4生産から食卓まで 食の循環や環境を意識した 食育の推進

4生産から食卓まで
食の循環や環境を意識した
食育の推進
(1)取組の考え方
日々の食生活は、自然の
恩恵の上に成り立ってお
り、貴重な動植物の命を受
け継いでいくことにつな
がります。自然の中で育っ
【図1】
た命ある食べ物は、大切に
育てられ、収穫され、加工
され、食料品店やスーパー
マーケットなどの店頭に
並びます。色々な食材が、
どこで、どう育っているの
か興味や関心を持ち、こう
した食材が食卓に上がる
までには、農林漁業者や食
品加工業者をはじめとす
る「食」に関わる多くの
人々の様々な活動に支え
られていることを実感し、
感謝の念や理解を深めて
いくことが何より必要で
す。この取組は、学校給食
などを通して教育現場を
中心に取り組まれていま
すが、さらに、「育てるこ
と」を重視した農業体験活
動や情報提供などを充実
内閣府食育推進室「食育ガイド」所載内容より抜粋
させ、継続して取り組む必
要があります(図1)。
食事を調理・提供するにあたっては、課題3の「佐賀の宝、食文化を守り継承する食育
の推進」で述べたように、地産地消の視点に配慮する必要があります。地産地消を実践す
ることで、消費者は、生産者の顔が見え、生産地や生産方法が明らかで新鮮な農林水産物
を安心して購入する機会が増え、生産者にとっては、消費者のニーズを直接知ることがで
き、ひいては、6 次産業化などの地域農林水産業の活性化にも繋がります。また、輸送に
伴うエネルギーをできるだけ減らし、環境に対する負荷を軽減する観点からも、環境と調
和のとれた食料の生産とその消費に配意することができます(図 2)。
43
【図2】 フードマイレージ(食料の総輸送量・距離)に関する図
資料:農林水産省作成
注:1)フード・マイレージ=輸送量×輸送距離、CO2 排出量=輸送量×輸送距離×CO2 排出係数
資料:農林水産省
県民一人一人が、食の恵みをもたらす自然への感謝の気持ち、関わった多くの人々の苦
労への共感を持つことで、環境と調和のとれた農業生産活動への理解の深まり、生産者・
食品加工業者・販売者と消費者の信頼関係の構築を通じた、農山漁村の活性化などの効果
も期待されます。こうした食の循環への意識を高めることで、食品の安全性をはじめとす
る、食に関する幅広い知識と理解の深まり、信頼できる情報に基づく適切な判断を行う能
力の向上も期待できます。
【図3】日本の食品ロス
44
まだ食べられるのに捨てられてい
【図4】 廃棄の理由(複数回答による)
る食べ物、いわゆる「食品ロス」は、
日本では年間 500 万トン~800 万トン
にも上ります。これは、日本のコメの
年間収穫量に匹敵し、世界中で飢餓に
苦しむ人々に向けた世界の食料援助
量を大きく上回る量です(図 3)。また、
日本人 1 人当たりに換算すると、"お
にぎり約 1~2 個分"が毎日捨てられ
ていることとなります。捨てる理由に
は、「食品の腐敗、カビ」によるもの
や「賞味期限、消費期限切れ」が多く
なっています(図 4)。私たちは多く
資料:農林水産省「平成 21 年度食品ロス統計調査(世帯調査)
」
の食べ物を輸入しながら、大量に捨て
ているのです。
こうした実情をふまえ、地域の産物から世界の食糧事情への興味や関心を持ち、
「もった
いない精神」のように、食べ物をもっと大切に消費していく意識を高めるとともに、感謝
して「いただきます」「ごちそうさま」が自然に言える「佐賀の賢人」を育てます。
(2)取り組むべき課題と提案
取り組む ① 自然の恩恵と食に関わる人々への感謝の念を育む食育活動
べき課題 ② 食べ物をもっと大切に消費していく意識を高める食育活動
個人・家庭
・心をこめて「いただきます」「ごちそうさま」を発します。
・食材は無駄なく使い切ります。
・地域で生産されたものを地域で消費する「地産地消」の良さを理解します。
・保育所等、学校、行政その他の関係者が実施する食に関する体験活動に積極的に参加
します。
学校、保育所・幼稚園等
・家庭・地域社会との連携を図りながら、体験活動を通じ、実感を伴った学びを促し、
食の循環を意識させます。
企業・農林漁業関係者
・消費者の食や農林水産業への理解促進や、信頼関係の構築のためには、
「体験活動」の
果たす役割が大きいこと踏まえ、魚の捌き方教室や酪農体験等など、各関係企業、団
体にしかできない人材、ノウハウを活用した体験活動の機会の提供に協力します。
・鮮度保持を重要視して、食材管理に取組みます。
45
県
・地産地消の重要性や、地域農業の活性化促進を踏まえ、ふるさと先生の派遣等を行い
ます。
・子どもたちが、農業農村の役割やふるさとへの愛情が深まるよう農業体験活動を推進
します。
・食品ロスに繋がる食べ物をもっと大切に消費していく意識を高める取組の推進、啓発
を行います。
・食の安全や表示に関する正しい理解が深まるよう啓発に取り組みます。
共通(学校や企業・団体、行政等の組織が共通認識を持つもの)
・食料の生産から消費等に至るまでの食に関する様々な体験活動を行う機会を提供しま
す。
(3)目指す指標
指
標
現状値
100 回程度
① ふるさと先生の派遣回数
-
② 保育所、幼稚園等での農業体験活動
目標値
100 回程度
増やす
(4)取組の事例
佐賀県主催で実施した「食で育む生きる力事業」のワ
ークショップで、
「出汁(だし)」
(命の循環)について
学びました。出汁(だし)をとる方法は人それぞれで
すが、日本で代々受け継がれてきた「出汁(だし)」は
いりこや昆布など、自然の中で育ったものからとって
います。食の循環、いわば「いのち」の贈り物です。
ぜひ、次の世代にも引き継ぎたいものですね。ワーク
ショップでは、日本人の伝統的な食文化についても考
えることができました。
唐津市子育て支援情報センターでは、地域の方々と連
携して、親子で一緒に参加できる食育講座を実施され
ています。食育講座は、海や山の自然の恵みを生かし
た、五感を通じた体験活動で、耕作放棄地や、廃校、
昔の農機具や石臼を活用するなど、随所に地域の資材
を活かす工夫が施されています。食育講座で、参加者
のみならず、地域住民の皆さんも一緒に学び、楽しむ
場になっています。
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「海苔はどこで売ってるの?」「海苔はどのようにでき
ているの?」という子ども達の疑問をきっかけに始まっ
た鹿島市七浦保育園の「海苔の手すき」体験。保育園の
食育活動です。保護者をはじめ、七浦漁協青年部、地元
の海苔加工業者の皆さんの完全ボランティアによって
支えられています。有明海の近くに住んでいながら、特
産の海苔について知らなかった子供たちは、体験を通じ
て、地元の農水産物のことから有明海の環境のことま
で、様々な事を学んでいます。
大豆の生産が盛んな本県では、県内各地で様々な大豆を
取り入れた食育活動が行われています。例えば、大豆を
通じて、食の循環を学ぶ「大豆 100 粒運動」の取組では、
子どもたちが、
「輸入大豆と国産大豆の違いって?」「日
本の食料自給率はどれくらいなの?」
「地産地消の良さと
は?」等々、学習の範囲を広げながら学んでいます。自
然の中で生まれた食べ物が食卓に並ぶまで、生産や製造、
流通、販売と、たくさんの作業のプロセスと大勢の人た
ちの手間がかかっています。「大豆 100 粒運動」では、
大人から直接指導を受けることで、食の循環はもとより、
食に関わる働く大人のかっこよさも伝えています。
佐賀市では、飲食店、結婚式場などでの食べ残し削減を
目的に、3010(さんまるいちまる)運動をはじめとした
「佐賀市もったいないプロジェクト」を展開しています。
3010 運動は、宴会等から出る食べ残しを削減するため、
開始後 30 分と終了前 10 分を離席せずに食事を楽しむと
いうもので、「食」への感謝や「もったいない」気持ち
を持って、市のごみ減量に繋げてもらう取組です。
47
5
多様な団体との連携・協働による基盤の広が
りによる食育の推進
(1)取組の考え方
本計画が目指す「生涯食育」の取組にあたっては、県民一人ひとりが食育の意義や必要
性などを理解し、これに共感し、自らの意思で食育が実践できるように支援していく必要
があります。そのためには、県民が主役の県民的広がりを持つ運動として取り組むことが
不可欠であり、様々な分野の関係者が連携を密にして問題意識を共有しつつ、それぞれの
特性を十分に活かして食育を推進することが求められます。その基盤づくりには、計画の
策定、これを推進する組織の設置や人材確保、指標のモニタリング、事業評価が必要とな
ります。
本県は、市町の推進計画はほぼ策定されていますが、市町の特性に応じた効果的な活動
となるよう、行政同士のさらなる連携・協力が必要です。また、各教育現場においても各
施設の教育方針に基づいた食育計画を位置づけることが何よりも重要です。現状では食育
推進計画未策定の保育所・幼稚園などが見受けられることから、これを解消するための支
援が必要です。また、第1次計画以来、本県は、消費者・生産者・教育・社会福祉・医療・
CSO(市民社会組織)等の関係団体、企業及び行政機関で構成する「食育ネットワークさが」
を組織してきました。食育に対する理解の深まりとともに、年毎に賛同団体が増加してお
り、各団体の活動が活発化してきています(図1)。
【図 1】 賛同団体数
食育ネットワークさが会員数
221
220
197
200
180
159
160
140
120
207
120
100
18年度末 22年度末 23年度末 24年度末 26年度末
食育ネットワークさがとは
食育に関する活動を行う団体・機関・企業等の情報交換と連携を図り、食育に関する啓発、情報提供及び
食育活動への支援等を行うことにより、家庭、地域、施設、事業所等における食育の普及、推進に寄与す
ることを目的として、平成 18 年度に設立した本県独自の組織です。
48
その成果として、県の食育情報のホームページである「さがのごはんだーい好き」には、
佐賀県食育賞受賞者・団体の活動をはじめ(表1)、これまでの多くの活動が蓄積されてい
ます。これからは、IT化にも対応しつつ、こうした取組を継続して情報発信していく必
要があります。
【表1】平成 19 年度~平成 26 年度 佐賀県食育賞(部門別)
部
門
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
平成24年度
平成25年度
幼稚園・ 社会福祉法人 学校法人唐津 唐津市立若葉
保育所 栄生福祉会 開 学園 すみれ幼 保育所
等部門 成保育園
稚園
社会福祉法人
北部保育園
社会福祉法人
けやき会吉田
保育園
社会福祉法人
正覚福祉会
七浦保育園
社会福祉法人
富士福祉会
南部保育園
(嬉野市)
(鹿島市)
(佐賀市)
社会福祉法人
新光会 山内保
育園
(唐津市)
(唐津市)
社会福祉法人 伊万里市保育
浄土福祉会 本 会
應寺保育園
(佐賀市)
学校法人牛津
ルーテル学園
牛津幼稚園
(武雄市)
社会福祉法人
知恩福祉会 海
童保育園
(鹿島市)
(嬉野市)
学校法人宝禅
学園吉野ヶ里
幼稚園
(吉野ヶ里町)
(小城市)
有田町立くわこ
ば保育園
(有田町)
(伊万里市)
社会福祉法人
アソカ福祉会
アソカ保育園
(鹿島市)
平成26年度
社会福祉法人
清路会東与賀
チャイルドハウ
ス
(佐賀市)
(佐賀市)
社会福祉法人 社会福祉法人
高野会 こばと 光の園福祉会
保育園
光の園保育園
(多久市)
社会福祉法人
武内福祉会
武内保育園
(武雄市)
(武雄市)
社会福祉法人
旭ヶ丘福祉会
旭ヶ丘保育園
(鹿島市)
学校部 佐賀市立新栄
門
小学校
鳥栖市立麓小
学校
(鳥栖市)
多久市立中部
小学校
(多久市)
唐津市立鏡山
小学校
(唐津市)
佐賀市学校栄
養士会
(佐賀市)
武雄市学校給
食部会
(武雄市)
伊万里市立山
代中学校
武雄市立橘小
学校
山内町小中連
携 食育部会
鹿島市立浜小
学校
嬉野市立塩田
小学校
伊万里市立大
川内小学校
多久市立西渓
小中学校
(小中一貫校)
(多久市)
武雄市立若木
小学校
(伊万里市)
嬉野市立吉田
小学校
(武雄市)
有田町立西有
田中学校
(武雄市)
嬉野市立久間
小学校
(鹿島市)
白石町立白石
中学校
(嬉野市)
(伊万里市)
(武雄市)
(嬉野市)
家庭・地 NPO法人唐津
域部門 子育て支援情
報センター
(有田町)
協同組合アル
タ・ホープグ
ループ
(嬉野市)
(白石町)
NPO法人 活気 ふるさと隊
会(食育部会)
鹿島市食生活
改善推進協議
会
佐賀市食生活
改善推進協議
会
みやき町食生
活改善推進協
議会
祥光山星厳寺
伝承「普茶料理
おぎ春香会」
(唐津市)
朝日町食生活
改善推進協議
会
(武雄市)
(佐賀市)
社団法人佐賀
県栄養士会鳥
栖支部
(鳥栖市)
(佐賀市)
多久市お多福
エプロン隊
(鹿島市)
(佐賀市)
唐津市食生活
改善推進協議
会
(唐津市)
基山町食生活
改善推進協議
会
(みやき町)
江北町食生活
改善推進協議
会
(江北町)
(小城市)
有田町食生活
改善推進協議
会
(有田町)
白石町食生活
改善推進協議
会
(多久市)
(武雄市)
嬉野市食生活
改善推進協議
会
(嬉野市)
佐賀市立神野
小学校
(佐賀市)
(基山町)
食農教 古賀サポー
育部門 ター農園
(鳥栖市)
JAさが佐賀み 鳥栖市食生活
どり女性部(武 改善推進協議
雄市)
会 食と農部会
(鳥栖市)
佐城地区女性
農村アドバイ
ザー会
(佐賀市)
(白石町)
JAからつ女性 兵庫朝市部会
部
(佐賀市)
(唐津市)
西久保弘克氏
(個人)
(佐賀市)
白石青年実業
会
神埼地区青年
農業者連絡協
議会
山内ふるさと食 能古見地区農
品研究会
産物加工直売
所「能美の郷」
武友会
市丸房光氏
(個人)
武雄・杵島地区
「味彩ネット
ワーク」
(白石町)
(神埼市)
(武雄市)
(武雄市)
(唐津市)
(武雄市)
古舘 邦夫氏
(個人)
(玄海町)
あおば園畑や
田んぼの先生
(玄海町)
三根由紀子氏
(個人)
(嬉野市)
(鹿島市)
49
太良町食生活
改善推進協議
会
(太良町)
佐賀県有明海
漁業協同組合
連合会
(佐賀市)
また、今後は個々の団体の活動にとどまらず、他の団体と連携した協働事業を深化させ、
生涯食育を柱とした多様な食育活動を展開していく必要があります。そのための人材とし
て栄養教諭、管理栄養士などの配置や、多様な食育ボランティアを確保することが不可欠
となります。
同時に、これまで培った効果的な食育プログラムのノウハウを集積・評価し、これを活
用することによって「成果をもたらす食育」となるような「仕組みづくり」に取り組み、
食育推進の実効性を高めるとともに、生涯を通じた食育が県民運動となるように取り組み
ます。
(2)取り組むべき課題と提案
取り組む ① 市町の食育推進への支援
べき課題 ② 保育園・幼稚園の食育計画の未策定の解消
③ 食育広報活動の充実
④ 栄養教諭、管理栄養士、食育ボランティアなどの人材確保
⑤ 効果的取組のノウハウの集積・活用 成果をもたらす食育活動の仕組
みづくり
⑥ 食育の評価のための指標のモニタリング
学校
・ 栄養教諭を中核とした指導、学校における食に関する指導体制の充実を図ります。
→栄養教諭・・・平成 17 年度から、食に関する専門家として児童生徒の栄養の指導
と管理をつかさどることを職務とする栄養教諭が制度化されてい
ます。
(佐賀県の栄養教諭の配置状況)平成 22 年度:27 人→ 平成 27 年度:52 人
・ 地域の人材、資源を積極的に取り入れた食育の推進に努めます。
・ 学習指導要領や学校給食法に基づく食育の推進を行う中で、栄養教諭のみならず、学
校教育活動全体を通して総合的に食育を行います。関連する分野が多岐にわたること
から、多様な学習の時間を活用した取組を行います。
例)社会科・・・食料の生産や、地域の産物、地域の年中行事に関わる郷土料理などに
ついて学習
・ 学校給食を活かした食育の推進
保育所・幼稚園等
・ 保育所や認定こども園は、乳幼児期における食習慣の定着及び心身の健全育成を図る
ため、次の条例に基づき食育推進計画を策定し食育を推進します。
保 育
所:佐賀県児童福祉法の施行等に関する条例
認定こども園:佐賀県就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進
に関する法律施行条例
50
・ 幼稚園は、指導計画及び教育課程に基づく食育の推進を図るとともに、食の嗜好が身
につく重要な時期である幼児期における食育の重要性を踏まえ、食育推進計画を策定
し、園における取組を明確化します。
・ 園だよりや、給食だより、体験活動等を通じ、子育て家庭に向けた食育の発信拠点と
しての役割を担います。
児童養護施設等、障害児入所施設等
・ 佐賀県児童福祉法の施行等に関する条例に基づき食育を推進します。
・ 子どもたちの食育を進めるため、施設関係者の研修や食育に関する情報の提供を行い
ます。
→県、市町、教育委員会は、施設職員等に、食育に関する研修や情報提供を行います。
◆佐賀県児童福祉法の施行等に関する条例
乳幼児期からの食に対する関心を高めるとともに、家庭における食育推進を支援す
ることを目指し、給食の提供等を行う児童福祉施設に対し、食 育 推 進 計 画 の 策 定 と
食 育 推 進 担 当 者 の 設 置 を 義 務 付 け て い ま す 。 (障 害 児 入 所 施 設 等 は 努 力 義 務 )
研究機関、教育関係者等
・ 食育の必要性が社会に広く認知されるよう、教育関連の資質を提供し、企業や非営利
団体、地域のボランティアの方々等による食育活動のための資料の提供や出前授業へ
の協力に務めます。
農林漁業関係者等
・ 「食」に関する県民の理解を増進することの重要性を踏まえ、自主的かつ積極的に体
験活動や食育に関する普及・啓発に取り組みます。
食品関連事業者等
・ 近年の食の外部化率の高まりを受け、消費者と接する機会が多い食品関連事業者にお
ける食育の果たす役割を踏まえ、食品の製造・加工・流通・販売を行う事業者や飲食
店及びその関係団体は、その事業活動が、食品の安全や安心の確保、県民の健全な食
生活の実践に大きな影響をもつことを認識し、自主的かつ積極的に食育を推進します。
関係機関・団体・企業等
・ それぞれの組織の目的や役割に応じて、組織内や地域・教育機関等における食育に自
主的に取り組みます。
市町
・ 多様な関係団体との連携を図りつつ、本計画を踏まえて、各市町食育推進計画に基づ
く推進を行います。
・ 学校における食育の推進(学校給食法に基づく)に当たっての、栄養教諭の果たす役
51
割を踏まえ栄養教諭のさらなる配置の促進を行います。
県
・ 食育月間、食育強化月間の設定、推進を行います。
→国が定めた6月の食育月間に加え、収穫の時期である11月を食育推進強化月間に
定め、キャンペーン活動を行います。
・ 食育の日(毎月第3金土日曜日)の設定、推進を行います。
・ 市町をはじめとする食育関係者同士の交流の場を作ります。
・ 食育ネットワークさが会員の取組と食育現場とのマッチングを行います。
・ 市町をはじめ、県内の食育関係者が食育を推進する上で必要なデータの収集や情報提
供を行います。
・ 食育推進団体(個人)に対する表彰を行います。
・ 地域の食育現場の取材、情報発信を行います。
・ 指標のためのモニタリングを実施します。
(3)目指す指標
指
標
① 食育ネットワークさが会員数
目標値
227
280
保育所 99.1%
② 保育所・幼稚園における食育推進計画策定
幼稚園 63.7%
率
-
③ 食育ホームページ閲覧件数
④ SNS等を活用した情報発信
現状値
フェイスブック発信件数ツイッタ-発信件数-
100%
増やす
増やす
(4)取組の事例
早ね早起き朝ごはんキャンペーンにおいて、佐賀
県広報番組での広報活動や、保育所等や子育て世
代を対象にしたイベントで「食育キャラクターた
べんばくん」による啓発活動を行っています。
52
さがの食育「ごはんだーい好き」のホームページ
では、佐賀県の食育に関する情報を発信し、県民
の皆様に健全な食生活を実践するための参考にし
ていただくため、学校、保育所等、幼稚園、地域、
企業などの食育の現場における、イベント情報や、
実践的あるいはユニークな取組などを紹介してい
ます。
1
2
3
写真1
写真2
写真3
株式会社タニタの
食育講演会
朝食調理実習の補助
若楠ポークについての
授業
取組名 文部科学省事業「スーパー食育スクール」
学校名 武雄市立若木小学校
取組内容
ICT等を利活用しながら児童の食習慣をはじめと
する生活習慣を改善し、健康な身体の育成を図る。
〈各機関との連携〉
○株式会社タニタとの連携
食事、歩数、体組成の調査解析、講演会
○県農林事務所
ふるさと先生の派遣(豆腐作り、野菜作り)
○近隣する中学校
食育講演会、スポーツ料理教室、食育授業
○PTA
保護者対象の給食試食会、食育講演会
○食生活改善推進協議会
保護者対象の朝食料理教室
○地域
各学年の総合的な学習の時間のゲストティー
チャー、食育タイムのゲストティーチャー、
給食試食会
*「食育タイム」とは本校独自の全校で行う授業
学校だけでなく地域や保護者、県の農林事務所や食生活
改善推進協議会などの協力を得ることで、様々な知識を習
得したり、体験をしたりすることができた。
53
(5)コラム
「食育」の概念の体系的な整理
「食育」という言葉の概念には、食生活における知識・選択力の習得を通じた単なる食
生活の改善にとどまらず、食を通じたコミュニケーションやマナー等の食に関する基本所
作の実践に加えて、自然の恩恵等に対する感謝の念と理解、優れた食文化の継承等食に関
する基礎の理解など、広範な内容が含まれます。これらは、子供達が豊かな人間性をはぐ
くみ、全ての人々が生涯にわたって健全な心身を培う上で必要なものです。
食育推進有識者懇談会(食育担当大臣主催)が取りまとめた「食育推進国民運動の重点
事項」では、こうした「食育」の幅広い概念を理解するための参考となるよう、
「食育」の
概念の体系的な整理が試みられています。
「食育」の概念の体系的な整理
理念
(豊
知か
育な
・ 人
徳間
育形
・ 成
体
育
の
基
礎
食
に
か
か
る
人
間
形
成
)
心
身
の
健
康
の
増
進
分野
望まれる日常の行動・態様
食を通じたコ
・食卓を囲む家族の団らん
食
ミュニケ-ショ ・食の楽しさの実感
に
ン
・地域での共食
関
・正しいマナー
習す
・作法による食事食事のマナー(姿勢、順序、等)
得る
食に関する基 配膳、箸等
基
本所作
礎
・食前食後の挨拶習慣(いただきます、ごちそうさま)
の
食
に
関
す
る
基
礎
の
理
解
習食
得に
・ 関
健す
全る
な知
食識
生と
活選
の択
実力
践の
・地場産物の食材等を利用した食事の取得・提供(地産
自然の恩恵 地消)
等への感謝、 ・環境に配慮した食料の生産消費(食材の適量の購入
環境との調和 等)
・調理の実践、体験
食文化
・郷土料理、行事食による食事
食料事情ほ
か
・世界の食糧事情や我が国の食料問題への関心
食品の安全
性
・科学に基づく食品の安全性に関する理解
滋養(例)
・精神的豊かさ
是正対象
・孤食
・個食
規範遵守意識
・自然の恩恵、(動植物
の命を含む)、生産者等
への感謝の念
・「もったいない」精神
・豊かな味覚
・食べ残し
・安全な食
材の廃棄
・偏食
主な関連施策等
・共食の場つくり
・親子で参加する料理教室
・食事についての望ましい習慣を
学ぶ機会の提供
・消費者と生産者の交流・食に関
する様様な体験活動
・農林水産物の地域内消費の促
進
・食文化、伝統に関する
歴史観 等
・食に関する国際感覚
・食料問題に関する意識
・普及啓発 ほか
・食品の安全性に関する
意識
・食に関する幅広い情報提供
・意見交換(リスクコミュニケー
ション)
・肥満
・メタボリッ
クシンドロー
・食材、調理方法の適切な選択による調理
ム
・健全な食生活に関する指針の
食生活・栄養 ・中食の適切な選択
・栄養のバランスに関す
・過度の痩 活用
のバランス
・外食での適切な選択
る食の判断力、選択力
身志向
・栄養成分表示など
・日本型食生活の実践
・偏食
・フードファ
ディズム
・食事についての望ましい習慣を
・規則正しい食生活リズム(毎朝食の摂取、間食・夜食の
・朝食の欠 学ぶ機会の提供(早寝早起き朝
食生活リズム 抑制)
・健全な生活リズム
食
ごはん運動の推進)
・口腔衛生
(8020)運動の実践
54
Ⅷ
計画の推進体制
1
推進体制
食育の推進運動の展開に当たっては、多様な主体の参加と連携・協働が不可欠です。食
育を効果的に推進していくために、食生活の基本となる家庭における食育の取組はもとよ
り、消費者・生産者・教育・社会福祉・医療・CSO(市民社会組織)等の関係団体、企業及
び行政機関が、それぞれの役割に応じて活動すると共に、相互に連携・協力しながら、計
画の推進に努めます。
食育ネットワークさが
2
計画の進行管理
施策を総合的・効率的に推進する観点から、関係部局がそれぞれの立場から進捗状況の
把握を実施し、適切な進行管理に努めます。
また、計画は必要に応じて見直しを行うこととし、評価や見直しにあたっては、関係者
や県民の意見を聴取しながら適切に行います。
○庁内関係各課が緊密に連携して食育を推進していくことを目的に設定した「食育推進庁
内連絡会議」(平成 18 年度設置)が関連施策の企画及び総合調整を行い基本計画の実施を
推進します。
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