91
–9.1%
45% 44% 43%
35% 34% 34%
$13.55
12% 13% 13%
5% 7% 7%
$11.00
¥1,100
¥1,000
過去12か月間に自宅外で食事をした合計回数のうち、
以下の時間帯それぞれの割合を教えてください
米国
過去12か
月間の支出
今後12か
月間の支出
$10.00
過去12か
月間の支出
朝食
今後12か
月間の支出
3% 3% 4%
昼食
夕食
2013年
6
2014年
深夜
今後12か月間
間食
OUTLOOK | 二極化傾向の日本市場
は別のジャンルの料理から新しいメニューが追加されるとい
い」、2が「少し影響がある」、3が「非常に影響がある」
という
うことなどが挙げられている。
1-3の影響レベルを回答する質問で、
「企業からの電子メー
ル」に対して、2013年には平均1.6が、2014年には1.7に上昇し
利便性を求めて
ている。
また、
「企業ウェブサイトまたはホームページ」
と
「ソー
シャルネットワーキング・サイト」
の影響レベルも上昇した一方、
本調査によれば、
レストランにデリバリーの食事を注文する可
「オンライン予約Webサイト」の影響は過去2年間で低下した。
能性が最も高い時間帯も、昼食(34%)と夕食時(56%)である
(図表7)。
デリバリーサービスを利用する理由として挙げられ
デジタルメディアの利点のうち消費者が最も興味を持ってい
ているのは、利便性である。
しかし、日本の消費者がデリバリ
ると思われるのは、
モバイル・デバイスを通じて提供されるレ
ー・サービスを利用する際に支払う一回一人分の食事代は、
今後12か月間に約23%低くなる見込みである
(平均1,510円
ストランのクーポンだが、実際にそれらにアクセスしている消
デリバリー・サービスと同様、調理済み食品を持ち帰ることが
した消費者はわずか11%で、週1回未満という回答は約30%
る。
31%が過去12か月間にレストランやその他の飲食店で提
食事をする場所を少なくとも週1回は調べると回答した者は
費者は比較的少数である。
少なくとも1週間に1回はモバイル・
から1,154円へ)。
デバイスを使ってモバイル・クーポンを受け取っていると回答
である。
モバイル・デバイスを使って特定のレストランの情報や
できるレストランの持ち帰りサービスも利便性を訴求してい
11%にすぎず、36%が週1回未満と回答した。
しかし同時
供される持ち帰りサービスを利用したと回答している。
51%が
に、2013年から2014年にかけて、特にコンビニエンスストアで
ファーストフード店の持ち帰りサービスを利用すると回答し、
次に人気があるのがコンビニエンスストア(39%)、
カジュア
の購入において、
モバイルペイメントを使った支払いが非常に
デジタルメディアの影響
ァーストフード店が50%、
カジュアル・ダイニング・レストランが
ルメディアの全般的な影響は非常に低いが、
その影響度はわ
の中でモバイルペイメントの使用が最も増加したのはカジュ
増加している。
飲食店でのモバイルペイメントでの支払い経験
ル・ダイニング・レストラン
(35%)と続いている。
を尋ねたところ、
コンビニエンスストアと回答した者が66%、
フ
44%、高級レストランが11%だった。
しかしながら、4つの業態
本調査によると、日本の消費者の外食の選択において、
デジタ
ずかに上がりつつあるようである。
例えば、1が「全く影響がな
アル・ダイニングで、2013年の20%から2014年に44%と大幅
図表7:デリバリー・サービスの利用
図表8:モバイルペイメントの使用状況
に増大した(図表8)。
過去12か月間に自宅外で食事をした、
または食事を購入した際のデリバリー・サービスの利用頻度を教えてください
次の飲食店でモバイルペイメントを使用したことがありますか?
56%
+32%
1か月あたりのデリバリー・サービスの利用
回答者平均 = 1.8 回
66%
+61%
+120%
50%
50%
44%
19%
12%
4%
週2~6回
週1回
月2~3回
20%
月1回
12%
月1回未満
コンビニ
34%
昼食
夕食
5%
3%
深夜
間食
7
11%
高級レストラン
2014
モバイルペイメントは2014年により一般的になった
56%
朝食
ファーストフード カジュアル・ダイニング
2013
過去12か月間に自宅外で食事をした際に、
デリバリー・サービスを利用した時間帯を教えてください
3%
–8%
31%
9%
OUTLOOK | 二極化傾向の日本市場
次のステップ:企業にとっての選択肢
ンもいくつかある。
ファーストフード店にとっての至上命題は、
価格と質の両面で日本の消費者の需要を捉える方法を見つ
新たな要請
け、現在の市場の特徴となっているゼロサム・ゲームの中で、
他の2つの業態に顧客を奪われないようにすることである。
日本の外食・食品サービス業界は過去2年間回復基調にある
ものの、将来にわたって持続的に堅調な売上げ増加が続くと
オペレーション改善の活用 は予想できない。
日本の現在の人口動態、特に少子高齢化を
日本の外食・食品サービス業界で競争するすべての企業にと
考えると、国内消費は全体として大幅な成長が見込まれない
って、市場での競争に打ち勝ち、生き残りのための緊急課題に
ことがその理由である。
この業界の企業が大幅な成長を達成
対応するためには、オペレーションの改善が必須である。
そし
するためには、55歳超の年齢層を顧客として引き付ける必要
て我々は、外食・食品サービス企業が行うべきオペレーション
があるだろう。
コンビニエンスストアはすでにこの世代の関心
改善は3つの分野に分けられると考えている。
を獲得している。
他の業態はコンビニエンスストアとどう競争
していくかを考える必要があるだろう。
}} マーケティング部門とオペレーション部門との連携強化
日本の上場レストラン上位10社はその成長性を背景に資本
商品・メニュー開発のプロセスに顧客調査とマーケティン
市場から高いバリュエーションを獲得しているが、収益性は高
グ活動を統合することによって、
メニュー開発の成功確率
ンを維持できなくなる可能性がある。
日本企業は米国の巨大
グとオペレーションという2つの最重要な部署間の連携に
いわけではない。
したがって、資本市場での高バリュエーショ
を確実に上げることが可能である。
また、
このマーケティン
企業と比べると規模が小さく、規模の経済で後れを取ってい
よって、
メニュー開発が加速し、
それによって新たな市場開
く必要があると思われる。
ランにとっての新規顧客の増大や、顧客のロイヤリティ向
る。
その意味で、買収による規模拡大の機会を常に検討してお
拓のスピードも向上する。
それに加えて、
その企業のレスト
上にもつながる、といった効果も考えられる。
加えて、日本の外食・食品サービス市場全体は、価格重視の顧
}} 購買実務の改善
客と、質を非常に重視する顧客とに明確に二極化していると
ベンチマーキングやスマート・パーチェシ
ングなどによって購買部門の機能を強化できた企業は、サ
見られる。
外食に関する決定で最も重要な要因は価格である
プライヤーからより有利な価格で高品質の原材料を調達
と57%が回答している一方で、平均すれば、外食支出は微減
できる可能性が高くなる。
それに加えて、清掃、家賃、光熱
か、横ばいに留まっている。
これは、食材の新鮮さや味といった
費などの間接費や、ITやマーケティングなどの専門サービ
基準で評価される食の質を価格より重視する層がかなりの割
スの購買を一元化することによって、極めて大きなコスト
合存在することを意味する。
このような傾向を売上げに結び
削減が可能になる。
付けるためには、外食・食品サービス業界の企業にはさらな
}} 規模の追求
る革新が求められていると言えるかもしれない。
規模拡大によって、企業は成長のために必要
な財務基盤、組織能力、
そしてブランド認知を得ることがで
きる。規模拡大によって、最も将来性のある市場を特定し
カジュアル・ダイニング・レストランはすでにこのような動きに
て、
そこに参入することも出来る。
ブランドの明確なポジシ
おいて有利な立場にいる可能性がある。
2013年の調査では、
ョニングを確立し、
そのポジショニングによって企業価値を
レストランの中で最も革新的な業態はコンビニエンスストア
大きくしてM&Aの機会を獲得し、M&Aを成功させることも
であるとの回答であったが、2014年の調査では、
カジュアル・
規模の拡大のためには有用だろう 。
ダイニングが1位となった。
それにもかかわらず消費者がカジ
ュアル・ダイニング・レストランを訪れる頻度は2013年から
このような変革を成功させることは簡単なことではないし、課
2014年にかけて減少している。
このことは、革新的という消費
題も単純なものではない。
しかしながら、課題が困難だからと
者からの認知を新たな売上げにつなげるようなマーケティン
いってそれに目をつぶったり、避けて通ったりする余裕は、日本
グ戦略やオペレーションモデルを徹底的に見直すことで、大き
の外食・食品サービス業界の企業にはない。
理想的とはほど
な成果を上げることができる可能性が高いことを示している。
遠い業界環境の中で、激しい競争が起こっている現状において
このような状況下で、
ファーストフード店はコンビニエンススト
は、各企業は最大の努力を払い、
さらに厳しさを増す事業環境
アとカジュアル・ダイニング・レストランという2つの強力なライ
に立ち向かって成長していく方策を見つけ出さなければなら
バルと競争を強いられるという、難しい立場に置かれている。
ない。
オペレーション部門とマーケティング部門の連携、卓越し
今回の調査によれば、
コンビニエンスストアは外食市場のシェ
た購買機能の実現、
そして規模拡大によってオペレーションを
アを引き続き拡大しつつ、価格重視の消費者も獲得している。
強化することが、
その確実な第一歩となるであろう。
また、食事の質や味が良いと消費者に認知されるようなポジ
ショニングの変更に成功したカジュアル・ダイニング・レストラ
8
OUTLOOK | A Full Plate
調査について
アリックスパートナーズの「2015年日本の外食・食品サービス
業界見通し」の調査は、2014年6月に実施された。
これは、8つ
の地域に住む18歳以上の成人1,018人に対するアンケート調
査である。
本調査では、消費者の(1)
コンビニエンスストア、
レ
(2)自宅外の食事の支出計画、
(3)好みのレストラン業態、
お
よび(4)
レストランを選ぶ際の主な基準、に焦点をあてて行わ
れた。
ストラン、中食セグメントにおける現在および将来の外食頻度、
調査対象者の分布
性別
合計
居住地域
合計
女性
530 (52%)
農村部
22%
男性
合計
488 (48%)
1,018
年齢
合計
25-34
13%
18-24
35-44
45-54
55-64
65+
平均年齢
8%
17%
15%
25%
22%
49.8
地域
合計
近畿
17%
関東
中部
九州・沖縄
北海道
中国
東北
四国
41%
15%
9%
郊外
25%
63%
4%
7%
大学中退
2%
2
33%
3
4
5+
平均
13%
25%
16%
13%
2.7
6百万円以上
8百万円未満
15%
1千万円以上
13百万円未満
4%
回答なし
10%
79%
12%
合計
1
45%
21%
無職
19%
世帯の人数
5百万円未満
なし
年金生活者
3%
合計
4%
合計
主婦
10%
学歴
合計
2%
学生
33%
8%
調査対象者の分布
5%
16%
自営業
独身
離婚・別居・死別
パートタイム
44%
合計
パートナーと同居
合計
フルタイム
配偶者の有無
既婚
就業状態
34%
7%
18歳未満の子供の有無
有り
都市部
年収(年間家計所得)
5百万円以上
6百万円未満
10%
8百万円以上
1千万円未満
11%
13百万円以上
5%
高校卒業、中退
短大、高専卒業
大学卒業以上
39%
14%
45%
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深沢政彦
マネージングディレクター
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+81 3 5533 4850
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ディレクター
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