267-270 - 日本海区水産研究所

イカナゴ資源生態調査
山田嘉暢・中田凱久・山内高博
調査目的
本県沿岸漁業の重要魚種であるイカナゴの資源生態を解明し、資源管理のための基礎資料を得る。
材料と方法
1)漁獲統計調査
青森県海面漁業に関する調査結果書 0
960-1994
年)により、イカナゴ漁獲量の経年変化を調べた。
2
) 稚仔魚分布調査
イカナゴを対象とした光力利用敷網漁業の漁期前に、稚仔魚の出現状況を把握するため試験船青鵬丸
により、日本海北部から津軽海峡西部を経て陸奥湾に至る海域において、稚魚ネット(目合 GG54
、口
径1.3
m) による表層及び水深 20mの 2層水平曳きを 1
0分間行った。また 1
9
8
4
1
9
9
4
年までの稚仔魚分布
調査の採集尾数を取りまとめた。
結果と考察
1)漁獲統計調査
1
9
6
0
1
9
9
4
年までの青森県におけるイカナゴ漁獲量の経年変化を図 1に示した。
1
9
7
0年以前は 2
,0
00-7,0
0
0トン台で推移していたが、 1
9
7
1年以降増加傾向を示し、 1
9
7
3
年には過去最
4,0
0
0トンに達した。しかし 1
9
7
8
年以降減少傾向を示し、 1
9
8
0年以降は 1
0
0
8
0
0トンの水準で推移
高の 1
9
9
4
年は 9
2
0トンであった。なお本県におけるイカナゴ漁業は、光力利用敷網と小型定置網に
しており、 1
よる稚魚 若魚期を対象としたものであって、成魚期を対象にした漁業はほとんどない。
(トン)
14,
000 r
12,
000
~-・
10,
000
漁
8,
000
獲
6,
000
量
4,
000
2,
000 1
ー
0
1960
1965
1970
1975
1980
1985
図 1 青森県におけるイカナゴ漁護量の経年変化
- 267ー
1990
(
年
〉
1
9
8
0
1
9
9
4
年までの青森県におけるイカナゴ漁獲量の海域別経年変化をを図 2に示した。
9
8
4
年の翌年から増加傾向にある。日本海では小泊村で 0
3
5
イカナゴは、冬季異常低水温であった 1
トンで推移しており、資源的に低水準で-ある。 1
9
9
4
年の日本海における漁獲量は皆無であった。津軽海
.
5
4
9
4トンで推移している。 1
9
9
4
年は 4
9
4トンで
峡では今別町、佐井村の漁獲量が多く、海峡全体では 0
あった。陸奥湾では平舘村の漁獲量が多く、陸奥湾全体で
o~257 トンで推移している。
1994年は 191 ト
ンであった。太平洋では、東通村、六ヶ所村の漁獲量が多く、太平洋全体で 2
0
3
3
2トンで推移してい
9
9
4
年は 2
3
4トンであった。
る
。 1
(トン〉
1000
900
-太平洋
800
己陸奥湾
700
回津軽海峡
口日本海
漁 600
獲 500
400
量
300
200
100
。
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1994(年〉
1992
図 2 青森県におけるイカナゴ漁獲量の海域別経年変化
2
) 稚仔魚分布調査
993
年 3月 1
5
2
2日)結果を図 3、 4に示した。
第 1回調査 0
採集尾数は表層 4尾、水深 20m層が 4
2
2尾であった。
1
0
0尾以上採集された場所は、今別沖合のみで
9
8
7年の 2
,6
1
0尾に次ぐ数で、昨年同期に比べ出現時期も早く、また採集尾数も多か
あった。採集尾数は 1
.
0
5
.
0
m
mの範囲にあり、卵黄を持った前期仔魚が中心だった。
った。採集された稚魚の大きさは 4
1
4
0
' E1
5-
30
4
5
2
0
'1
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7
3
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1
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4
1
' 00
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5-
3
0-
1
4
0
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5-
1
4
1
' 00-
表 層 ( ト 5m)
5
0
'I
立
中層 (20m)
青森・
図 4 イカナゴ稚仔魚分布調査結果 (
3月中層)
図 3 イカナゴ稚仔魚分布調査結果 (
3月表層)
- 268-
第 2回調査
0
9
9
3
年 4月 1
2
1
8日)結果を国 5、 6に示した。
0m層が 3
1
7尾であった。採集尾数は 4月としては、例年並であった。採
採集尾数は表層 O尾、水深 2
.
0
6
.
0
m
mが多く、 1
0
.
0
m
m
以上の出現は少なく、解出期にあるものと考えられ
集された稚魚、の大きさは 4
た
。
1
4
0
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S
初
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1
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-一
一
一
一
;
一
一
一
一
一
一
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9
1
+
-
o
. o
.
平舘
7
o
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4
1
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0
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4
1
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4
1
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4
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1
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町
3
0-
1
4
0
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4
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3
0
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o
'I斗 -
表 層 ( ト5
m)
図 5 イカナゴ稚仔魚分布調査結果 (
4月表層)
中層 (20m)
図 6 イカナゴ稚仔魚分布調査結果 (4月中層)
9
8
4
年以降の月別採集尾数を取りまとめた。
表 1にイカナゴ稚仔魚分布調査を開始した 1
イカナゴ稚仔魚の最高採集尾数は 1
9
8
4
1
9
8
7
年にかけては 3
,6
9
9尾であったが、
1
9
8
8
1
9
9
4
年にかけて
0
0尾以上採集されることがなくなった。 1
9
9
4
年は 7
4
3尾であった。また月別採集尾数では、 1
9
8
4
は1.0
1
9
8
7
年にかけては、 3月より 4月の表層における採集尾数が多かったが、 1
9
8
8
年以降平舘村を除き、両
月とも表層では、ほとんど採集されなくなった。これは低水準の資源状況を反映している結果だと考え
られる。
表 1 イカナゴ稚仔魚の月別採集尾数
月別曳網層別採集尾数/年
3月表層
3月中層
4月表層
4月中層
企
口h
(
0-5m)
(20-25m)
(
0-5m)
(20-25m)
計
(
1
9
8
4
.
.
.
1
9
9
4
)
1
9
8
4 1
9
8
5 1
9
8
6 1
9
8
7 1
9
8
8 1
9
8
9 1
9
9
0 1
9
9
1
。
。
2
2
7
8
3
1 1
.6
0
1
3
3 1
.6
3
7
3
1
6
6
5
2
4 2
,4
1
0
2
4 1
.0
5
4
1
9
0 1
6
9
3
7
1
8
9
2
2
4
0
4
1
1
6
2
4
8
3
8
0
7
6
9 3
,6
9
9
2
8
8
7
4
8
1
9
9
2 1
9
9
4 累積採集尾数
9
9
3 1
。 。
。 。
。。。。。
2
9
9
7
9
6
5
4
4
2
2
4
1
8
7
6
1
7
3
1
7
1
8
0
,7
3
3
4
2
,9
8
0
1
.2
1
2
4
1
1
9
7
6
9
8
9
7
4
3
9
,1
0
5
表 2に1
9
8
4
1
9
9
4年までの漁獲量とイカナゴ稚仔魚の採集尾数を示した。
漁獲量は稚仔魚分布調査における海域を合計した。前述したように、
1
9
8
0年以降イカナゴ漁獲量は、
低水準期に入っており、大きな資源の増大がないためか、漁獲量と採集尾数に、明確な相関は見られな
い。今後は、夏期の夏眠場所の把握など検討したい。
- 269-
表 2 稚仔魚、の採集尾数とイカナゴ漁獲量 0
984-1994)
年
1
9
8
4
1
9
8
5
1
9
8
6
1
9
8
7
1
9
8
8
1
9
8
9
1
9
9
0
1
9
9
1
1
9
9
2
1
9
9
3
1
9
9
4
漁獲量(トン)
1
2
2
3
0
3
0
0
3
3
4
2
9
0
2
9
0
5
1
5
2
9
1
3
8
3
5
9
6
6
8
6
採集尾数(尾)
3
3
L6
3
7
7
6
9
3
.
6
9
9
2
8
8
7
4
8
4
1
1
9
7
6
9
8
9
7
4
3
*漁獲量は、太平洋海域を除く。
参考文献
宮
口 喜 一 (977) :積丹水域におけるイカナゴの産卵について.北水試月報,
3
4
(
9
),
1-8.
児玉純一 (
9
8
0
) :宮城県沿岸に生息するイカナゴの系群構造と資源生態.宮城県水産試験場研
0, 1-41
.
究報告, 1
橋本博明 (
991
) :日本産イカナゴの資源生物学的研究.広島大学生産学部紀要, 3
0
(
2
),135-
1
9
2
.
青森企画部 0
960-1994) :青森県海面漁業に関する調査結果書.
- 270-